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民法

明治二十九年法律第八十九号

公布日:1896-04-27

第一編
第一章
第一条(基本原則)

私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

権利の濫用は、これを許さない。

第二条(解釈の基準)

この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

第二章
第一節
第三条

私権の享有は、出生に始まる。

外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

第二節
第三条の二

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

第三節
第四条(成年)

年齢十八歳をもって、成年とする。

第五条(未成年者の法律行為)

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。

ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

第六条(未成年者の営業の許可)

一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

第七条(後見開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

第八条(成年被後見人及び成年後見人)

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

第九条(成年被後見人の法律行為)

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

第十条(後見開始の審判の取消し)

第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

第十一条(保佐開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。

ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

第十二条(被保佐人及び保佐人)

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

第十三条(保佐人の同意を要する行為等)

被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。

ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

元本を領収し、又は利用すること。
借財又は保証をすること。
不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
訴訟行為をすること。
贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
新築、改築、増築又は大修繕をすること。
第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。

ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第十四条(保佐開始の審判等の取消し)

第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

第十五条(補助開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。

ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

第十六条(被補助人及び補助人)

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

第十七条(補助人の同意を要する旨の審判等)

家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。

ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。

本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第十八条(補助開始の審判等の取消し)

第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

第十九条(審判相互の関係)

後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。

前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。

第二十条(制限行為能力者の相手方の催告権)

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

第二十一条(制限行為能力者の詐術)

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

第四節
第二十二条(住所)

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

第二十三条(居所)

住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。

日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。

ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

第二十四条(仮住所)

ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

第五節
第二十五条(不在者の財産の管理)

従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

第二十六条(管理人の改任)

不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

第二十七条(管理人の職務)

前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

第二十八条(管理人の権限)

管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

第二十九条(管理人の担保提供及び報酬)

家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

第三十条

第三十一条(失踪の宣告の効力)

前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

第三十二条(失踪の宣告の取消し)

失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。

ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

第六節
第三十二条の二

数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

第三章
第三十三条(法人の成立等)

法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

第三十四条(法人の能力)

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

第三十五条(外国法人)

外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。

ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。

ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

第三十六条(登記)

法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。

第三十七条(外国法人の登記)

外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

外国法人の設立の準拠法
目的
名称
事務所の所在場所
存続期間を定めたときは、その定め
代表者の氏名及び住所

前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。

第四章
第八十五条(定義)

この法律において「物」とは、有体物をいう。

第八十六条(不動産及び動産)

土地及びその定着物は、不動産とする。

不動産以外の物は、すべて動産とする。

第八十七条(主物及び従物)

物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。

従物は、主物の処分に従う。

第八十八条(天然果実及び法定果実)

物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。

第八十九条(果実の帰属)

天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。

法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

第五章
第一節
第九十条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

第九十一条(任意規定と異なる意思表示)

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

第九十二条(任意規定と異なる慣習)

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第二節
第九十三条

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第九十四条(虚偽表示)

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第九十五条(錯誤)

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

意思表示に対応する意思を欠く錯誤
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

1400条の本則 / 66条の附則