民法 第331条(不動産の先取特権の順位)
クイックジャンプ
- 同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
- 2.同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
この条文の基本情報
不動産の先取特権の順位とは何ですか?
定義不動産の先取特権の順位とは、民法第331条に定められた規定で、「同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民法第331条(不動産の先取特権の順位)は、日本の民法に含まれる条文です。
- 民法第331条の条文原文は「同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。」で始まります。
- 民法第331条は第三節に置かれています。
- 民法の公布日は明治29年4月27日です。
- 民法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民法第331条の前の条は民法第330条です。
- 民法第331条の次の条は民法第332条です。
- 民法第331条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民法(明治二十九年法律第八十九号)第331条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 本サイト収録
民法(明治二十九年法律第八十九号)第331条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/129AC0000000089/331
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民法331条は、同一不動産で特別の先取特権が競合する場合、その順位を保存・工事・売買の順(民法325条)と定め、順次売買では売主相互間の順位を売買の前後によるとする。
Q · 同じ不動産に複数の先取特権が付いていたら、誰が先に回収できるんですか?
保存・工事・売買の順、売主間は売買の前後で決まります
民法331条によれば、同一の不動産に特別の先取特権が競合した場合、その優先順位は民法325条が定める保存・工事・売買の順序に従います。つまり保存費を立て替えた人が一番、工事業者が二番、売主が三番です。さらに同じ不動産が順次転売され売主が複数いる場合、売主間の不動産売買先取特権の順位は売買の前後で決まり、先に売った売主が優先します。ただしこの順位を第三者に主張するには登記が必要で、工事の先取特権は着工前の登記が優先確保の前提です。
解説
あなたが工務店で、施主の家をリフォームしたのに代金が払われない。あるいは中古の店舗物件を売ったのに、買主が倒産して残代金が宙に浮いた。このとき、その不動産に手をかけているのはあなただけではない。保存費を立て替えた人、工事をした業者、売った売主、それぞれが「先取特権」という法律上の担保を同じ不動産に持っている。問題は、物件を売ってもみんなに払えるとは限らないことだ。民法331条は、この群がった債権者の取り分の順番を法律であらかじめ固定している。第1項は、保存・工事・売買の三者が競合したら325条の順序、つまり保存が一番、工事が二番、売買が三番で回収すると定める。第2項は、同じ不動産が転売を重ねた場合、売主同士の順位は売買の前後、つまり先に売った人が先に回収すると定める。あなたが何番目に立っているかで、全額回収か一円も取れないかが分かれる。そしてこの順位は、登記をしているかどうかでさらに動く。
法的な位置づけ
民法331条は、同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合の優先順位を定める規定である。第1項は、保存・工事・売買の各先取特権が競合するときその順位は民法325条各号の順序によるとし、第2項は、同一不動産が順次売買されたときの売主相互間の不動産売買先取特権の順位は売買の前後によると規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.自分の債権が保存・工事・売買のどれかを確定 回収しようとする債権が、不動産の保存費なのか、工事代金なのか、売買代金なのかを特定する。これにより民法325条・331条1項に基づく順位の起点(1番・2番・3番)が決まる
- 2.登記簿の乙区で競合する担保を全部洗い出す 対象不動産の登記事項証明書を取得し、乙区に並ぶ先取特権・抵当権の設定日・順位・被担保債権額をすべて把握する。自分が配当の列の何番目かを地図化する
- 3.工事債権なら着工前に予算額を登記 工事の先取特権で増加価格への優先を確保するには、工事に着手する前に費用の予算額を登記する(民法338条1項)。着工後は事実上手遅れになるため、受注確定の段階で打つ
- 4.競売中なら配当要求の終期前に債権届出を完了 対象不動産が競売手続にある場合、裁判所が定める配当要求の終期までに債権届出と必要な登記を済ませる。順位が後ろで配当に届かない見込みなら、任意売却や直接和解に切り替える
よくある質問 AI による整理
Q1不動産の先取特権とは何ですか?
特定の不動産から他の債権者に優先して弁済を受けられる法定担保物権です。保存・工事・売買の三類型があり、当事者の合意がなくても法律上当然に発生します。
Q2民法325条の順序とはどういう意味ですか?
不動産の保存(1号)・工事(2号)・売買(3号)の三つの先取特権が競合したときの優先順位を示すもので、保存が一番、工事が二番、売買が三番です。331条1項がこれを準用します。
Q3保存の先取特権とは何ですか?
不動産の価値を維持するために要した費用(修繕・権利保全費など)を担保する先取特権です。物の価値を保った共益的貢献ゆえに最先順位に置かれます(民法326条)。
Q4工事の先取特権を優先させるには何が必要ですか?
工事を始める前に費用の予算額を登記することが必要です(民法338条1項)。着工後では増加価格への優先が認められず、後順位の抵当権に負ける恐れがあります。
Q5先取特権は登記しないとどうなりますか?
当事者間では効力を持ちますが、第三者には対抗できません(民法337条〜340条)。登記を欠くと331条の順位も配当の場では主張できなくなります。
Q6売買の先取特権とは何ですか?
不動産の売主が、未払いの代金と利息について、その不動産から優先弁済を受けられる先取特権です(民法328条)。三類型の中では最後の第3順位です。
Q7一般の先取特権と特別の先取特権の違いは?
一般の先取特権は債務者の総財産が対象(民法306条)、特別の先取特権は特定の動産・不動産が対象です。331条は不動産の特別先取特権相互の順位を定めます。
Q8競売で先取特権者はいつ配当を受けられますか?
配当要求の終期までに債権の届出と必要な登記を済ませれば配当表に載ります。終期を過ぎると順位があっても配当から外れます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1先取特権って抵当権とどっちが強いんですか?
場面によって逆転します。不動産の保存・工事の先取特権は、登記要件(民法337条・338条)を満たせば、後から設定された抵当権に優先します。一方、売買の先取特権や登記の遅れた先取特権は抵当権に負けることがあります。実務のポイント:工事の先取特権が抵当権に勝てるのは『着工前に予算額を登記した』場合だけ。実務では着工後に気づいて登記する業者が多く、その瞬間に抵当権より下に落ちる。建設会社の経理が知っているかどうかで、倒産時の回収額が桁違いになる
Q2物件を買ったのに、前の持ち主の借金の担保が付いてるって本当にありますか?
あります。先取特権や抵当権が登記されていれば、所有者が変わってもその不動産に付いて回り(追及効)、新所有者の物件から優先弁済が実行されます。331条の順位は、あなたの所有権取得より前に並んでいた担保権者を優先します。実務のポイント:売買契約前の登記簿の乙区確認は、宅建業者が必ずやる基本動作。個人間売買やオークション物件で乙区を見落とすと、払った代金とは別に他人の担保を背負う。買付申込の前に必ず乙区まで取得する
Q3AがBに売って、BがCに売って、両方代金未払い。誰が先に回収するんですか?
民法331条2項により、売主相互間では売買の前後で決まります。先に売ったAが、後に売ったBより優先して配当を受けます。Bは自分の買主Cから取れなくても、配当の列ではAの後ろです。実務のポイント:転売が絡む不動産取引で売主側に立つなら、自分が『何番目の売買』かが回収順位を直撃する。中間に入る転売者ほど不利になりやすいので、転売スキームでは代金回収の担保を別途取るのが鉄則
間違えやすい点 AI による整理
- 「先取特権があれば必ず優先的に回収できる」と思われているが、331条が示すのは順位であって満額保証ではない。あなたの上に保存や工事の先取特権、あるいは先順位の売主がいれば、物件価値がそこで尽きた時点で、あなたの取り分はゼロになる。担保の有無より、担保の順位こそが回収額を決める
- 「先に契約した方が先に回収できる」と直感的に思いがちだが、331条1項は契約の前後ではなく、保存・工事・売買という債権の性質で順位を決めている。後から工事した業者が、先に売っていた売主より上に立つ。あなたが立てた『早い者勝ち』という前提そのものが、この条文では成り立たない
- 不動産の先取特権は登記がなくても当然に効力を持つと誤解されやすいが、第三者に対抗するには登記が要る(民法337条、338条、340条)。しかも工事の先取特権は工事を始める前に登記しなければ、増加価格への優先が認められない。331条の順位は、登記という前提を満たして初めて現実の配当順位になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象財産 | 331条:同一の不動産(特別先取特権) | 329条:債務者の総財産(一般先取特権) 330条:特定の動産(動産先取特権) |
| 順位の決め方 | 保存→工事→売買(325条)、売主間は売買の前後 | 306条各号の列挙順(共益費用が最先) 保存→運送・賃貸借等の三段階(330条1項) |
| 第三者対抗 | 登記が必要(337条〜340条)、工事は着工前登記 | 原則登記不要だが特別先取特権・抵当権に劣後 占有等で公示、即時取得者には対抗不可(333条) |
| 抵当権との優劣 | 登記要件を満たす保存・工事は後順位抵当権に優先 | 登記した抵当権に劣後するのが原則 抵当権の対象外(動産)ゆえ直接競合しにくい |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は不動産先取特権を一般化せず、請負人の法定抵当権(513条)と抵当権の登記順位(865条)で工事債権等を保護する
ドイツは包括的な先取特権制度を持たず、登記の順位(§879)と建設業者の保全抵当権(§650e)で機能を代替する
フランスは先取特権(privilège)制度の発祥地。売主・建築職人等の不動産特別先取特権とその順位を規定し、日本331条の源流にあたる
米国は州法ごとの法定先取特権(mechanic's lien 等)で工事・売買債権を担保し、登録の先後や法定の優先規定で順位を決める
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが内装工事を請け負ったが、施主が代金を払わないまま物件を競売にかけられた。工事の先取特権を主張すれば、後から登記された抵当権者より先に配当を受けられる場合がある。ただし工事前後の価格増加分の登記(民法338条)をしていなければ、その優先は崩れる。着工前の一手続きの有無が、数百万円の回収可否を決める
- もし、あなたが買った中古物件に、前の所有者が払い残した工事代金の先取特権が付いていたとしたら? あなたは代金を全額払ったのに、その不動産から工事業者が優先弁済を受ける。あなたの所有権より、登記された先取特権が上に立つことがある。物件購入前に登記簿の乙区を確認しなかった代償だ
- A が B に土地を売り、B が C に転売した。両方とも代金未払い。土地を換価しても全員には足りない。このとき A と B、どちらの売主が先に回収するか。331条2項が答えを出す。先に売った A が優先する。後から参入した B は、自分が売った相手から取れなくても、配当の列では後ろに回される
- 債権回収のリミットが迫っている。配当要求の終期まであと数日、あなたの先取特権の登記が間に合うかどうかで、配当表に名前が載るか消えるかが決まる。順位の理屈を知っていても、手続を打たなければ法律上の順番は紙の上の権利にとどまる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 自分の債権が保存・工事・売買のどれにあたるかを確定し、331条1項・325条で順位の起点を把握する2. 登記簿の乙区を取得し、同じ不動産に並ぶ先取特権・抵当権の設定日と順位を全部洗い出す3. 工事債権なら、増加価格への優先を確保するため着工前の登記(民法338条)が打てるか直ちに確認、すでに着工済みなら売買代金部分等で取れる順位を再計算4. 競売中なら配当要求の終期を確認、終期前に債権届出と必要な登記を完了させる。順位が後ろで配当に届かない見込みなら、任意売却や債務者との直接和解に切り替える
訴えられた側:1. あなたが不動産を買った側・後順位の債権者側なら、まず自分より上位の先取特権が登記要件(民法337条〜340条)を満たしているかを精査する。要件を欠く先取特権は第三者に対抗できず、順位主張を覆せる2. 工事の先取特権なら、着工前の登記がない、または増加価格の限度を超えた主張がないかを確認3. 売主間の順位争いなら、売買の前後を示す契約書・登記の日付で331条2項の順序を確定し、自分が不当に後順位に置かれていないか検証4. 順位の前提が崩せないなら、配当異議より早期の按分和解を試算する
時効(請求できる期限):先取特権の順位主張そのものに固有の時効はないが、被担保債権が時効消滅すれば担保も消える。競売手続では配当要求の終期(民事執行法に基づき裁判所が定める)までに債権届出と登記を済ませなければ配当から外れる。工事先取特権の優先確保は着工前の登記が前提であり、着工後は事実上手遅れになる(最新の手続運用をご確認ください)
学説
通説:331条1項が保存・工事・売買の順位を325条に従わせるのは、保存が物の価値を維持し工事が価値を増加させたという共益的貢献の序列に基づく。売買の先取特権が最後順位に置かれるのも、売主は対価を得ていない反面、目的物の価値を高めたわけではないという評価による
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.明治29年(1896年) 新設:民法(明治29年法律第89号)制定。フランス法系の先取特権制度を継受し、不動産の特別先取特権相互の競合順位を325条と連動させて規定
- 2.平成16年(2004年) 改正:民法の現代語化(平成16年法律第147号)。条文をカタカナ文語体から平易な口語体に改め、内容を維持したまま現行の表現に整えた
- 民法 第325条不動産の先取特権の三類型と順位の起点
- 民法 第328条不動産売買の先取特権の内容
- 民法 第329条一般の先取特権相互間の順位
- 民法 第330条動産の先取特権の順位、対比規定
- 民法 第338条不動産工事の先取特権の登記と優先の要件
- 民法 第373条抵当権の順位、先取特権との優劣の対比
- 破産法 第65条倒産時の別除権として先取特権の優先順位を修正
- 民事執行法 第85条配当手続における優先順位による弁済の実現
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める