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法律

会社法

かいしゃほう

法令番号
平成十七年法律第八十六号
公布日
平成十七年七月二十六日
条数
本則1165条・附則32条

法令の構成 編・章を選ぶと該当条文へ移動します

第一編
第一章
第一条(趣旨)

会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

会社法第1条は、会社の設立・組織・運営・管理について、他の法律に特別の定めがある場合を除き会社法によると定める。上場企業や銀行などは特別法が優先する。

よくある質問

Q · 会社のことを調べたいんですが、会社法さえ読めば足りますか?

足りない場合があります。会社法第1條が『他の法律に特別の定めがある場合を除く』と明言しているとおり、上場企業なら金融商品取引法、銀行なら銀行法、保険会社なら保険業法が会社法に優先します。業界裏話ヒント:実務家は会社の登記事項証明書と業種をまず確認し、規制業種かどうかで読む法律の順番を変える。会社法だけで結論を出すのは、規制業種では危険です

Q · 中小企業の社長ですが、うちみたいな会社でも特別法って関係あるんですか?

非上場の中小企業なら、原則として会社法が基本ルールです。ただし業種によっては別で、建設業なら建設業法、人材派遣なら労働者派遣法、貸金業なら貸金業法が、許認可やガバナンスの面で会社法に上乗せされます(会社法第1條の『除くほか』が入口)。業界裏話ヒント:『うちは小さいから会社法だけ』と思い込むと、業法の許認可違反で営業停止というリスクを見落とす。自社の業種に業法があるかは、開業時に一度棚卸ししておくべきです

AIによる参考情報です。原文を優先してください。

第二条(定義)

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

会社株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。

外国会社外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう。

子会社会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

3_2子会社等次のいずれかに該当する者をいう。

1子会社

2会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの

親会社株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

4_2親会社等次のいずれかに該当する者をいう。

1親会社

2株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として法務省令で定めるもの

公開会社その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。

大会社次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。

1最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。

2最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。

取締役会設置会社取締役会を置く株式会社又はこの法律の規定により取締役会を置かなければならない株式会社をいう。

会計参与設置会社会計参与を置く株式会社をいう。

監査役設置会社監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。

監査役会設置会社監査役会を置く株式会社又はこの法律の規定により監査役会を置かなければならない株式会社をいう。

十一会計監査人設置会社会計監査人を置く株式会社又はこの法律の規定により会計監査人を置かなければならない株式会社をいう。

11_2監査等委員会設置会社監査等委員会を置く株式会社をいう。

十二指名委員会等設置会社指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「指名委員会等」という。)を置く株式会社をいう。

十三種類株式発行会社剰余金の配当その他の第百八条第一項各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する株式会社をいう。

十四種類株主総会種類株主(種類株式発行会社におけるある種類の株式の株主をいう。以下同じ。)の総会をいう。

十五社外取締役株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。

1当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

2その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

3当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

4当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

5当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

十六社外監査役株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。

1その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

2その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

3当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

4当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

5当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

十七譲渡制限株式株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう。

十八取得請求権付株式株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいう。

十九取得条項付株式株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいう。

二十単元株式数株式会社がその発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨の定款の定めを設けている場合における当該一定の数をいう。

二十一新株予約権株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。

二十二新株予約権付社債新株予約権を付した社債をいう。

二十三社債この法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第六百七十六条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう。

二十四最終事業年度各事業年度に係る第四百三十五条第二項に規定する計算書類につき第四百三十八条第二項の承認(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認)を受けた場合における当該各事業年度のうち最も遅いものをいう。

二十五配当財産株式会社が剰余金の配当をする場合における配当する財産をいう。

二十六組織変更次のイ又はロに掲げる会社がその組織を変更することにより当該イ又はロに定める会社となることをいう。

1株式会社合名会社、合資会社又は合同会社

2合名会社、合資会社又は合同会社株式会社

二十七吸収合併会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。

二十八新設合併二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。

二十九吸収分割株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう。

三十新設分割一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいう。

31株式交換株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

32株式移転一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう。

32_2株式交付株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。

33公告方法会社(外国会社を含む。)が公告(この法律又は他の法律の規定により官報に掲載する方法によりしなければならないものとされているものを除く。)をする方法をいう。

34電子公告公告方法のうち、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法をいう。

会社法 2 条は、公開会社・大会社・子会社・親会社・社外取締役など会社法の基本用語を定義する規定で、公開会社は上場ではなく株式に譲渡制限がない会社を指す。

よくある質問

Q · うちは上場してないのに「公開会社」って言われました。間違いですか?

間違いではありません。会社法2条5号の公開会社は、発行する株式の全部または一部に譲渡制限がない株式会社を指し、上場とは無関係です。定款で全株式に「譲渡には会社の承認を要する」と定めていなければ、株主が一人でも公開会社です。業界裏話ヒント:多くの一人会社が、設立時に雛形を流用して公開会社のまま放置し、取締役会設置義務(327条)に気付かず登記だけ通っているケースがある。自社の定款の「株式の譲渡制限」の項を一度確認するだけで判明する

Q · 出資比率は過半数いってないのに、相手から「お宅の子会社扱い」と言われました。なぜ?

会社法2条3号は議決権の過半数保有を子会社の一基準としつつ、最終的には「経営を支配している」という実質で判断し、その細目を会社法施行規則3条に委ねています。役員の過半数を送り込んでいたり、財務・事業方針を実質的に決めていれば、出資が過半数未満でも子会社認定されます。業界裏話ヒント:この実質支配基準は連結決算や関連当事者開示の入口になる。過半数を避けて支配だけ握る設計をしても、施行規則3条の要件に当たれば連結から逃れられない。会計士はまずここを見る

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第三条(法人格)

会社は、法人とする。

会社法 3 条は「会社は、法人とする」と定め、会社に株主や社長とは独立した法人格を与える。会社の債務は原則として社長個人に及ばず、株主の有限責任の土台となる。

よくある質問

Q · 会社が倒産したら、社長個人に貸したお金は返してもらえないんですか?

原則返してもらえません。会社法 3 条で会社は社長とは別の法人格を持つため、会社の債務は会社のもので、社長個人の財産は対象外です。ただし社長が個人保証していれば別、また法人格が形骸化・濫用されていれば法人格否認の法理(最判昭和 44.2.27)で個人を追えます。業界裏話ヒント:中小企業への融資・取引は社長個人保証付きが圧倒的多数。法人格で守られて見えても、契約書の保証条項一つで個人責任が発生している。取引前に保証の有無を確認したかが回収率を分ける

Q · 一人で会社を作れば、個人の財産は完全に守られますか?

完全ではありません。会社法 3 条の法人格は原則あなたを守りますが、会社と個人の財産・口座を混同すると、法人格否認の法理で壁が崩れ個人責任を問われます。さらに金融機関からの借入はほぼ社長個人保証付きです。業界裏話ヒント:法人格を本当に盾にするには、経理を個人と厳密に分け、株主総会・取締役会の記録を残すこと。形だけの会社は、いざというとき実体がないとして個人と同一視される。守りの形式を整えているかが裁判所の判断を分ける

Q · ペーパーカンパニーなら、すぐに背後の人間を訴えられますか?

簡単ではありません。法人格否認の法理は最高裁が認めた例外的救済で、(1)法人格が完全に形骸化している、または(2)違法・不当な目的で濫用されている、という厳格な要件が必要です。業界裏話ヒント:裁判所はこれを非常に慎重に運用し、実体がなさそう程度では足りません。財産混同・帳簿の不備・意思決定の不在など客観的証拠の積み上げが要る。最初から法人格否認だけに頼らず、個人保証や詐害行為取消(民法 424 条)など複数ルートを並行で組むのが定石

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第四条(住所)

会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。

会社法 4 条は、会社の住所はその本店の所在地にあると定める。これにより会社を訴える裁判所や書類の送達先は、実際の営業地ではなく登記上の本店で決まる。

よくある質問

Q · ネット通販の会社とトラブルになりました。どこの裁判所で訴えればいいんですか?

原則は相手会社の本店所在地を管轄する裁判所です(民訴 4 条 4 項)。ただし会社相手だからといって必ず本店所在地に限られるわけではなく、代金返還など金銭請求の場合は義務履行地(民訴 5 条 1 号)を理由に別の裁判所を選べることがあります。業界裏話ヒント:金銭の支払いは原則として債権者(あなた)の住所地が履行地になるため、これを使えば遠方の会社を自分の地元で訴えられる場合がある。少額訴訟ならなおさら、相手の本店まで遠征する必要はないことが多い

Q · 相手の会社の本店がどこにあるか分からないのですが、調べられますか?

調べられます。会社の本店所在地は商業登記の公示事項で、法務局やオンラインの登記情報提供サービスで、誰でも登記事項証明書を取得できます。商号と大まかな所在地が分かれば検索可能です。業界裏話ヒント:取得した本店が雑居ビルの一室や貸し住所サービスの住所だった場合、それは送達トラブルやペーパーカンパニーの予兆。訴える前にこの一枚を取るかどうかで、勝訴判決を取っても紙切れになるリスクを事前に見抜ける

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第五条(商行為)

会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。

会社法5条は、会社がその事業としてする行為及び事業のためにする行為を商行為とする規定。会社の取引には民法より商法が優先して適用される。

よくある質問

Q · 会社じゃなくて個人事業主でも、商行為になるんですか?

なります。会社法5条は会社の行為を商行為とする規定ですが、個人事業主も商法4条の『商人』に当たれば、その営業のためにする行為は商行為です(商法503条、附属的商行為)。つまり法人化していなくても、事業として継続的に取引していれば商法が適用されます。業界裏話ヒント:弁護士や税理士は『法人化のメリット』として節税ばかり説明しますが、商行為になることで連帯債務の推定(商法511条)という不利益も同時に発生する点はあまり強調しません。会社を作る前に、税金だけでなく責任ルールの変化も確認すべきです。

Q · 商行為になると、何が一番怖いんですか?

実務で効くのは商法511条の連帯債務の推定です。複数人が商行為で共同の債務を負うと、民法427条の分割原則(各自が頭割り)が覆り、各自が全額を連帯して負担します。共同創業者が会社の借入に連名で入った場合、一人が払えなければもう一人が全額をかぶります。業界裏話ヒント:かつては『商事債権は5年で時効』も重要論点でしたが、商事消滅時効(旧商法522条)は2020年4月1日に廃止され、今は民法の一般時効に一本化されました。古い知識のまま時効を計算すると判断を誤るので、最新の改正状況をご確認ください。

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第二章
第六条(商号)

会社は、その名称を商号とする。

会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。

会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

会社法 6 条は、会社の名称を商号とし、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の種類を商号中に表示する義務を定める。他の種類と誤認される文字は使えない。

よくある質問

Q · 前株と後株って、どっちが正しいんですか?

どちらも正しく、法的な優劣はありません。会社法 6 条 2 項は「株式会社」の文字を商号中に用いることを求めるだけで、位置を指定していません。「株式会社○○」も「○○株式会社」も有効です。業界裏話ヒント:登記後に前株から後株へ変えるには定款変更(株主総会の特別決議)と変更登記が必要で、費用も手間もかかります。さらに銀行口座、契約書、許認可の名義まで波及する。最初に決める一回が、後の数十万円を左右する

Q · 合同会社って、社名がダサく見えて損しませんか?

実利と信用のトレードオフです。合同会社は設立時の登録免許税が株式会社より安く運営も柔軟ですが、6 条 2 項で商号に「合同会社」と明記する義務があり、取引先や採用候補がそれを見ます。業界裏話ヒント:BtoC やクリエイティブ業では合同会社でも問題視されにくい一方、大企業相手の BtoB や融資審査では株式会社の方が通りやすい場面がある。著名な外資の日本法人にも合同会社は多いが、それは知名度で信用を補えるから。無名のうちは語尾の印象を軽視しない

Q · 社名を登記したら、その名前は完全に自分のものになりますか?

なりません。商業登記法 27 条が守るのは「同一所在場所での同一商号」だけ。別の市区町村なら同じ社名の会社が存在できます。業界裏話ヒント:商号登記は名前の独占権ではありません。本当に名前を守りたいなら商標登録(商標法)が必要で、これは商号とは全く別の制度。社名とサービス名の両方を商標で押さえておかないと、有名になった途端に他社が同名で商標を取り、こちらが使えなくなる逆転劇が起きる

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第七条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)

会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

会社法 7 条は、会社でない者が名称や商号に会社と誤認されるおそれのある文字を用いることを禁じる。違反は会社法 978 条 1 号により 100 万円以下の過料の対象となる。

よくある質問

Q · 個人事業主が屋号に「カンパニー」って付けるのもダメなんですか?

会社であると誤認されるおそれがあれば該当しえます。会社法 7 条が禁じるのは「株式会社」という正式表記に限らず、会社と紛らわしい文字全般です。「カンパニー」「コーポレーション」は会社を連想させる典型語なので、法人格のない個人事業では避けるのが安全です。業界裏話ヒント:実務では『屋号 + 工房・商店・事務所・サービス』のように、会社を想起させない語に寄せるのが定石。逆に投資家や金融機関は、登記のない実体が会社風の名を使っていると与信判断で警戒する。名前は信用スコアの一部だと知っておく

Q · 違反したら逮捕されるんですか?前科がつきますか?

逮捕も前科もつきません。会社法 7 条違反は会社法 978 条 1 号により 100 万円以下の「過料」の対象で、これは刑罰ではなく行政上の秩序罰だからです(最新の改正状況をご確認ください)。とはいえ実害は金額だけでなく、是正命令や信用毀損に及びます。業界裏話ヒント:過料は前科にならないため軽視されがちだが、取引先が『会社だと信じて契約した』という外観が残ると、契約の効力や責任を巡る民事紛争の火種になる。罰の重さより、誤認させたという事実が後を引く

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第八条

何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。

前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

会社法 8 条は、不正の目的で他の会社と誤認されるおそれのある名称・商号の使用を禁じ、被害会社に使用の停止・予防請求権を認める規定である。

よくある質問

Q · 似た名前の会社を見つけたら、すぐ訴えれば勝てますか?

すぐ勝てるとは限りません。会社法 8 条 2 項の差止請求には、相手の「不正の目的」と「他の会社だと誤認されるおそれ」の両方が要り、名前が似ているだけでは足りません。業界裏話ヒント:弁護士は 8 条単独ではなく、不正競争防止法 2 条 1 項 1 号(周知表示の混同惹起)や 2 号(著名表示の冒用)を一緒に検討します。こちらは損害賠償まで取れる。8 条で止めて不競法で賠償を取る、という二段構えが実務の定石です

Q · うっかり似た社名で登記してしまいました。改名するしかないですか?

必ずしも改名は必要ありません。登記が通ったこと自体は、8 条に違反しないことを保証しません(登記所は不正目的の有無まで審査しない)。逆に、あなたにただ乗りの意図がなく業種・地域も違えば、相手の差止請求を退けられます。業界裏話ヒント:「登記できたから安全」という思い込みが一番危ない。商号の安全性は登記の可否ではなく、不正の目的と誤認のおそれで決まります。命名前の類似調査こそが本当の防御線です

Q · 会社法 8 条と不正競争防止法、どっちで攻めるべきですか?

自社の表示がどれだけ世間に知られているかで変わります。周知・著名でなくても 8 条の差止は狙えますが、相手の名称が周知のあなたの表示と混同を招くなら不正競争防止法 2 条のほうが強く、損害賠償も請求できます。業界裏話ヒント:実務では両方を併記して通知し、相手に「どちらでも攻められる」と示すのが効果的。相手の交渉担当は争うコストを計算し、早期の名称変更や和解に傾きやすくなります

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第九条(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任)

自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

会社法 9 条は、商号の使用を他人に許諾した会社が、その会社の取引と誤認した相手方に対し、名義使用者と連帯して債務を弁済する責任を負うと定める。

よくある質問

Q · 名前を貸しただけで、お金は一切受け取っていないのに、本当に私が払うんですか?

払う立場になりえます。会社法 9 条の責任は「利益を得たか」ではなく「外観を作り出したか」で決まり、許諾、外観、相手の誤認の三要件がそろえば、対価ゼロでも連帯責任を負います。業界裏話ヒント:弁護士はこういう案件でまず「相手が本当に誤認していたか」を疑います。取引相手が実際の事業者と日常的にやり取りしていた記録が一通でも出れば、誤認の要件が崩れて責任が外れることがある。請求書が来た時点で諦めず、相手の認識を示す証拠を探すのが先決です

Q · 相手が私の会社名を勝手に使った場合でも、責任を負いますか?

原則として負いません。会社法 9 条は「許諾」を要件とするので、無断使用には及びません。ただし、使われていることを知りながら長期間放置すると、黙示の許諾(黙認)とみなされて責任が生じる場合があります。業界裏話ヒント:勝手に使われていると気付いたら、すぐ内容証明で使用中止を求め、その記録を残すことが決定的です。何もしなかった期間が長いほど「知って認めていた」と評価されやすい。沈黙は許諾に化けるというのが、表に出てこない実務の感覚です

Q · フランチャイズの本部は、加盟店が作った借金を全部背負うんですか?

常にではありません。会社法 9 条は取引相手の「誤認」を要件とするので、本部と加盟店が別事業者だと客が認識できる表示があれば、本部の責任は限定されます。業界裏話ヒント:判例は店舗の外観や表示の実態を細かく見ます(最判平成 7.11.30 はスーパー内テナントへの名板貸し類推適用を認めた)。本部側は「運営は加盟店 ◯◯」と店頭やレシートに明示しておくことが、後の責任を切り分ける生命線になります

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第三章
第一節
第十条(支配人)

会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。

会社法 10 条は、会社が支配人を選任し本店または支店で事業を行わせることができると定める。選任された支配人は事業に関する包括的代理権を持つ。

よくある質問

Q · 支店長が結んだ契約、本社が知らなかったら無効にできますか?

原則として無効にはできません。会社が「支店長」という肩書きを与えていた以上、その人を支配人だと信じて取引した善意の相手方に対しては、会社が責任を負います(会社法13条、表見支配人)。業界裏話ヒント:会社が逃げる唯一の道は、相手方が「この人に権限がない」と知っていた、または重大な不注意で知らなかったと立証すること。だから争いになると、会社側は相手のメールや交渉記録を漁って『知っていたはず』の証拠を探しにくる。取引する側は、相手の権限を疑う材料がなかったことを残しておくと強い

Q · 支配人と取締役って何が違うんですか?

支配人は会社に雇われた使用人で、選任するのは取締役会など会社側です。代理権は『その店舗の事業に関する一切の行為』に限られます(会社法11条)。取締役は会社の機関そのもので、株主総会が選び、会社全体の業務執行と監督に関わります。業界裏話ヒント:登記簿を見れば一目で区別できます。支配人は『支配人』として、取締役は『役員』欄に載る。取引相手の権限を確かめたいなら、肩書きの言葉ではなく、どの欄に登記されているかを見る。これは弁護士や司法書士が最初に確認する点です

Q · 支配人に『1000万円以上は本社決裁』と社内ルールを課したら、それで守られますか?

社内では守られますが、対外的には守られません。会社法11条2項は、支配人の代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できないと定めます。つまり、その制限を知らずに支配人と1億円の契約を結んだ相手には、会社は『社内ルール違反だから無効』と言えません。業界裏話ヒント:実務では、本当に金額を絞りたいなら『支配人』ではなく14条の『特定の事項の委任を受けた使用人』として権限を狭く設計する。肩書きの選び方そのものがリスク管理になる、ここを知らずに安易に支配人を置く中小企業は多い

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第十一条(支配人の代理権)

支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

会社法 11 条は、支配人が会社に代わって事業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする包括的代理権を有すると定める。この権限への内部制限は善意の第三者に対抗できない。

よくある質問

Q · 支配人って、社長の許可なしで本当に何でも契約できるんですか?

その事業に関することなら、原則として社長の個別許可なしで会社を拘束できます(会社法 11 条 1 項)。これが「包括的代理権」です。ただし「その事業に関する」範囲を外れた行為(例:会社の事業と無関係な投機)は権限外です。業界裏話ヒント:実務では会社が決裁規程で金額制限をかけますが、その制限は社外の善意の取引相手には効きません(3 項)。だから大企業は支配人を安易に登記せず、権限の狭い使用人として支店長を置くことも多い。相手が支配人か単なる支店長かで、契約の固さが全く違う

Q · 名刺に「支店長」とあれば支配人と同じ扱いですか?

必ずしも同じではありません。登記された支配人と、単に名称だけの使用人は法的地位が異なります。ただし会社法 13 条(表見支配人)により、本店または支店の事業の主任者らしい名称を与えられた使用人は、善意の相手方との関係で支配人と同一の権限があるとみなされます。業界裏話ヒント:だから訴訟では「相手が登記上の支配人か」と「表見支配人にあたるか」を二段構えで主張する。登記がなくても肩書きと外観で勝てる場合がある。受け取った名刺を捨てずに保管しておくことが武器になる

Q · 会社が「うちの支配人が勝手にやった」と言って契約を反故にできますか?

善意の第三者に対しては、原則できません。会社法 11 条 3 項が、代理権に加えた制限を善意の第三者に対抗できないと定めているからです。会社の内部ルール違反は会社内部の問題であって、外部の取引相手を巻き込めません。業界裏話ヒント:会社が逃げる唯一の現実的な道は、あなたが制限を知っていた(悪意)と立証すること。だから取引中に相手の社内稟議書や決裁書をあえて見せられたら要注意、後で『あなたは権限制限を知っていた』と言われる伏線になりうる

Q · 個人事業主でも支配人を置けますか?

置けます。会社法 11 条は会社の支配人ですが、個人商人については商法 20 条、21 条が同じ仕組みを定めています。番頭や店長を支配人として登記すれば、会社と同様の包括的代理権が生まれます。業界裏話ヒント:高齢の事業主が引退を見据えるとき、後継者を支配人登記しておくと、本人が動けなくなっても事業の取引を法的に止めずに回せる。事業承継の現場で効く一手だが、税理士や司法書士でも積極的に提案しない人が多い

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第十二条(支配人の競業の禁止)

支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

自ら営業を行うこと。

自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。

他の会社又は商人(会社を除く。第二十四条において同じ。)の使用人となること。

他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。

会社法12条は、支配人が会社の許可なく自営・競業取引・他社の使用人や役員就任を行うことを禁じる。1項2号の競業取引違反では、得た利益の額が会社の損害額と推定される。

よくある質問

Q · 支店長は全員「支配人」なんですか? 私は支店長ですけど登記とか知りません

支店長イコール支配人ではありません。会社法上の支配人は、会社が支配人として選任し法務局に登記した者を指します(会社法10条、918条)。登記のない支店長は、肩書きが支店長でも12条の対象ではなく、競業は就業規則や個別契約の問題になります。業界裏話ヒント:自分が支配人登記されているかは、会社の登記事項証明書(商業登記)を法務局やオンラインで取れば一発で分かります。会社は本人の同意なく登記できますが、本人が知らないケースも実在する。昇進したら一度自分の登記を確認しておくと、後の競業トラブルで立場がはっきりする

Q · 競業避止に違反すると、具体的にいくら払わされるんですか?

1項2号の競業取引に違反した場合、あなたまたは第三者がその取引で得た利益の額が、そのまま会社の損害額と推定されます(12条2項)。会社は実損を証明しなくてよく、あなたが稼いだ額が賠償の基準になります。業界裏話ヒント:昔の商法には会社がその取引を自分のものにできる介入権がありましたが、会社法はこれを廃止し損害額推定に置き換えました。つまり会社は取引そのものは取り上げられないが、利益相当額を金銭で取り戻せる。稼げば稼ぐほど推定賠償額が膨らむので、隠れて大きく儲けるほど傷が深くなる(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 退職してから同業で独立するのも、これに引っかかりますか?

12条は在職中の支配人の義務なので、退職後の競業そのものは対象外です。退職後の競業を縛れるかは、別途の競業避止特約の有効性(職業選択の自由との関係)の問題になります。業界裏話ヒント:落とし穴は退職前の準備行為です。在職中に支配人の地位のまま競業取引や顧客の引き抜き取引を実行していれば、退職後ではなく在職中のその行為が12条違反になり、2項の推定が効きます。独立を考えるなら、競業にあたる取引は退職後に着手するのが境界線。在職中は準備にとどめるかどうかが分かれ目になる

Q · 他の会社の社外取締役を頼まれました。本業の許可は要りますか?

あなたが支配人なら、他の会社の取締役・執行役・業務執行社員になるには会社の許可が必要です(12条1項4号)。同業他社かどうかを問わず許可が要る点に注意してください。業界裏話ヒント:1項4号は2号と違い、競業関係がなくても適用されます。これは支配人が会社の業務に専念すべきという精力分散防止の趣旨だからです。逆に言えば、4号違反では2項の利益額推定は及ばないので、会社が損害を問うには別途立証が必要。引き受ける前に書面で許可を取れば、そもそも違反が成立しない

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第十三条(表見支配人)

会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。

ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

会社法 13 条は、支店長等の主任者を示す名称を付された使用人に、当該支店の事業に関する一切の裁判外の行為の権限があるものとみなす規定。会社の内部制限は善意の相手方に対抗できない。

よくある質問

Q · 支店長って名乗ってても、実際は本社の許可がないと何もできない人だったら、契約は無効になるんですか?

原則として無効にはなりません。会社法13条は、支店長という名称を会社が付した以上、社内でどれだけ権限を制限していても、その制限を知らない善意の相手方には契約が有効に成立すると定めています。内部の権限制限は外部に対抗できないのが核心です。業界裏話ヒント:会社側はよく『社内決裁を経ていないから無効』と主張しますが、その決裁ルールを取引相手が知らなければ、この主張はほぼ通りません。会社の内部統制の不備のツケを、善意の相手に回すことは法が許さない、という発想です

Q · 相手が悪意だったら保護されないって、どこまで知ってたら悪意になるんですか?

その人物に契約権限がないと現実に知っていれば悪意です。さらに判例は、知らなくても少し確認すれば容易に分かったのに漫然と信じた場合、つまり重大な過失がある場合も悪意と同じに扱います(最高裁昭和52年10月14日判決)。業界裏話ヒント:会社側は『相手は権限がないと知っていたはずだ』と立証しようとしますが、悪意や重過失の立証責任は会社側にあります。あなたが普通の注意を払っていれば、立証のハードルは会社側にあると理解しておくと交渉で動じません

Q · 支店長代理とか支店次長と契約したときも、同じように守られますか?

守られにくくなります。13条が保護するのは『主任者であることを示す名称』、つまりその事業所のトップだと示す肩書です。代理や次長は自らがトップでないことを示す名称なので、判例では保護を否定された例があります。業界裏話ヒント:肩書の一語の差が運命を分けます。実務では、重要な契約ほど相手が『長』本人か、それとも代理・補佐の立場かを名刺の段階で見極めるべきです。トップでない肩書なら、民法110条の表見代理など別の理屈を組む必要が出てきます

Q · 支店長が会社を代理して訴訟を起こしたり、訴えられたりもできるんですか?

できません。13条が権限ありとみなすのは『裁判外の行為』に限られます。契約の締結や代金の請求といった取引行為は含まれますが、会社を当事者とする訴訟行為は含まれません。業界裏話ヒント:ここを混同して『支店長が会社を代表して訴訟できる』と思い込むと足をすくわれます。訴訟になった段階では、会社の正式な代表者や訴訟代理人である弁護士が登場します。取引の現場で生まれる権限と、法廷で必要な権限は別物だと切り分けておくことが大切です

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第十四条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

会社法 14 条は、特定の事項を任された使用人がその事項の裁判外行為をする権限を持ち、会社の内部的な権限制限は善意の第三者に対抗できないと定める。

よくある質問

Q · 取引先の課長と話をまとめたのに、後で「課長に権限はなかった」と言われました。泣き寝入りですか?

原則として泣き寝入りではない。会社法 14 条 1 項で特定の事項を任された使用人はその事項の裁判外行為の権限を当然に持ち、2 項で内部の権限制限は善意の第三者に対抗できない。あなたが制限を知らなかったなら会社は拘束される。業界裏話ヒント:会社側は『相手は制限を知っていた(悪意)』の立証を狙う。だからこそ商談時の名刺・メール署名・社内アドレスを残すと、あなたの善意が固まり会社の反論を封じられる。

Q · うちのバイトが勝手に大量発注したんですが、会社が払わないといけませんか?

そのバイトに『仕入れ』という事項を任せていたなら、会社法 14 条によりその範囲の発注は会社を拘束する可能性が高い。雇用形態ではなく何を任せていたかで決まる。明らかに範囲外や常識外の数量なら別だが、通常取引なら支払義務を負う。業界裏話ヒント:『担当』として外に出した時点で会社はリスクを負う。発注上限を取引先に書面で明示しておくと、超過分は相手が制限を知り得たとして 2 項の保護を外せる。後出しでは効かない。

Q · 相手が本当にその事項を任されているか、取引前にどう確認すればいいですか?

確実なのは委任状や権限を示す書面の提示を求めること。実務では名刺の肩書・対応窓口・社内メールアドレスなど客観的外観で判断されることが多い(会社法 14 条 1 項)。業界裏話ヒント:高額取引なら『本件のご決裁権限がある方のお名前』をメールで一筆確認しておく。後で会社が権限を否認しても、あなたが外観を信頼した善意の第三者だった動かぬ証拠になる。一通のメールが数百万円を守る。

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第十五条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)

物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。

ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

会社法15条は、物品販売を目的とする店舗の使用人を、その店舗にある物品の販売権限を持つものとみなす。ただし相手方が悪意のときは、このみなしは及ばない。

よくある質問

Q · バイトの店員から買っても、ちゃんとした店長から買ったのと同じ扱いになるんですか?

なります。会社法15条は「店舗の使用人」とだけ定め、正社員かアルバイトかを区別しません。店内で接客している以上、その店にある商品の販売権限はみなされます。業界裏話ヒント:店が「あれは権限のないバイトだった」と言っても、それは社内の話で客との取引には影響しません。むしろ、店がバイトに店頭で販売させていた外観そのものが、15条の保護を客に与える根拠になります

Q · 「悪意」って、どういう状態だと悪意になるんですか?

ここでの悪意は「道徳的に悪い」ではなく「その店員に販売権限がないと知っていた」という法律用語です(会社法15条ただし書)。単に怪しいと思った程度では足りず、無権限を現実に認識していた必要があります。業界裏話ヒント:店側は「客も薄々気づいていたはず」程度では立証できません。客が無権限を確実に知っていた証拠(社内の指示を見ていた等)がない限り、悪意の主張はほぼ通りません

Q · 個人商店でも会社法が適用されるんですか?会社じゃないのに?

個人商店(会社でない商人)には会社法ではなく、ほぼ同内容の商法26条が適用されます。条文番号と根拠法が違うだけで、店の商品を店員から買った客が守られるという結論は同じです。業界裏話ヒント:相手が株式会社なら会社法15条、個人事業主などの個人商人なら商法26条、と根拠を使い分けます。どちらでも「店にある物品の販売権限はみなされる」という武器自体は変わりません

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第二節
第十六条(通知義務)

代理商(会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人でないものをいう。以下この節において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、会社に対して、その旨の通知を発しなければならない。

会社法 16 条は、会社のため取引を代理・媒介する代理商に対し、取引をしたら遅滞なく会社へ通知する義務を課す。契約への明記を問わず法律上当然に生じる義務である。

よくある質問

Q · 代理店と特約店とディーラーって、法律的には同じものなんですか?

呼び方は業界の慣習で、法律上の評価は実態で決まります。会社の使用人ではなく、独立して継続的に特定の会社のために取引の代理や媒介をしていれば、名称が何であれ会社法 16 条以下の代理商に当たりえます。業界裏話ヒント:契約書のタイトルが「業務委託」でも「販売店契約」でも、実態が代理商なら通知義務(16 条)も留置権(20 条)も自動で付いてきます。タイトルではなく、誰の名でどれだけの裁量を持って取引しているかを見る

Q · 通知が少し遅れただけで、本当に契約を切られたりするんですか?

一回の些細な遅れで直ちに解除とはなりにくいですが、繰り返せば信頼関係の破壊として解除事由(会社法 19 条)になりえます。通知義務違反で会社に損害が出れば、債務不履行として賠償責任(民法 415 条)も負います。業界裏話ヒント:もめたとき会社側は「通知が遅い」という記録を解除の口実に積み上げます。代理商側は、いつ何を通知したかをメールやシステムで残しておくと、後で「誠実に義務を果たしていた」証拠になり、立場が逆転する

Q · 代理店をやってますが、手数料を払ってもらえません。商品を返さず人質にしていいんですか?

代理商には留置権(会社法 20 条)があり、取引によって生じた債権が弁済期にあれば、会社のために占有する物や有価証券を留め置けます。ただし当事者が別段の意思表示で排除している場合は使えません。業界裏話ヒント:多くの代理店がこの留置権を知らずに、商品を素直に返してから泣き寝入りします。返す前に契約書の留置権排除条項の有無を確認する。排除されていなければ、留置こそが未払い回収の最強の交渉カードになる(最新の契約条項をご確認ください)

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第十七条(代理商の競業の禁止)

代理商は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。

会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

代理商が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。

会社法 17 条は、代理商が会社の許可なく競業取引や同業他社の取締役就任をすることを禁じる。違反すれば、得た利益の額がそのまま会社の損害額と推定される。

よくある質問

Q · 代理店をやってるんですが、競業避止って正社員だけの話じゃないんですか?

違います。会社法 17 条は独立した商人である代理商にも競業避止義務を課しています。従業員かどうかではなく、会社の顧客情報や営業ノウハウに継続的に触れる立場かどうかが基準です。業界裏話ヒント:保険・不動産・メーカー販売代理など「代理店」を名乗る多くの契約に、会社法 17 条と委託契約上の競業条項が二重にかかっています。弁護士は契約紛争でまず代理商性の有無を確認する。あなたが代理商と認定されると、2 項の損害額推定まで一気に射程に入る

Q · 会社の許可って、口頭でも大丈夫ですか?それともちゃんと書面にすべき?

条文上は書面を要求していませんが、紛争では「許可があった」ことの立証はあなた側の負担になります。口頭や黙認は後で「そんな許可はしていない」と覆されやすい。業界裏話ヒント:実務では、競業の範囲・期間・対象商品を特定した許可書面を一通取るだけで、17 条違反の主張を根元から封じられる。許可を取りに行く行為自体が「隠れて競業していない」という信頼の証拠にもなり、関係を壊さずに済む。揉めてから探すより、始める前の一枚が安い

Q · もし違反しても、会社に実際の損害がなければ払わなくていいんですよね?

そう簡単ではありません。17 条 2 項は、あなたや第三者が競業で得た利益額を、そのまま会社の損害額と推定します。会社は損害の発生や額を立証しなくてよく、覆す立証責任はあなたに回ります。業界裏話ヒント:この損害額推定は取締役の競業(会社法 423 条 2 項)と同じ発想で、立証が難しい逸失利益を被害者側に有利に扱う装置です。だから会社側の弁護士は、損害そのものより「相手がいくら儲けたか」の資料集めに動く。儲けた記録が、そのままあなたへの請求書になる

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第十八条(通知を受ける権限)

物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百二十六条第二項の通知その他の売買に関する通知を受ける権限を有する。

会社法 18 条は、販売やその媒介を委託された代理商に売買に関する通知を受ける権限を認める規定。代理商への契約不適合通知は本社受領と同じ効力を持つ。

よくある質問

Q · 代理店に文句を言っても、本社にちゃんと伝わってなきゃ無効ですよね?

無効ではない。会社法18条により、物品販売を委託された代理商は売買に関する通知を受ける権限を持つ。あなたが代理店に通知した瞬間、本社が受け取ったのと同じ法的効果が生じる。代理店が本社に報告し忘れても、あなたの通知は到達済みだ。業界裏話ヒント:だからこそ通知は電話ではなくメールや書面で、日付が残る形で代理店に送る。後日「うちは聞いていない」と本社に言われても、代理店受領の記録一枚が、その反論を封じる決め手になる

Q · 売買をただ仲介しただけの代理店でも、クレームを受け取れるんですか?

受け取れる。会社法18条は「販売又はその媒介の委託を受けた代理商」と定めており、契約を締結する権限を持たない媒介代理商であっても、通知を受領する権限はある。両者を区別する必要はない。業界裏話ヒント:実務では「うちは紹介しただけ」と通知受領を拒む代理店があるが、法的には拒めない。仲介役だからと本社を探し回る必要はなく、その仲介者に通知すれば足りる。これを知らない買主が、窓口探しで貴重な数日を失う

Q · 商法526条の「直ちに通知」って、どのくらいの猶予があるんですか?

明確な日数の定めはないが、判例上「直ちに」は数日以内と厳しく解されている。受領後の検査は「遅滞なく」、不適合発見後の通知は「直ちに」。これを怠ると、追完・減額・損害賠償・解除のすべての権利を失う(商法526条2項)。すぐ発見できない不適合は受領から6か月以内。業界裏話ヒント:この期限の厳しさを知らずに「来週まとめて連絡しよう」と構える事業者が後を絶たない。検査は受領した当日に始めるのが鉄則。一日の遅れが数百万円の請求権を消す

Q · 個人で買った商品が不良だった場合も、この厳しい期限が適用されますか?

適用されない。商法526条も会社法18条の前提も「商人間の売買」に限られる。あなたが消費者として買った場合は民法の契約不適合責任が適用され、不適合を知った時から1年以内の通知(民法566条)と、より緩やかだ。業界裏話ヒント:事業者として仕入れるか個人として買うかで、許される時間が劇的に変わる。副業の転売で規模が大きくなり「商人」と扱われ始めると、知らぬ間にこの短い時計が回り出す。自分がどちら側かを意識する人は少ない

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第十九条(契約の解除)

会社及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、二箇月前までに予告し、その契約を解除することができる。

前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、会社及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる。

会社法 19 条は、期間の定めのない代理商契約は 2 箇月前の予告で解除でき、やむを得ない事由があればいつでも即時解除できると定める。即時解除権は契約で奪えない。

よくある質問

Q · 代理店契約書に『解除は6ヶ月前に予告』とあるんですが、それより早くは抜けられないんですか?

1項の2ヶ月という予告期間は任意規定なので、契約で6ヶ月に延ばすこと自体は有効です。ただし2項の『やむを得ない事由』による即時解除権は、通説上、契約では奪えない強行規定的なものと解されています(会社法19条2項)。相手に重大な契約違反があれば、6ヶ月条項にかかわらず即日切れる余地があります。業界裏話ヒント: 予告期間が極端に長い条項は、独占禁止法の優越的地位の濫用として争える場合もある。テンプレと諦める前に、その予告期間の合理性そのものを疑う

Q · 取引先の会社が代理店手数料を3ヶ月払ってくれません。すぐ契約を切りたいです

継続的な手数料の不払いは『やむを得ない事由』に当たる可能性が高く、2項によりいつでも即時解除できます(会社法19条2項)。2ヶ月待つ必要はありません。解除しても、未払い手数料を別途請求する権利はそのまま残ります。業界裏話ヒント: 即時解除する前に、不払いの証拠(請求書、督促のやり取り)を固めておくこと。後で相手が『一時的な遅れだった』と争ってきたとき、その証拠が解除の適法性を左右する

Q · 保険代理店をしていますが、保険会社から突然『来月末で契約終了』と言われました。これは有効ですか?

期間の定めのない代理商契約なら、解除には2ヶ月前の予告が必要です(会社法19条1項)。来月末(約1ヶ月後)の打ち切りは予告期間が不足しており、相手にやむを得ない事由がなければ、不足期間分の損害賠償を請求できます。業界裏話ヒント: 損保代理店の打ち切りには、保険業法や各社の代理店委託契約の解除規定も絡む。会社法19条だけでなく業界固有のルールも併せて確認すると、交渉の材料が一段増える(最新の改正状況をご確認ください)

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第二十条(代理商の留置権)

代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、会社のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。

ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。

会社法 20 条は、代理商が代理・媒介で生じた債権の弁済期が到来したとき、弁済を受けるまで会社のために占有する物や有価証券を留置できると定める。民法と違い牽連性は不要。

よくある質問

Q · 預かっている会社の物を、報酬を払うまで売っぱらってもいいんですか?

だめです。会社法20条の留置権は弁済を受けるまで引き渡さない権利であって、勝手に売って報酬に充てる権利ではありません。それは質権や先取特権の換価権の話です。無断売却は横領罪や債務不履行のリスクを負います。業界裏話ヒント:実務では、留置で相手に圧力をかけつつ、並行して支払督促や少額訴訟で債務名義を取り、最終的に正規の差押え・換価へ進むのが定石。留置はあくまで時間稼ぎと交渉のテコと割り切る

Q · 民法の留置権と何が違うんですか?代理商だと有利になるって本当?

本当です。民法295条の留置権は、預かっている物そのものから生じた債権でないと使えません(牽連性)。でも会社法20条の代理商の留置権は牽連性が不要。取引の代理・媒介で生じた債権なら、手元の会社の物すべてが対象です。業界裏話ヒント:さらに留置物が会社(債務者)の所有でなくてもよいと解されており、商法521条の商人間留置権より対象が広いとされる。代理商という立場は、債権回収の場面で実はかなり強いカードを握っている

Q · 代理店契約を切ったら、元代理店が商品を返してくれません。取り返せますか?

相手の未払い報酬債権が実在し弁済期が来ているなら、会社法20条の留置は適法で、力ずくでは取り返せません。ただし契約書に留置権排除の特約があれば話は別(同条ただし書)。また民法301条で相当の担保を提供すれば留置権の消滅を請求できます。業界裏話ヒント:契約書のテンプレに「代理商は留置権を行使しない」の一文を入れておくだけで、解除時のトラブルの大半は防げる。多くの会社はこの一行を入れ忘れて、解除のたびにもめる

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第四章
第二十一条(譲渡会社の競業の禁止)

事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。

譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。

前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。

会社法 21 条は、事業を譲渡した会社が別段の意思表示のない限り、同一・隣接市町村で譲渡日から 20 年間、同一の事業を行うことを禁止する。特約があれば最長 30 年まで延長できる。

よくある質問

Q · 会社じゃなくて個人でやってる店を売った場合も、20 年間ライバル店を出せないんですか?

はい、ほぼ同じ縛りがあります。個人商人の場合は会社法 21 条ではなく商法 16 条が適用され、内容は同一(20 年・同一および隣接市町村)です。業界裏話ヒント:法人か個人かで条文番号が違うだけで結論はほぼ変わらないため、「うちは個人店だから関係ない」という思い込みが一番危ない。売る前に自分が縛られる側だと認識しておくだけで、契約交渉の入り口が変わる

Q · 契約書に競業しないって書いてないんですけど、それでも訴えられますか?

訴えられます。会社法 21 条 1 項は別段の意思表示がない限り自動適用されるデフォルトルールだからです。むしろ競業を許すには、契約で明示的に外す必要があります。業界裏話ヒント:多くの売主は「書いてなければ自由」と逆に理解していますが、法律上は「書いてなければ禁止」。買い手の弁護士はこのデフォルトを知っているので、あえて条項を入れず後で 21 条を持ち出す戦法もある。売り手は何も書かれていない契約書こそ警戒すべき

Q · 20 年も経てば、もうどこで何の商売をしても完全に自由ですよね?

原則は自由ですが、例外があります。会社法 21 条 3 項は、不正競争の目的がある場合、期間に関係なく同一事業を禁じます。元の店の顧客名簿を使って組織的に客を奪うような行為は、20 年経っても違法になりえます。業界裏話ヒント:実務では「同一の事業」「不正競争の目的」の解釈が争点になりやすく、見解が分かれている論点です。業態や屋号を変えて射程外を狙うケースもありますが、実質が同じなら裁判所は実態で判断する傾向がある

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第二十二条(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任等)

事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

譲受会社が第一項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、事業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

第一項に規定する場合において、譲渡会社の事業によって生じた債権について、譲受会社にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。

会社法22条は、譲受会社が譲渡会社の商号を続用する場合、譲渡会社の事業上の債務も弁済する責任を負うと定める。遅滞なく免責登記または通知をすれば責任を免れる。

よくある質問

Q · 事業譲渡の契約書に『債務は一切引き継がない』と明記してあれば大丈夫ですよね?

契約当事者の間ではその通りですが、契約は外部の債権者を縛りません。会社法22条1項は、商号を続用する譲受会社に法律上当然の責任を負わせます。免責されるには2項の登記または通知が必要です。業界裏話ヒント:M&Aの実務では、屋号を変えるか、変えないなら必ず免責登記をセットで段取りする。譲渡契約書の免責条項だけ見て安心した買い手が、後で簿外債務に襲われるのが典型パターンだ

Q · 看板の屋号をちょっとだけ変えたら責任を免れますか?

完全な同一でなくても、取引通念上『同じ営業の継続』と見られる程度に類似していれば、続用と判断される余地があります。判例には屋号の一部変更でも続用を認めたものがあります(実務上、解釈が分かれている論点)。業界裏話ヒント:「○○屋」を「新・○○屋」程度に変えても安全とは限らない。確実に切りたいなら、屋号を実質的に変えるのと免責登記の二段構えで臨む

Q · 取引先が会社ごと事業を別の会社に売って、もう請求先がありません。泣き寝入りですか?

譲受会社が同じ商号を続用しているなら、22条1項で譲受会社に直接請求できます。ただし譲渡会社の責任自体は、事業譲渡日後2年以内に請求しないと消滅します(22条3項)。業界裏話ヒント:2年の壁を意識して、つかんだら即『請求の予告』を内容証明で打つ。これで譲渡会社の責任の時効進行を止めつつ、資力のある譲受会社への請求を並行できる

Q · 前の会社に売掛金を払う側です。看板どおり新しい会社に払えばいいですか?

譲渡会社の事業上の債権について譲受会社にした弁済は、あなたが善意かつ重大な過失がなければ有効です(22条4項)。債権者がどちらに移ったか分からず新会社に払っても保護されます。業界裏話ヒント:ただし『正当な債権者は前の会社だ』と知っていた(悪意)または容易に知り得た(重過失)場合は二重払いのリスク。譲渡の通知を受けていたなら、念のため誰が正当な債権者か確認してから払う

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第二十三条(譲受会社による債務の引受け)

譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡会社の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる。

譲受会社が前項の規定により譲渡会社の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡会社の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

会社法 23 条は、譲受会社が債務引受の広告をすれば、商号を続用しなくても譲渡会社の債権者から弁済を請求されると定める。譲渡会社の責任は広告日から 2 年で消滅する。

よくある質問

Q · 「今後ともよろしくお願いします」程度の挨拶状でも、借金まで引き受けたことになりますか?

なりません。会社法23条1項の『広告』は、債務を引き受ける意思が客観的に読み取れる内容でなければならず、単なる営業開始の挨拶や事業承継の事実告知だけでは足りない、というのが判例の立場です(最判昭和36.10.13は旧商法下の事案)。業界裏話ヒント:逆に言えば、文面に『債権債務を承継』『従前の取引はそのまま引き継ぐ』といった一語が入った瞬間に責任が発生しうる。事業譲渡の挨拶状は、法務がこの一語の有無を必ず確認する。受け取る側なら、その一語を見つけたら捨てずに保管しておくこと

Q · 22条の商号続用責任と23条は、どう違うんですか?

22条は新会社が旧会社の商号(屋号)をそのまま使い続けた場合に、広告がなくても責任を負わせる規定です。23条は商号を変えた場合でも、債務引受の広告をすれば責任を負う、という補完規定です。外観への信頼を保護する点は共通で、その信頼が『屋号の続用』から生じるか『広告』から生じるかで条文が分かれます。業界裏話ヒント:実務では22条の方が圧倒的に争点になりやすく、23条は『商号は変えたのに広告で墓穴を掘った』というレアケース。だが屋号を変えれば安全だという思い込みのまま広告を打つ会社が後を絶たない

Q · 広告から2年経てば、もう誰からも請求されないんですか?

それは旧会社(譲渡会社)の話です。23条2項で2年の経過により消えるのは旧会社の責任だけで、広告で責任を負った新会社(譲受会社)の責任は消えません。新会社への請求は別途、債権そのものの消滅時効(原則5年、民法166条)で判断されます。業界裏話ヒント:債権者が陥りやすい誤解がこれ。『2年』を新旧両社まとめての時間切れと勘違いし、新会社にも請求しないまま放置する。実際は新会社には5年の猶予が残っていることが多い。2年が来たら旧会社を諦める前に、新会社への請求を立て直すこと

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第二十三条の二(詐害事業譲渡に係る譲受会社に対する債務の履行の請求)

譲渡会社が譲受会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って事業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

ただし、その譲受会社が事業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

譲受会社が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡会社が残存債権者を害することを知って事業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。事業の譲渡の効力が生じた日から十年を経過したときも、同様とする。

譲渡会社について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受会社に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。

会社法 23 条の 2 は、債権者を害すると知って事業を譲渡した場合、残存債権者が譲受会社に承継財産の価額を限度として債務の履行を直接請求できると定める。譲受会社が善意なら責任を負わない。

よくある質問

Q · 事業譲渡って通知も来ないことがありますよね、どうやって気付くんですか?

残存債権者への個別通知が義務づけられていないため、気付くのが遅れがちです。商業登記の変更、請求書や取引窓口の名義変更、従業員の所属変更などが兆候。会社法23条の2第2項の2年の起算点は「詐害を知った時」なので、早期発見が回収を左右します。業界裏話ヒント:実務では、債務者の動きが怪しいと感じたら定期的に登記を確認するのが鉄則。資産の付け替えは「事業譲渡」ではなく「会社分割」の形を取ることも多く、その場合は会社法759条以下の別ルートで残存債権者保護が働く。スキームの名前に惑わされず、実態が資産逃しかどうかを見る

Q · 新会社が「うちは何も知らなかった」と言ったら、もう請求できないんですか?

1項ただし書で、譲受会社が効力発生時に残存債権者を害することを知らなかった場合は責任を負いません。ただし善意は責任を免れたい譲受会社の側が立証すべきと解されており、債権者が悪意を完璧に証明しきる必要はありません。業界裏話ヒント:従業員・設備・得意先をそっくり引き継ぎ、経営陣も実質同一というような「中身が同じ別の器」のケースでは、裁判所は善意の主張を簡単には認めない。逆に言えば、債権者側は両社の人的・物的一体性を示す資料を集めることが突破口になる

Q · 詐害行為取消権(民法424条)とどう違うんですか、どっちを使えばいいんですか?

民法424条は譲渡という行為自体を取り消して財産を取り戻す制度で、訴訟が必要です。会社法23条の2は譲渡を取り消さず、新会社に直接「引き継いだ財産の限度で払え」と請求できる制度。手続が軽く、新会社を直接の相手にできるのが利点です。業界裏話ヒント:実務では両者を選択または併用する。23条の2は引き継がれた財産の価額が上限という制約があるため、被保全債権が大きい場合は詐害行為取消や法人格否認の法理も組み合わせて検討する。一本に絞らず複線で攻めるのがセオリー

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第二十四条(商人との間での事業の譲渡又は譲受け)

会社が商人に対してその事業を譲渡した場合には、当該会社を商法第十六条第一項に規定する譲渡人とみなして、同法第十七条から第十八条の二までの規定を適用する。この場合において、同条第三項中「又は再生手続開始の決定」とあるのは、「、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定」とする。

会社が商人の営業を譲り受けた場合には、当該商人を譲渡会社とみなして、前三条の規定を適用する。この場合において、前条第三項中「、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定」とあるのは、「又は再生手続開始の決定」とする。

会社法24条は、会社と商人がまたぐ事業譲渡で商号続用責任を貫通させる規定。屋号を続用すれば前主の債務を負うが、譲渡後遅滞なく免責の登記・通知をすれば免れる。

よくある質問

Q · 看板の名前を変えれば、前の店の借金は引き継がなくて済みますか?

原則として、商号・屋号を続用しなければ商号続用責任(会社法22条・商法17条)は発生しません。ただし債務引受の広告を出していれば、名前を変えても責任を負います(会社法23条・商法18条)。業界裏話ヒント:「○○食堂」を「○○キッチン」程度に変えただけでは、裁判所が実質同一とみて続用と認定することがある。安全に切るなら屋号を明確に別物にし、かつ譲渡後遅滞なく免責の登記か債権者への個別通知をしておく。この一手間を省くと、名前を変えても請求が通ることがある

Q · 相手が会社じゃなくて個人商店なんですが、会社法の責任規定は関係ないですよね?

関係あります。まさにそこを埋めるのが会社法24条です。会社が個人商店を買う、または会社が個人商店に事業を売る場合、24条が会社を商法上の譲渡人と、または商人を譲渡会社とみなして責任規定を貫通させます。業界裏話ヒント:会社と個人事業主のまたぎ取引は、当事者がどちらの法律が適用されるか分からず無防備になりやすい。だからこそ24条を知っている買い手は、相手が個人でも屋号続用と免責手続を必ず詰める

Q · 事業を売る側です。買い手に屋号を引き継がせたら、私の借金は完全に相手に移りますか?

完全には移りません。商号を続用した譲受人も責任を負いますが、譲渡人であるあなたの責任も事業譲渡後2年間は残ります(会社法22条3項・商法17条3項)。業界裏話ヒント:売り手は「買い手が屋号を続けるから自分はもう関係ない」と誤解しがちだが、2年間は債権者から二者択一で狙われる立場にある。譲渡契約で買い手との間に求償・免責の取り決めを入れておかないと、自分が払わされて買い手から回収できない事態になる

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第二編
第一章
第一節
第二十五条

株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。

次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法

次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法

各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

会社法 25 条は、株式会社の設立方法を発起設立と募集設立の二つに定める。各発起人は設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

よくある質問

Q · 一人でも会社って作れるんですか?

作れる。発起設立なら発起人1人で、その人が全株式を引き受ければ成立する(会社法25条1項1号、25条2項)。資本金も1円から可能だ。業界裏話ヒント:一人発起人・一人株主・一人取締役の会社は実務で大量にある。ただし会社のお金と個人のお金の区別を厳格にしないと、いざというとき法人格否認の法理で個人責任を問われる。口座と帳簿を最初から完全に分けるのが鉄則だ

Q · 発起設立と募集設立、結局どっちがいいんですか?

ほとんどのケースで発起設立だ。募集設立は発起人以外から出資を募るため、創立総会(会社法65条)の開催や設立時役員の選任手続きが必要で、時間もコストも数倍かかる(25条1項各号)。業界裏話ヒント:専門家に任せると、ほぼ自動的に発起設立で進む。募集設立を勧められたら「なぜ」と聞くべきだ。外部出資者を設立段階から入れる特別な事情がない限り、設立後に第三者割当増資で資金を入れる方が柔軟で安く済む

Q · 発起人って、あとから抜けられますか?

設立登記の完了前なら、発起人の地位の譲渡や脱退は他の発起人全員の同意などで可能とされるが、実務上は容易ではない。引き受けた株式の出資履行義務(34条)も残る。業界裏話ヒント:いったん発起人として定款に署名すると、設立中の会社の責任主体になる。「やはりやめる」が効かない場面が多いので、サインする前が唯一の安全な引き返し地点だ。発起人になるかどうかは、出資する意思と責任を負う覚悟が固まってから決める

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第二節
第二十六条(定款の作成)

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

会社法 26 条は、株式会社の設立に際し発起人全員が定款を作成し署名または記名押印すべきことを定める。定款は電磁的記録(電子定款)でも作成でき、紙と異なり印紙税がかからない。

よくある質問

Q · 会社設立の定款って、自分で作っちゃダメなんですか?

作れます。会社法26条は発起人が定款を作成すると定めるだけで、専門家への依頼を義務付けてはいません。ただし絶対的記載事項(第27条)の漏れや電子署名の不備があると、認証の段階で差し戻されます。業界裏話ヒント、自分で紙の定款を作ると印紙税4万円がかかりますが電子定款なら0円。ただし電子署名環境を自前で揃えるコストを考えると、電子定款の作成だけを行政書士に数千円台で頼む方が結局安くつくことが多い

Q · 定款に書いた事業目的以外の仕事はできないんですか?

原則として定款の目的の範囲内でしか事業はできません(会社法27条1号)。目的外の取引が直ちに無効になるわけではありませんが、許認可の申請で目的の記載がないと弾かれることがあります。業界裏話ヒント、だから実務では設立時に「前各号に附帯関連する一切の事業」という包括条項を入れ、さらに将来やる可能性のある事業も先回りして列挙しておく。後から目的を追加すると変更登記で登録免許税3万円がかかるからだ

Q · 発起人って、ただ名前を書くだけの役割ですよね?

違います。発起人は定款に署名し、設立に関する重い責任を負います。会社が成立しなくても、出資された財産の価額が定款記載額に著しく不足すれば填補責任(会社法52条)、任務を怠って第三者に損害が出れば賠償責任(53条)を負います。業界裏話ヒント、頼まれて名前だけ貸し発起人になるのは危険。出資の払込みや現物出資の評価に問題があれば、実際に動いていなくても個人で責任を取らされる

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第二十七条(定款の記載又は記録事項)

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

目的

商号

本店の所在地

設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

発起人の氏名又は名称及び住所

会社法 27 条は、株式会社の定款に必ず記載すべき 5 つの絶対的記載事項(目的・商号・本店所在地・出資財産の価額・発起人)を定め、1 つでも欠ければ定款は無効となる。

よくある質問

Q · 資本金って、本当に1円でも会社作れるんですか?

作れます。会社法は最低資本金制度を撤廃し、27条4号は『設立に際して出資される財産の価額又はその最低額』を定款に書けば足りるとしています。理論上1円でも株式会社は成立します。業界裏話ヒント:ただし資本金額は登記で公開され、取引先・金融機関・賃貸オーナーが与信判断に使います。資本金1円の会社は『すぐ潰れるのでは』と警戒され、口座開設や融資、オフィス賃貸で不利になることが多い。司法書士は『実務上は最低でも数十万〜100万円程度を入れておくと信用面で動きやすい』と内々にアドバイスします

Q · 目的って、どこまで具体的に書けばいいんですか?

事業内容が第三者に特定できる程度の具体性が必要で、『あらゆる事業』のような包括的すぎる記載は公証人の認証で却下されます。一方で許認可が必要な業種(建設業、宅建業、人材派遣、古物商など)は、その許認可の文言に合った目的が定款になければ免許申請が通りません(会社法27条1号)。業界裏話ヒント:将来やる予定の事業も最初から列挙しておくのが定石。後から目的を1つ足すだけで定款変更+登記で登録免許税3万円+手間がかかる。さらに末尾に『前各号に附帯関連する一切の事業』を入れておくと、関連業務の解釈に幅が出る

Q · 定款をあとから直せば、最初の不備は問題ないですよね?

軽微な誤記や追加なら定款変更(株主総会の特別決議、会社法466条・309条2項)で是正できますが、設立時点で絶対的記載事項が欠けていた場合、それは設立無効事由になりえます。ただし設立無効は訴えによってのみ主張でき、しかも会社成立の日から2年以内です(会社法828条1項1号)。業界裏話ヒント:2年を過ぎれば、たとえ発起人の住所が一人分抜けていても会社は有効なまま確定します。逆に言えば設立直後の2年間は、共同創業者との関係がこじれたとき『設立無効』が交渉カードに使われうる火種。創業時こそ定款の5項目を一字一句チェックしておくべき理由がここにあります

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第二十八条

株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。

金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)

株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

会社法 28 条は、現物出資・財産引受け・発起人の報酬・設立費用の四項目を変態設立事項とし、定款に記載しなければ効力を生じないと定める。原則として検査役の調査も必要となる。

よくある質問

Q · 現金がないんですが、パソコンや車を出資して会社って作れるんですか?

作れます。金銭以外の財産を出資する「現物出資」が会社法 28 条 1 号で認められています。ただし定款に品目・価額・割り当てる株式数を記載し、原則として検査役の調査が必要です。業界裏話ヒント:現物出資と財産引受けの総額が 500 万円以下なら検査役は不要(33 条 10 項)。多くの一人会社や小規模スタートアップは、出資する物の評価を意図的に 500 万円以下に設計して、検査役の手間と報酬をまるごと省いています。司法書士はこの設計を当然のようにやりますが、依頼者から聞かないと説明しないことも多い

Q · 設立にかかった費用って、全部会社の経費で落とせますよね?

全部ではありません。28 条 4 号により、設立費用を会社に負担させるには原則として定款記載と検査役調査が必要です。例外は会社法施行規則 5 条が定める費用(定款認証手数料、払込取扱手数料、検査役報酬、設立登記の登録免許税)で、これらは会社に損害を与えるおそれがないものとして記載不要です。業界裏話ヒント:内装費・広告費・備品代を定款に書かずに会社の口座から払うと、後で発起人個人の負担にされ、会社から回収できなくなることがある。設立前後の支払いは、誰が立て替えてどう精算するかを最初に決めておくのが鉄則

Q · 現物出資した物の値段、ちょっと高めに見積もってもバレないですよね?

バレた場合のリスクが大きいです。出資財産の実際の価額が定款記載額に著しく不足すると、発起人と設立時取締役が連帯してその不足額を会社に支払う財産価額填補責任を負います(52 条)。自分のポケットから現金を出す羽目になります。業界裏話ヒント:弁護士・税理士等(不動産なら不動産鑑定士の鑑定評価も)の証明を受けて出資すれば、検査役調査を省けるうえ、注意を怠らなかったことを示せば責任を免れうる。証明を取るコストは、後で填補責任を負うリスクに比べれば安い保険です

Q · 会社ができてから、発起人の持ってる土地を会社に買わせるのはセーフですか?

セーフとは限りません。成立後に譲り受けることをあらかじめ約束していたなら、それは財産引受け(28 条 2 号)で、定款に書いていなければ無効です。書かずに成立直後に買わせる行為は、28 条の規制を逃れる脱法として事後設立(467 条)でも別途規制されます。業界裏話ヒント:定款に書き忘れた財産引受けを会社成立後に追認できるかは、実務上、解釈が分かれています。確実なのは設立前に定款へ書いておくこと。後出しで何とかしようとすると、有効性が宙に浮いたまま将来の紛争の火種になる

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第二十九条

第二十七条各号及び前条各号に掲げる事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及びその他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。

会社法 29 条は、定款に相対的記載事項と任意的記載事項を記載できると定める。相対的記載事項は定款に定めなければ効力を生じず、任意的記載事項は法令に違反しない範囲で自由に定められる。

よくある質問

Q · 定款を無料のひな形でダウンロードして使うのって、何か問題あるんですか?

形式的には認証も登記も通ります。ただし問題はひな形が万人向けに作られている点です。あなたの会社に必要な相対的記載事項(譲渡制限や役員任期の伸長など、会社法 29 条が定款の定めを要求する事項)が抜けていても、エラーは出ません。業界裏話ヒント:司法書士や行政書士は依頼されれば定款を作りますが、こちらから聞かない限り「あなたの会社に譲渡制限の特則や種類株式が要るか」まで踏み込まないことが多い。聞く側が知っているかどうかで、出来上がる定款の防御力が変わる

Q · 定款は後から変更できるんですよね? 設立を急ぐから今は適当でいいのでは?

変更はできますが、ハードルが跳ね上がります。設立時は発起人の意思だけで自由に設計できるのに対し、設立後の変更は株主総会の特別決議(会社法 466 条、309 条 2 項、議決権の 3 分の 2 以上)が必要です。業界裏話ヒント:共同創業者と関係が良好なうちは特別決議も簡単ですが、対立してからは 3 分の 2 が集まらず変更が事実上凍結される。設計の自由度が一番高いのは設立の瞬間だけ、という非対称を知っている人は最初に作り込む

Q · 定款には何でも書いていいんですか? 書いてはいけないことはありますか?

会社法 29 条は「この法律の規定に違反しないもの」と限定しています。強行規定に反する条項(例えば株主の権利を不当に奪う規定)は、書いても効力が生じません。業界裏話ヒント:ネット上の古いひな形には、法改正前の文言や、現行法では無効な条項が紛れていることがある。テンプレを使うなら、最新の会社法に照らして条項の有効性を確認する手間を惜しまないこと(最新の改正状況をご確認ください)

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第三十条(定款の認証)

第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。

前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第三十三条第七項若しくは第九項又は第三十七条第一項若しくは第二項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

会社法 30 条は、株式会社の定款が公証人の認証を受けなければ効力を生じないと定める。認証後は会社成立前まで原則変更できず、認証手続は合同会社などの持分会社には存在しない。

よくある質問

Q · 会社を作るのに定款認証って絶対必要なんですか?

株式会社と一般社団法人なら必要です(会社法 30 条 1 項)。一方、合同会社・合名会社・合資会社といった持分会社には認証手続そのものがありません。業界裏話ヒント:スモールビジネスや一人会社なら合同会社で足りるケースが多く、認証手数料も検査役調査の手間も丸ごと省ける。司法書士や行政書士は依頼があれば株式会社の設立を進めるが、「そもそも合同会社でいいのでは」とは積極的に言わないことがある。形態の選択は依頼の前に自分で決めておくと費用が変わる

Q · 定款を認証した後で間違いが見つかったら、どうすればいいですか?

会社成立前は原則として変更できません(会社法 30 条 2 項)。例外は検査役の調査に関する 33 条 7 項・9 項と、発行可能株式総数を定める 37 条 1 項・2 項の場合だけです。それ以外の誤りは定款を作り直して再認証を受けることになり、手数料が再度かかります。業界裏話ヒント:だからこそ認証前の最終チェックが命になる。電子定款なら作り直し自体は印刷代ゼロで済むが、認証手数料そのものは再度発生する。公証役場へ持ち込む前に、商号・目的・本店所在地・発起人の表記を一字単位で確認しておくこと

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第三十一条(定款の備置き及び閲覧等)

発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。

発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。

ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。

定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求

前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求

定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求

前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

株式会社の成立後において、当該株式会社の親会社社員(親会社の株主その他の社員をいう。以下同じ。)がその権利を行使するため必要があるときは、当該親会社社員は、裁判所の許可を得て、当該株式会社の定款について前項各号に掲げる請求をすることができる。

ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。

定款が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における第二項第三号及び第四号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっている株式会社についての第一項の規定の適用については、同項中「本店及び支店」とあるのは、「本店」とする。

会社法 31 条は、株式会社に定款を本店・支店へ備え置く義務を課し、株主及び債権者は営業時間内ならいつでも閲覧や謄本交付を請求できると定める。

よくある質問

Q · 取引先の会社の定款って、本当に見せてもらえるんですか?

あなたがその会社の債権者(売掛金・貸付金などの債権がある)または株主なら、会社法 31 条 2 項により営業時間内はいつでも閲覧・謄本交付を請求でき、会社は正当な理由なく拒めません。業界裏話ヒント:実務では多くの会社が「定款は社外秘」という建前で渋りますが、株主・債権者に対しては法的根拠がありません。書面で 31 条を明示して請求すると、相手の対応が一変することが多い

Q · 登記簿謄本を取れば定款と同じ情報が手に入りますよね?

いいえ、一致しません。登記事項証明書には商号・目的・資本金・役員などの登記事項しか載らず、定款の相対的記載事項や任意的記載事項(配当の定め、役員任期の特則、株式の内容の細部など)は分からないことが多い。業界裏話ヒント:M&A や与信判断のプロは、登記簿で足りるとは考えず必ず定款本体を取りに行きます。会社の設計思想は定款にしか書かれていないからです

Q · 親会社の株主なんですが、子会社の定款を見られますか?

直接の株主ではないので原則は見られませんが、会社法 31 条 3 項により、権利行使に必要があるときは裁判所の許可を得て閲覧請求できます。業界裏話ヒント:この「親会社社員の閲覧権」は持株会社グループで少数株主が子会社の不正を追及する数少ない武器です。裁判所の許可申立てという一手間がある分、知っている人と知らない人で情報格差が生まれる

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第三節
第三十二条(設立時発行株式に関する事項の決定)

発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数

前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額

成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、前項第一号の設立時発行株式が第百八条第三項前段の規定による定款の定めがあるものであるときは、発起人は、その全員の同意を得て、当該設立時発行株式の内容を定めなければならない。

会社法 32 条は、発起人が設立時発行株式の引受数、払込金額、資本金及び資本準備金の額を定めるには、定款に定めがある場合を除き、発起人全員の同意が必要だと定める。

よくある質問

Q · 発起人が一人だけのときも、全員の同意って必要なんですか?

発起人が一人なら、その一人の意思決定で足ります。32 条は複数発起人を念頭に「全員の同意」を求める規定なので、単独設立では同意の取り合いという問題自体が生じません。業界裏話ヒント:一人設立でも、引受株数・払込額・資本金の額を定めること自体は必要で、これらは設立登記の前提になります。一人だから何も決めなくていいのではなく、決める相手が自分だけ、というだけ。書面化を怠ると後の増資や持分移転で根拠を問われます

Q · 持分の配分、あとで株を譲り合えば調整できますよね?

登記後に株式を譲渡して比率を動かすことは可能ですが、それは別の取引であり、税務上は譲渡所得や贈与の問題が発生し得ます。32 条で最初に決める配分とは法的性質が全く違います。業界裏話ヒント:創業直後に「やっぱり持分を移したい」とやると、低額譲渡が贈与認定されて思わぬ課税が来ることがある。だからこそ最初の配分(32 条)を慎重に決めるべきで、ここをいい加減にすると、後の修正コストが税金という形で跳ね返ります(最新の税制をご確認ください)

Q · 資本金って1円でもいいって聞きましたが、本当ですか?

会社法上、最低資本金の規制はなく、計算上は資本金 1 円の会社も設立できます。資本金・資本準備金の額は 32 条 1 項 3 号で発起人全員の同意により定めます。業界裏話ヒント:1 円設立は可能でも、実務では金融機関の融資審査や取引先の与信で資本金額を見られます。さらに資本金は登録免許税(資本金額の 0.7%、最低 15 万円)の基礎であり、1000 万円・1 億円という税務上の境界線もある。法的に可能な額と、事業上望ましい額は別物です(最新の税制をご確認ください)

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第三十三条(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)

発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、成立後の株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。

第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。

裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。

第二項の検査役は、第四項の報告をしたときは、発起人に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。

裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、第二十八条各号に掲げる事項(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。

発起人は、前項の決定により第二十八条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。

前項に規定する場合には、発起人は、その全員の同意によって、第七項の決定の確定後一週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができる。

前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。

第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合同条第一号及び第二号に掲げる事項

現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項に規定する有価証券をいい、同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合当該有価証券についての第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項

現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)

次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。

発起人

第二十八条第二号の財産の譲渡人

設立時取締役(第三十八条第一項に規定する設立時取締役をいう。)又は設立時監査役(同条第三項第二号に規定する設立時監査役をいう。)

業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者

弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号から第三号までに掲げる者のいずれかに該当するもの

会社法 33 条は、定款に現物出資など変態設立事項の記載があるとき、発起人が裁判所に検査役の選任を申し立てる義務を定める。総額 500 万円以下など 10 項の三例外に該当すれば不要となる。

よくある質問

Q · 現物出資って、必ず検査役を通さないとできないんですか?

いいえ。会社法33条10項に三つの例外があり、(1)現物出資財産等の総額が500万円以下、(2)市場価格のある有価証券で価額が市場価格以下、(3)弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合は検査役が不要です。実務上はほぼ全ての設立がこの例外で処理されます。業界裏話ヒント:検査役を実際に使う設立は極めて稀です。調査に数ヶ月かかり報酬も発生し、設立スケジュールが完全に止まるから。司法書士が最初に確認するのは「500万円に収まるか、証明で逃げられるか」で、検査役は最後の手段です

Q · 顧問税理士に現物出資の価額証明を頼めば、それでOKですよね?

原則OKですが、11項の欠格事由に注意が必要です。発起人本人、財産の譲渡人、設立時取締役・監査役、業務停止処分中の者は証明できず(33条11項)、これらに当たる人の証明は無効になります。業界裏話ヒント:共同創業者が同時に証明者になろうとして失格になるのが典型例です。証明は設立に利害関係のない外部の専門家に頼むのが鉄則で、身内の士業に頼むと後で証明そのものがひっくり返り、設立が振り出しに戻ります

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第三十四条(出資の履行)

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。

ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。

前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行をいう。第七百三条第一号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第二項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。

会社法 34 条は、発起人が引受け後遅滞なく出資金の全額を払い込むか財産の全部を給付する義務を定める。払込みは銀行等の払込取扱機関で行う必要がある。

よくある質問

Q · 資本金って、払い込んだあとすぐ会社の経費に使っちゃダメなんですか?

正当な事業資金としてなら使えます。問題になるのは、払込みの実体がない『見せ金』と評価される使い方です。設立直後に全額を引き出して借入先へ返すような、払込みを仮装しただけの動きが危険です(会社法34条、965条)。業界裏話ヒント:見せ金かどうかは、借入から払込み・引出しまでの期間の短さ、引き出した金の使途、事業の実態の有無で総合判断されます。設立後しばらく口座に置き、事業の支払いとして自然に使った記録を残せるかが、後年の融資審査や税務調査での明暗を分けます

Q · 1人で会社を作るとき、自分の口座に自分でお金を入れれば払込みになりますか?

発起人が定めた払込取扱機関の口座へ、払込みとわかる形で入金する必要があります(会社法34条2項)。一人会社でも、自分の口座への振込として記録に残す形が求められます。業界裏話ヒント:発起設立なら銀行の払込金保管証明は不要で、通帳の表紙・見開き・該当振込ページの写しで足ります(募集設立だと会社法64条の保管証明が必要)。設立方式の選択ひとつで、銀行に保管証明を依頼する手間と費用、日数が丸ごと変わります

Q · 現物出資、たとえば自分のパソコンや車を資本金にするのって面倒だと聞きました。

現物出資は会社法34条1項の『金銭以外の財産の給付』にあたり、原則として検査役の調査(会社法33条)が必要で手間がかかります。ただし総額500万円以下など一定の要件を満たせば検査役調査を省略できます。業界裏話ヒント:少額の現物出資なら省略規定を使い、評価額を低めかつ妥当に設定するのが実務の定石です。過大評価すると会社法52条の不足額填補責任を発起人が負うため、評価を盛るほど自分の首を絞めます(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 共同創業者が約束した出資金を払ってくれません。会社は作れないんですか?

その発起人に対し期日を定めて払込みを催告し、期日までに履行がなければ、その者は株主となる権利を失います(会社法36条、失権)。残りの発起人で設立を進められます。業界裏話ヒント:失権手続をきちんと踏まないまま設立を進めると、後で持株比率や役員ポストを巡って揉めます。創業前の口約束ではなく、誰がいくらをいつまでに払うかを書面化し、不履行時の失権を明記しておくのが、創業者間の崩壊を防ぐ最大の予防線です

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第三十五条(設立時発行株式の株主となる権利の譲渡)

前条第一項の規定による払込み又は給付(以下この章において「出資の履行」という。)をすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡は、成立後の株式会社に対抗することができない。

会社法 35 条は、出資の履行で得た権利株を譲渡しても、成立後の株式会社に対抗できないと定める。譲渡は当事者間では有効だが、会社は発起人を株主として扱う。

よくある質問

Q · 会社を設立する前に、株主になる権利を売るのは違法なんですか?

違法ではありません。会社法 35 条は譲渡を禁止しているのではなく、『成立後の会社に対抗できない』と定めているだけです。売主と買主の間では契約は有効で、罰則もありません。業界裏話ヒント:実務では、設立前に持分を動かす必要が出たときは、譲渡ではなく『発起人の変更』として定款の発起人欄を作り直し、設立をやり直す方が確実です。無効ではない譲渡を後で会社に認めさせる手間より、最初から正しい発起人で登記する方が圧倒的に速い。

Q · 買った権利を、会社にちゃんと株主として認めさせる方法はありますか?

会社の成立を待ち、株式が正式に発生した後で、改めて株式譲渡の手続を踏むのが王道です。ただし成立直後は株券発行前のことが多く、その場合は 128 条 2 項により株券発行前の譲渡も会社に対して効力を生じません。業界裏話ヒント:非公開会社の多くは定款で『株券を発行しない』と定めています。株券不発行会社なら株主名簿の書換えで対抗要件を備えられる(130 条)ので、まず登記簿と定款で株券発行会社かどうかを確認するのが先決です。

Q · 創業メンバーが設立前に抜けたいと言ってきました。どうすればいいですか?

最もきれいなのは、設立登記の前に定款を変更し、発起人の構成を組み直すことです。出資の払戻しと新しい発起人の出資をセットで処理します。業界裏話ヒント:設立中に権利株の譲渡で無理やり処理すると、登記上の発起人と実態がずれ、後の株主総会の有効性まで争われかねません。司法書士は『設立前の持分はいじらず、登記後に株式譲渡で整える』か『登記前に発起人ごと作り直す』の二択を勧めることが多い。中途半端な権利株譲渡が一番こじれる。

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第三十六条(設立時発行株式の株主となる権利の喪失)

発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならない。

前項の規定による通知は、同項に規定する期日の二週間前までにしなければならない。

第一項の規定による通知を受けた発起人は、同項に規定する期日までに出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利を失う。

会社法 36 条は、出資を履行しない発起人に期日を定めて通知し、その期日までに払わなければ株主となる権利を失わせる失権手続を定める。払った発起人だけで会社を成立させられる。

よくある質問

Q · 共同創業者が出資金を払わないと、会社はもう作れなくなるんですか?

いいえ。払った発起人だけで設立要件を満たせば会社は成立します。会社法36条の失権手続を踏めば、払わない発起人を株主から外して登記へ進めます。業界裏話ヒント:実務では、最初から「一人が払わなくても残りで成立できる出資設計」にしておく司法書士が多い。設立時発行株式の割当を払込み確実なメンバーに厚めに置いておくと、一人の不履行でも会社が流れない

Q · 一度失権した発起人が、あとから『やっぱり払う』と言ってきたら戻せますか?

原則として戻せません。失権は期日経過で確定し、株主となる権利は消滅します(会社法36条3項)。改めて株主にするには、設立後に募集株式の発行など別の手続が必要です。業界裏話ヒント:失権者を後で株主に戻すと、設立時の持分比率や登記内容と食い違いが生じやすい。揉めそうなら、最初の出資設計の段階で「払えない場合の持分調整」を発起人間契約に書いておくのが弁護士の定石

Q · 通知って口頭でもいいんですか?メールでも大丈夫?

条文は方法を限定していませんが、後で「通知を受けていない」と争われないよう、配達記録の残る書面(内容証明郵便など)で出すのが安全です。期日の2週間前到達という要件の立証もしやすくなります。業界裏話ヒント:失権の効力が争われる場面では、通知の到達日が2週間前を満たしていたかが核心になる。日付の証拠が残らない口頭やSNSの連絡で済ませると、せっかくの失権が後でひっくり返るリスクがある

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第三十七条(発行可能株式総数の定め等)

発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。

設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。

ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

会社法 37 条は、発起人が成立時までに発行可能株式総数を定款で定めると規定し、公開会社では設立時発行株式をその 4 分の 1 以上とすることを求める。

よくある質問

Q · 発行可能株式総数って、大きく設定しておいたほうが得ですか?

経営側にとっては機動性が増すので有利です。枠内なら公開会社は取締役会決議だけで増資でき、株主総会を開く手間が省けます(会社法201条)。ただし既存株主や投資家からは希釈リスクとして警戒されます。業界裏話ヒント:実務では設立時発行株式の数倍程度に抑えるのが無難とされ、極端に大きい枠は「何か企んでいるのか」と投資家のデューデリで減点材料になることがある。雛形の数字をそのまま使うと、後で交渉のたびに説明を求められる

Q · 非公開会社なら、発行可能株式総数は無制限に設定できるんですか?

37条3項ただし書により、非公開会社には4倍規制(設立時発行株式が発行可能株式総数の4分の1以上という制限)が適用されません。理屈上は発行済の何百倍でも設定可能です。業界裏話ヒント:多くのスタートアップは非公開会社として設立し、将来の増資やストックオプションに備えて枠を大きめに取る。ただし枠が大きいほど経営者が新株を乱発できる余地も大きく、少数株主は株主間契約で歯止めをかけないと、定款の枠だけでは守られない

Q · 設立後に発行可能株式総数を増やしたくなったら、どうすればいいですか?

成立後は37条ではなく113条が適用され、定款変更すなわち株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上)が必要です。公開会社なら変更後も発行済株式総数の4倍を超える枠は設定できません(113条3項)。業界裏話ヒント:設立段階で発起人全員の同意だけで枠を決められる「軽さ」は、登記が通った瞬間に消える。だから経験のある起業支援の専門家は、設立時に将来の資金調達ラウンドまで見越して枠を設計する。後から変えるコストを知っているからだ

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第四節
第三十八条(設立時役員等の選任)

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、前項の規定による設立時取締役の選任は、設立時監査等委員(株式会社の設立に際して監査等委員(監査等委員会の委員をいう。以下同じ。)となる者をいう。以下同じ。)である設立時取締役とそれ以外の設立時取締役とを区別してしなければならない。

次の各号に掲げる場合には、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、当該各号に定める者を選任しなければならない。

設立しようとする株式会社が会計参与設置会社である場合設立時会計参与(株式会社の設立に際して会計参与となる者をいう。以下同じ。)

設立しようとする株式会社が監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)である場合設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役となる者をいう。以下同じ。)

設立しようとする株式会社が会計監査人設置会社である場合設立時会計監査人(株式会社の設立に際して会計監査人となる者をいう。以下同じ。)

定款で設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役。以下この項において同じ。)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。

会社法 38 条は、発起人が出資の履行完了後、遅滞なく設立時取締役を選任すべきことを定める。定款で定められた者は出資完了時に選任されたものとみなされる。

よくある質問

Q · 設立時取締役って、会社ができたあとの取締役と何が違うんですか?

設立時取締役は、会社がまだ登記されていない設立段階で選ぶ役員で、主な仕事は設立経過の調査(46 条)です。会社が成立すれば原則そのまま最初の取締役になりますが、成立後の取締役選任(329 条)とは制度が別です。業界裏話ヒント:設立時取締役は飾りではなく、現物出資の過大評価などがあれば財産価額填補責任(52 条)を負う検査役のような立場。司法書士はこの責任を依頼者に細かく説明しないことが多いので、名前を入れる人には必ず伝えておく

Q · 取締役の名前は定款に書いた方がいいんですか、別で決めた方がいいんですか?

急ぐなら定款に書く方が早いです。定款に設立時取締役として定めておけば、出資の履行が完了した時点で自動的に選任されたとみなされ(第 4 項)、別途の選任手続や議事録が不要になります。業界裏話ヒント:逆に、設立直前まで人選を確定したくない、あるいは出資比率で揉める可能性があるなら、定款に書かず出資後に発起人の議決権の過半数(40 条)で選ぶ方が柔軟。どちらにするかは創業メンバーの確定度で決めるのが実務のコツ

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第三十九条

設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は、三人以上でなければならない。

設立しようとする株式会社が監査役会設置会社である場合には、設立時監査役は、三人以上でなければならない。

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は、三人以上でなければならない。

第三百三十一条第一項(第三百三十五条第一項において準用する場合を含む。)、第三百三十三条第一項若しくは第三項又は第三百三十七条第一項若しくは第三項の規定により成立後の株式会社の取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役又は会計監査人となることができない者は、それぞれ設立時取締役(成立後の株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人(以下この節において「設立時役員等」という。)となることができない。

第三百三十一条の二の規定は、設立時取締役及び設立時監査役について準用する。

会社法 39 条は設立時役員等の員数を定め、取締役会設置会社では設立時取締役 3 人以上を要する。取締役会を置かない会社なら 1 人でよく、欠格事由のある者は設立時役員等になれない。

よくある質問

Q · 株式会社って、やっぱり取締役3人と監査役がいないと作れないんですよね?

いいえ。それは2006年施行の会社法より前、旧商法時代のルールです。現行法では取締役会を置かない「取締役会非設置会社」を選べば、設立時取締役は一人で足ります(39条1項の反対解釈)。業界裏話ヒント:司法書士やネット記事の一部が古い情報のまま「3人必要」と案内していることがあります。まず定款で取締役会を置くかどうかを決める、それで必要人数は自動的に決まる、という順番を押さえてください

Q · 役員に入れたい人が昔ちょっと罪を犯してるんですが、大丈夫ですか?

罪の種類と刑の状況次第です。会社法・金融商品取引法などの特定の罪なら執行終了等から2年間、それ以外でも禁錮以上の刑の執行中などは欠格事由に当たり(331条1項、39条4項で設立時にも適用)役員になれません。業界裏話ヒント:すべての前科が欠格になるわけではありません。罰金刑だけのケースや執行猶予が満了した後など、就任できる場合も多い。自己判断で諦めず、罪名と刑の確定・執行状況を確認してから動いてください

Q · 成年後見を受けている親族を、名前だけでも役員にしたいのですが無理ですか?

2021年3月施行の改正前は当然に欠格でしたが、現在は331条の2の手続(本人の同意、成年後見人による就任承諾など)を踏めば就任でき、これが39条5項で設立時役員にも準用されます(最新の改正状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:「名前だけ」の役員は、本人が職務を担えないと任務懈怠責任のリスクを背負わせることになります。形式上は可能でも、実質を伴わない起用は後でトラブルの種になります

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第四十条(設立時役員等の選任の方法)

設立時役員等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。

前項の場合には、発起人は、出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

前項の規定にかかわらず、設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、取締役の全部又は一部の選任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は、当該取締役となる設立時取締役の選任についての議決権を行使することができない。

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合における前項の規定の適用については、同項中「、取締役」とあるのは「、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役」と、「当該取締役」とあるのは「これらの取締役」とする。

第三項の規定は、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の選任について準用する。

会社法 40 条は、発起設立の設立時役員等の選任を発起人の議決権の過半数で決すると定める。議決権は出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個である。

よくある質問

Q · 共同創業で株を半分ずつにしたら、取締役は誰が決めるんですか?

発起人の議決権の過半数で決めます(会社法40条1項)。50対50だと過半数に届かず、二人の意見が割れれば選任決議が成立しません。いわゆるデッドロックです。業界裏話ヒント:投資家やVCが「50対50の創業は避けろ」と口を揃えるのはこのため。実務では51対49にする、または重要事項だけ全員同意とする創業者間契約をセットで結ぶ。株の比率だけ見て安心してはいけない。

Q · 出資のお金をまだ振り込んでいない発起人にも投票権はありますか?

ありません。議決権は「出資の履行をした」設立時発行株式一株につき一個です(会社法40条2項)。払込みを済ませていない発起人は、その分の議決権を持ちません。業界裏話ヒント:創業のドタバタで一人だけ払込みが遅れると、その隙に残りのメンバーだけで役員が決まってしまうことがある。払込みのタイミングを揃える、または期日を創業者間契約で縛るのが実務の防御策。

Q · 種類株式を使えば、特定の人に取締役を選ぶ権利を持たせないようにできますか?

できます。取締役の選任について議決権を行使できない種類株式を発行すれば、その株主は取締役選任の投票に参加できません(会社法40条3項)。業界裏話ヒント:VC出資で優先株を発行する際、この仕組みを使って創業者と投資家の取締役指名権を細かく設計する。スタートアップの資本政策の肝で、ここを甘く組むと後のラウンドで創業者が取締役会の過半数を失う。最初の設計が数年後の支配権を決める。

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第四十一条(設立時役員等の選任の方法の特則)

前条第一項の規定にかかわらず、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合には、設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)の選任は、同条第二項第九号に定める事項についての定款の定めの例に従い、当該種類の設立時発行株式を引き受けた発起人の議決権(当該種類の設立時発行株式についての議決権に限る。)の過半数をもって決定する。

前項の場合には、発起人は、出資の履行をした種類の設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の種類の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

前二項の規定は、株式会社の設立に際して第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行する場合について準用する。

会社法 41 条は、役員選任権付種類株式を発行する場合、設立時取締役を当該種類の発起人の議決権の過半数で選任すると定め、原則の選任方法を上書きする。

よくある質問

Q · 出資が少なくても、本当に取締役を確実に一人入れられるんですか?

可能です。役員選任権付種類株式(会社法 108 条 1 項 9 号)を設立時に発行し、その種類の株主だけで取締役を選任すると定款に定めれば、41 条の手続で出資比率に関係なく指名できます。業界裏話ヒント:VC のタームシートにある『投資家指名取締役』は、口約束や株主間契約だけだと反故にされる余地が残りますが、種類株式に載せれば定款レベルで縛れます。資金を出す側も受ける側も、契約書の一行より定款の種類株式設計を先に確認するのが実務の勘所です

Q · この種類株式は上場するときも使えますか?

使えません。役員選任権付種類株式は公開会社(株式に譲渡制限のない会社)では発行できず(108 条 1 項但書)、上場の前に整理が必要です。業界裏話ヒント:設立時にこの株式を入れたまま上場準備に入ると、種類株式の消却・転換という追加作業が発生し、スケジュールを圧迫します。出口(IPO)を見据えるなら、導入の段階で『どう畳むか』の条項まで設計しておくのが、後で慌てないコツです(最新の上場審査基準をご確認ください)

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第四十二条(設立時役員等の解任)

発起人は、株式会社の成立の時までの間、その選任した設立時役員等(第三十八条第四項の規定により設立時役員等に選任されたものとみなされたものを含む。)を解任することができる。

会社法 42 条は、発起人が会社の成立時までの間、選任した設立時役員等を正当な理由なく議決権の過半数で解任できると定める。成立後は株主総会決議が必要となる。

よくある質問

Q · 会社を作る途中で共同経営者と仲違いしたら、役員から外せますか?

発起設立なら、会社が成立する前まで発起人の議決権の過半数で解任できます(第42条、第43条)。正当な理由は不要で、損害賠償も原則発生しません。業界裏話ヒント: この「タダで外せる窓」は設立登記が完了した瞬間に閉じる。登記後に同じことをすると株主総会決議と正当事由が必要で、理由が認められなければ相手から損害賠償を請求される(第339条2項)。司法書士は登記を淡々と進めるが、役員に不安があるなら登記前に相談すべき

Q · 設立時役員の解任に、本人の同意は要りますか?

要りません。発起人の議決権の過半数、設立時監査等委員や設立時監査役なら3分の2以上の決議だけで成立します(第43条)。本人がどれだけ反対しても、議決権が足りなければ覆せません。業界裏話ヒント: つまり解任の主導権は「誰がいくら出資して何議決権を持つか」で事前に決まっている。共同創業で議決権をきれいに二等分すると、どちらも過半数を作れず誰も解任できないデッドロックに陥ることがある。出資比率は仲の良いうちに設計しておく

Q · 募集設立でも発起人が役員を解任できますか?

できません。募集設立の場合、設立時役員等の解任は創立総会の決議によります(第88条)。発起人だけの判断では外せず、引受人を含む創立総会の多数決が必要です。業界裏話ヒント: 発起設立か募集設立かで、解任の主導権を握る主体が丸ごと変わる。少人数で機動的に動きたいなら発起設立、外部から広く資金を募るなら募集設立、という選択が、後の人事の自由度まで規定している。設立方式の選択は資金調達だけの問題ではない

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第四十三条(設立時役員等の解任の方法)

設立時役員等の解任は、発起人の議決権の過半数(設立時監査等委員である設立時取締役又は設立時監査役を解任する場合にあっては、三分の二以上に当たる多数)をもって決定する。

前項の場合には、発起人は、出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

前項の規定にかかわらず、設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において、取締役の全部又は一部の解任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は、当該取締役となる設立時取締役の解任についての議決権を行使することができない。

設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合における前項の規定の適用については、同項中「、取締役」とあるのは「、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役」と、「当該取締役」とあるのは「これらの取締役」とする。

第三項の規定は、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の解任について準用する。

会社法43条は、設立登記前の設立時役員等の解任を発起人の議決権の過半数で決定すると定める。設立時監査等委員である取締役と設立時監査役の解任には三分の二以上が必要となる。

よくある質問

Q · 共同創業者を、会社を登記する前に役員から外すことってできるんですか?

できます。設立登記の前なら株主総会は不要で、発起人の議決権の過半数で解任を決められます(43条1項)。ただし設立時の監査等委員である取締役や設立時監査役を外すには三分の二以上が必要です。業界裏話ヒント:登記前と登記後では難易度が段違いです。登記後は339条の株主総会決議となり、正当な理由なく任期途中で外せば会社が損害賠償を負う(339条2項)。揉めるなら登記前に決着させるのが鉄則で、これを知っているかどうかで創業者間の力関係が変わる

Q · 出資を約束したけどまだ払ってない人にも、解任の投票権はありますか?

ありません。議決権は出資の履行をした設立時発行株式の数に応じて与えられます(43条2項)。口約束だけで一円も払い込んでいない発起人は、その段階では議決権ゼロです。業界裏話ヒント:だからこそ主導権を取りたい創業者は、合意ができたら真っ先に自分の出資を払い込みます。払込みの順番が、そのまま議決権の数字になり、誰を残し誰を外すかの決定権になる。『出すと言った』と『出した』の差が、ここで決定的に効いてくる

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第四十四条(設立時取締役等の解任の方法の特則)

前条第一項の規定にかかわらず、第四十一条第一項の規定により選任された設立時取締役(設立時監査等委員である設立時取締役を除く。次項及び第四項において同じ。)の解任は、その選任に係る発起人の議決権の過半数をもって決定する。

前項の規定にかかわらず、第四十一条第一項の規定により又は種類創立総会(第八十四条に規定する種類創立総会をいう。)若しくは種類株主総会において選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。第四項において同じ。)を株主総会の決議によって解任することができる旨の定款の定めがある場合には、第四十一条第一項の規定により選任された設立時取締役の解任は、発起人の議決権の過半数をもって決定する。

前二項の場合には、発起人は、出資の履行をした種類の設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の種類の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

前項の規定にかかわらず、第二項の規定により設立時取締役を解任する場合において、取締役の全部又は一部の解任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは、当該種類の設立時発行株式については、発起人は、当該取締役となる設立時取締役の解任についての議決権を行使することができない。

前各項の規定は、第四十一条第一項の規定により選任された設立時監査等委員である設立時取締役及び同条第三項において準用する同条第一項の規定により選任された設立時監査役の解任について準用する。この場合において、第一項及び第二項中「過半数」とあるのは、「三分の二以上に当たる多数」と読み替えるものとする。

会社法 44 条は、設立時取締役の解任を発起人の議決権の過半数で決定できると定める。ただし設立時監査役・監査等委員の解任には三分の二以上の多数を要する。

よくある質問

Q · 創業メンバーで均等に株を分けたんですが、何か問題ありますか?

設立中に仲間割れすると、誰も過半数を取れず、問題ある設立時取締役を解任できない膠着に陥ります。会社法44条の解任は、発起人の議決権(出資株式数に比例、3項)の過半数で決まるためです。業界裏話ヒント:司法書士や弁護士が創業相談でまず確認するのが出資比率です。きれいに50対50で割ると、対立したとき何も決められないデッドロックになる。あえて一人を過半数にするか、信頼できる第三者を少数株主に入れて調整弁にするのが実務の知恵です

Q · 設立時の監査役だけ解任のハードルが高いのはなぜですか?

監査役や監査等委員は経営を監視するお目付け役で、簡単に切られては独立性が保てないからです。会社法44条5項は、設立段階でも解任に三分の二以上の賛成を要求します。業界裏話ヒント:この三分の二の思想は会社成立後にも通じます。成立後、監査役の解任には株主総会の特別決議(三分の二以上、会社法309条2項)が必要です。投資家が監査役ポストを押さえたがるのは、一度入れれば過半数では外せないから。人事の安全弁がどこにあるかを知る人は、設立設計の段階でそこを先に押さえます

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第四十五条(設立時役員等の選任又は解任の効力についての特則)

株式会社の設立に際して第百八条第一項第八号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行する場合において、当該種類の株式の内容として次の各号に掲げる事項について種類株主総会の決議があることを必要とする旨の定款の定めがあるときは、当該各号に定める事項は、定款の定めに従い、第四十条第一項又は第四十三条第一項の規定による決定のほか、当該種類の設立時発行株式を引き受けた発起人の議決権(当該種類の設立時発行株式についての議決権に限る。)の過半数をもってする決定がなければ、その効力を生じない。

取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く。)の全部又は一部の選任又は解任当該取締役となる設立時取締役の選任又は解任

監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役の全部又は一部の選任又は解任これらの取締役となる設立時取締役の選任又は解任

会計参与の全部又は一部の選任又は解任当該会計参与となる設立時会計参与の選任又は解任

監査役の全部又は一部の選任又は解任当該監査役となる設立時監査役の選任又は解任

会計監査人の全部又は一部の選任又は解任当該会計監査人となる設立時会計監査人の選任又は解任

前項の場合には、発起人は、出資の履行をした種類の設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の種類の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。

会社法45条は、設立時に役員選任権付種類株式を発行する場合、その種類株式を引き受けた発起人の議決権の過半数の決定がなければ、設立時役員の選任・解任の効力が生じないと定める。

よくある質問

Q · 少ない出資で会社の取締役を自分の思い通りにすることって、本当にできるんですか?

できる。役員選任権付種類株式(会社法108条1項8号)を自分側に設定し、その種類株主が設立時取締役を選任すると定めれば、出資比率が少数でも取締役の人事を握れる。設立段階の効力は45条が定めている。業界裏話ヒント:この種類株式は公開会社(株式に譲渡制限のない会社)では発行できず、指名委員会等設置会社も使えない。だから上場を見据えるなら、上場前にこの種類株式を普通株へ整理する出口設計まで最初に描いておく必要がある。専門家はここを真っ先に確認する

Q · 共同経営で50対50だと喧嘩したとき会社が止まると聞きました。防げますか?

防げる。各当事者をそれぞれ別の種類の株主とし、各種類が取締役を一人ずつ選任する役員選任権付種類株式を設立時に設計すれば、人事の膠着を制度的に回避できる。発起設立では45条がその効力を支える。業界裏話ヒント:ただし種類株式だけでは重要事項の議決のデッドロックは完全には解けない。実務では種類株式に加えて、株主間契約に買取請求・コールオプション・調停条項を組み合わせる。種類株式は骨格、株主間契約は関節だと考えるとよい

Q · 設立のあとからでも種類株式って入れられないんですか?

入れられるが、設立時より格段に難しくなる。定款変更のための株主総会特別決議(会社法466条、309条2項)に加え、不利益を受ける種類株主がいれば種類株主総会の決議(同322条)も必要になる。業界裏話ヒント:すでに対立が表面化してから入れようとすると、まさに不利益を受ける側が種類株主総会で拒否権を発動できるため、事実上不可能になることが多い。だから種類株式は揉める前、設立時に仕込むのが鉄則で、このタイミングを逃すと一生入れられないこともある

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第五節
第四十六条

設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合にあっては、設立時取締役及び設立時監査役。以下この条において同じ。)は、その選任後遅滞なく、次に掲げる事項を調査しなければならない。

第三十三条第十項第一号又は第二号に掲げる場合における現物出資財産等(同号に掲げる場合にあっては、同号の有価証券に限る。)について定款に記載され、又は記録された価額が相当であること。

第三十三条第十項第三号に規定する証明が相当であること。

出資の履行が完了していること。

前三号に掲げる事項のほか、株式会社の設立の手続が法令又は定款に違反していないこと。

設立時取締役は、前項の規定による調査により、同項各号に掲げる事項について法令若しくは定款に違反し、又は不当な事項があると認めるときは、発起人にその旨を通知しなければならない。

設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合には、設立時取締役は、第一項の規定による調査を終了したときはその旨を、前項の規定による通知をしたときはその旨及びその内容を、設立時代表執行役(第四十八条第一項第三号に規定する設立時代表執行役をいう。)に通知しなければならない。

会社法 46 条は、設立時取締役が選任後遅滞なく現物出資の価額や出資の履行、設立手続の適法性を調査する義務を定める。違反や不当な事項があれば発起人に通知しなければならない。

よくある質問

Q · 現物出資って、現金じゃなくても会社にお金を入れたことになるんですか?

なります。現物出資は不動産・機械・車・特許・有価証券など現金以外の財産で出資すること(会社法28条1号)で、資本金に計上できます。ただし価額の妥当性が厳しくチェックされ、500万円超なら原則として検査役の調査が必要です(33条)。業界裏話ヒント:現物出資を過大評価して資本金を大きく見せると、設立時取締役全員が差額の填補責任(52条)を負う。「資本金1000万円の会社」に見せたい見栄が、後で全員の借金に化ける。後腐れのなさでは現金出資が圧倒的に上だ

Q · 名前だけの取締役なら、責任はないですよね?

「ない」では済みません。設立時取締役は調査義務を負い(46条)、調査を怠ったり現物出資の価額不足があれば連帯して責任を負います(52条、53条)。「名義貸しで実態は何もしていない」は免責理由になりにくいのが実情です。業界裏話ヒント:名義貸し取締役が個人破産に追い込まれる事件は珍しくない。報酬ゼロで名前を貸しただけでも、調査義務違反の責任は受け取った報酬とは無関係に発生する。中身を確認できないなら、頼まれても断るのが鉄則だ

Q · 検査役の調査って省略できると聞いたんですが、本当ですか?

本当です。現物出資の総額が500万円以下、市場価格のある有価証券、または弁護士・公認会計士・税理士等の証明がある場合は、検査役の調査が不要になります(33条10項各号)。ただし省略した分、設立時取締役の調査義務(46条1項1号・2号)が重くなります。業界裏話ヒント:専門家の証明をつければ検査役は省けるが、その証明が後で「相当でない」と判断されれば、証明した専門家も、それを調査した取締役も責任を問われる。証明書は免罪符ではない

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第六節
第四十七条(設立時代表取締役の選定等)

設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)である場合には、設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役を除く。)の中から株式会社の設立に際して代表取締役(株式会社を代表する取締役をいう。以下同じ。)となる者(以下「設立時代表取締役」という。)を選定しなければならない。

設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、設立時代表取締役を解職することができる。

前二項の規定による設立時代表取締役の選定及び解職は、設立時取締役の過半数をもって決定する。

会社法47条は、取締役会設置会社の設立時に設立時取締役の過半数で設立時代表取締役を選定すると定める。会社の成立の時までは同じ過半数で解職もできる。

よくある質問

Q · 創業メンバーで会社を作るんですが、代表取締役って出資が一番多い人がなるんですよね?

いいえ、出資比率は無関係です。会社法47条では設立時取締役の過半数、つまり頭数で設立時代表取締役を選定します。出資をいくら多く出しても、設立時取締役に入っていなければ選定にも解職にも一票を投じられません。業界裏話ヒント:実務では出資比率と取締役の頭数構成を別々に設計するのが鉄則です。経営の主導権は取締役の頭数、配当や残余財産は持株比率。この二つを混同したまま設立すると、出資は多いのに代表を選べない、という事態が起きる。

Q · 登記が終わる前なら、代表取締役を別の人に変えられるって本当ですか?

本当です。会社法47条2項により、会社の成立(設立登記の完了)までは設立時取締役の過半数で設立時代表取締役を解職できます。成立後は取締役会決議(362条)が必要になり手続が重くなります。業界裏話ヒント:創業直後の主導権争いで成立前の解職権を使えるかは、登記が完了したかの一点で決まります。争いの兆候があるなら攻める側は成立前に動き、守る側は登記を急ぐ。司法書士に登記スケジュールを聞くだけで、自分が今どちらの局面にいるか分かる。

Q · 指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社だと、選び方が違うんですか?

違います。指名委員会等設置会社は47条の対象外で、設立時代表執行役を選ぶルート(会社法48条)になります。監査等委員会設置会社では、監査等委員である設立時取締役は設立時代表取締役になれません(47条1項括弧書き)。業界裏話ヒント:どの機関設計を選ぶかで代表者の決め方そのものが変わるため、定款で機関設計を決める段階で『この器なら誰を代表にできるか』を逆算しておく。器を決めてから人を考えると、選びたい人を代表にできないミスマッチが起きる。

Q · 取締役会を置かない小さな会社でも、設立時代表取締役を選ぶ必要がありますか?

47条1項が選定を義務づけるのは取締役会設置会社の場合です。取締役会非設置会社では、設立時取締役が複数いても各自が会社を代表するのが原則で、必ず代表者を一人に絞る選定は要りません(定款や互選で定めることは可能)。業界裏話ヒント:取締役会を置くか置かないかで代表者選びの強制度がまるで違います。小規模スタートアップが取締役会を置くと、47条の選定手続と議事録が登記に必須になり事務負担が増える。器の選択は設立後の運営コストまで見て決める。

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第四十八条(設立時委員の選定等)

設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合には、設立時取締役は、次に掲げる措置をとらなければならない。

設立時取締役の中から次に掲げる者(次項において「設立時委員」という。)を選定すること。

1株式会社の設立に際して指名委員会の委員となる者

2株式会社の設立に際して監査委員会の委員となる者

3株式会社の設立に際して報酬委員会の委員となる者

株式会社の設立に際して執行役となる者(以下「設立時執行役」という。)を選任すること。

設立時執行役の中から株式会社の設立に際して代表執行役となる者(以下「設立時代表執行役」という。)を選定すること。ただし、設立時執行役が一人であるときは、その者が設立時代表執行役に選定されたものとする。

設立時取締役は、株式会社の成立の時までの間、設立時委員若しくは設立時代表執行役を解職し、又は設立時執行役を解任することができる。

前二項の規定による措置は、設立時取締役の過半数をもって決定する。

会社法 48 条は、指名委員会等設置会社の設立時に、設立時取締役が設立時委員・設立時執行役・設立時代表執行役を選定・選任することを定める。決定は設立時取締役の過半数による。

よくある質問

Q · 指名委員会等設置会社って、普通の会社と設立のとき何がそんなに面倒なんですか?

三つの委員会(指名・監査・報酬)と、業務執行を担う執行役を、設立の段階で組み立てる必要があります(48条1項)。しかも各委員会は委員の過半数が社外取締役でなければならない(400条)ため、成立前に複数の社外取締役を確保しておく必要があります。業界裏話ヒント:この社外取締役確保の負担が重いため、実際にこの形態を選ぶ上場企業はごく少数です。2014年改正で社外取締役1名以上で足りる監査等委員会設置会社ができてから、多くの会社はそちらに流れました。「ガバナンスが最も強い形態=最善」ではなく、自社が部材をそろえられるかで選ぶのが実務です

Q · 設立時執行役が一人だけなら、代表執行役は別に選ばなくていいんですか?

選ばなくて大丈夫です。設立時執行役が一人のときは、その者が自動的に設立時代表執行役に選定されたものとみなされます(48条1項3号ただし書)。複数いる場合だけ、設立時取締役の過半数で代表執行役を選定します(同条3項)。業界裏話ヒント:この自動ルールは「設立時」限定です。会社成立後に代表執行役を選び直したり増やしたりするときは、420条の取締役会決議という別の手続が必要になります。設立時の身軽さと成立後の手続の重さは別物だと押さえておくと、後で慌てません

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第七節
第四十九条(株式会社の成立)

株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

会社法 49 条は、株式会社が本店所在地で設立の登記をすることによって成立すると定める。定款認証や出資の払込みでは会社は成立せず、登記完了までは法人格が発生しない。

よくある質問

Q · 定款認証と出資の払込みが終わったら、もう会社はできているんですよね?

できていません。定款認証も払込みも設立手続の途中段階で、株式会社が法律上成立するのは本店所在地で設立登記が完了した瞬間です(会社法49条)。登記申請から完了まで通常数日から1週間程度かかり、その間は会社は存在しません。業界裏話ヒント:法務局が受け付けた申請日が「設立年月日」になるのが原則で、補正がなければ申請日に遡って成立日が決まります。だから縁起のいい日や月初に設立したいなら、その日に法務局へ申請を出すよう逆算する。完了日ではなく申請日が誕生日になる、ここを知らない起業家は意外と多い

Q · 登記する前に会社の名前で借りた事務所、家賃は誰が払うんですか?

原則としてその契約をした発起人個人が責任を負います。会社がまだ成立していない以上、契約の当事者は法人ではなくあなた個人だからです。会社成立後に会社が債務を引き受ける手続を取れば移せますが、自動では移りません。業界裏話ヒント:開業準備行為(店舗賃貸や機材調達)が当然に成立後の会社に帰属するかは、実務上、解釈が分かれている論点です。安全策は、契約書に『設立予定の会社が成立後に本契約を引き受ける』旨を明記しておくこと。この一文の有無で、設立に失敗したときの個人負担が大きく変わる

Q · 会社を作るのをやめたら、それまでに使ったお金や契約はどうなりますか?

会社が成立しなかった場合、設立に関してした行為の責任と費用は、原則として発起人が連帯して負担します(会社法56条参照)。あなた個人または発起人全員が、それまでの契約や費用を被ることになります。業界裏話ヒント:発起人が複数いると、設立断念時に『誰がいくら出すか』で必ず揉めます。創業前に、誰がどの名義で契約し、失敗したら費用をどう分けるかを書面で決めておくこと。この合意書がないと、結局いちばん資力のある人や、お人好しの一人に全額が押し付けられる

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1165条の本則 / 32条の附則

この法令を引用する

会社法(平成十七年法律第八十六号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/417AC0000000086

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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本頁資料來源:e-Gov 法令検索(デジタル庁)·整理提供:法律人 LawPlayer· lawplayer.com