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法律

民法

みんぽう

法令番号
明治二十九年法律第八十九号
公布日
明治二十九年四月二十七日
条数
本則1402条・附則67条
第一編
第一章
第一条(基本原則)

私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

権利の濫用は、これを許さない。

民法 1 条は、私権は公共の福祉に適合し、権利行使と義務履行は信義に従い誠実に行うべきで、権利の濫用は許されないと定める基本原則である。

よくある質問

Q · 信義則って結局なんですか? 抽象的すぎてピンとこないんですが

ひとことで言えば「相手の信頼を裏切るような権利の使い方・義務の果たし方はダメ」という土台のルールです(民法1条2項)。具体的には、契約書に書いていなくても、状況次第で説明義務や安全配慮義務を生み出します。業界裏話ヒント:実務では、個別の条文で攻めきれない案件の「最後の決め手」として弁護士が温存します。最初から信義則だけで戦うと「他に根拠がないのか」と見られるので、まず具体的条文で組み立て、隙間を信義則で埋めるのがプロの順番です

Q · 権利があるのに「権利の濫用」で負けることなんて、本当にあるんですか?

あります(民法1条3項)。有名なのが宇奈月温泉事件で、ごく僅かな越境を理由に高額の買取りを迫った地主の請求が、権利濫用として退けられました。権利の存在と、その行使が許されることは別問題です。業界裏話ヒント:裁判所は権利濫用を簡単には認めません。鍵は『あなたが受ける利益』と『相手が被る損害』の極端な不均衡を数字で示すこと。この落差が大きいほど、濫用と認定される確率が跳ね上がります

Q · 契約書に書いてあることでも、本当にひっくり返せるんですか?

条件次第で可能です。信義則(1条2項)や権利濫用(1条3項)、さらに公序良俗違反(民法90条)を使えば、契約条項そのものを制限・無効化できます。とくに一方に著しく不利な条項は覆りやすい。業界裏話ヒント:ただし「不利だから無効」とは言えません。署名時の力関係(交渉力の差、情報格差)を立証できるかが分水嶺です。消費者契約なら消費者契約法10条という別の強力な武器もあるので、文脈に応じて使い分けます

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第二条(解釈の基準)

この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

民法 2 条は、民法を個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として解釈しなければならないと定める。これは裁判官への強行的な解釈準則であり、慣習に反しても個人の尊厳に沿う読み方が優先される。

よくある質問

Q · 民法2条って、実際の裁判で使われるんですか? ただの理念のお飾りでは?

お飾りではなく実務で生きている。最高裁は非嫡出子の相続分差別を違憲とした決定(最大決平成25.9.4)や再婚禁止期間の違憲判決(最大判平成27.12.16)で、個人の尊厳と両性平等の理念を解釈・違憲審査の柱に据えた。業界裏話ヒント:2条だけを単独で主張しても弱い。憲法13条・14条・24条とセットで『条文は複数に解釈でき、2条が命じる読み方はこれだ』と組み立てるのが実務の定石。

Q · 『両性の本質的平等』とあるけど、同性カップルには関係ないんですか?

文言は男女を想定して書かれたが、その根底にある『個人の尊厳』は性別を問わない普遍原理として読まれている。同性婚を巡る近年の違憲状態判決でも、個人の尊厳が中心的な論拠になった。業界裏話ヒント:『両性』の文言を狭く読むか『個人の尊厳』を広く読むかで結論が変わる。実務上、解釈が分かれている論点であり、裁判例も流動的。最新の判決動向を確認すること。

Q · 家族の中で『昔からの決まり』を持ち出されたら、どう反論すればいいですか?

『その慣習に法的拘束力はあるのか』を問い返すのが第一歩。民法92条は一定の慣習に従う余地を認めるが、それも2条と1条(公序良俗・権利濫用)の枠内に限られ、個人の尊厳や両性平等に反する慣習は法的効力を持たない。業界裏話ヒント:相手の『慣習だから』に対し『それは民法92条が認める任意規定に関する慣習か、それとも単なる家の習わしか』と切り分けると、多くの慣習論は後者として法的根拠を失う。

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第二章
第一節
第三条

私権の享有は、出生に始まる。

外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

民法 3 条は、私権の享有は出生に始まると定め、自然人が権利義務の主体となる始期を画する。外国人も法令・条約で禁止される場合を除き私権を享有する。

よくある質問

Q · 胎児って、結局いつから『生まれた』ことになるんですか?

民法の通説は『胎児が母体から全部露出した時』を出生とします(全部露出説)。ここを境に権利能力が発生します(3条1項)。ただし相続・遺贈・損害賠償の三場面だけは、生きて生まれることを条件に、さかのぼって権利を認めます(886条、965条、721条)。業界裏話ヒント:実は刑法では『一部露出した時』を出生とします。母体から頭が出た段階で殺せば殺人、まだ出ていなければ堕胎というように、同じ『出生』でも民法と刑法で基準が違う。この食い違いを知らない人は意外に多い

Q · 外国人配偶者と日本で家を買いたいのですが、名義は持てますか?

持てます。3条2項により外国人も原則として私権を享有し、不動産の所有権取得は原則自由です。制限があるのは、法令や条約で明示された一部(安全保障上重要な施設周辺の土地取得制限など)だけ。業界裏話ヒント:『外国人名義は難しい』と言う不動産業者がいますが、多くは登記実務上の住民票・印鑑証明の代替書類(本国の宣誓供述書等)の手間を指しているだけで、権利能力の問題ではありません。手続きが面倒なのと権利がないのは全く別の話

Q · 権利能力は死んだら終わると言いますが、脳死は法律上の『死』ですか?

3条は権利能力の始まり(出生)を定めますが、終わりは死亡です。脳死を一律に人の死とするわけではなく、現在は心臓死が原則。臓器移植の場面に限り、本人の意思等の要件を満たせば臓器移植法上『脳死した者の身体』を死体として扱えます。業界裏話ヒント:死亡時刻が数分前後するだけで相続関係が逆転することがあります。同じ事故で親子が亡くなった場合、どちらが先に死んだか不明なら同時死亡と推定され(32条の2)、互いに相続しない。この推定を覆せるかどうかで、遺産の流れが全く変わる

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第二節
第三条の二

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

民法 3 条の 2 は、意思表示をした時に意思能力を欠いていた者の法律行為を無効と定める。認知症や泥酔で判断力を失った状態の契約は、取消しを待たず初めから無効になる。

よくある質問

Q · 「無効」と「取消し」って、何が違うんですか?

無効は最初から効力がなく、誰でもいつでも主張でき、原則として時効がない。取消しは一応有効だが取り消せば遡って無効になるもので、成年被後見人などの取消権は追認できる時から 5 年・行為時から 20 年(民法 126 条)で消える。意思能力を欠く契約は 3 条の 2 で「無効」だ。業界裏話ヒント:ただし立証は無効の方が難しい。成年後見の審判を受けていれば 9 条で「取消し」でき、能力の立証が不要になる。だから将来に備えて後見開始を申し立てておく方が、後の紛争で圧倒的に楽になる

Q · 親が認知症と診断されています。これからの契約は全部無効にできますか?

自動ではない。3 条の 2 は「意思表示をした時」の能力を契約ごとに判断する。診断書は有力な証拠だが、契約当日にその内容を理解できる状態だったかが決め手になる。業界裏話ヒント:確実に保護したいなら家庭裁判所に後見・保佐・補助の開始を申し立てる。これで以後の一定の契約は取消しの対象になり、毎回の意思能力立証という重い負担から解放される

Q · 無効だと主張するとき、誰が証明しないといけないんですか?

無効を主張する側、つまり本人や家族が、行為時に意思能力がなかったことを立証する。診断書、介護記録、長谷川式スケールのスコア、契約内容の複雑さ、当日の言動などを総合する。業界裏話ヒント:裁判所は「契約の難易度」も見る。同じ判断力でも、日用品の購入は有効、不動産売却や連帯保証は無効とされやすい。高額で複雑な契約ほど無効が認められやすいという傾向を、証拠集めの軸にするとよい

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第三節
第四条(成年)

年齢十八歳をもって、成年とする。

民法 4 条は、年齢 18 歳をもって成年とすると定める。2022 年 4 月 1 日施行の改正で 20 歳から引き下げられ、18 歳から親の同意なく単独で契約できる。

よくある質問

Q · 18歳になったら、もう親は本当に契約を取り消せないんですか?

はい。成年に達すると親の法定代理人としての地位が消滅し、未成年者取消権(民法5条)は使えません。子が結んだ契約は、内容が不利でも親の一存では覆せない。業界裏話ヒント:ただし諦めるのは早い。子自身が消費者契約法4条の取消権やクーリングオフを使える場合が多く、悪質業者相手なら消費生活センター(局番なし188)が介入する。親が取り消すのではなく、子を主体に手続を進めるのが正解です(最新の改正状況をご確認ください)

Q · お酒もタバコも20歳からなのに、なぜ契約だけ18歳からなんですか?

成年年齢(民法4条)は「自己決定・契約の自由」を渡す線、飲酒喫煙の20歳は「健康・依存リスクからの保護」の線で、目的が別だからです。だから飲酒喫煙、公営ギャンブル、養親になる年齢などは20歳のまま据え置かれました。業界裏話ヒント:年齢の線は法律ごとにバラバラだと意識すると混乱しません。「18歳=全部大人」ではなく「契約は18、酒は20」と項目別に確認する癖をつけると損をしない

Q · 18歳で親に反対されても結婚できますか?

できます。2022年4月から婚姻適齢は男女とも18歳に統一され(民法731条)、成年なので父母の同意も不要になりました。以前は未成年の婚姻に親の同意が必要でしたが、その規定は削除されました。業界裏話ヒント:結婚に伴ってあった「婚姻による成年擬制」(旧民法753条)も、成年が18歳になった今は不要として削除済み。古い参考書には残っていることがあるので情報の日付に注意。2022年4月1日が分水嶺です(最新の改正状況をご確認ください)

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第五条(未成年者の法律行為)

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。

ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

民法 5 条は、未成年者が法定代理人の同意なくした契約を取り消せると定める。取り消せば契約は無効となるが、小遣いの範囲内や年齢を偽った場合は取り消せない。

よくある質問

Q · 子どもがスマホゲームに勝手に課金したお金、本当に取り戻せるんですか?

取り戻せる可能性が高いです。法定代理人の同意なく未成年者がした契約は取り消せ(5条2項)、取り消すと使った分も現に残る利益の範囲でしか返さなくてよい(121条の2第3項)。浪費していれば返還額はほぼゼロ、事業者が課金額の大半を返金する義務を負います。業界裏話ヒント:『返金してほしい』というお願いは定型文で断られるが、書面で『未成年者取消権を行使する』と明記すると社内の法務ルートに乗り、対応が一変する

Q · メルカリで売った相手が未成年だったら、取り消されて損するんですか?

取り消されれば代金を返す側に回ります。ただし防御策がある。相手が未成年と疑ったら催告権(20条)で親に追認を迫れ、相手が年齢を偽った(詐術、21条)なら取消権は封じられます。業界裏話ヒント:取引画面や年齢確認のチェックを保存しておくと、後で『詐術があった』と主張する有力な証拠になる。スクショ一枚が、代金を返すか守るかの分かれ目になる

Q · 18歳になった子はもう未成年者取消権を使えないんですか?

使えません。2022年4月1日から成年年齢が18歳に下がり(民法4条)、18歳は未成年者取消権を失いました。残るのは消費者契約法の取消事由(誤認・困惑など)や特定商取引法のクーリングオフだけ。業界裏話ヒント:保護が外れた18歳19歳は消費者金融や情報商材業者の格好の標的。この年齢の子を持つ親は、契約前に必ず相談させる約束が最大の防御策です(最新の改正状況をご確認ください)

Q · お年玉やお小遣いで買った物まで親が取り消せるんですか?

原則取り消せません。法定代理人が目的を定めて処分を許した財産、たとえば『これで参考書を買いなさい』と渡した金は、その範囲なら未成年者が自由に使え、後から取り消せない(5条3項)。お小遣いのように目的を定めず渡した金も同じ。業界裏話ヒント:争点は『どこまでが許された処分か』。十万円のゲーム課金を『お小遣いの範囲』と言い張るのは無理がある。日常の小遣いと、それを大きく超える高額契約は別物として扱われる

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第六条(未成年者の営業の許可)

一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

民法6条は、法定代理人に一種または数種の営業を許された未成年者が、その営業に関して成年者と同一の行為能力を有すると定める。許可の範囲外の行為は取り消せる。

よくある質問

Q · 親が「商売していいよ」と口で言っただけでも、6 条の許可になりますか?

なります。6 条は許可の方式を限定しておらず、口頭でも黙示でも許可は成立しえます。ただし問題は後の立証です。許可の有無や範囲が争われたとき、口約束では証明が難しい。業界裏話ヒント:商法 5 条は未成年者が営業を行うとき登記を義務づけており、この登記があれば許可の存在と範囲を第三者に明確に示せる。本格的に事業をやらせるなら、口頭で済ませず登記しておくことが、子と取引相手双方を守る盾になる

Q · 許可された営業以外のことを未成年者がやったら、その契約はどうなりますか?

許可は「許された一種または数種の営業」の範囲にしか及ばないため、範囲外の行為は通常どおり未成年者の法律行為として法定代理人が取り消せます(民法 5 条 2 項)。業界裏話ヒント:飲食店を営む許可を受けた未成年者が、その資金で投資商品や連帯保証契約を結んでも、それは営業の範囲外と評価されやすく取消しの対象になる。取引相手は「営業の許可がある」だけで安心せず、その取引が許可された営業の通常の範囲内かを見極める必要がある

Q · 一度許可した営業を、親はいつでも自由に取り消せるんですか?

完全に自由ではありません。6 条 2 項は「その営業に堪えることができない事由があるとき」に限り、しかも親族編の規定(民法 823 条 2 項など)に従って取消し・制限ができると定めます。気分次第の撤回は認められません。業界裏話ヒント:取消しは将来に向かってのみ効力を持つため、取消し前に営業の範囲内で結ばれた契約は有効なまま残る。だから親が取消しを考えるなら、子がさらに契約を積み増す前の早い段階で動くほど、後の整理が軽く済む

Q · 成年年齢が 18 歳に下がったと聞きましたが、6 条はもう関係なくなったのでは?

関係はむしろ整理されただけで消えていません。2022 年 4 月施行の改正で成年は 18 歳になったため、18 歳以上は当然に完全な行為能力を持ちます。6 条が意味を持つのは、なお未成年である 18 歳未満が営業する場面です。業界裏話ヒント:18 歳成年化で、かつての「婚姻による成年擬制」(旧 753 条)は削除された。今や 18 歳未満の事業者の能力を底上げする数少ない条文が 6 条であり、若年起業が増えるほど実務での出番は増えている(最新の改正状況をご確認ください)

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第七条(後見開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

民法 7 条は、事理を弁識する能力を欠く常況にある者について、家庭裁判所が請求により後見開始の審判をすると定める。審判により成年後見人が選任され財産を管理する。

よくある質問

Q · 親の口座が凍結されてしまいました。後見をつけるしか方法はないんですか?

判断能力をすでに失っている場合、正規には後見開始の審判(民法 7 条)で成年後見人を立てるしか口座を動かす方法はありません。家族でも代理権はないからです。業界裏話ヒント:これを避ける唯一の方法は、本人が元気なうちの「任意後見契約」か「家族信託」です。判断能力が落ちてからでは手遅れで、選択肢は法定後見一択になります。親に少しでも認知症の兆候が出る前に動けた家族と、凍結されてから慌てる家族では、その後の自由度が天と地ほど違う

Q · 後見人って、自分たち家族がなれるんですよね?

家族が候補者として申し立てることはできますが、最終的に誰を選ぶかは家庭裁判所の職権です(民法 843 条)。財産が多い、親族間に対立がある、といった場合は弁護士や司法書士などの専門職後見人が選ばれることが多くなっています。業界裏話ヒント:専門職後見人の報酬は本人の財産から月額二万円から六万円程度が、本人が亡くなるまで毎年かかり続けます。年間で数十万円、十年続けば数百万円。家族が後見人になりたいなら、後見監督人をつける案を自分から提示すると認められやすくなる

Q · 一度後見を始めたら、本人が少し回復したらやめられますか?

原則として、本人が判断能力を回復し「事理を弁識する能力を欠く常況」でなくなったと家庭裁判所が認めない限り、後見開始の審判を取り消せません(民法 10 条)。途中で家族の都合だけではやめられない、重い制度です。業界裏話ヒント:後見が始まると本人は会社の取締役や一部資格を失うなど、財産管理以外の不利益も生じます。本人の状態が後見ほど重くないなら、より制限の緩い保佐(11 条)や補助(15 条)で足りないか、申立て前に専門家と必ず比較検討する

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第八条(成年被後見人及び成年後見人)

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

民法 8 条は、後見開始の審判を受けた者を成年被後見人とし、これに成年後見人を付すると定める。判断能力を欠く本人に法定代理人を付け、財産と権利を守る制度の入口である。

よくある質問

Q · 親が認知症になったら、子の私が自動で後見人になれるんですか?

なれません。後見人を選ぶのは家庭裁判所です(民法843条)。子が申立人になり自分を候補者に挙げることはできますが、財産が多い、親族間で意見が対立しているといった事情があると、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選ばれることがあります。業界裏話ヒント:候補者として家族を挙げても専門職が選ばれやすいのが近年の傾向です。家族が確実に関与したいなら、本人が元気なうちに任意後見契約を公正証書で結び、後見人を本人自身に指名してもらっておくのが実務上いちばん確実な手です

Q · 後見人を付けたら、親は本当に何もできなくなるんですか?

成年被後見人がした契約は原則として後から取り消せます(民法9条)が、食料品や日用品の購入など日常生活に関する行為は取り消せず、有効です(同条但書)。本人の意思は可能な限り尊重される建付けです(民法858条)。業界裏話ヒント:能力の低下が比較的軽い段階なら、後見ではなく保佐(民法11条)や補助(民法15条)という軽い類型があります。後見は最も重い制限なので、本人の自由を守る観点からは、能力に見合った一番軽い類型を選ぶのが筋です。窓口では一律に後見を勧められがちなので、自分から保佐・補助の可否を尋ねるとよい

Q · 後見が始まる前に、親の不動産を売ったり生前贈与したりするのはありですか?

本人に判断能力があるうちなら本人の意思で可能です。ただし後見開始の審判が出ると、成年後見人は本人の財産を守る義務を負うため、本人に利益のない相続税対策の贈与などは原則できなくなります。さらに居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。業界裏話ヒント:相続対策は本人が元気なうちが勝負で、判断能力が落ちた瞬間に多くの選択肢が凍結されます。後見は本人保護が最優先で、相続人の節税都合は基本的に通らないと心得ておく

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第九条(成年被後見人の法律行為)

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

民法 9 条は、成年被後見人の法律行為は取り消せると定める。相手が善意でも取消しは有効だが、日用品の購入など日常生活に関する行為は取消しの対象外となる。

よくある質問

Q · 認知症の親が買わされた高額な羽毛布団、全額返してもらえますか?

成年後見が開始していれば民法 9 条で契約を取り消せ、支払った代金は原状回復(121 条の 2)として返還を請求できます。相手が事情を知らなかったとしても取消しは有効です。業界裏話ヒント:訪問販売なら特定商取引法のクーリングオフ(原則 8 日間)も併用できますが、その期間を過ぎても 9 条の取消権は生きています。後見を理由にする方が期間の縛りがなく強力なので、両方の根拠を並べて通知すると相手はほぼ争えません。

Q · 成年後見の申立てって費用も手間もかかりますよね、それでもやる価値はありますか?

一度審判が下りれば、その後に本人が結ぶ不当な契約をすべて 9 条で取り消せる継続的な盾になります(民法 9 条、120 条)。単発の被害回復だけでなく、将来の暴利商法を丸ごと無力化できる点が大きい。業界裏話ヒント:後見は財産管理が硬直化する面もあるため、判断能力の程度によっては「保佐」(13 条)や「補助」(17 条)の方が本人の自律を残せて適切なことがあります。一律に後見を選ばず、医師の診断と専門家相談で類型を見極めるのが実務の勘所です。

Q · 後見が始まる前に親が結んでしまった契約も、9 条で取り消せますか?

残念ながら 9 条は後見開始の審判が下りた後の法律行為にしか使えず、審判前の契約には適用されません。ただし詐欺・強迫があれば民法 96 条、消費者契約なら消費者契約法、暴利行為なら公序良俗違反(民法 90 条)で争う道があります。業界裏話ヒント:後見の審判は申立てから確定まで通常 1 から 2 か月かかります。被害が続いている場合、その間に「審判前の保全処分」で財産管理者を選任してもらえることがあり、被害の拡大を止められる。急ぐなら申立てと同時に保全を求めるのが定石です。

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第十条(後見開始の審判の取消し)

第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

民法 10 条は、後見開始の原因が消滅したとき、家庭裁判所が本人や四親等内の親族らの請求により後見開始の審判を取り消さなければならないと定める。取消しは職権では行われず請求が必要となる。

よくある質問

Q · 症状が良くなったら、後見は自動で終わるんですか?

終わりません。民法10条は請求主義で、家庭裁判所が職権で取り消すことはなく、本人や親族らの請求が必要です。回復しても請求がなければ成年被後見人のまま。業界裏話ヒント:多くの家族が「もう大丈夫だから」と安心して放置しますが、その間も本人は一部の資格制限や取引上の制約を受け続けます。回復が見えたら、待つのではなく主治医の診断書を持って家裁へ動くのが鉄則です

Q · 完全に治らないと後見は外せませんか?

完全回復でなくても外せます。能力が部分的に回復すれば、後見を取り消して、より制限の軽い保佐や補助へ移行できます(民法19条が後見・保佐・補助の相互移行を定めています)。業界裏話ヒント:「後見か、何もないか」の二択だと思い込んでいる人がほとんどですが、実際は後見、保佐、補助の三段階を能力に応じて上下に移動できます。重い後見のまま放置するより、改善が見えた時点で軽い類型へ移すほど、本人が自分で決められる範囲が広がります

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第十一条(保佐開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。

ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

民法11条は、事理を弁識する能力が著しく不十分な者について、家庭裁判所が保佐開始の審判をできると定める。重要な財産行為には保佐人の同意が必要となる。

よくある質問

Q · 後見と保佐と補助って、何が違うんですか?

判断能力の程度の違いです。後見(7 条)は『欠く常況』つまりほぼ常に判断できない人、保佐(11 条)は『著しく不十分』、補助(15 条)は『不十分』。下に行くほど本人にできることが多く残ります。業界裏話ヒント:家族はつい『手厚い後見にしておけば安心』と考えがちですが、後見は本人の行為能力を最も広く奪うため、まだできることまで取り上げてしまう。医師の鑑定と本人の実態に合った段階を選ぶことが、本人の尊厳を守る要です

Q · 保佐人には誰がなれるんですか? 自分(子)がなれますか?

家族がなることも、弁護士や司法書士などの専門職がなることもあります。家庭裁判所が本人の利益を考えて選任します。財産が多い、親族間で対立がある、本人と利益相反があるといった場合は専門職が選ばれやすい。業界裏話ヒント:『自分が保佐人になって親の財産を管理したい』という動機が、かえって選任で不利に働くことがある。他の相続人が独り占めを警戒すると、中立な専門職がつき、月数万円の報酬が本人の財産から継続的に出ていきます

Q · 一度保佐が始まったら、もう元には戻せないんですか?

戻せます。本人の判断能力が回復すれば、申立てによって家庭裁判所が保佐開始の審判を取り消します(民法 14 条)。逆に悪化すれば後見へ移行することもある。固定ではなく、本人の状態に合わせて変えられる制度です。業界裏話ヒント:実務では一度始まった保佐や後見が本人の死亡まで続くことが多く、『軽くなったら見直す』運用は徹底されていない。状態が改善したと感じたら、家族の側から積極的に取消しや類型変更を申し立てないと、過剰な制限が放置されがちです

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第十二条(被保佐人及び保佐人)

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

民法 12 条は、保佐開始の審判を受けた判断能力が著しく不十分な者を被保佐人とし、保佐人を付すると定める。保佐人は重要な行為について同意権と取消権を持つ。

よくある質問

Q · 保佐人がつくと、親はもう自分で買い物もできなくなるんですか?

いいえ。日用品の購入その他日常生活に関する行為は被保佐人が自由にでき、これは取り消せません。保佐人の同意が要るのは、借財・保証・不動産の処分・訴訟・相続の承認放棄など、民法 13 条が列挙する重要な行為だけです。業界裏話ヒント:この「日常生活行為」の線引きは現場で揉めやすく、コンビニの買い物は当然 OK でも、月々の高額サブスクや投資契約は同意対象になりうる。日常か否かは金額と性質で判断されるので、グレーな取引は同意を取っておくほうが安全

Q · 保佐人になれば、親の代わりに銀行で手続きしたり、不動産を売ったりできますか?

原則できません。保佐人が当然持つのは同意権と取消権だけで、代理して手続きする権限は別物です。代理したいなら代理権付与の審判(876 条の 4)を申し立て、しかも本人の同意が必要です。業界裏話ヒント:保佐開始の申立てと代理権付与の申立ては同時に出せる。後から代理権だけ取りに行くと鑑定や審理をもう一度やり直す羽目になり、時間も費用も二重にかかる。最初に必要な代理権の範囲を弁護士や司法書士と詰めておくのが鉄則

Q · 一度保佐が始まったら、もう元には戻せないんですか?

判断能力が回復すれば、本人や親族の申立てにより家庭裁判所の審判で保佐を取り消せます(民法 14 条)。ただし回復を示す医師の判断が必要で、実務上は本人が亡くなるまで継続するケースが大半です。業界裏話ヒント:保佐が続く間、専門職が保佐人なら家庭裁判所が定める報酬が本人の財産から毎年支払われ続ける。一度始めると簡単には止まらない制度なので、軽度なら保佐ではなく補助、あるいは任意後見で足りないか、開始前に必ず比較検討する

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第十三条(保佐人の同意を要する行為等)

被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。

ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

元本を領収し、又は利用すること。

借財又は保証をすること。

不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

訴訟行為をすること。

贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

新築、改築、増築又は大修繕をすること。

第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。

ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

民法 13 条は、保佐開始の審判を受けた被保佐人が借財・保証・不動産処分・相続の承認や放棄などの重要行為をするには保佐人の同意を要すると定め、同意のない行為は取り消せる。

よくある質問

Q · 保佐と後見って、何がどう違うんですか?

判断能力の程度で分かれる。後見(7 条から 9 条)は判断能力を欠く常況にある人が対象で、保佐人ならぬ成年後見人が原則すべての法律行為を取り消せる。保佐(11 条から 13 条)は判断能力が著しく不十分な人が対象で、13 条が列挙した重要行為についてだけ同意が要る。業界裏話ヒント:医師の診断書しだいでどちらになるか変わるため、申立て前に主治医とよく相談すること。後見にすると本人の選挙権以外の自己決定がほぼ奪われるので、本人の能力が残っているなら保佐や補助で足りる場合が多い

Q · 日用品の買い物まで、いちいち保佐人の同意がいるんですか?

いらない。13 条 1 項ただし書が 9 条ただし書を引いており、日常生活に関する行為は同意不要で本人が自由にできる。同意が必要なのは借金・保証・不動産売買・相続の承認放棄など、生活の根幹を揺るがす重い行為に限られる。業界裏話ヒント:実務では家庭裁判所が 13 条 2 項の審判で同意必要行為を追加できる。預貯金の払戻しに上限を設けるなど、本人の状況に合わせて網の細かさを調整できることは、あまり知られていない

Q · 保佐人が必要な同意をしてくれないとき、打つ手はありますか?

ある。保佐人が本人の利益を害するおそれがないのに同意を拒むときは、本人が家庭裁判所に申し立てれば、同意に代わる許可を出してもらえる(13 条 3 項)。保佐人の一存で本人の人生が止められない仕組みになっている。業界裏話ヒント:保佐人が親族で感情的に対立しているケースでこの 3 項が効く。許可の申立てと同時に、保佐人の交代(876 条の 2、解任・辞任)を視野に入れると、根本的な膠着が解ける場合がある

Q · 業者が「被保佐人だなんて知らなかった」と言えば、取消はできないんですか?

できる。制限行為能力を理由とする取消は、相手方が善意か悪意かを問わない。知らなかったという言い分は通らない。ただし本人が能力者だと偽る詐術を用いたときだけは、取消が封じられる(21 条)。業界裏話ヒント:何をもって詐術とするかで実務は割れている。単に「成年です」と答えた程度では詐術と認められにくく、登記事項証明書を偽造するような積極的な工作が必要とされる傾向がある。相手が詐術を主張してきても、簡単には認められないと知っておくべきだ

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第十四条(保佐開始の審判等の取消し)

第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

民法 14 条は、保佐の原因が消滅したとき、家庭裁判所が請求により保佐開始の審判を取り消さなければならないと定める。回復しても申立てがなければ保佐は続く。

よくある質問

Q · 親の認知症がよくなったのに、保佐ってほっておけば自然に消えないんですか?

消えません。民法14条1項は、保佐の原因が消滅しても、誰かが家庭裁判所に取消しを申し立てて審判が出るまで保佐が続くことを前提にしています。回復は事実、取消しは手続きで別物です。業界裏話ヒント:実務では回復したのに取消しを申し立てず放置するケースが非常に多い。本人は回復後も重要な契約を自由にできず、その間の単独行為は取り消されうる不安定な状態に置かれます。回復に気づいたら早めに動くのが鉄則です

Q · 保佐を外したいけど、保佐人になっている兄が「まだ早い」と反対しています。無理ですか?

無理ではありません。民法14条1項の請求権者には本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などが含まれ、保佐人の同意は要件ではありません。本人自身でも単独で申し立てられます。業界裏話ヒント:保佐人が財産管理の主導権を手放したくないために取消しに消極的なケースは現実にあります。最終判断は家庭裁判所が診断書や鑑定で行うので、保佐人が反対しても、回復が客観的に裏付けられれば取消しは認められます

Q · 全部は無理でも、一部だけ自由を取り戻すことってできますか?

できます。民法14条2項は、13条2項で上乗せした同意が必要な行為の追加部分について、全部または一部を取り消せると定めています。全部取消しの要件に届かなくても、回復の程度に応じた段階的な自由回復が可能です。業界裏話ヒント:この2項の部分取消しは知名度が低く、申立て段階で見落とされがちです。全部取消しは無理と言われても、追加した同意必要行為だけを外す選択肢があるか、必ず確認すべきです

Q · 取消しが認められたら、戸籍に「保佐がついていた」記録は残りますか?

残りません。成年後見制度は戸籍ではなく後見登記で管理され、取消し審判が確定すると登記記録が更新され、登記事項証明書は記録なしになります。業界裏話ヒント:多くの人が戸籍に汚点が残ると心配して申立てをためらいますが、これは旧制度(禁治産、準禁治産は戸籍記載)の名残の誤解です。2000年の成年後見制度では戸籍に一切載りません。この誤解だけで取消しを諦めるのは大きな損失です

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第十五条(補助開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。

ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

民法 15 条は、事理弁識能力が不十分な者について家庭裁判所が補助開始の審判をできると定める。成年後見の三類型で最も軽く、本人以外の請求には本人の同意が必要となる。

よくある質問

Q · 後見、保佐、補助って、結局なにが違うんですか?

本人の判断能力の程度で分かれます。判断力を欠く常況なら後見(7条)、著しく不十分なら保佐(11条)、不十分なら補助(15条)です。後見が一番重く本人の自由が大きく制限され、補助が一番軽く本人の自己決定が多く残ります。業界裏話ヒント:実務では、家族が「念のため一番しっかりした後見を」と希望しがちですが、これは逆効果になることがあります。後見になると本人は選挙権以外でも日常の多くの法律行為を単独でできなくなる。本人にまだ意思がある段階なら、補助・保佐で必要な部分だけ手当てする方が、本人の尊厳も実利も守れます

Q · 本人が嫌がっているのに、家族が無理やり補助をつけられますか?

本人以外が申し立てる場合、本人の同意がなければ補助開始の審判はできません(2項)。これは後見・保佐にはない、補助だけの強い縛りです。業界裏話ヒント:この同意要件は「本人にまだ自分の意思を表明する能力が残っている」ことの裏返しでもあります。逆に、本人が同意の意味すら理解できないほど能力が落ちているなら、それはもう補助の対象ではなく保佐や後見の領域。同意を取れるかどうかが、どの制度を選ぶべきかの実務的な判断材料になります

Q · 補助人をつけたら、もう自分で買い物もできなくなるんですか?

いいえ。補助では、家庭裁判所が同意権を付けた「特定の行為」だけが補助人の同意を要するようになり、それ以外は本人が自由にできます(17条)。日常の買い物まで縛られることは原則ありません。業界裏話ヒント:同意権の対象は申立てで個別に決めます。だからこそ「何を守りたいか」を最初に絞り込むのが肝心。高額な借金や不動産取引だけに同意権を付け、日常生活は本人に委ねる、という設計ができます。範囲を広げすぎると本人の自由を不必要に奪うので、家庭裁判所も必要最小限を求めます

Q · 一度始めた補助は、ずっと続くんですか?

本人の判断能力が回復するなど補助の原因がなくなれば、家庭裁判所は補助開始の審判を取り消します(18条)。永久に固定されるものではありません。業界裏話ヒント:実際には、補助で始めても症状が進行して保佐・後見へ移行するケースが多いのが現実です。逆方向の回復取消しは少数。だからこそ最初に補助で入っておくと、状態に応じて段階を上げやすい。いきなり後見から始めると、軽い段階に戻すのは手続上もハードルが高くなります

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第十六条(被補助人及び補助人)

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

民法 16 条は、補助開始の審判を受けた者を被補助人とし補助人を付すると定める。成年後見の最も軽い類型で、本人の同意が開始要件となる。

よくある質問

Q · 補助と後見と保佐、結局どう違うんですか?

判断能力の低下の程度で分かれます。日常的に能力を欠く常況なら後見(7条)、著しく不十分なら保佐(11条)、不十分なら補助(15条、16条)です。補助が最も軽く、本人の自由が最も多く残ります。業界裏話ヒント:実は補助だけ本人の同意が法律上の必須要件(15条2項)。後見・保佐は本人が反対しても親族の申立てで始められるが、補助は本人が首を縦に振らなければ一歩も進まない。だから「本人がまだ判断できるうち」が補助を選べる唯一の窓です。

Q · 補助人がつくと、親はもう自分で買い物もできなくなるんですか?

いいえ。補助では、補助人の同意が必要な行為は審判で特定された範囲だけです(17条)。それ以外は本人が自由に契約できます。後見のように包括的に制限されるわけではありません。業界裏話ヒント:補助人に付けられる同意権の対象は、保佐人の同意権の範囲(13条1項の列挙行為)の一部に限られます。つまり補助は「保佐の同意権メニューから必要な品だけ選ぶ」イメージ。フルコースではなくアラカルトで、申立て時にどの行為を選ぶかで本人の自由度が決まります。

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第十七条(補助人の同意を要する旨の審判等)

家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。

ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。

本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

民法17条は、家庭裁判所が特定の法律行為に補助人の同意権を付与できると定める。同意を欠く行為は取り消せるが、対象は13条1項の重要行為の一部に限られる。

よくある質問

Q · 後見と保佐と補助って、結局どう違うんですか?

判断能力の低下の程度で三段階に分かれます。後見は『常に判断できない』ほぼ全面サポート、保佐は『著しく不十分』で重要行為に同意権、補助は『不十分』で特定行為だけに同意権(民法7条・11条・15条)。補助が最も軽く、本人の自由が一番残ります。業界裏話ヒント:申立て時にどの類型を選ぶかは『今の能力』で決まりますが、能力は下がっていくもの。司法書士や専門家は、将来の悪化を見越して『補助で入って後で類型変更』という設計をよく使います。最初から重い類型を選ぶと本人が強く拒むため、入口は軽くするのが定石

Q · 補助人をつけたら、親の年金や預金まで勝手に使われませんか?

17条の補助人が持つのは『同意権』だけで、本人のお金を動かす『代理権』は当然にはついてきません。代理権を持たせるには別の審判(876条の9)が必要です。同意権だけの補助人は、本人がやろうとする行為にOKを出せるだけ。業界裏話ヒント:補助人の財産管理を監視するため、家裁は『補助監督人』を選任できます(16条)。親族が補助人になる場合、お金のトラブルを避けたいなら、あえて監督人を立てて透明性を確保する手があります。これは申立て時に希望を伝えられる

Q · 本人が『補助なんていらない』と言ったら、家族は手出しできないんですか?

本人以外が補助開始を申し立てる場合、本人の同意が必要です(17条2項)。本人が断固拒否すれば、家族が無理に補助をつけることはできません。これは本人の自己決定を尊重する仕組みです。業界裏話ヒント:拒否される最大の原因は『財産を取られる』という誤解。同意権だけの補助なら本人の自由はほぼ残ると丁寧に説明すると同意を得やすい。それでも難しく、かつ実際に被害が深刻なら、能力低下が進んだ段階で本人同意が不要な保佐・後見へ切り替える判断もありえます

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第十八条(補助開始の審判等の取消し)

第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

民法18条は、判断能力の回復など補助開始の原因が消滅したとき、家庭裁判所が一定の請求権者の申立てにより補助開始の審判を取り消さなければならないと定める。

よくある質問

Q · 親の認知症がよくなったら、補助って自動で終わるんですか?

終わりません。民法18条1項は、家庭裁判所が取消しの審判をして初めて補助が終わると定めています。本人、配偶者、四親等内の親族、補助人などが申し立てる必要があります。業界裏話ヒント:回復しても申立てを忘れて補助が何年も続いている例は珍しくありません。本人が亡くなれば補助は当然に終了しますが、生きているうちに回復したなら、放置するほど本人の行為能力の制限が無駄に続く。回復を感じたら早めに主治医の診断書を取りに行くのが分かれ道です。

Q · 補助人に頼んでいた同意権も代理権も、もういらないんですけど、全部やめられますか?

できます。民法18条3項により、17条1項の同意権の審判と876条の9第1項の代理権の審判を全部取り消すと、補助開始の審判ごと取り消されます。補助は同意権か代理権のどちらか一つは必ず必要な制度だからです。業界裏話ヒント:一部だけ取り消すつもりが結果的に全部になると、補助そのものが消えます。逆に補助を残したいなら、最低一つの権限は残す設計にする。司法書士はこの最後の一権限を意識して取消しの範囲を組み立てます。

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第十九条(審判相互の関係)

後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。

前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

民法 19 条は、後見開始の審判をする際に本人が被保佐人・被補助人なら、家庭裁判所が職権で保佐・補助の審判を取り消すと定める。本人が複数の保護類型に重複することを防ぐ規定。

よくある質問

Q · 保佐から後見に変えたいんですが、今の保佐は自分で取り消さないとダメですか?

いいえ。民法 19 条 1 項で、家庭裁判所が後見開始の審判をするとき、保佐開始の審判を職権で取り消さなければなりません。あなたは後見開始の申立てをするだけで足ります。業界裏話ヒント。申立書に「現在保佐中」と明記しておくと家裁の処理が速い。司法書士は最初から一本化で申し立て、依頼者に余計な手続費用をかけさせない

Q · 後見の手続き中に本人が変な契約をしちゃったら、もう取り消せないんですか?

取り消せます。後見開始の審判が確定するまではまだ保佐(または補助)が有効なので、保佐人の同意権や取消権(民法 13 条)がそのまま使えます。19 条で旧審判が消えるのは新審判の効力発生時なので、はざま期も保護は途切れません。業界裏話ヒント。確定前に処理すべき契約は、主体が後見人に替わる前の今のうちに動くのが鉄則です

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第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

民法 20 条は、制限行為能力者と取引した相手方に催告権を与え、1 か月以上の期間内に追認するか確答するよう求められると定める。沈黙の効果は催告の相手により追認とも取消ともなる。

よくある質問

Q · 見た目が大人っぽい未成年に売ってしまいました。もう取り消されるのを待つしかないですか?

待つ必要はありません。民法 20 条で、あなたから法定代理人(親など)に「1 か月以上の期間内に契約を認めるか返事をください」と催告できます。返事がなければ追認したものとみなされ、契約は確定します。業界裏話ヒント:相手が「詐術」(自分は成年だと積極的にだました)を用いていた場合は、民法 21 条でそもそも取消権自体が消える。年齢確認をしたか、嘘をつかれたかを最初に詰めると、催告すら不要で契約を守れることがある。

Q · 催告したのに 1 か月返事が来ません。これって契約が成立したってことでいいんですか?

誰に催告したかで結論が逆です。本人(成年到達後)や法定代理人への催告なら沈黙イコール追認で契約成立(20 条 1 項・2 項)。しかし被保佐人・被補助人本人への催告なら沈黙イコール取消で契約は消えます(20 条 4 項)。業界裏話ヒント:弁護士は催告書を作る前に必ず相手は誰でどの類型かを確定させる。被保佐人本人に催告して沈黙を喜んでいたら実は契約が消えていた、という取り違えが実務で起きる。聞く相手を選ぶのが先、催告は後だ。

Q · 口頭で「早く決めて」と言ったのも催告になりますか?

理論上は催告になりえますが、1 か月以上の期間を定めたことと、いつ催告したかを後で証明できなければ、みなし効果(追認・取消)の起算点が争われます。業界裏話ヒント:実務では必ず内容証明郵便を使う。期間・日付・内容が公的に記録され、相手が「そんな催告は受けていない」と言えなくなる。たった数百円の郵便費用が、1 か月後の数十万円の契約の運命を確定させる。

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第二十一条(制限行為能力者の詐術)

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

民法 21 条は、制限行為能力者が行為能力者であると信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消せないと定める。詐術により取消権を自ら失う規定である。

よくある質問

Q · 未成年の息子がオンラインゲームに勝手に課金しました。取り消して返金してもらえますか?

原則として未成年者の契約は取り消せます(民法 5 条)。ただし課金時に年齢確認で成人の生年月日を入力していた場合、21 条の詐術が問題になります。もっとも単に生年月日を選んだだけでは詐術にあたらないとされる傾向があり、返金交渉の余地は十分あります。業界裏話ヒント:ゲーム会社は詐術を盾に断ってくることがあるが、子どもが操作していた経緯(端末の利用時間、課金パターン)を示すと誠実な会社は返金に応じる。消費生活センター(188)を間に入れると交渉が一気に進むことが多い

Q · 年齢を聞かれて『20 歳です』と口で言っただけでも詐術になりますか?

なりえます。積極的に成人だと述べて相手を誤信させれば詐術と評価されます。一方、何も聞かれず黙っていただけなら原則として詐術にあたりません(最判昭和 44.2.13)。境界は「相手を積極的に誤信させたか」です。業界裏話ヒント:実務では『口頭でこう言った』は水掛け論になりやすいので、店側は年齢確認を書面やチェックボックスで残す。逆に消費者側は、口頭のやりとりしか証拠がなければ詐術の立証責任は相手側にあることを忘れない、立証できなければ取消しは生きる

Q · 成年後見を受けている家族が嘘をついて契約してしまいました。これも取り消せませんか?

ここは実務上、解釈が分かれている論点です。21 条が成年被後見人にも適用されるかについて、判断力を欠く人がそもそも詐術を構成できるのかという観点から議論があります。適用を否定する見解に立てば、詐術があっても取消しは可能です。業界裏話ヒント:成年被後見人のケースは未成年者と同列に語れない。後見開始の審判を受けているという客観的事実があるため、弁護士は『そもそも詐術が成立する判断能力があったか』という土俵で争う。一般の法律相談では見落とされがちな反論軸

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第四節
第二十二条(住所)

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

民法 22 条は、各人の生活の本拠をその者の住所と定める。住所は住民票の所在地ではなく、生活の実態が客観的にどこにあるかで判断される。

よくある質問

Q · 住民票を移していなければ、住所は前のままということでいいんですか?

いいえ。民法上の住所は「生活の本拠」が実際にどこにあるかで決まり、住民票の記載は一つの資料にすぎません(民法22条)。住民票が東京でも、暮らしの中心が大阪なら、裁判の管轄や課税の判断で住所が大阪とされることがあります。業界裏話ヒント:住民票上の住所は事実上の推定を働かせますが、税務署も裁判所も、生活実態の証拠が揃えば住民票を覆します。逆に、住民票だけ動かして実態が伴わない住所移転は、税務調査で簡単に見破られます

Q · 海外に住所を移せば、日本の相続税や贈与税はかからなくなるんですか?

形式だけ移しても効きません。生活の本拠が客観的に海外にあると認められて初めて意味を持ちます(民法22条、相続税法・所得税法の住所も同義)。最高裁は税回避の目的があっても、客観的事実で住所を判断するとしました(武富士事件、最判平成23年)。業界裏話ヒント:その判決で納税者は約1300億円の課税を免れましたが、勝因は目的ではなく、香港での生活実態が分厚く立証された点です。なお、その後の法改正で国外移住による相続税回避は大幅に塞がれているので、最新の改正状況をご確認ください

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第二十三条(居所)

住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。

日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。

ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

民法 23 条は、住所が知れない場合に居所を住所とみなし、日本に住所がない者は日本国内の居所を住所とみなすと定める。ただし準拠法上その者の住所地法によるべき場合は除かれる。

よくある質問

Q · 海外に住んでいる人を、日本の裁判所で訴えることはできますか?

その人が日本に居所(一時的にでも現に住んでいる場所)を持っていれば、23 条 2 項により居所を住所とみなし、日本の裁判所の管轄が認められます。日本人か外国人かは問いません。業界裏話ヒント:完全に日本に拠点がない相手だと、外国での送達や国際裁判管轄の壁にぶつかり訴訟コストが跳ね上がる。帰国中や出張中で『日本に居所がある今』が、提訴のタイミングとして決定的になることがある

Q · 住民票を移していないと、何か法律上まずいことがありますか?

住民基本台帳法上の届出義務違反(過料)は別として、民法上の住所は住民票ではなく生活実態で判断されます(民法 22 条)。住民票と実態がずれていると、相手があなたの実際の居所を住所と主張し、想定外の場所で訴えを起こせます。業界裏話ヒント:債権者は住民票上の住所に送達できなくても、勤務先や実際の居所を突き止めれば訴訟を起動できる。『住民票を動かさなければ逃げ切れる』という発想は、居所みなしの前では通用しない

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第二十四条(仮住所)

ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

民法 24 条は、ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては仮住所を住所とみなすと定める。当事者の選定(合意)が要件で、生活の本拠は変えずに済む。

よくある質問

Q · 引っ越しのときに書く住所と何が違うんですか?

住民票の住所は行政上の生活本拠ですが、仮住所(民法24条)は特定の取引だけのために選ぶ私法上の住所です。生活の本拠は動かさず、その契約に限って別の場所を住所とみなせ、義務履行地(484条)や裁判管轄(民訴4条・5条)に効きます。業界裏話ヒント:住民票を動かさず仮住所を一行入れるだけで、生活実態は変えずに法的効果だけを狙える。これが仮住所の妙味で、知って使う人は少ない

Q · 相手が勝手に仮住所を書いたら、それで縛られるんですか?

いいえ。仮住所は当事者の『選定』、つまり合意が前提です(民法24条)。一方が勝手に書いただけでは効力は生じず、契約書に明記しあなたが了解した形でなければ住所のみなしは働きません。業界裏話ヒント:約款に紛れた仮住所的な条項は、定型約款の組入要件(民法548条の2)や消費者契約法10条で覆せる余地がある。『同意』を押したから諦める必要はなく、不当に不利なら争える

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第五節
第二十五条(不在者の財産の管理)

従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

民法 25 条は、行方不明者(不在者)が財産管理人を置かないとき、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が不在者財産管理人の選任など財産管理に必要な処分を命じられると定める。

よくある質問

Q · 不在者財産管理人って、選んでもらったら自由に家や土地を売れるんですか?

選任されただけでは売れません。管理人の権限は保存・利用・改良の範囲に限られ、不動産の売却のような処分行為には家庭裁判所の権限外行為許可(民法 28 条)が別途必要です。許可を得るには『売却が不在者本人の利益に適う』理由を示さねばなりません。業界裏話ヒント:実務では、売却代金を本人のために保管する前提でないと許可が下りにくい。『他の相続人が現金化を急いでいるから』という他人都合だけでは弱く、本人の利益(管理費用の捻出、財産価値の維持)に結びつけて申し立てるのがコツです

Q · 申立てにお金ってどれくらいかかるんですか?

収入印紙 800 円と連絡用の郵便切手のほか、最大の負担は予納金です。管理人(特に弁護士が選ばれた場合)の報酬や管理費用に充てるため、数十万円から事案によっては 100 万円前後を前払いで求められることがあります。業界裏話ヒント:予納金は不在者本人に十分な財産があれば最終的にそこから精算され、戻ることもある。逆に本人の財産がほぼない案件では申立人の持ち出しになりがち。申立て前に『不在者にどれだけ財産があるか』を把握しておくと、予納金が返るか持ち出しかの見通しが立ちます(最新の運用は管轄の家庭裁判所にご確認ください)

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第二十六条(管理人の改任)

不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

民法 26 条は、不在者が置いた財産管理人について、その生死が明らかでないとき、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求で管理人を改任できると定める。

よくある質問

Q · 本人が頼んだ管理人を、勝手に変えていいんですか?

生死不明という条件下であれば、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求で改任できます(民法26条)。本人の委任があっても、生死不明では本人の意思を確認しようがなく、財産の保護が優先されるからです。業界裏話ヒント:改任の前提として、まず管理人に職務違反や財産毀損などの事実があることを資料で示すと家裁が動きやすい。「気に入らない」では通らず、客観的な不適格事由を組み立てられるかが分かれ目になる

Q · 利害関係人って、自分も入りますか?

推定相続人、配偶者、債権者など、不在者の財産の帰趨に法律上の利害を持つ人が利害関係人です。単なる知人や友人は原則として含まれません。業界裏話ヒント:自分が利害関係人に当たるか微妙なときは、貸金や立替金など債権者の立場を構成できないか検討する。利害関係が認められないと申立て自体が却下されるため、入口の資格こそが最初の関門になる

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第二十七条(管理人の職務)

前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

民法27条は、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人に財産目録の作成を義務づけ、その費用は不在者の財産から支弁される。裁判所は保存に必要な処分も管理人に命じられる。

よくある質問

Q · 行方不明の家族の銀行口座、家族なら勝手に下ろせますよね?

下ろせません。本人の同意や正式な代理権がないと、銀行は払い戻しに応じません。勝手に引き出せば横領になる可能性すらあります。正規のルートは家庭裁判所で不在者財産管理人の選任を受けること(民法25条、27条)です。業界裏話ヒント:銀行が「家族なら大丈夫」と曖昧に応じてくれた時代は終わり、今はマネロン対策で本人確認が厳格。選任審判書を持って初めて、正式に口座を動かせる

Q · 失踪宣告と不在者財産管理人って、どう使い分けるんですか?

失踪宣告(民法30条)は不在者を法律上死亡扱いにする制度で、普通失踪なら7年が必要。相続を確定させたいときに使います。不在者財産管理人は、生死不明のまま財産だけを管理する制度で、今すぐ財産を守りたいときに使う(27条)。業界裏話ヒント:実務では、まず不在者財産管理人を立てて財産を保全し、要件が整ってから失踪宣告に切り替える二段構えがよく使われる。最初から失踪宣告を待つと、その間に財産が荒廃する

Q · 管理人になったら、勝手に不動産を売っていいんですか?

売れません。管理人の権限は原則として保存・利用・改良の範囲(民法28条、103条)で、不動産の売却のような処分行為には家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。許可なく売れば無権代理で無効になりえます。業界裏話ヒント:許可申立てでは「なぜ売却が不在者の利益になるか」を疎明する必要がある。他の相続人が現金化したいだけでは通りにくく、老朽化で維持費がかさむ等の合理的理由を組み立てるのが司法書士・弁護士の腕の見せどころ

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第二十八条(管理人の権限)

管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

民法28条は、不在者財産管理人が103条の権限を超える処分行為を行う際、家庭裁判所の許可を要すると定める。許可なしの処分は無権代理となり無効になりうる。

よくある質問

Q · 行方不明の家族の家、相続人だから自分の判断で売っちゃダメなんですか?

ダメです。本人が生きている以上、その財産はあくまで本人のもの。相続はまだ発生しておらず、あなたに処分権はありません。家庭裁判所で不在者財産管理人を選任し(民法 25 条)、28 条の権限外行為許可を得た管理人が売却します。業界裏話ヒント:管理人にはあなた自身が選任されることも多い。第三者の弁護士が選任されると報酬が財産から差し引かれるため、利害関係のない親族が候補者として手を挙げると裁判所が認めるケースがある。申立書に候補者を明記しておくと進めやすい

Q · 管理人の許可をもらうのって、どれくらい時間がかかるんですか?

ケースによりますが、管理人選任の審判だけで通常 1 から 3 か月、その後の権限外行為許可にさらに 1 か月前後かかるのが一般的です。資料が揃っていれば短縮できます。業界裏話ヒント:選任申立ての際、裁判所は不在者の財産から管理費用を賄えるか確認するため「予納金」(数十万円規模)を求めることがある。財産が十分なら予納金が戻る場合もあるが、無資力だと申立人が負担する。事前に管轄の家庭裁判所に予納金の運用を電話確認しておくと、想定外の出費を避けられる

Q · 相続で一人だけ行方不明の人がいると、遺産分割は止まっちゃうんですか?

そのままでは進められません。相続人全員が参加しない遺産分割協議は無効だからです。不在者財産管理人を選任し、28 条の許可を得てその管理人を協議に参加させる必要があります(民法 25 条、28 条)。業界裏話ヒント:裁判所は不在者の取り分を法定相続分以上確保する分割案でないと許可を出さない傾向がある。「行方不明者の分はゼロで」という協議は通らない。最初から法定相続分を割り当てた案を作る方が、結局は早く許可が下りる

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第二十九条(管理人の担保提供及び報酬)

家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

民法29条は、家庭裁判所が不在者財産管理人に担保を立てさせ、不在者の財産の中から相当な報酬を与えることができると定める。報酬で担い手を確保し、担保で財産の流用を防ぐ規定である。

よくある質問

Q · 行方不明の親族の財産を管理する役、引き受けたらお金はもらえるんですか?

もらえます。民法29条2項で、家庭裁判所が不在者の財産の中から相当な報酬を与えることができます。親族でも専門職でも、報酬付与の申立てをすれば認められます。ただし金額は管理財産の規模と業務量次第。業界裏話ヒント:報酬は不在者の財産から出るので、財産が乏しいと報酬もほぼ取れません。財産より手間が大きい案件は、引き受ける前に割に合うかを必ず計算する。家庭裁判所は事前に目安を教えてくれないので、過去の類似審判の相場を弁護士か司法書士に聞いておくのが賢い

Q · 管理人が財産を使い込まないか心配です。何かできますか?

できます。利害関係人として家庭裁判所に29条1項の担保提供命令を申し立てられます。管理人に保証金を供託させれば、使い込みがあっても担保から回収できます。業界裏話ヒント:親族が管理人だと担保は免除されがちですが、心配なら申立て段階で第三者の専門職を管理人候補に推すという手があります。専門職には担保や賠償責任保険がつくことが多く、財産保全の安心度が段違いに上がる

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第三十条(失踪の宣告)

不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

民法 30 条は、不在者の生死が 7 年間不明のとき(普通失踪)、家庭裁判所が利害関係人の請求により失踪宣告をできると定める。危難に遭った場合は 1 年で足りる(特別失踪)。

よくある質問

Q · 行方不明の家族って、何年たてば死んだことにできるんですか?

通常は生死不明が七年続けば普通失踪、災害や海難など死亡の危険が高い危難に遭った場合は危難が去って一年で特別失踪として、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てられます(民法 30 条)。宣告が出ると死亡したものとみなされます(同 31 条)。業界裏話ヒント:七年の起算点は「最後に生存が確認できた時」であって、捜索願を出した日でも音信が途絶えたと感じた日でもありません。古い手紙や防犯カメラ、最後の出金記録など、生存を裏付ける最終時点をどこに置くかで要件充足の時期がまるごとずれます

Q · 失踪宣告で相続を済ませた後、本人がひょっこり帰ってきたらどうなるんですか?

家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立てれば、死亡擬制は遡って消えます(民法 32 条)。ただし宣告を信じてなされた善意の行為は保護され、相続財産も現に残っている利益の限度で返せば足ります。業界裏話ヒント:最大の地雷は配偶者が善意で再婚していたケースです。前婚が復活するかどうかは見解が分かれており、実務上、解釈が分かれている難問です。財産より人間関係の方が取り返しがつかない、これが弁護士が口を濁す部分です

Q · 失踪宣告と、災害のときの認定死亡って違うものなんですか?

別物です。認定死亡は、官公署が取り調べて死亡が確実とみて戸籍に死亡を記載する仕組み(戸籍法 89 条)で、遺体が確認できないが死亡がほぼ確実な災害時に使われます。失踪宣告は生死不明の状態を裁判所が法的に死亡とみなす制度(民法 30 条、31 条)です。業界裏話ヒント:大規模災害では、家庭裁判所の手続を経る失踪宣告より、行政が動く認定死亡の方が早く処理されることがあります。どちらのルートが速いかは状況次第なので、災害時はまず自治体の窓口に認定死亡で進められないかを確認するのが近道です

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第三十一条(失踪の宣告の効力)

前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

民法31条は、失踪宣告を受けた者の死亡擬制の時点を定める。普通失踪は7年満了時、危難失踪は危難が去った時に死亡とみなされ、宣告日ではなく過去の一点に固定される。

よくある質問

Q · 失踪宣告って、何年連絡が取れなければ申し立てられるんですか?

普通の行方不明なら7年間生死不明であること(民法30条1項)、海難・震災・戦争などの危難に巻き込まれた場合は危難が去った後1年間生死不明であること(同2項)が必要です。そして死亡とみなされる日は、前者が7年満了時、後者が危難の去った時です(民法31条)。業界裏話ヒント:危難失踪に当たるかどうかで待機が7年から1年に縮みます。事故や災害の事実を証拠で示せるなら、漫然と7年待たず、まず危難失踪に該当しないかを検討する。この見極めだけで6年の差が出る

Q · 死んだことにした人が、生きて帰ってきたらどうなりますか?

本人または利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立て、審判で取り消されます(民法32条)。取消しまでは戸籍上の死亡は有効なままです。重要なのは、取消し前に善意でなされた行為(残された配偶者の再婚など)は保護され、分配済みの財産は現に残っている利益の限度でのみ返還すればよい点です(同32条2項)。業界裏話ヒント:再婚が保護されるかは『当事者双方が善意か』が鍵。前配偶者の生存を知りながら再婚した場合は保護されにくい。帰ってきた本人が一番揉めるのは婚姻関係で、ここは事実調査が決定的になる

Q · 相続税はいつの時点で計算するんですか?

相続は死亡によって開始し(民法882条)、失踪宣告ではみなし死亡日(7年満了時または危難の去った時)が相続開始日になります。財産評価もその過去の日が基準です。一方、相続税の申告期限は相続の開始を『知った日』の翌日から10か月なので、宣告が出てから動き出せます。業界裏話ヒント:評価基準日は過去、申告のカウントは知った日から、というズレがある。過去の地価や株価で評価しつつ申告期限は宣告後という二重構造を知らないと、評価額の算定でつまずく。税理士に依頼するなら失踪宣告案件の経験者を選ぶのが安全(最新の改正状況をご確認ください)

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第三十二条(失踪の宣告の取消し)

失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。

ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

民法 32 条は、失踪者の生存等が証明されたとき家庭裁判所が失踪宣告を取り消すと定める。ただし善意でなされた行為は有効に維持され、財産返還は現存利益の限度に限られる。

よくある質問

Q · 失踪宣告で妻が再婚しました。私が生きて帰ったら、再婚は無効になって妻は戻ってくるんですか?

自動的に戻るわけではありません。判例・通説は、再婚の当事者双方が失踪者の生存を知らなかった(善意)場合、32 条 1 項後段により後婚を保護し、前婚は復活しないと解します。ただし明文規定がなく、実務上、解釈が分かれている論点です。業界裏話ヒント:弁護士は後婚当事者のどちらか一方でも生存を知っていた「悪意」の立証に注力します。一方でも悪意なら後婚保護が崩れ、前婚復活の余地が出るため、生存をいつ誰が知ったかの証拠集めが勝敗を分けます

Q · 兄の遺産を相続して全部使っちゃったんですが、兄が生きて帰ってきました。全額返さないとダメですか?

全額ではありません。32 条 2 項は「現に利益を受けている限度」での返還義務しか課しません。生活費や借金返済に充てた分は利益が形を変えて残っているとされ返還対象になりやすい一方、ギャンブルや浪費で消えた分は現存利益なしとして返還不要とされる傾向があります。業界裏話ヒント:同じ「使った」でも、何に使ったかで返還額が天と地ほど変わります。手元に残る預金、購入した不動産、返済した自分の借金は現存利益あり。これを知らずに「全部使った」と一括りに主張すると、かえって不利になることがあります

Q · 失踪した父の生命保険金を受け取りました。父が生還したら保険会社に返すんですか?

保険金の清算も 32 条 2 項の現存利益の枠組みで処理されるのが基本です。善意で受け取り消費していれば、返還は現存利益の範囲にとどまります。ただし保険契約の約款や、誰が請求権者かによって法律関係は複雑になります。業界裏話ヒント:失踪宣告に基づく保険金支払いは、後の取消しリスクを保険会社も認識しています。生還の可能性が残る事案では、受け取った保険金を安易に使い切らず一定額を保全しておくと、後の清算トラブルで身を守れます

Q · 失踪宣告を取り消すには、本人が必ず動かないとダメですか?

本人だけでなく「利害関係人」も請求できます(32 条 1 項)。生存が判明したのに本人が動けない(病気・記憶喪失等)場合でも、配偶者・相続人・債権者などの利害関係人が家庭裁判所に取消しを請求できます。業界裏話ヒント:逆に言えば、誰も請求しなければ戸籍上は死亡したままです。失踪者の財産をめぐって利害が対立すると、あえて取消しを請求しない当事者も現れます。自分に有利か不利かを見極め、請求するか否かの戦略を立てるのが実務の現場です

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第六節
第三十二条の二

数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

民法 32 条の 2 は、死亡の先後が明らかでないとき複数の死者を同時死亡と推定する規定。推定されると当事者間で相続は生じず、財産は各自の血族へ承継される。

よくある質問

Q · 夫婦が同じ事故で亡くなったら、お互いの財産はどうなるんですか?

死亡の先後が不明なら同時死亡と推定され(民法 32 条の 2)、夫婦は互いに相続しません。夫の財産は夫の血族へ、妻の財産は妻の血族へ流れ、子がいればその子が両方を相続します。業界裏話ヒント:最も影響を受けるのは子のいない夫婦です。互いに相続しないため、夫の遺産が妻の親族へ渡ることはなく、双方の家系に財産が割れる。これを避ける唯一の方法は生前の遺言で、相続が開始してからでは手の打ちようがない

Q · 同時に死んだら、孫は何ももらえなくなるんですか?

いいえ、代襲相続が働きます。子が親(祖父母)と同時に亡くなったと推定されても、その子の子(孫)は民法 887 条 2 項により祖父母の遺産を代襲相続できます。同時死亡でも孫の取り分は守られます。業界裏話ヒント:守られないのは配偶者側です。たとえば父と子が同時死亡すると、父の遺産について孫は代襲できるが、亡くなった子の配偶者(嫁・婿)には代襲相続権がない。孫を通じてしか財産に関われないという落差が出る

Q · 死亡診断書に死亡時刻が書いてあれば、それで順番が決まりますよね?

決まりません。死亡診断書の時刻はあくまで推定で、事故や災害では前後を医学的に特定できないことが多い。同時死亡の推定を覆すには、一方が他方の死亡後もなお生存していたことを積極的に証明する必要があり、その証明責任は推定を覆そうとする側にあります。業界裏話ヒント:救急隊の心肺停止確認時刻、目撃者の証言、現場の記録が決め手になることがある。先後を争うなら事故直後の記録保全が勝負で、時間が経つと証拠が散り、同時死亡に倒れる

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第三章
第三十三条(法人の成立等)

法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。

民法33条は法人法定主義を定め、法人は法律の規定によらなければ成立しないとする。任意団体は法定の型に入って登記しない限り、団体名義で口座開設や不動産登記ができない。

よくある質問

Q · 町内会やサークルって、法人じゃないと何か困るんですか?

団体名義で銀行口座を開けず、不動産を団体名で登記できない点が最大の問題です。会費や積立金は会計係個人の名義になり、その人が亡くなれば相続財産に、借金を抱えれば差押えの対象になりかねません(民法33条の法人法定主義の帰結)。業界裏話ヒント:多くの金融機関は任意団体でも「団体名+代表者名」の口座を作れますが、これは法律上あくまで代表者個人の口座です。代表者の交代や死亡のたびに手続きが必要で、トラブルの温床になる。規約に財産の帰属先を明記しておくと、争いを大きく減らせる

Q · 法人を作るのって、結局どの法律を見ればいいんですか?

目的によって根拠法が違います。非営利の一般的な団体なら一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、ビジネスなら会社法、社会貢献活動なら特定非営利活動促進法(NPO法)、宗教団体なら宗教法人法です。民法33条はその大原則(法律の型に入らねば法人になれない)を定めるだけで、具体的な作り方は各法律にあります。業界裏話ヒント:2008年施行の制度改革で、一般社団法人は主務官庁の許可なしに登記だけで設立できるようになりました(準則主義)。「公益法人は許可制で大変」という古いイメージはもう実態と違う。今は数万円の登記費用で設立できる

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第三十四条(法人の能力)

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

民法34条は、法人が定款などに定められた目的の範囲内でのみ権利を有し義務を負うと定める。営利法人では目的が広く解され、非営利法人では厳格に解される傾向がある。

よくある質問

Q · 会社が定款に書いていない事業をやったら、その契約は無効になりますか?

株式会社のような営利法人では、まず無効になりません。最高裁は会社の目的を「定款記載の目的+それに関連する一切の行為」と広く解し、政治献金すら目的内と認めました(八幡製鉄事件、最大判昭和45.6.24)。業界裏話ヒント:だから営利会社相手の取引で「目的外無効」を心配する必要はほぼない。逆に、相手が会社なのに「目的外だから払わない」と言ってきたら、それは法律を知らないか、こちらが知らないと踏んでいるかのどちらか。この判例を一つ出すだけで、交渉の空気が変わる

Q · NPO や協同組合だと、目的の範囲は厳しく見られるって本当ですか?

本当です。営利を目的としない法人では、構成員や寄付者の利益を守るため、目的の範囲が厳格に解される傾向があります。信用協同組合が組合員以外に融資した「員外貸付」を無効とした判例もあります。業界裏話ヒント:非営利法人と高額取引するなら、契約前に定款の目的を必ず確認する。これを怠ると、後で「うちの目的外なので無効」と言われて代金を取りはぐれるリスクが、営利会社相手とは比べものにならないほど高い

Q · うちの会社、定款の目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」って入れてあるんですが、意味あるんですか?

大いに意味があります。この一文があることで、定款に個別列挙していない事業も「附帯関連」として目的の範囲に取り込めます。実務では定款作成時の定番条項です(会社法27条の絶対的記載事項として目的が必須)。業界裏話ヒント:司法書士や弁護士が定款を作るとき必ず入れるのがこの一行。新規事業を始めるたびに目的変更登記(登録免許税3万円)をしなくて済む。この一文がない古い定款の会社は、事業を広げるたびに登記コストを払い続けている

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第三十五条(外国法人)

外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。

ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。

ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

民法 35 条は外国法人の認許を定め、国・国の行政区画・外国会社を除き原則認許せず、法律または条約で認許されたものだけが日本で法人格を持つと規定する。

よくある質問

Q · 海外のNPOと業務提携の契約を結びたいんですが、相手をそのまま契約相手にして大丈夫ですか?

外国会社なら民法35条1項で認許されますが、NPOや財団など非営利の外国法人は条約による認許がない限り日本では法人として扱われず、団体名義の契約の効力や当事者性が後で争われる恐れがあります。業界裏話ヒント:相手の日本支部が一般社団法人やNPO法人として別に設立されていることが多い。その日本の受け皿法人を契約相手にできないか確認すると、認許の問題を回避できる

Q · 外国の会社って、日本で登記してなくても契約は有効なんですか?

認許の問題と登記の問題は別です。外国会社は民法35条1項で認許されるため、未登記でも個々の契約自体は有効に成立します。ただし日本で継続的に取引するには登記が必要で(会社法818条)、未登記のまま取引を続けると、相手方に対し代表者が会社と連帯して責任を負います。業界裏話ヒント:未登記外国会社と取引するなら、いざというとき会社だけでなく日本にいる代表者個人にも請求できる。回収の選択肢が一つ増えると覚えておくと交渉で有利

Q · 認められた外国法人なら、日本企業と完全に同じことができるんですか?

原則は同じ私権を持ちますが(民法35条2項)、例外があります。外国人が享有できない権利、たとえば鉱業権(鉱業法17条)、放送局の免許(放送法の外資規制)、一定の対内直接投資(外為法)などは制限されます。業界裏話ヒント:M&Aやインフラ、防衛関連への外資出資は外為法の事前届出が必要で、形式上は同じ私権でも実際には参入できない領域がある。買収案件では最初に外為法の規制業種かどうかを確認するのが鉄則(最新の改正状況をご確認ください)

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第三十六条(登記)

法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。

民法 36 条は、法人および外国法人が法令の定めに従い登記をすべきことを定める。会社法 49 条等と結びつき、設立登記は法人の成立要件として機能する。

よくある質問

Q · 会社って、登記する前でも『株式会社○○』って名乗って契約していいんですか?

原則ダメだ。会社法 49 条で株式会社は設立登記によって成立するので、登記前は法人として存在しない。登記前に会社名義で結んだ契約は、設立を企画した発起人個人の責任になりうる。業界裏話ヒント:登記される設立日は申請日であって、書類が法務局で処理を終えた完了日ではない。登記完了まで通常 1 週間前後かかる。この空白期間に急いで契約や法人口座開設をしようとしても法人としてはできず、個人で動く羽目になる。設立日を逆算してスケジュールを組むのが実務の勘所だ

Q · 取締役を辞めたのに、まだ登記が残っているのは問題ですか?

大きな問題だ。会社が変更登記(会社法 915 条、原則 2 週間以内)を怠ると、登記簿上あなたは役員のまま残る。退任登記未了の元役員が、登記簿を信じた第三者から責任を追及された裁判例もある(会社法 908 条 2 項の不実登記の趣旨)。業界裏話ヒント:会社が登記してくれない場合、辞任した本人が動かないと外れない。辞任届の控えと、会社へ送った内容証明を必ず残し、登記情報提供サービスで反映を自分で確認するのが鉄則だ

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第三十七条(外国法人の登記)

外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

外国法人の設立の準拠法

目的

名称

事務所の所在場所

存続期間を定めたときは、その定め

代表者の氏名及び住所

前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。

民法37条は、認許された外国法人が日本に事務所を設けたとき、三週間以内に設立準拠法・目的・代表者等を登記する義務を定める。登記前は第三者が法人の成立を否認できる。

よくある質問

Q · 外国の会社が日本に支店を出すとき、この民法37条で登記するんですか?

いいえ、外国会社は会社法933条の「外国会社の登記」で登記します。民法37条が適用されるのは、法律や条約によって認許された外国法人(35条1項ただし書)に限られます。業界裏話ヒント:実務では「外国法人の登記」と一括りにされがちですが、相手が外国会社かどうかで根拠条文も必要書類も変わる。さらに外国会社は登記をするまで日本で継続して取引できない(会社法818条)、この点まで押さえている担当者は意外に少ない

Q · 登記が遅れたら、具体的に何がまずいんですか?

二つあります。一つは代表者個人への50万円以下の過料(8項)。もう一つは、初進出なら登記まで第三者が法人の成立を否認でき(5項)、変更登記前は変更を第三者に対抗できない(2項)ことです。業界裏話ヒント:過料の金額より、取引相手に存在を否認されるリスクのほうが商売には致命的。相手がこの否認権に気付くと交渉で一気に押される。だから登記は進出と同時に最優先で済ませるのが鉄則です

Q · 本国の本社で代表者が変わったのに、日本での変更登記が間に合わなかったらどうなりますか?

登記事項が外国で生じたときは、通知が日本に到達した日から三週間を起算します(4項・2項)。間に合わなくても、その変更を第三者に対抗できないだけで、変更自体が無効になるわけではありません。業界裏話ヒント:到達日起算という規定を活かすには、本国からの通知がいつ届いたかの記録が鍵。メールや郵送の到達日を残しておけば、期間計算で争いになったとき自分に有利な起算点を主張できる

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第四章
第八十五条(定義)

この法律において「物」とは、有体物をいう。

民法 85 条は、本法にいう「物」を有体物に限定する定義規定である。形ある不動産・動産は物に当たるが、データや暗号資産など無体の財産は原則として物に当たらない。

よくある質問

Q · ビットコインって自分の物じゃないんですか?銀行預金みたいなものでしょ?

民法 85 条の『物』は有体物に限られ、形のない暗号資産はこれに当たりません。東京地裁は 2015 年、ビットコインに所有権は成立しないと判断しました。法的には事業者に対する契約上の地位として扱われます。業界裏話ヒント:取引所が倒産すると所有権で取り戻せず、一般債権者として配当を待つ立場に落ちます。だからこそリスクを理解した人ほど、取引所に預けっぱなしにせず自己管理(コールドウォレット)に移している

Q · 離婚するとき、飼ってる犬はどっちが引き取れますか?

犬や猫は民法 85 条の有体物、つまり『物』なので、子の親権ではなく財産分与(民法 768 条)の枠組みで処理されます。誰が引き取るかは寄与や飼育実態を踏まえた話し合いになります。業界裏話ヒント:近年は離婚協議書に『飼育者』『面会』の条項を入れる例が増えています。法的拘束力は人の親権ほど強くないが、後の争いを防ぐ予防線として機能する

Q · 死んだ父のスマホやネット証券口座、勝手に見ていいんですか?

相続財産は物も財産的権利も相続人に承継されます(民法 896 条)。ネット証券の口座残高など財産的価値あるものは相続対象です。ただしアカウント自体はプロバイダ規約で一身専属とされ、開示を拒まれることもあります。業界裏話ヒント:死後にアクセス開示を請求してもまず通りません。現実解は生前にエンディングノートやデジタル遺産整理でパスワードと一覧を残しておくこと、これが唯一実効性のある対策

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第八十六条(不動産及び動産)

土地及びその定着物は、不動産とする。

不動産以外の物は、すべて動産とする。

民法 86 条は、土地及びその定着物を不動産、それ以外の物をすべて動産と定める。この区別が登記・対抗要件・即時取得の可否を分ける。

よくある質問

Q · 中古の家を買ったら、庭の物置や植木は付いてくるんですか?

原則として、土地に定着した立木は土地の一部(86条1項)として一緒に移転しますが、地面に置いただけの物置は動産で、従物(87条)として主物に従うかは取り決め次第です。業界裏話ヒント:プロは必ず契約書の「附属設備一覧」と「引渡しの範囲」を確認します。売主が撤去する物、買主に残す物を一行ずつ明記しておかないと、引渡し当日に「これは私の動産だ」と持ち去られても止められない。曖昧なままサインしないことが鉄則です

Q · 土地と建物が別々の不動産って、何が問題になるんですか?

所有者が分かれると、建物の利用権(借地権や法定地上権、民法388条)の有無が問題になります。特に競売では、土地と建物が別々に売られ、建物だけ落札しても土地の使用権がなければ撤去を求められます。業界裏話ヒント:競売物件で「建物のみ」「土地のみ」と書かれているとき、玄人は真っ先に法定地上権の成否を調べます。これが成立すれば建物所有者は土地を使い続けられ、しなければ更地化を迫られる。同じ物件でも、この一点で価値が天と地ほど変わります

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第八十七条(主物及び従物)

物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。

従物は、主物の処分に従う。

民法 87 条は、物の所有者がその常用に供するため附属させた物を従物と定め、従物は主物の処分に従うと規定する。建物の売買や抵当の効力は、特約がなければ従物にも及ぶ。

よくある質問

Q · 中古の家を買ったら、エアコンや物置も付いてくるんですか?

作り付けや常時設置で建物の常用に供されているものは従物として、特約がなければ建物と一緒に引き渡されます(87 条 2 項)。ただし置いてあるだけの家具は従物とは限りません。業界裏話ヒント:不動産仲介の現場では付帯設備表という書面で何が付いてくるかを一覧化します。これに記載がない設備は、後で含まれていないと争われやすい。契約前に付帯設備表と、その設備が固定か可動かを必ず確認する

Q · 建物を担保に入れたら、中の機械まで銀行に取られるんですか?

建物の常用に供するため附属させた機械が従物と認定されれば、抵当権の効力が及びます(87 条 2 項、最判昭和 44.3.28 がガソリンスタンドの地下タンクを従物と認定)。業界裏話ヒント:機械をリース契約にしてリース会社の所有にしておけば、所有者が異なるため従物になりません。事業者が抵当権設定時に重要設備を守る常套手段です。融資の前に、どの設備を自社所有のまま残すか別所有にするか設計しておく

Q · 物置は土地の従物ですか、建物の従物ですか?

それ自体が独立した建物(不動産)と評価される物置なら従物ではなく独立した不動産、簡易で建物の常用に供される程度なら建物の従物になりえます。判断は固定の程度・規模・登記の有無で変わります。業界裏話ヒント:登記された建物は独立不動産として別に扱われるため、母屋の売買・抵当に当然には従いません。物置やガレージが登記されているかどうかで、一緒に動くか別々かが決まる。登記簿を引けば一目で分かる

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第八十八条(天然果実及び法定果実)

物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

民法 88 条は、物から自然に生じる産出物を天然果実、物の使用の対価として受ける金銭等を法定果実と定義する。この区別が 89 条の果実帰属ルールの前提となる。

よくある質問

Q · アパートを売ったんですが、その月の家賃は私と買主どっちのものになるんですか?

家賃は法定果実なので、原則として収取権の存続期間に応じて日割で帰属します(民法89条2項)。引渡日までの分は売主、それ以降は買主が取得するのが原則です。ただし任意規定なので売買契約の特約が最優先されます。業界裏話ヒント:実務では決済時に『日割家賃精算書』を作って当月分を按分するのが慣行ですが、これは法律上の義務ではなく慣習。特約も精算書もないまま引き渡すと、入居者が満額払った家賃を前の大家が握ったまま、日割請求のタイミングを逃して回収不能になるケースが少なくない。決済日に必ず書面化しておく

Q · 貸していた家畜が子を産んだ場合、子は貸した人と借りた人どっちのものですか?

子畜は天然果実で、母畜から分離(出産)した瞬間の収取権者に帰属します(民法88条1項、89条1項)。賃貸借契約で借主が使用収益する立場なら、原則として借主が取得します。ただし使用貸借や所有権留保では収取権の所在が変わるため一律ではありません。業界裏話ヒント:畜産・農業のリース契約では、子畜や作物の帰属を契約書で明示しないと後で必ず揉める。『果実は誰に帰属するか』を一行入れるだけで紛争が消える論点なのに、テンプレ契約には抜けていることが多い。貸す側なら収取権を留保する特約を、借りる側なら帰属を明記する特約を入れておく

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第八十九条(果実の帰属)

天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。

法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

民法89条は果実の帰属を定め、天然果実は分離時の収取権者に、法定果実は収取権の存続期間に応じた日割計算で取得されると規定する。

よくある質問

Q · 月の途中でアパートを買いました。その月の家賃は私のものですか、前のオーナーのものですか?

家賃は法定果実なので、89条2項により所有権を取得した日からの日数で日割按分します。15日に引渡しを受けたなら、おおむね前半が旧オーナー、後半があなたです。業界裏話ヒント:89条は任意規定なので、実務の不動産売買では契約書の「精算条項」で引渡日基準の日割りを明記するのが通常。この一文があるかないかで、家賃を誰に払うべきかの整理がまるで違う。まず契約書を確認すること

Q · 売買契約はもう結んだのに、まだ引き渡してもらってない物件の家賃は誰がもらうんですか?

意外に思うかもしれませんが、売買の目的物が引き渡されるまでに生じた果実は売主に帰属します(民法575条1項)。89条の原則より、この575条の特則が優先します。その代わり、買主は引渡しまで代金の利息を払う必要がありません(同条2項)。業界裏話ヒント:実務では引渡日を基準に果実も代金利息も精算し直す特約を入れるのが一般的で、575条の原則どおりに処理することはむしろ少ない。条文の建前と実務の運用がズレている典型例

Q · 貸している土地の地主が、地代の振込日の前日に亡くなりました。その月の地代は相続財産ですか?

地代は法定果実なので、89条2項により死亡日までの日数分が被相続人の財産(相続財産)、死亡後の日数分が相続人の収入として日割りで分かれます。業界裏話ヒント:この区別は相続税と所得税の両方に効く。死亡日までの未収地代は相続財産として相続税の対象、死亡後分は相続人の不動産所得として所得税の対象。税理士は申告でこの線引きをきっちりやるが、自分で申告すると見落として申告漏れの火種になる

Q · 果樹園を買ったのに、引渡し前に売主が実を全部収穫して売ってしまいました。文句は言えますか?

天然果実は分離(収穫)の時点で収取権を持つ者に帰属します(89条1項)。引渡し前なら売主に収取権が残っているのが原則で(575条1項の趣旨とも整合)、原則として文句は言いにくい。業界裏話ヒント:だからこそ農地や果樹園、立木付き土地の売買では「収穫物の帰属」を契約書で明記しないと、買った側が想定した収益を売主に持っていかれる。立木や未収穫作物の帰属条項は、農地取引に強い弁護士が真っ先にチェックする項目

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第五章
第一節
第九十条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法90条は、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効と定める。当事者が合意していても、暴利行為や賭博など社会が是認できない契約は、初めから効力を持たない。

よくある質問

Q · 双方が納得してサインした契約でも、本当に無効になるんですか?

なります。詐欺や強迫がなくても、契約の内容や成立過程が社会通念上著しく不当なら、民法 90 条で初めから無効です。暴利行為、賭博、人を不当に拘束する約定などが典型例。業界裏話ヒント:裁判所は『合意があったか』ではなく『その合意を社会が是認できるか』を見る。だから『自分も納得してサインした』という事実は無効主張の妨げにならない。相手はその点を持ち出して有効性を主張してくるので、内容の不当性そのものを正面から立証するのが勝ち筋だ

Q · 公序良俗違反で払った金は、取り戻せるんですか?

原則は不当利得(703 条)として返還請求できますが、落とし穴があります。あなた自身が不法な目的に加担して給付した場合、不法原因給付(708 条)に当たり、返してもらえないことがある。業界裏話ヒント:賭博の負け金や愛人契約の手当のように、自分も社会的に許されない取引に乗っていた場合は金が戻らない。一方、暴利業者に搾取された被害者側は加担の度合いが軽いと判断され、返還が認められやすい。『自分はどちら側か』で結論が逆転する

Q · 退職後の競業避止義務って、サインしたら絶対守らなきゃダメですか?

いいえ。期間・地域・職種の制約が過度で、代償措置(手当など)もない競業避止義務は、職業選択の自由を不当に害するとして 90 条で無効とされる裁判例が多数あります。業界裏話ヒント:裁判所が見るのは『制約範囲の合理性』と『代償の有無』。退職後 1 〜 2 年程度で限定的、かつ在職中に相応の手当があった場合は有効になりやすいが、『一生』『全業種』『無補償』のような条項は無効寄り。転職を諦める前に条項の文言を精査する価値がある

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第九十一条(任意規定と異なる意思表示)

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

民法 91 条は、契約当事者が公の秩序に関しない任意規定と異なる特約を定めたときはその特約に従うと定める。ただし強行規定に反する特約は無効となる。

よくある質問

Q · 契約書に「いかなる場合も返金しません」と書いてあったら、本当に取り戻せないんですか?

相手が事業者であなたが消費者なら、取り戻せる可能性があります。返金や解約に関する民法の規定は任意規定なので 91 条で原則上書きできますが、消費者契約法 10 条は消費者を一方的に害する条項を無効とする強行規定です。業界裏話ヒント:事業者は『一切返金不可』とテンプレで書きがちですが、これが消費者契約法で無効になることを知らない消費者が多いため、書いた者勝ちになっている。諦める前に、相手が事業者か個人かをまず確認する。事業者相手なら争える芽がある

Q · 任意規定か強行規定かって、条文を読めば書いてあるんですか?

書いてありません。条文に『これは任意規定』『これは強行規定』とは原則明記されておらず、その規定の趣旨や保護目的から解釈で決まります(91 条はその振り分けの根拠条文)。業界裏話ヒント:これこそ専門家と素人の最大の情報格差です。弁護士は『この領域の条文は強行規定が多い』という地図を持っている。賃貸借・労働・消費者・利息は強行規定の密集地帯、一般の売買や請負の細目は任意規定が多い、という勘所を知っているかどうかで、同じ契約書を読んでも見えるものが全く違う

Q · 双方が納得してサインした特約なら、後から無効だと言われることはないですよね?

あります。任意規定の上書きなら合意が尊重されますが(91 条)、強行規定に反する特約は、双方が完全に納得してサインしても無効です。労働基準法 13 条や利息制限法がその典型。業界裏話ヒント:『同意したんだから有効』という思い込みが、実は最も足をすくう。借地借家法 30 条のように『賃借人に不利な特約は無効』と定める強行規定の前では、合意の存在は無意味。相手にサインさせて安心している側ほど、紛争で特約が崩れたとき一番慌てる

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第九十二条(任意規定と異なる慣習)

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

民法 92 条は、任意規定と異なる慣習があり、当事者がその慣習に従う意思を有していたと認められるときは、法律の条文ではなく慣習が優先すると定める。強行規定は除かれる。

よくある質問

Q · 『業界の慣習』って、口で言われただけでも法律より強いんですか?

条件付きで強くなります。民法92条は、任意規定と異なる慣習があり、当事者がそれに従う意思を持っていたと認められればその慣習に従うと定めます。ただし口頭の主張だけでは足りず、慣習が客観的に存在することの立証が必要です。業界裏話ヒント:実は『慣習の存在』の立証が一番難しく、『みんなやっている』では通りません。だから慣習を持ち出したい側は、実務では最初から契約書へ書き込んでしまう

Q · 民法92条と、法の適用に関する通則法3条の慣習って何が違うんですか?

92条は法律行為(契約など)の場面で任意規定を変更する『事実たる慣習』、通則法3条は法律と同一の効力を持つ『慣習法』を扱う、というのが通説的な整理です。ただし両者の関係は実務上、解釈が分かれています。業界裏話ヒント:試験でも実務でも論争が続く論点で、判例は必ずしも両者を明確に区別していません。92条は『当事者の意思』、通則法3条は『法令の補充』という軸で押さえると整理しやすい

Q · 当事者が合意すれば、どんな慣習でも有効になるんですか?

なりません。92条が優先を認めるのは『公の秩序に関しない規定』、つまり任意規定と異なる慣習だけです。公の秩序に関する強行規定に反する慣習は、当事者が合意していても無効です(民法90条も参照)。業界裏話ヒント:何が強行規定で何が任意規定かは条文に明記されていないことが多く、解釈で決まります。借地借家法、労働基準法、消費者契約法の核心部分は強行規定が多く、慣習でも覆せない

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第二節
第九十三条(心裡留保)

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

民法93条は心裡留保を定め、表意者が真意でないと知ってした意思表示も原則として有効とする。ただし相手方がその真意でないことを知り、または知り得たときは無効となる。

よくある質問

Q · カッとなって出した退職届、あとから撤回できますか?

可能性はあります。退職の意思表示が本心でなく、会社がそれを知り得た場合、民法93条ただし書で無効を主張できます。さらに承認権限者が承諾する前なら、退職の申込みとして撤回できる余地もあります。業界裏話ヒント:鍵は「誰が受理したか」と「いつ撤回したか」。人事部長など最終承認権限のある人が承諾を確定させる前に撤回を申し入れていれば、心裡留保を持ち出すまでもなく撤回が通ることがある。だから退職を口走った日のうちに、記録の残る形で撤回を伝えるかどうかが分水嶺になる

Q · 飲みの席で『これあげるよ』と言った物、本当に渡さないとダメですか?

状況によります。相手がその場の冗談だと当然分かるはずだったなら93条ただし書で無効です。仮に本気の贈与と扱われても、書面によらない贈与は引渡し前なら撤回できます(民法550条)。業界裏話ヒント:心裡留保で「相手が冗談と知り得た」を立証するのは骨が折れる。それより、書面を作っていない口約束なら、まだ渡していない部分は550条で撤回できると主張する方が早くて確実。弁護士は争いの土俵をあえて550条に移すことがある

Q · 当事者同士で『あれは冗談で無効』と決まったら、それを信じて買った第三者も巻き込まれますか?

巻き込まれません。心裡留保による無効は、善意の第三者には対抗できません(93条2項)。事情を知らずに取引に入った第三者は、当事者間が無効でも保護されます。業界裏話ヒント:この2項は2017年(平成29年)の債権法改正で新しく明文化された部分。それ以前から判例で同じ結論が出ていたが、条文に書かれたことで第三者の地位が一段と固くなった。古い解説書だけ見ていると、この保護を見落とす

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第九十四条(虚偽表示)

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

民法 94 条は、相手方と通謀した虚偽の意思表示を無効と定めるが、その無効は善意の第三者に対抗できない。仮装の名義人が第三者に処分すれば、真の権利者は取り戻せなくなる。

よくある質問

Q · 親の借金対策で名義を貸しただけなのに、私が税金を払えと言われました。なぜですか?

登記や契約上あなたが所有者として現れている以上、外形的にはあなたの財産として扱われます。94条1項で当事者間は無効でも、課税庁や第三者に対しては外観が優先される場面があります。業界裏話ヒント:名義貸しは「迷惑かけないから」と頼まれることが多いが、固定資産税、贈与税、相続時の名義預金認定まで、名義人に思わぬ負担が降る。引き受ける前に税理士へ「この名義で何が課税されるか」を確認するだけで防げる

Q · 仮装売買だと証明できれば、買った第三者からでも取り戻せますか?

原則できません。94条2項で、善意の第三者には無効を対抗できないからです。当事者間でいくら「あれは嘘だった」と証明しても、事情を知らずに買った第三者の権利が優先されます。業界裏話ヒント:ここで弁護士が見るのは「第三者が本当に善意か」。仮装を知っていた(悪意)と立証できれば取り戻せる。市場価格より極端に安い、関係者間の取引、不自然に急いだ取引、こうした事情を集めるのが勝負どころ

Q · 通謀じゃなくて、勝手に私の名義で登記された場合も94条が使われますか?

直接適用ではありませんが、判例は「真の権利者が虚偽の外観を作り出した、または放置した」場合に94条2項を類推適用します(権利外観法理)。外観作出に全く関与していなければ保護されますが、知りながら放置したと評価されると、類推適用で第三者が保護されることがあります。業界裏話ヒント:登記の放置は危険。他人名義の登記を「まあいいか」と長年放っておくと、その間に第三者が現れたとき、あなたの無関心が94条2項類推の根拠にされる

Q · 94条2項の「善意」には、過失がないことまで必要ですか?

94条2項を直接適用する場合、判例・通説は「善意」で足り、無過失までは要求しないとされています。ただし94条2項を類推適用し、さらに110条を類推する事案では、第三者の無過失が要求される場合があります(最新の判例状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:善意か悪意かの立証は、取引の不自然さが鍵。市場価格より極端に安い、身内同士、急いだ取引などは、第三者の悪意や過失を疑わせる事情として弁護士が真っ先に洗う

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第九十五条(錯誤)

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

意思表示に対応する意思を欠く錯誤

表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

民法 95 条は、法律行為の目的と取引通念に照らして重要な錯誤がある場合に意思表示を取り消せると定める。2020 年改正で無効から取消しに変わり、期間制限がある。

よくある質問

Q · 勘違いして契約したら、無条件で取り消せるんですか?

無条件ではありません。錯誤が法律行為の目的と取引通念に照らして「重要」であることが前提で(95条1項)、しかも動機の錯誤の場合は、その動機が契約の基礎だと相手に表示されていたこと(同2項)まで必要です。業界裏話ヒント:弁護士が最初に確認するのは『重要性』より『何を残したか』。動機を口頭で伝えただけでは後で相手に否認される。契約前に『○○だから契約する』と一行メールやLINEに残しておくと、それが動機の表示の証拠になり、取消しの成否を分ける

Q · 「重大な過失」ってどのくらいのことを言うんですか?証明するの大変そう…

重大な過失とは、わずかな注意を払えば容易に気付けたのに漫然と見落とした、という著しい不注意です。重要なのは立証の向き。表意者に重過失があったことは、取消しを阻止したい相手方の側が証明しなければなりません(95条3項)。業界裏話ヒント:多くの人は『自分のうっかりがバレたら不利』と縮こまるが、攻守は逆。相手が重過失を立証できなければ取消しは通る。さらに相手も同じ勘違いをしていたなら、こちらに重過失があっても取り消せる(3項2号)。この例外を知っているかで交渉の強気度が変わる

Q · 詐欺で取り消すのと、錯誤で取り消すのは何が違うんですか?

詐欺(96条)は相手があなたをだます「故意」があったことの立証が要り、これが重い壁です。錯誤(95条)は相手の故意を問いません。あなたの勘違いの構造と、動機なら表示の有無だけが問題になります。業界裏話ヒント:同じ事案で両方主張できる場面は多く、実務では立証が軽い錯誤を主軸に、詐欺を予備的に並べて主張するのが定石。『騙された証拠が足りない』と詐欺を諦める前に、錯誤という回り道があるか弁護士に確認する価値がある

Q · 取り消す前に、相手がその物を別の人に売ってしまったら取り戻せませんか?

その第三者が事情を知らず(善意)、知らないことに過失もなかった(無過失)場合、あなたは取消しをその第三者に対抗できません(95条4項)。つまり取り戻せなくなります。業界裏話ヒント:この第三者保護は2020年4月の改正で新設された。だからこそスピードが命。取り消すと決めたら転売される前に内容証明で取消しの意思表示を打つ。一日の遅れが、対抗できる相手を一人ずつ消していく(最新の改正状況をご確認ください)

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1402条の本則 / 67条の附則

この法令を引用する

民法(明治二十九年法律第八十九号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/129AC0000000089

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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本頁資料來源:e-Gov 法令検索(デジタル庁)·整理提供:法律人 LawPlayer· lawplayer.com