会社法 第175条(売渡しの請求の決定)
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- 株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
- 一次条第一項の規定による請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
- 二前号の株式を有する者の氏名又は名称
- 2.前項第二号の者は、同項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、同号の者以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
この条文の基本情報
売渡しの請求の決定とは何ですか?
定義売渡しの請求の決定とは、会社法第175条に定められた規定で、「株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定め…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社法第175条(売渡しの請求の決定)は、日本の会社法に含まれる条文です。
- 会社法第175条の条文原文は「株式会社は、前条の規定による定款の定めがある場合において、次条第一項の規定による請求をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定め…」で始まります。
- 会社法第175条は第五款 相続人等に対する売渡しの請求に置かれています。
- 会社法の公布日は平成17年7月26日です。
- 会社法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 会社法第175条の前の条は会社法第174条です。
- 会社法第175条の次の条は会社法第176条です。
- 会社法第175条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社法(平成十七年法律第八十六号)第175条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 - 本サイト収録
会社法(平成十七年法律第八十六号)第175条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/417AC0000000086/175
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社法175条は、譲渡制限株式の相続人等への売渡し請求を株主総会の特別決議で決定する規定。請求される相続人本人は、その決議で議決権を行使できない(2項)。
Q · 親の会社の株を過半数相続したら、その株で議決権を行使できないことがあるって本当?
本人を相手とする売渡し決議では議決権を行使できません
会社法175条により、定款に174条の売渡し請求の定めがある会社は、株主総会の特別決議で売り渡させる株式の数と相手方を特定します。このとき相手方となる相続人本人は、その決議で議決権を行使できません(175条2項本文)。そのため過半数を相続していても、残る少数株主だけで特別決議が成立し、経営権を奪われうる構図が生じます。ただし、相手方以外の株主全員も議決権を行使できない場合は、但書により本人も投票できます。
解説
オーナー社長が株式の6割を握る同族会社。社長が急逝し、息子がその6割をそのまま相続した。これで経営権は安泰、と誰もが思う。ところが残る4割の株主が動く。会社法175条を使い、株主総会で「相続した息子に株を会社へ売り渡せ」と請求する決議を出すのだ。ここで効くのが2項である。売渡しを請求される当の息子は、その総会で議決権を行使できない。6割を持つはずの息子の票が消え、4割の少数派が100% の議決権を握って決議を通す。多数株主が、相続の瞬間に会社から弾き出される。174条から177条までの「相続人等への売渡し請求」は、本来は好ましくない第三者へ株が流れるのを防ぐ盾だった。だが175条2項を知る者の手にかかると、それは経営権を奪う矛に変わる。
法的な位置づけ
会社法175条は、相続人等に対する株式売渡し請求の決定手続を定める規定である。譲渡制限株式について174条の定款の定めがある会社が、株主総会の特別決議により売渡しを請求する株式の数(種類株式発行会社では種類及び数)と相手方を特定する。当該相手方となる株主は、その決議において議決権を行使できない(2項本文)。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.定款に174条の売渡し請求条項があるか確認 相続発生を知ったら直ちに会社の最新の定款を入手し、相続人等に対する売渡し請求(174条)の定めの有無を確認する。条項がなければ売渡し請求は使えず、攻める側は先に定款変更(特別決議)が必要になる
- 2.1年の期限を起算して期日を管理 会社が相続その他の一般承継を知った日を確定し、そこから1年以内(176条1項但書)に売渡し請求をするためのスケジュールを逆算する。総会招集に要する期間を考慮し、早めに動く
- 3.株主総会の特別決議で対象を特定 175条1項により、売り渡させる株式の数(種類株式なら種類及び数)と相手方の氏名・名称を決議で特定する。309条2項3号の特別決議要件を満たすこと、相手方は2項本文で議決権を行使できない点を踏まえて賛成数を確保する
- 4.売渡し請求を通知し売買価格を協議 決議後、176条に基づき相続人へ売渡し請求を通知する。売買価格はまず協議で定め、調わなければ請求日から20日以内に裁判所へ価格決定を申し立てる(177条2項)。安く買い叩かれない/高く負担しすぎないよう価格資料を準備する
よくある質問 AI による整理
Q1相続人等に対する売渡し請求とは何ですか?
譲渡制限株式が相続等で会社にとって好ましくない者に渡るのを防ぐため、会社がその株式を自社へ売り渡させる制度です。会社法174条から177条が定め、175条は決議による特定を規律します。
Q2会社法175条と174条の違いは何ですか?
174条は『売渡し請求ができる』という定款の根拠を定め、175条はそれを実際に行使する都度、株主総会の特別決議で対象株式数と相手方を特定する手続を定めます。174条が授権、175条が発動の手続です。
Q3売渡し請求の決議は普通決議ですか特別決議ですか?
特別決議です。会社法309条2項3号により、175条1項の決議は議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要します。
Q4売渡し請求の売買価格はどうやって決まりますか?
まず会社と相続人の協議で定めます。協議が調わないときは、売渡し請求があった日から20日以内に裁判所へ売買価格決定の申立てができます(会社法177条2項)。
Q5種類株式発行会社の売渡し請求の決議で注意点は?
売り渡させる株式について、株式の種類と種類ごとの数まで決議で特定しなければなりません(175条1項1号括弧書)。特定が曖昧だと後で決議の効力を争われる余地があります。
Q6売渡し請求はいつまでにしなければいけませんか?
会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年以内です(会社法176条1項但書)。この期間を過ぎると請求権は消滅し、二度と行使できません。
Q7議決権を行使できない例外(175条2項但書)とは?
相手方となる相続人以外の株主全員も、その決議で議決権を行使できない場合です。つまり標的の相続人だけが議決権者であるときは、本人も例外的に投票できます。
Q8売渡し請求の決議に手続の瑕疵があったらどうなりますか?
特別決議の要件不備や招集通知漏れなど手続に瑕疵があれば、株主総会決議取消しの訴え(会社法831条)の対象となります。決議の日から3か月以内に提起する必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1過半数の株を相続したのに、その株で投票できないって本当ですか?
本当です。175条2項により、売渡しを請求される相続人本人は、その決議をする株主総会で議決権を行使できません。過半数を相続していても、残りの少数株主だけで特別決議(309条2項3号)を成立させられます。実務のポイント:これは『相続クーデター』と呼ばれ、同族会社の事業承継で最も警戒される落とし穴です。多くの定款には十数年前のテンプレで174条の条項が入ったまま放置されており、相続が起きるまで誰も気付かない。承継を考えるなら、まず定款の棚卸しから始める
Q2うちは上場していない小さな会社ですが、関係ありますか?
むしろ中小の同族会社こそ直撃します。174条の売渡し請求は譲渡制限株式が対象で、株式に譲渡制限を付けているのは非上場の中小企業がほとんどだからです。上場会社の株は自由に譲渡できるため、原則この制度の対象外。実務のポイント:『うちみたいな小さな会社には縁がない』という思い込みが一番危ない。家業、町工場、医療法人など、株主が家族と数人の役員だけという会社が、最も狙われやすい構図です
Q3この売渡し請求は、定款に書いてあれば自動的に発動するんですか?
自動発動ではありません。定款の定め(174条)はあくまで『請求できる』という根拠にすぎず、実際に発動するにはその都度、株主総会の特別決議で対象株式と相手を特定する必要があります(175条1項)。しかも相続を知った日から1年以内(176条1項但書)。実務のポイント:逆に言えば、標的にされる側はこの『決議が必要』『1年の期限』という二つの関門を突けば防御できる。総会の招集手続に瑕疵があれば決議取消しの訴え(831条)も使える
間違えやすい点 AI による整理
- 「過半数の株を相続すれば経営権は安泰」と信じられているが、175条2項の議決権排除がある会社では逆になる。相続した本人がその決議で投票できないため、過半数を持っていても少数派に経営権を奪われうる
- 売渡し請求の制度があることは知っていても、その期限の短さ(相続を知った日から1年、176条1項但書)の深刻さを見落としている人が多い。1年を過ぎれば、どれだけ不都合な相続人でも会社はもう手出しできない。攻める側も守る側も、この1年が勝負どころになる
- 「これは大企業の話」と問いを立てている時点で方向違いだ。175条が牙を剥くのはむしろ株式に譲渡制限のある中小同族会社で、上場会社(譲渡制限なし)にはそもそも適用されない。あなたの町工場や家業こそ、ど真ん中の対象である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 175条:株主総会の特別決議で対象株式数と相手方を特定する | 174条:売渡し請求を可能にする定款の定め(授権) 176条:決議に基づき実際に売渡しを請求し、価格を協議する |
| 決議・行為の主体 | 株主総会(相手方相続人は議決権行使不可・2項) | 定款を定める段階の株主総会(定款変更も特別決議) 会社が相続人へ請求(株主総会決議は不要、決議は175条で済) |
| 期限 | 請求の前提となる決議。1年の起算は176条に従う | 期限なし(事前の定款整備) 相続等を知った日から1年以内(176条1項但書) |
| 価格をめぐる救済 | — | — 協議不調なら20日以内に裁判所へ価格決定申立て(177条2項) |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は閉鎖性股份有限公司について章程による株式譲渡制限を認めるが、日本のような『相続人への売渡し請求+議決権排除』という制度は明文化されていない。機能的に最も近いのは閉鎖会社の譲渡制限規定である。
ドイツの GmbH では定款の定めにより持分の強制償却(Einziehung)が可能で、相続を事由とする償却条項も置かれる。日本の売渡し請求に近いが、対価の決め方や手続は異なる。
フランスの SARL では相続による持分承継に承認条項(clause d'agrément)を設けることができ、承認が得られない場合の買取手続がある。会社が株主構成をコントロールする点で類似する。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 創業者である父が株式の55% を持ったまま亡くなった。あなたはその唯一の相続人で、役員でもあった。「これで会社は自分のもの」と安心していた。だが定款に174条の売渡し請求の定めがあれば、残り45% の株主はあなたを締め出せる。あなたの55% は議決権を失い、45% が会社を動かす。相続を知った日から、時計はもう動き出している
- あなたは少数株主の側だ。創業家のワンマン社長が突然亡くなり、何も分かっていない放蕩息子が大株主として乗り込んでくる。会社を守る手は175条にある。ただし請求できるのは社長の死を知った日から1年以内(176条1項但書)。この1年を逃せば、二度とこの矛は使えない
- もし、あなたの会社の定款に「相続人に対する売渡し請求」の条項が、十年前に専門家のテンプレで入っていたとしたら? あなたはその存在すら忘れている。だが相続が起きた瞬間、それは誰かの武器として目を覚ます
- 種類株式を発行している会社では、売り渡させる株式の種類と数まで総会で特定しなければならない(175条1項1号)。特定が曖昧な決議は、後で無効を突かれる
- あなたが唯一の議決権者になる場合、つまり標的のあなた以外に投票できる株主がいないときは、2項但書によってあなたも投票できる。たった一人の少数派が、たった一人の相続人を弾く構図には、ちゃんと歯止めがある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相続が起きたら直ちに会社の定款を入手し、174条の売渡し請求条項の有無を確認2. あれば、相手が総会を開く前に動く。あなた自身は標的株では投票できないが、他の株式や立場で対抗できないか検討3. 売買価格が協議で調わなければ裁判所に申立て(177条2項)、安く買い叩かれないようにする4. 決議に手続瑕疵(特別決議の不備、招集通知漏れ)があれば、株主総会決議取消しの訴え(831条)を検討
訴えられた側:1. 売渡し請求を使うなら、定款に174条の定めが事前にあることが大前提、なければ先に定款変更(特別決議)2. 相続を知った日から1年の期限を厳守(176条1項但書)、過ぎれば権利は消滅3. 175条1項で売り渡させる株式数と相続人の氏名を総会決議で特定、種類株式なら種類も4. 相手の議決権排除(2項)を前提に賛成数を確保、ただし但書の例外に注意。価格が折り合わなければ20日以内に裁判所へ価格決定の申立て(177条2項)
時効(請求できる期限):売渡しの請求は、株式会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年以内に行わなければならない(会社法176条1項但書)。この1年が起算点であり、経過すれば請求権は消滅する。価格協議が調わない場合の裁判所への価格決定申立ては、請求日から20日以内(177条2項)
学説
通説:175条2項の議決権排除は、売主となる相続人の利益相反を防ぐ趣旨とされる。一方で、多数派の相続人が少数株主に経営権を奪われる『相続クーデター』を招く危険が指摘され、定款に売渡し請求条項を安易に置くことへの警鐘が学説・実務で広く論じられている。
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)会社法制定 会社法制定により新設。旧商法に存在しなかった『相続人等に対する売渡しの請求』制度(174条から177条)の一部として導入され、譲渡制限株式が相続等で好ましくない者へ渡るのを会社が阻止する手段を整えた。175条2項の議決権排除はこのとき新たに置かれた
改正の年表
- 1.平成17年(2005年) 新設:会社法制定により、相続人等に対する売渡しの請求制度(174〜177条)の一部として新設。譲渡制限株式が相続等で会社にとって好ましくない者へ渡るのを会社が阻止する手段を整え、175条2項の議決権排除もこのとき置かれた。
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