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法律

商法

しょうほう

法令番号
明治三十二年法律第四十八号
公布日
明治三十二年三月九日
条数
本則483条・附則66条

法令の構成 編・章を選ぶと該当条文へ移動します

第一編
第一章
第一条(趣旨等)

商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。

商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。

商法 1 条は商事の法源と適用順序を定める。商事は特別法・商法が優先し、商法に定めがない事項は商慣習に従い、商慣習もないとき初めて民法が適用される。

よくある質問

Q · 商慣習って、本当に民法より強いんですか? 法律のほうが上だと思っていました。

強いです。商法1条2項は、商事について商法に定めがなければ、まず商慣習に従い、商慣習もないときに初めて民法を適用すると定めます。つまり商慣習は民法の規定に優先します。業界裏話ヒント:民法92条は『当事者が慣習による意思を持つと認められるとき』に限って慣習を認めますが、商慣習は当事者の意思を問わず適用される点で一段強い。この差を知る相手は、交渉で商慣習を先に押さえてきます

Q · うちの業界の『当たり前』が商慣習だと、どうやって証明するんですか?

確立した慣行であり、その業界で規範として通用していることを示します。業界団体のガイドライン、標準約款、過去の取引実績、同種取引の鑑定意見などが証拠になります。商法1条2項が根拠です。業界裏話ヒント:裁判所は一回や二回の取引を商慣習とは認めません。継続性と一般性の立証が壁です。だから普段から取引記録や業界文書を残している側が、いざという時に圧倒的に有利になる

Q · 商慣習法と商慣習って、違うものなんですか?

平成17年(2005年)の現代語化改正で、旧商法1条の『商慣習法』が『商慣習』に改められました。慣習法という独立の法か単なる慣習かという学説対立を避けた表現ですが、商法1条2項で民法に優先する効力は変わりません。業界裏話ヒント:実務では呼び方の違いより『その慣行を立証できるか』が全て。学説論争は試験では出ますが、現場では証拠勝負です

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第二条(公法人の商行為)

公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、この法律の定めるところによる。

商法 2 条は、公法人が行う商行為について、法令に別段の定めがある場合を除き商法を適用すると定める。国や地方公共団体の取引も原則として普通の商取引と同じ土俵に乗る。

よくある質問

Q · 市役所と結んだ契約でトラブルになりました。これって行政訴訟で争うんですか?

原則は通常の民事訴訟です。市が商行為として結んだ契約は私法上の取引であり、商法2条によって商法・民法が適用されます。行政処分の取消訴訟ではありません。業界裏話ヒント:相手が公的機関だと反射的に行政事件だと思い込み、取消訴訟の出訴期間(原則6か月)を気にする人がいますが、契約紛争にはそれは関係ありません。土俵を取り違えると、本来戦えるはずの民事の土俵を自分から降りてしまう

Q · 公社に商品を納めたら、後から「不良品だ」と返品されました。もう従うしかないんですか?

商人間売買に当たるなら、買主は目的物の受領後に遅滞なく検査し、不適合を通知する義務があります(商法526条)。公社がこれを怠っていれば、後出しの返品・代金減額請求を封じられる可能性があります。業界裏話ヒント:公的機関の検収は形式的に流れがちで、通知が遅れるケースが実際に多い。納品時の受領印の日付と、クレームが届いた日付の差をまず確認する。この日数差が、あなたの最大の防御材料になる

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第三条(一方的商行為)

当事者の一方のために商行為となる行為については、この法律をその双方に適用する。

当事者の一方が二人以上ある場合において、その一人のために商行為となる行為については、この法律をその全員に適用する。

商法3条は、当事者の一方にとって商行為となる行為については、商法を双方に適用すると定める。相手が商人であれば、商人でない側にも商法が及ぶ。

よくある質問

Q · 保証人って書いただけなのに、なんで連帯保証になるんですか?

主たる債務が事業性の借入など商行為によって生じている場合、商法511条2項により、契約書に『連帯』と書いていなくても保証は当然に連帯保証になります。その前提として商法3条が、相手の一方が商人ならあなたにも商法を適用しています。業界裏話ヒント:銀行や貸金業者の融資はほぼ常に貸主側の商行為。つまり事業性融資の保証は最初から連帯保証になる運命で、『普通の保証にしてほしい』という交渉自体がほぼ通らない。だから断るか、極度額で上限を切るかの二択になる

Q · 商人じゃない私に、なぜ商法が適用されるんですか?

商法3条1項が『当事者の一方のために商行為となる行為については、この法律を双方に適用する』と定めているからです。あなたの職業や属性ではなく、取引の相手側にとって商行為かどうかで決まります。業界裏話ヒント:かつては商事法定利率(年6分)や商事消滅時効(5年)が一般人にも及ぶ点が実害でしたが、2020年施行の民法改正で両方とも廃止され民法に統一されました。古い解説や旧版テキストで『商法だと利率が高い』と読んでいたら、それはもう過去の話です

Q · 知り合いの士業に軽く相談しただけで報酬を取られることがあるって本当ですか?

あり得ます。商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、特約がなくても相当の報酬を請求できます(商法512条)。商法3条であなた側にも商法が適用されるためです。業界裏話ヒント:『タダでお願い』が法的に通らない場面は、プロ相手では珍しくありません。逆に言えば、無償でやってもらいたいなら、事前に『これは無償で』と明示的に合意しておくことが、後の請求を防ぐ唯一の防波堤になる

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第二章
第四条(定義)

この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。

商法 4 条は商人を定義する規定で、商行為を業とする者を固有の商人、店舗で物品を販売する者や鉱業者を擬制商人とみなす。商人になると商業帳簿などの義務が生じる。

よくある質問

Q · メルカリで物を売り続けたら、私も「商人」になるんですか?

反復継続して営利目的で売買すれば、商法4条の商行為を業とする者に該当し、商人になりうる。商行為の中身は商法501条・502条が定めており、安く仕入れて高く売る転売は典型的な営業的商行為だ。業界裏話ヒント:商人になるかの線引きは「業として」の解釈次第で明確な売上ラインはないが、税務上の事業所得との境界と連動しやすく、税務署が事業と見れば法律上も商人扱いが強まる。趣味の範囲を超えたら帳簿を残す方が後で身を守る(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 商人になると、義務が増えて損ばかりじゃないですか?

義務だけでなく武器も増える。商法512条は、商人が営業の範囲内で他人のために行為をすれば、価格の約束がなくても相当な報酬を請求できると定める。さらに商法521条の商人間留置権で、代金未払いの相手の物を留置できる。業界裏話ヒント:かつて商人の5年の短期時効(旧商法522条)が不利とされたが、2017年の改正で廃止され、今は民法と同じ時効だ。「商人は不利」という古い知識は更新が必要で、むしろ512条の報酬請求権を使いこなせるかで回収額が変わる

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第五条(未成年者登記)

未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

商法 5 条は、営業を許可された未成年者が営業を行うときは未成年者登記をしなければならないと定める。登記により許可された営業の範囲で成年者と同一の行為能力を持つ。

よくある質問

Q · 子どもがネットで物を売って稼いでいます。未成年者登記って必ずしないとダメですか?

それが「営業」(反復継続して利益を得る事業)と言える規模なら、商法5条で登記義務があります。単発の不用品売却は営業ではなく対象外で、境界は事業性の有無です。業界裏話ヒント:登記がない未成年者の取引も実際には成立してしまうことが多く、問題が表面化するのは「契約を取り消したい」場面。登記がないと未成年者側はむしろ民法5条2項で取り消せる余地が残ります。登記は相手を縛ると同時に、自分の取消権を手放す選択でもある

Q · 未成年者登記をすると、親はもう事業に口を出せなくなるんですか?

許可した営業の範囲では、子はその事業について成年者と同一の行為能力を持ちます(民法6条1項)。ただし子がその営業に堪えられない事由があれば、法定代理人は許可を取り消し・制限できます(民法6条2項)。業界裏話ヒント:その取消しは登記を直さないと善意の第三者に対抗できません(商法9条)。親が内心で許可を撤回しても、登記簿が古いままなら、取引相手にはまだ子に能力があるように見える。撤回したいなら登記を直すまでがワンセットです

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第六条(後見人登記)

後見人が被後見人のために第四条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

後見人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

商法 6 条は、後見人が被後見人のために営業を行うときは登記しなければならず、登記されない代理権の制限は善意の第三者に対抗できないと定める。

よくある質問

Q · 認知症の親の代わりに私が店を続ける場合、必ず登記しないとダメなんですか?

親(被後見人)のために営業を継続するなら、商法6条1項で後見人登記が必要です。一回限りの財産処分ではなく、反復継続する商売であれば該当します(商法4条の商人概念)。業界裏話ヒント:登記しなくても取引が即座に無効になるわけではないため見過ごされがちですが、登記がないと代理権の制限が相手に通じず、結局は本人の財産を守れません。最初に整えるのが一番安く済みます

Q · 後見人の代理権に制限があるのに、相手がそれを知らずに契約したらどうなりますか?

商法6条2項により、登記されていない制限は善意の第三者に対抗できません。相手が制限を知らなければ契約は有効で、被後見人の財産から履行する必要が生じます。業界裏話ヒント:善意かどうかの立証責任は、制限を対抗したい本人側にあります。相手が悪意だったと証明できなければ負けます。だからこそ制限は必ず登記して、誰でも見られる状態にしておくことが本人を守る確実な方法です

Q · 後見が終わったら何かしないといけませんか?

被後見人の死亡や能力回復で後見が終了したら、その旨の登記が必要です。放置すると、登記を信じた第三者はまだ後見人に代理権があると扱え(商法9条の公示の効力)、終了後の取引責任があなたに及びかねません。業界裏話ヒント:後見終了後の登記漏れは実務で意外に多く、終了を知らない相手との取引が後からトラブルになります。終わったときこそ登記を急ぐ、これを知る人は少ない

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第七条(小商人)

第五条、前条、次章、第十一条第二項、第十五条第二項、第十七条第二項前段、第五章及び第二十二条の規定は、小商人(商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものをいう。)については、適用しない。

商法 7 条は、営業用財産が 50 万円以下の小商人について、商業登記・商号登記・商業帳簿・支配人登記などの義務規定を適用除外とする。免除は商法上の義務に限られる。

よくある質問

Q · 個人事業主は商業登記しなくていいって本当ですか?

営業用の財産が 50 万円以下なら小商人に当たり、商法 7 条で商業登記の規定(次章、つまり第 3 章)が丸ごと適用されません。登記しなくても適法です。ただし株式会社や合同会社などの会社は、資本金がいくらでも会社法で必ず登記が必要で、小商人にはなりません。業界裏話ヒント。登記しない自由の裏返しとして、商号の登記による保護(同一商号の排他的使用)も受けられない。先に同じ屋号を登記した商人が現れると、対抗できないリスクが残る

Q · 小商人だと帳簿は付けなくていいんですか?

商法上の商業帳簿(第 5 章、19 条)の作成義務は、小商人には適用されません(商法 7 条)。ただしこれは商法上の話に限られます。所得税法はあなたに帳簿の作成と保存を独立に求めており、青色申告なら特に厳格で、こちらは小商人でも免除されません。業界裏話ヒント。商法で免除されたから帳簿不要、と思い込んで税務調査で痛い目を見る人が多い。商法と税法は別の物差しで、実務では税法の方がはるかに厳しく効いてくる

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第三章
第八条(通則)

この編の規定により登記すべき事項は、当事者の申請により、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する。

商法 8 条は、登記すべき事項が当事者の申請により、商業登記法に従って商業登記簿に登記されると定める。役所の職権ではなく申請主義を採る規定である。

よくある質問

Q · 会社の登記って自分でできるんですか? 司法書士に頼まないとダメ?

8 条は「当事者の申請」と定めており、本人申請が原則として可能です。法務局の窓口やオンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)で代表者自身が申請できます。設立や役員変更など定型的なものは自力でも対応できます。業界裏話ヒント:登記懈怠の過料は会社ではなく代表者個人宛に届き、会社経費でも落とせず、裁判所の決定に対する不服も限定的です。だからこそ司法書士は「期限管理だけは外注しても安い」と言う、その期限こそ会社法 915 条の 2 週間です

Q · 取引する会社が信用できるか、登記簿で何が分かるんですか?

登記事項証明書を取れば、代表者・本店所在地・資本金・役員構成・事業目的・設立年月日が分かります(商法 8 条、会社法 907 条が商業登記簿への記録を定める)。登記情報提供サービスならオンラインで数百円、即時に閲覧できます。業界裏話ヒント:見るべきは内容だけでなく「動き」です。短期間に役員が頻繁に入れ替わる、本店が何度も移転している、資本金が極端に少ないのに大型契約を持ちかけてくる。こうした登記の履歴が、決算書を見せてもらう前にリスクを語る

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第九条(登記の効力)

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。

故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

商法 9 条は商業登記の効力を定め、登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗できず、不実登記をした者もその不実を善意の第三者に対抗できないとする。

よくある質問

Q · 取締役を辞めたのに会社が登記してくれません。私はまだ責任を負うんですか?

9条1項により、辞任登記が完了するまで会社は善意の第三者に対して辞任を対抗できません。その結果、登記が残っている間に会社が負った債務について、第三者からあなたが取締役として責任を問われる余地があります。業界裏話ヒント:会社が登記してくれない場合、辞任した本人が登記の是正を求める手続きを取れます。多くの人が会社任せにして放置し、数年後に債権者から追われて初めて気づく。辞めた瞬間に登記事項証明書で確認するのが鉄則です

Q · 名前だけ貸して取締役になりました。何もしていないのに責任を負うことがあるんですか?

あります。9条2項は、故意または過失で不実の登記をした者は、それを善意の第三者に対抗できないと定めます。名義貸しに承諾した行為が不実登記への関与と評価され、登記を信じて取引した第三者に対し実際の取締役と同様の責任を負った例があります。業界裏話ヒント:『名前だけだから大丈夫』は最も危険な誤解です。会社が倒産すると債権者は資力のある名目取締役を狙う。報酬ゼロでもリスクは実取締役と同じ。引き受けないか、引き受けたなら即座に辞任登記まで完了させること

Q · 取引相手の会社の登記を信じて契約したのに、後で『あれは間違いだった』と言われたら?

あなたが善意(登記が事実と違うと知らなかった)であれば、9条2項により相手はその不実をあなたに対抗できません。つまり登記どおりの責任を相手に問えます。ただし9条1項後段の『正当な事由』であなたが事実を知り得た事情があると、保護されない場合があります。業界裏話ヒント:保護の鍵は『取引時点で登記を確認した記録』。契約直前に取った登記事項証明書1通(数百円)が、後の紛争であなたの善意を証明する決定的な証拠になります。口約束ではなく、紙で残す

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第十条(変更の登記及び消滅の登記)

この編の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない。

商法 10 条は、登記事項に変更が生じ又は消滅したとき、当事者が遅滞なく変更登記又は消滅登記をすべきと定める。放置すると商法 9 条の対抗力で善意の第三者に対抗できなくなる。

よくある質問

Q · 取締役を辞めたら、辞任登記は自分でやらないといけないんですか?

登記の申請義務は原則として会社(代表者)にあり、辞めたあなた自身に申請権限はないのが通常です。ただし会社が放置すると、辞任登記未了の元取締役が会社法908条2項の類推適用で第三者に責任を負う場合があります。業界裏話ヒント:辞任後は自分で登記事項証明書を取り、抹消されたか確認するのが鉄則。残っていたら会社に内容証明で抹消を促し、その記録を残す。これが後日「自分は正そうとした」という防御の証拠になる

Q · 変更登記をうっかり忘れたら、どんな罰があるんですか?

会社の場合、登記懈怠は会社法976条により代表者個人に対し100万円以下の過料の対象です(最新の改正状況をご確認ください)。個人商人の商業登記には明確な過料規定が薄いものの、商法9条の対抗力で実質的な不利益を負います。業界裏話ヒント:過料は前科のつく刑罰ではなく行政罰だが、裁判所から代表者個人宛に通知が届く。遅延期間が長いほど金額は上がる傾向があり、放置した分だけ高くつく

Q · 「遅滞なく」って、具体的に何日以内のことですか?

商法10条自体は「遅滞なく」とだけ定め、日数を切っていません。会社については会社法が事項ごとに2週間などと具体化しています(会社法915条等)。個人商人の登記は明確な日数規定が薄く、合理的期間内が原則です。業界裏話ヒント:実務では、変更事由が生じたその場で司法書士に依頼してしまうのが最も安全。「あとでまとめて」が登記懈怠と空白期間の責任を生む最大の原因

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第四章
第十一条(商号の選定)

商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

商人は、その商号の登記をすることができる。

商法11条は、会社を除く商人が氏名でも創作名称でも自由に商号にできると定める。個人商人の商号登記は任意であり、登記しなくても営業できる。

よくある質問

Q · 屋号と商号って、何が違うんですか?

実質的にはほぼ同じものを指しますが、「屋号」は税務上・日常的な呼び名、「商号」は商法11条が定める法的な営業上の名称です。個人事業主が開業届に書く「屋号」は税務署の記録にすぎず、それを法務局で登記して初めて法的な「商号登記」になります。業界裏話ヒント:開業届に屋号を書いただけで名前が守られると勘違いする人が大半。税務上の屋号と、法的保護を生む商号登記・商標登録はまったくの別物。守りたいなら登記か商標まで踏み込む必要がある

Q · 個人事業主でも、商号って登記したほうがいいんですか?

商法11条2項のとおり登記は任意で、しなくても営業はできます。登記すると、同一所在地で他人が同一商号を登記するのを防げます(商業登記法27条)。ただし守備範囲は同一住所に限られ、保護は限定的です。業界裏話ヒント:2006年施行の改正前は同じ市町村内の類似商号も規制されていたが、今は『同一商号かつ同一所在場所』しか止められない。商号登記の防御力は昔より大幅に弱くなった。本気で名前を守るなら商標登録のほうが効く

Q · 好きな名前なら、本当に何でも商号にできるんですか?

原則は自由です(商号選定の自由)。ただし「不正の目的」で他社と誤認させる商号を使うと商法12条で差止め・損害賠償の対象になり、有名ブランドと紛らわしければ不正競争防止法にも触れます。業界裏話ヒント:自由といっても「株式会社」「銀行」「士業名」など、法律で名乗りが制限される語がある。実体のない個人事業が「○○銀行」を名乗れば銀行法違反。自由の例外リストを知らずに名付けると、開業早々に名称変更を迫られる

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第十二条(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)

何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。

前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

商法 12 条は、不正の目的で他の商人と誤認されるおそれのある名称・商号の使用を禁じ、被害を受けた商人に使用の差止を請求する権利を与える。登記の有無を問わず適用される。

よくある質問

Q · うちの店と似た名前の店ができたんですが、訴えれば名前を変えさせられますか?

商法 12 条 2 項で差止請求はできますが、条件があります。相手に「不正の目的」があり、かつ一般の客が他の商人と誤認するおそれがあること。単に似ているだけ、業種が違う、地域が離れている、では認められにくい。業界裏話ヒント:実務では商法 12 条より不正競争防止法 2 条 1 項 1 号で攻める方が多い。こちらは不正の目的の立証が不要で、自店の名前が周知であることを示せばよい。どちらが立証しやすいかを最初に見極めるのが弁護士の腕です

Q · 登記していない屋号でも守ってもらえるんですか?

守られます。商法 12 条は「名称又は商号」を対象とし、登記の有無を問いません。登記していない屋号やブランド名でも、他人に不正の目的で誤認的に使われれば差止を求められます。業界裏話ヒント:ただし守りを固めたいなら、商号登記(商法 13 条)や商標登録をしておくと立証が格段に楽になる。先に使っていた証拠(開業日、広告、SNS の投稿日時)を時系列で残しておくと、いざというとき決定的な武器になります

Q · 相手が「偶然似ただけ」と言い張ったら、もう打つ手はないですか?

そんなことはありません。争点は相手の内心そのものではなく、不正の目的を客観的に推認できるかどうか。相手があなたの店の近くで同業を始めた、ロゴや内装まで寄せている、あなたの店を知っていた形跡がある、こうした事情が積み上がれば不正目的は認定されます。業界裏話ヒント:相手の偶然主張を崩す鍵は、相手がいつあなたの存在を知ったかの証拠。共通の取引先、SNS のフォロー履歴、過去の来店記録などが効きます

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第十三条(過料)

前条第一項の規定に違反した者は、百万円以下の過料に処する。

商法13条は、12条1項に違反して不正の目的で誤認されるおそれのある商号を使った者に100万円以下の過料を科す。過料は刑罰ではなく秩序罰で、納付額は国庫に入る。

よくある質問

Q · 店名パクられたんですけど、相手を罰金にできますか?

科せるのは過料(100万円以下)で、罰金ではありません。しかも過料は国庫に入り、被害者のあなたには渡りません。さらに過料は裁判所が職権で科すもので、実際に発動される例は多くないのが実情です。業界裏話ヒント:弁護士が本気で動かすのは商法12条2項の差止請求と損害賠償(民法709条)、周知性があれば不正競争防止法です。過料は「ついでに付くおまけ」程度に位置づけ、最初から実弾はそちらに込めて交渉に入る

Q · 相手は『偶然似ただけ、パクってない』と言い張ってます。どうすれば?

商法12条1項は「不正の目的」を要件にするので、混同させて利益を得る意図の立証が鍵になります。看板の書体や配色、立地、SNSでの言及など、わざと寄せた痕跡を集めてください。業界裏話ヒント:「不正の目的」の立証が難しいときは、自分の商号に周知性さえあれば相手の目的を問わない不正競争防止法2条1項1号に切り替える。商法よりも不競法の方が通しやすい場面は実務で多い

Q · 商業登記でちゃんと通ったので、うちの商号は合法ですよね?

登記が通ったことと適法であることは別問題です。現行の商業登記では、同一住所の同一商号でない限り類似商号はほぼ審査されません。登記後でも商法12条違反や不正競争防止法違反を問われる余地が残ります。業界裏話ヒント:開業前は、法務局の登記の前にまず商標と周知商号の調査をする。登記の可否は安全の証明にならない、というのを知っているかどうかで、後の紛争リスクが大きく変わる

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第十四条(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)

自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

商法 14 条は、自己の商号の使用を他人に許諾した商人が、その者を営業主と誤認して取引した相手に対し、当該他人と連帯して取引上の債務を弁済する責任を負うと定める。

よくある質問

Q · 名前を貸しただけなのに、本当に相手の借金まで払わされるんですか?

払わされます。商法 14 条は、商号の使用を許諾した商人に、誤認して取引した相手への連帯責任を負わせます。あなたが営業に関与せず利益も得ていなくても、名義を貸した事実だけで責任は成立します。業界裏話ヒント:多くの人は「貸しただけ」を軽く見ますが、責任は契約相手一人にとどまらず、その外観を信じた取引先全員に及びます。一度の名義貸しが複数の債務に枝分かれするため、弁護士は名義貸しを最も割に合わないお人好しと呼びます

Q · 相手(取引先)が、本当の経営者は別人だと知っていた場合はどうなりますか?

その場合、あなたは責任を免れます。商法 14 条は取引相手が営業主体を「誤認」したことが要件で、相手が真実を知っていた(悪意)、または重大な不注意で気付かなかった(重過失)ときは保護されません(判例)。業界裏話ヒント:実務の攻防はほぼここに集中します。名義を貸した側は「相手は本当の経営者を知っていた」を、請求する側は「知らなかったし重過失もない」を立証し合う。請求書の宛名や名刺、過去のやり取りの記録が、この一点の決め手になります

Q · 看板を下ろせば、もう責任はなくなりますか?

将来の取引については責任を断てますが、外観を消す前に成立した取引には依然責任が残ります。重要なのは、撤回したことを取引先に明確に伝えること。看板を物理的に外しても、相手が従来の外観を信じ続ける状況では責任が続くおそれがあります。業界裏話ヒント:口頭で「もう関係ない」と言うだけでは弱い。内容証明郵便で取引先に通知し、ウェブや名刺の表記も消した記録を残す。この外観除去の証拠が、後の紛争であなたを守る盾になります

Q · フランチャイズの加盟店が起こしたトラブルで、本部が責任を負うことはありますか?

外観次第で負います。加盟店が本部の商標や店名で営業し、客や取引先が本部自身の営業だと誤認する外観があれば、名板貸し責任が類推適用された判例があります(最判平成 7.11.30)。業界裏話ヒント:本部の契約書には「加盟店は独立事業者」と必ず書いてありますが、それは内部の取り決めにすぎず、外から見た外観が優先される。看板、制服、レシートの表記が本部一色なら、契約書の一文では責任を逃れきれないことがあります

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第十五条(商号の譲渡)

商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。

前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

商法 15 条は、商号を営業とともにする場合または営業を廃止する場合に限り譲渡できると定める。商号譲渡は登記をしなければ第三者に対抗できない。

よくある質問

Q · 店を売るとき、店の名前も一緒に売れるんですか?

売れます。ただし商法 15 条 1 項で、営業と一緒に譲るか、営業をやめるときに限られます。名前だけの単独の切り売りはできません。理由は、屋号が店の信用を表す看板だからです。業界裏話ヒント:商号を買い手に続用させると、旧店の取引先の債権について買い手が責任を負う扱いになります(17 条)。売り手は買い手が旧債務を負わない旨の登記か債権者への通知をしておかないと、後で「あの名前を継いだのだから払え」という請求が買い手に飛び、話がこじれる

Q · 商号を買ったのに、登記しないとどうなるんですか?

あなたは商号を有効に取得しても、登記をしなければ第三者に「これは私の商号だ」と対抗できません(15 条 2 項)。最悪、譲渡人が別人にも同じ商号を譲り、その人が先に登記すると、あなたが負けます。業界裏話ヒント:実務では決済と登記申請を同じ日に組むのが鉄則です。司法書士はこの同時処理で二重譲渡のリスクを潰します。契約から登記まで日を空けるほど、その窓が開く

Q · 廃業した有名店の名前だけ買って、別の店で使ってもいいですか?

営業の廃止を伴えば商号自体は譲渡できます(15 条 1 項)。ただし不正の目的で他人の営業と誤認させる商号使用は禁じられ(商法 12 条)、差止めや損害賠償の対象になります。業界裏話ヒント:有名な屋号には商標権が別に絡んでいることが多い。商法上の商号譲渡が有効でも、商標登録が第三者にあれば商標権侵害になります。商号と商標は別制度なので、買う前に商標登録の有無を必ず調べる

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第十六条(営業譲渡人の競業の禁止)

営業を譲渡した商人(以下この章において「譲渡人」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。

譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。

前二項の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない。

商法16条は、営業を譲渡した商人が、別段の合意がない限り、同一市町村と隣接市町村で譲渡日から20年間、同一営業を行えないと定める。特約でも禁止期間は最長30年までである。

よくある質問

Q · 店を売ったあと、ぜんぜん別の場所なら同じ商売をしてもいいんですか?

同一市町村と「隣接する市町村」の外であれば、原則1項の20年制限はかかりません(商法16条1項)。ただし隣接の判定は地図上の境界で見るので、思ったより広いエリアが対象になります。業界裏話ヒント:政令指定都市では「区」単位で判定されるため(同項括弧書き)、大都市なら隣の区はセーフでも、地方の小さな市なら隣町まで丸ごとアウトになる。同じ「隣接」でも、街の規模で実際の射程がまるで違う

Q · 契約書に競業しないって書き忘れたら、もう相手の再開を止められないんですか?

止められます。16条1項は契約に書かなくても自動適用され、「別段の意思表示がない限り」20年間の競業禁止がデフォルトでかかります(商法16条1項)。書き忘れても法律が守ってくれる稀なケースです。業界裏話ヒント:逆に売り手側の弁護士は、この自動適用を外すために「本譲渡は商法16条の競業避止義務を排除する」と一文を入れてくる。買い手がこの一文を見落とすと、20年の保護を自分から手放すことになる。競業条項は「ある」より「どう書いてあるか」を読む

Q · 会社を売る場合も、この20年ルールは効くんですか?

会社が事業を譲渡する場合は商法16条ではなく、ほぼ同内容の会社法21条が適用されます。20年・隣接市町村・30年特約・不正競争禁止の枠組みは同じです。業界裏話ヒント:ただし「株式譲渡」で会社ごと売る場合は、譲渡されるのは株式で営業の主体は変わらないため、この競業禁止は働きません。創業者を競業から縛りたい買い手は、株式譲渡でも別途、創業者個人と競業避止特約を結ぶのが実務の鉄則。スキーム次第で守りの厚さが変わる

Q · 20年たてば、相手が嫌がらせみたいに同じ店を出しても何も言えないんですか?

言えます。16条3項は期間や地域に関係なく、「不正の競争の目的」での同一営業を禁じています(商法16条3項)。20年経過後でも、買い手の信用を害する目的なら差止め対象です。業界裏話ヒント:3項の不正競争目的は立証が難しく、単に同業を再開しただけでは足りない。紛らわしい屋号、買い手の元従業員の引き抜き、顧客への中傷など、害意を示す客観証拠の積み上げが要る。期間満了後の争いは、証拠を集めた側が勝つ

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第十七条(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等)

営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

譲受人が第一項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

第一項に規定する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。

商法 17 条は、譲受人が譲渡人の商号を続用する場合、譲渡人の営業によって生じた債務を譲受人も弁済する責任を負うと定める。譲渡後遅滞なく免責登記または通知をすれば免れる。

よくある質問

Q · 店名をちょっと変えれば、前のオーナーの借金は引き継がなくて済みますよね?

確実とは言えません。商法 17 条の『商号続用』は形式ではなく、取引相手が同一の営業が続いていると誤認するかという実質で判断されます。ロゴや店名のわずかな変更では続用と認定された裁判例があります。業界裏話ヒント:弁護士が確実な遮断を勧めるのは、小手先の改名ではなく 2 項の免責登記または通知です。登記簿に一行残すだけで第三者全員に対抗でき、改名の効果を巡る不毛な争いを丸ごと回避できる

Q · 譲渡契約書に『債務は引き継がない』と明記したのに、なぜ請求されるんですか?

その契約は売主と買主の間でしか効力がないからです。第三者である債権者は契約の当事者ではなく、商法 17 条 1 項で譲受人へ直接請求できます。契約書の文言で債権者を縛ることはできません。業界裏話ヒント:債権者を縛れるのは 2 項の免責登記・通知だけ。契約書の表明保証条項は、債権者への支払いを止める道具ではなく、払った後に譲渡人へ求償するための道具です。役割を取り違えると、払わずに済むはずだったお金を払う羽目になる

Q · 会社を買収する場合も、この条文が適用されますか?

商法 17 条は個人商人を主に想定した規定で、会社(株式会社等)の事業譲渡には会社法 22 条というほぼ同じ内容の規定が別に適用されます。商号を続用すれば譲受会社が譲渡会社の事業上の債務を負う構造は同じです。業界裏話ヒント:M&A 実務では、簿外債務(帳簿に載っていない借金)のリスクを切るために、あえて商号を変える、または会社法 22 条 2 項の免責登記を打つ設計を最初から組み込みます。デューデリで債務を洗いきれない案件ほど、この遮断手続の有無が買収価格に効いてくる

Q · 前のオーナーにお金を払ってしまった取引先がいるんですが、それは有効ですか?

商法 17 条 4 項は、譲渡人の営業によって生じた債権について譲受人へした弁済は、弁済者が善意(事情を知らない)でかつ重大な過失がないときは有効と定めます。つまり債務者が事情を知らずに譲受人へ払えば、その支払いは保護されます。業界裏話ヒント:これは債務者を守る規定ですが、裏を返せば、債権を回収したい側は『誰が真の債権者か』を取引先へ早く明確に通知しないと、相手が善意で別人へ払って債権が消えるリスクがある。通知のスピードがそのまま回収可能性を左右する

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第十八条(譲受人による債務の引受け)

譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。

譲受人が前項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

商法18条は、営業の譲受人が商号を続用しなくても、債務引受を広告したときは譲渡人の債権者が譲受人に弁済を請求できると定める。譲渡人の責任は広告日後2年で消滅する。

よくある質問

Q · 取引先が会社を売ったみたいで、新しい会社が『事業を引き継ぎました』って挨拶に来たんですが、うちの売掛金は新しい会社に請求できますか?

その挨拶状やお知らせに「債務も引き受ける」という趣旨が含まれていれば、商号が変わっていても新会社(譲受人)に直接請求できます(商法18条1項)。鍵は文言です。業界裏話ヒント:弁護士はこういうとき、まず広告・挨拶状の現物を全部集めます。「今後ともよろしく」程度では弱いが、「旧社の取引関係を承継」「債務も引き継ぐ」と読める一文があれば一気に有利になる。だから挨拶状やDMは捨てずに保管しておくべきです

Q · 商号を引き継ぐ場合(17条)と引き継がない場合(18条)で、何が違うんですか?

17条は譲受人が同じ商号を使い続け、外観上「同じ営業」と見える場合に責任を負わせます。18条は商号が違っても、債務引受の広告という別の外観があれば責任を負わせます(18条1項)。業界裏話ヒント:実務では18条より17条で争われる方が圧倒的に多い。広告をわざわざ出す譲受人が少ないからです。逆に言えば、譲受人側は「商号を変える+債務引受の広告を出さない」の2点を守れば、原則として旧債務から切り離せる。これを知らずに挨拶状で墓穴を掘る経営者がいます

Q · 広告から2年経ったら、もう誰にも請求できなくなるんですか?

いいえ、消えるのは譲渡人(売った側)の責任だけです(18条2項)。譲受人(買った側)の責任は2項では消えません。業界裏話ヒント:この2年は譲渡人を免責するための期間であって、債権者を完全に締め出すものではない。ただし譲渡人と譲受人の両方を押さえておきたいなら、2年以内に譲渡人へ請求の予告(内容証明)を出すのが定石です。両ルートを生かしておけば、どちらかが無資力でももう一方を追える

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第十八条の二(詐害営業譲渡に係る譲受人に対する債務の履行の請求)

譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。

ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

譲受人が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡人が残存債権者を害することを知って営業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。営業の譲渡の効力が生じた日から十年を経過したときも、同様とする。

譲渡人について破産手続開始の決定又は再生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受人に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。

商法 18 条の 2 は、譲渡人が債権者を害すると知って営業を譲渡した場合、残存債権者が譲受人へ承継財産の価額を限度に債務の履行を直接請求できると定める。譲受人が善意なら免責される。

よくある質問

Q · 取引先が事業を別会社に移して『うちにはもう資産がない』と言ってきました。もう回収できないんですか?

回収の道はあります。譲受人が『あなたを害すると知って』譲渡を受けたなら、商法 18 条の 2 第 1 項により承継した財産の価額を限度に、新会社へ直接請求できます。裁判で譲渡を取り消す必要はありません。業界裏話ヒント:受け皿会社の役員に旧会社の親族や元役員が並ぶ、譲渡対価が不当に安い、譲渡直後に旧会社が清算へ動く、この三点が揃うと害意の認定がぐっと近づく。まず登記簿と決算書の取り寄せが一手目

Q · 事業を買い取る側です。引き受けてない借金まで払わされることがあるんですか?

あり得ます。譲渡人が債権者を害する意図で営業を譲渡し、あなたがそれを譲渡の効力発生時に知っていた場合、承継した財産の価額を上限に、引き受けていない債務の履行を請求されます(商法 18 条の 2 第 1 項)。ただし知らなかったなら但書で免責。業界裏話ヒント:買う側の防御は『知らなかった』と『相当対価を払った』の二枚。デューデリで売主の債権者状況を確認し、対価の妥当性を第三者評価で残しておくと、後で害意の認識を否定する決定的材料になる

Q · 詐害行為取消権(民法 424 条)と何が違うんですか?どっちを使えばいいですか?

民法 424 条は一般法で、裁判により譲渡行為そのものを取り消す重い手続です。商法 18 条の 2 は取消し不要で、譲受人へ直接、承継財産の価額まで請求できる特則。迅速性では 18 条の 2 が有利な場面が多い。業界裏話ヒント:両者は排他的ではなく事案により選択・併用できる。ただし債務者に破産手続が始まると 18 条の 2 第 3 項で直接請求は封じられ、否認権(破産法 160 条)に一本化される。破産が近いかどうかで、使う武器を切り替えるのが実務の勘所

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第五章
第十九条

商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。

商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。

商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。

裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、商業帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。

商法 19 条は、商人に公正妥当な会計慣行に従った商業帳簿の作成と帳簿閉鎖から十年間の保存を義務づけ、裁判所は訴訟当事者に帳簿の提出を命じることができると定める。

よくある質問

Q · 個人事業主でも商業帳簿をつける義務があるんですか?

商法上の「商人」に該当すれば、19 条 2 項により作成義務があります。自己の名をもって商行為を業とする者(商法 4 条)が商人で、多くの個人事業主が含まれます。業界裏話ヒント:税法の帳簿保存(原則 7 年)と商法の保存(10 年、19 条 3 項)は別物で、期間が違う。税理士は税法基準で「7 年でいい」と言うことがあるが、商事紛争に備えるなら 10 年残すのが安全。この差を意識している事業主は少ない

Q · 裁判所が相手に帳簿を出させるって、本当にできるんですか?

できます。19 条 4 項で、裁判所は申立てまたは職権で訴訟当事者に商業帳簿の全部または一部の提出を命じられます。民事訴訟法の文書提出義務(220 条以下)の特則的な位置づけです。業界裏話ヒント:相手が命令に従わず帳簿を出さない場合、裁判所は申立人の主張する記載内容を真実と認めることができる(民事訴訟法 224 条)。つまり相手は出しても出さなくても不利になりうる。この「出さない不利益」を交渉材料にできることを、相手は意外と知らない

Q · 10 年も帳簿を保存していなかったら、罰則はありますか?

商法 19 条自体に直接の罰則はありませんが、会社の場合は会社法 976 条で過料の対象になります。個人商人でも、保存していないと訴訟の立証や税務調査で著しく不利になります。業界裏話ヒント:罰則がないからと軽視されがちだが、本当の損は訴訟で「帳簿がない=主張を裏付けられない」状況に陥ること。クラウド会計の普及で電子保存が現実的になった今、紙で 10 年抱える必要はなく、要件を満たした電子保存に切り替えるのが実務の主流(最新の改正状況をご確認ください)

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第六章
第二十条(支配人)

商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。

商法 20 条は、商人が営業所において営業を行わせるため支配人を選任できると定める。支配人は営業に関する包括的代理権を持ち、内部の権限制限は事情を知らない第三者に対抗できない。

よくある質問

Q · 「店長」と「支配人」って、法律的に何が違うんですか?

大きく違います。「店長」は社内の呼び名にすぎませんが、「支配人」は商法 20 条・21 条で定められた法的地位で、営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為を本人の名で行える包括的代理権を持ちます。業界裏話ヒント:登記された支配人かどうかは商業登記で確認できます。取引相手が「支配人」を名乗っても登記がなければ権限は当然には認められず、逆に登記があれば署名一つで会社が拘束される。契約前に登記を取るかどうかで、後のトラブルの有無が分かれます

Q · 支配人に「これ以上の金額の契約はするな」と社内で決めておけば安心ですよね?

残念ながら安心できません。支配人の代理権に加えた制限は、事情を知らない第三者に対抗できません(商法 21 条 3 項)。社内ルールを破って結んだ契約でも、相手が制限を知らなければ有効です。業界裏話ヒント:内部制限は対外的には無力ですが無意味ではない。制限を破った支配人本人への求償の根拠になります。だから制限は『対外的な防御』ではなく『内部の責任追及の準備』として書面に残しておく

Q · 支配人が辞めたら、何か手続きは要りますか?

登記した支配人なら、退任の登記(抹消)が必要です。これを怠ると、辞めた元支配人の名前で第三者と取引が成立した場合に会社が拘束されるリスクが残ります。業界裏話ヒント:登記の怖さは出口にあります。選任の登記は丁寧にやるのに退任の抹消を忘れる会社は驚くほど多い。元支配人が悪意を持てば、抹消されていない登記を使って会社を縛れてしまう。退職手続きのチェックリストに『支配人登記の抹消』を必ず入れる

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第二十一条(支配人の代理権)

支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

商法 21 条は、支配人が商人に代わって営業に関する一切の行為をする包括的代理権を持ち、その代理権への内部制限は善意の第三者に対抗できないと定める。

よくある質問

Q · 取引先が出してきた「支店長」の名刺、これだけで会社と契約したことになりますか?

名刺だけでは確実ではありません。鍵は、その人が商法 21 条の支配人として商業登記されているかどうかです。登記されていれば包括的代理権があり、契約は会社を拘束します。業界裏話ヒント:実務では「支店長」「支社長」の肩書きでも支配人登記されていないケースが多い。その場合でも商法 24 条の表見支配人として保護されうるが、確実なのは契約前に登記事項証明書を取ること。法務に強い会社ほど、高額契約の前に必ず相手の登記を確認している

Q · うちの支店長に「1000 万円以上は本社決裁」と決めていたのに、勝手に契約されました。無効にできますか?

原則として無効にできません。商法 21 条 3 項により、支配人の代理権への内部制限は善意の第三者に対抗できないからです。相手がその制限を知っていた(悪意)ことを会社が立証できない限り、契約は有効です。業界裏話ヒント:社内規程に書いただけでは「相手が知っていた」ことにはならない。逆に、取引基本契約書や発注書に決裁ルールを明記して相手に渡しておけば、相手の悪意を立証しやすくなる。権限制限は社内文書ではなく相手に届く文書に書くのが防御の定石

Q · 支配人は本当に従業員を勝手に雇ったりクビにしたりできるんですか?

できます。商法 21 条 2 項が、支配人に他の使用人の選任・解任権限を明文で与えています。支店長が支店の従業員を採用・解雇するのは、社長の個別承認がなくても代理権の範囲内として有効です。業界裏話ヒント:ただし解雇には労働契約法 16 条の解雇権濫用法理が別途かかる。支配人に選任・解任の権限があることと、その解雇が労働法上有効かは別問題。支配人だからといって自由に解雇できるわけではなく、不当解雇なら従業員は争える

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第二十二条(支配人の登記)

商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。

商法 22 条は、商人が支配人を選任したとき、および代理権が消滅したときに登記すべきことを定める。登記により支配人の包括的代理権が公示され、善意の第三者は登記を信頼して取引できる。

よくある質問

Q · 取引相手の人が「支配人」って言ってるけど、本当に契約を結ぶ権限があるか確かめられますか?

確かめられます。商人が支配人を選任すれば商法22条で登記義務があり、商業登記簿は誰でもオンラインや法務局で取得できます。登記があればその者の代理権は商法21条で営業に関する一切に及び、後から会社が権限外だと主張しても通りません。業界裏話ヒント:実務では登記された支配人より、代表取締役の委任状を持つ担当者と取引するケースの方が多い。「支配人登記がない=無権限」とは限らず、委任状や職務権限規程で権限を確認するのが現場の作法。登記の有無と委任状の有無、両方を押さえると盤石です

Q · うちの会社、支配人を辞めさせたんですけど、登記ってすぐやらないとマズいですか?

すぐやるべきです。解任の社内決定だけでは対外的な効力は生じず、消滅登記をするまでは商法9条1項により善意の第三者に「もう権限がない」と対抗できません。その間に元支配人が会社名義で結んだ契約に、会社が縛られる恐れがあります。業界裏話ヒント:解任した瞬間に印鑑、契約書フォーマット、社判へのアクセスを物理的に止めるのが鉄則。登記は申請から完了まで数日かかるので、登記完了を待つのではなく、現物の回収を同時並行で走らせて空白期間を潰す

Q · 名刺に「支店長」って書いてあるだけの人と契約したら、会社は責任取ってくれますか?

取れる可能性があります。支配人登記がなくても、支店の事業の主任者らしい名称を与えられた者は表見支配人として支配人と同等の権限があるものと扱われ、善意の相手は保護されます(商法24条)。会社は「あれは肩書きだけだった」と簡単には逃げられません。業界裏話ヒント:保護されるのは善意かつ無重過失の相手だけ。あまりに大きすぎる取引や、不自然な権限行使は「知り得たはず」とされ保護が外れることがある。違和感がある取引ほど、登記簿や代表者確認を一手間かけておくと、後で表見法理に頼らずに済みます

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第二十三条(支配人の競業の禁止)

支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

自ら営業を行うこと。

自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。

他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。

会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

商法 23 条は支配人の競業避止義務を定め、支配人は商人の許可なく自ら営業や同業取引をできない。違反すれば得た利益が損害と推定される。

よくある質問

Q · うちの店長も「支配人」になるんですか?支配人って具体的に誰のことですか?

支配人は、商人から営業に関する包括的な代理権を与えられ登記された使用人です(商法 20 条、22 条)。肩書だけの店長や課長は当然には該当しません。ただし登記がなくても、支店長など支配人らしい名称があれば取引相手保護のため支配人として扱われることがあります(表見支配人、商法 24 条)。業界裏話ヒント:自分が登記上の支配人かどうかは会社の登記簿で一発で分かる。副業を始める前にこれを確認する人はほぼいない。そこが落とし穴です

Q · 雇い主の許可をもらえば、支配人でも副業や兼業をしていいんですか?

できます。23 条 1 項は「商人の許可を受けなければ」禁止する構造なので、許可があれば適法です。許可の形式は問われず、書面が理想ですが、長年黙認されてきた事実から黙示の許可が認められることもあります。業界裏話ヒント:口頭の許可は「言った言わない」になりやすい。許可を取るなら、業務範囲と期間を明記したメール一本でも残しておくと、後で競業を疑われたときの決定的な盾になります

Q · もし相手がその副業で全然儲けていなかったら、損害はゼロということですか?

2 項はあくまで「推定」なので、相手が利益を得ていなければ推定される損害額も小さくなります。ただし雇い主は、推定とは別に実際の損害(奪われた取引・信用毀損)を立証して請求することも可能です。業界裏話ヒント:2 項は推定であって覆せる。相手側は「儲けていない」「あなたの損害とは因果関係がない」と反証する余地がある。だからこそ雇い主は利益額の証拠固めを、相手は反証材料の準備を、それぞれ早く動いた方が勝つ

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第二十四条(表見支配人)

商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。

ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

商法 24 条は、支店長など営業所の主任者の名称を付された使用人を、その営業所の裁判外の行為について支配人とみなす規定。社内に決裁権がなくても善意の相手方は保護される。

よくある質問

Q · 支店長って肩書だけで、その人が勝手に結んだ契約に会社が本当に縛られるんですか?

縛られます。商法24条は、営業所の主任者を示す名称を付された使用人を、本物の支配人(商法21条で営業に関し一切の裁判上・裁判外の行為ができる)と同じ権限を持つものとみなします。社内に決裁権がなくても、外部の善意の相手は守られます。業界裏話ヒント:会社側がこれを覆すには、相手が権限不存在を知っていた(悪意)ことを会社が立証する必要があります。立証責任は会社にある。だから契約相手としては、肩書を信じた経緯を記録に残しておくだけで、極めて強い立場に立てる

Q · 「課長」とか「主任」でも表見支配人になりますか?

原則なりません。24条が要求するのは「営業所の主任者であることを示す名称」、つまりその営業所のトップであることを外見上うかがわせる肩書です。支店長・営業所長・出張所長は典型例ですが、課長・係長・主任は通常これに当たりません。業界裏話ヒント:判例は名称だけでなく、その営業所が実質的に営業活動の拠点としての中身を備えているかも見ます(最判昭和37.5.1)。看板だけの空っぽの拠点なら、肩書が立派でも24条は働かない。肩書と実質の両面を確認するのが実務の勘所

Q · 支店長が結べるのは、どんな契約でもアリなんですか? 訴訟もできるんですか?

守られるのは「裁判外の行為」、つまり取引や契約などの実体的な営業行為に限られます。本物の支配人と違い、表見支配人には訴訟行為(裁判上の行為)の権限まではみなされません。業界裏話ヒント:ここを混同すると痛い目を見ます。取引段階では会社を縛れた支店長が、いざ紛争が訴訟になった途端、会社を代理して応訴や和解はできない。会社が後で「裁判のことは支店長に任せていない」と言えてしまう領域がある。だから紛争化の兆しが見えたら、相手方は本社・代表者を直接の交渉窓口に切り替えるべき

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第二十五条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

商法 25 条は、特定の事項の委任を受けた使用人がその事項に関する一切の裁判外の行為をできると定め、権限に加えた内部制限は善意の第三者に対抗できないとする。

よくある質問

Q · 相手の担当者が「課長」って名乗ってたんですが、それだけで権限あると思っていいんですか?

肩書きだけでは足りません。商法 25 条は実際に委任を受けたかで判断します。最高裁(最判平成 2.2.22)は、課長という名称を付与しただけでは 25 条の使用人にあたらないとしました。業界裏話ヒント:肩書きを過信せず、その人が日頃その種の取引を実際に回しているか(過去の発注実績、社内での扱い)を確認しておく。後で争いになったとき、委任の実体を示せるかどうかが勝敗を分けます

Q · うちの会社、営業に「500 万まで」って決裁枠を設けてるんですが、これで越権契約を防げますよね?

社内的には防げますが、外部の取引相手には効きません。商法 25 条 2 項は、代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できないと定めています。業界裏話ヒント:本当に外部を縛りたいなら、取引基本契約書に決裁権限を明記して相手に知らせる(=相手を悪意にする)しかない。社内規程をいくら作り込んでも、相手が知らなければ会社は契約に縛られます

Q · 担当者と支配人って何が違うんですか? どっちも会社の代理人でしょ?

権限の広さが決定的に違います。支配人(商法 20 条、21 条)は営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為を代理できる包括的権限を持ちますが、25 条の使用人は委任を受けた特定の事項の範囲だけ。業界裏話ヒント:相手が支配人なら登記されている(商法 22 条)ので登記簿で確認できる。登記のない担当者との大型取引では、その人の委任範囲がどこまでかを意識する。範囲外の契約は 25 条では守られません

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第二十六条(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)

物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。

ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

商法 26 条は、店舗の使用人を、その店にある商品を販売等する権限を持つ者とみなす規定。相手方が悪意でない限り、店の内部的な権限制限は取引の効力に影響しない。

よくある質問

Q · バイトや派遣の店員から買っても、ちゃんとした買い物として成立するんですか?

成立します。商法26条は店舗にいる使用人を販売権限があるものとみなすので、雇用形態がアルバイトでも派遣でも、店にある商品を売った取引は店を拘束します。業界裏話ヒント:店が『あの者は無権限だった』と争うには、あなたが悪意だったこと(権限がないと現実に知っていたこと)を店側が立証しなければならない。立証責任は店にある。だから多くの店は最初から争わず、取引を維持する方向に動く

Q · 店員が勝手に値引きしてくれた場合も、その値段で買えるんですか?

原則として有効です。値引きを含む販売も商法26条の『販売等』に含まれ、あなたが店員の値引き権限の不存在を知らなければ守られます。ただし常識的にありえない大幅値引き(定価の9割引きなど)は、あなたの不審を疑われやすい。業界裏話ヒント:裁判で悪意が問題になるとき、値引き幅が常識を超えるほど『客も怪しいと気づいたはず』と推認されやすくなる。高額商品の不自然な値引きは、その場で正規の承認を取った方が後々安全

Q · ネット通販で買った場合も、この条文で守られますか?

商法26条は『店舗』の使用人が前提なので、物理的な店舗を持たない純粋なネット通販にはそのまま適用しにくい。ただしネット取引は別途、特定商取引法や電子契約のルールで守られます(特定商取引法11条以下)。業界裏話ヒント:26条は『店舗に在る物品』という縛りがあるので、店頭取引にこそ強い。逆にネット・店舗外取引では、表見代理(民法109条・110条)や約款の組入要件など別の法理で攻める必要があり、保護の組み立て方が変わる

Q · 店をやっている側ですが、店員に勝手に売られないようにする方法はありますか?

完全には防げませんが、リスクは下げられます。権限を制限する旨を客に分かる形で店頭掲示すれば、客の『悪意』を立証しやすくなり、商法26条の保護を破る余地が出ます。業界裏話ヒント:『内部で指示していた』だけでは客には伝わらず26条は破れない。客が現実に認識できる外形(掲示、明確な張り紙、レジでの確認手続き)を作ることが、後の紛争で唯一効いてくる

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第七章
第二十七条(通知義務)

代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。以下この章において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。

商法27条は、代理商が取引の代理または媒介をしたときは、遅滞なく本人である商人に通知を発しなければならないと定める。民法の報告義務を強化した規定である。

よくある質問

Q · 代理店と保険の契約をしたのに、保険会社が「そんな契約は聞いていない」と言ってきました。私の契約は無効ですか?

原則として、代理権のある損害保険代理店が結んだ契約は会社に効力が及びます。商法27条で代理店は会社への通知義務を負い、通知が遅れても契約自体が当然に無効になるわけではありません。問題は代理店が本当に「代理権」を持っていたか。業界裏話ヒント:保険業界では代理店の権限範囲が会社との委託契約で細かく決まっており、権限を超えた契約は会社が拒める場合がある。契約時に代理店の「代理権の範囲」を一筆もらっておくと、後で会社に「知らない」と言われたときの決定的な証拠になる

Q · うちの特約店がなかなか取引報告を上げてきません。法的に何か言えますか?

言えます。商法27条は代理商に「遅滞なく通知を発する」義務を課しており、これを怠って会社が損害(二重契約、与信ミス、在庫の過不足など)を被れば、債務不履行として賠償請求できます(民法415条)。業界裏話ヒント:「遅滞なく」は会社側に有利に見えて、実は何日で遅滞かが曖昧で争いになりやすい。だから実務では代理商契約書に「取引後3営業日以内に通知」と数値で書き込む。条文の義務を契約で具体化しておくことが、いざというとき賠償を取れるかどうかを分ける

Q · 「代理店」と「仲介業者」って、私から見て何が違うんですか?

代理型の代理商は会社に代わって契約を結ぶ権限があり、あなたが代理店と結んだ契約はそのまま会社との契約になります。媒介型は契約を取り持つだけで、契約はあなたと会社の間に直接成立します。商法27条はどちらにも通知義務を課しますが、誰と契約したかが違う。業界裏話ヒント:トラブル時、相手が代理型か媒介型かで責任追及先が変わる。名刺や契約書に「代理店」とあっても実態は媒介ということもあるので、「あなたはこの契約を締結する権限がありますか」と一言確認しておくと、後の責任の所在がはっきりする

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第二十八条(代理商の競業の禁止)

代理商は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。

その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

代理商が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

商法 28 条は、代理商が本人の許可なく同種の取引をすることを禁じ、違反して競業取引で得た利益額を本人の損害額と推定する規定である。

よくある質問

Q · 保険の代理店が、契約してる保険会社に内緒で他社の保険も売るのって違反なんですか?

その保険会社の許可があれば合法、なければ競業避止義務違反です(商法28条1項1号)。複数社を扱う乗合代理店は、各社の許可があることが前提です。業界裏話ヒント:許可は契約書に明記されていなくても、本人が事情を知りつつ長年黙認すれば「黙示の許可」と認められうる。本人側は黙認を続けると後で違反を問えなくなるので、気付いた時点で書面で異議を出すかどうかが分かれ目です。

Q · 損害額が推定されるって、結局いくら請求できるんですか?

代理商が競業取引で得た利益額が、そのまま損害額と推定されます(商法28条2項)。本人は損害額を立証する必要がなく、相手の利益を示せば足ります。業界裏話ヒント:これは推定なので、代理商側が「利益の一部は自分の営業努力によるもので本人の損害ではない」と反証すれば覆せる。攻める側は利益額の資料を、守る側は反証材料を、どちらが先に固めるかで金額が大きく動きます。

Q · 代理店が競合会社の取締役になっただけでも、その報酬を損害として請求できますか?

できません。損害額の推定(商法28条2項)は競業取引(1項1号)違反にのみ適用され、競合会社の取締役就任(1項2号)違反には及びません。2号違反でも損害賠償には本人が実損の立証を要します。業界裏話ヒント:この違いを見落とし「取締役就任=利益額を請求」と誤る人が多い。2号違反は、地位そのものより、それを使った具体的な競業取引を1号で捉える方が回収しやすい。

Q · 代理店契約が終わった後も、競業しちゃいけないんですか?

原則として、商法28条の競業避止義務は代理商関係が続いている間だけで、契約が終わればこの条文上の縛りは消えます。業界裏話ヒント:ただし契約書に「契約終了後○年間は競業しない」という特約が入っていることが多い。その特約は商法28条とは別物で、期間・地域・範囲が広すぎると公序良俗(民法90条)で無効とされる余地がある。退任後の制約は、条文ではなく契約書の特約を先に確認すべきです。

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第二十九条(通知を受ける権限)

物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、第五百二十六条第二項の通知その他売買に関する通知を受ける権限を有する。

商法 29 条は、物品の販売・媒介を委託された代理商が、瑕疵通知など売買に関する通知を本人に代わって受ける権限を持つと定める。代理商への到達で本人への到達が擬制される。

よくある質問

Q · うちは代理店に商品を卸してるだけなんですが、お客さんのクレームが代理店に行ったら、それでうちが責任を負う期限が始まっちゃうんですか?

その代理店が商法上の代理商なら、はい、代理店への通知到達でメーカーであるあなたに通知が到達したものとして扱われます(商法29条、526条2項)。代理店が転送を忘れても対外的な効力は動きます。業界裏話ヒント:だからこそ代理店契約には『通知受領後◯時間以内の転送義務』『期間徒過の損害は代理店負担』を必ず明記する。29条は法律上当然に受領権限を発生させるので、内部の転送ルールを契約で縛らない限り、代理店の机の上であなたの権利が静かに失われる

Q · 代理商に通知を受ける権限があるなら、その代理商と結んだ契約は全部うちの会社が結んだことになるんですか?

いいえ、混同しやすい点です。29条が与えるのは『通知を受ける』受働的な権限であって、新たに売買契約を能動的に締結する権限ではありません。契約締結の代理権は商法504条や個別の授権が別途必要です(同条)。業界裏話ヒント:取引相手が『代理商だから契約も成立した』と主張してくることがあるが、受領権限と締結権限は別物。授権の範囲を契約書で線引きしておけば、想定外の契約を押し付けられるのを防げる

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第三十条(契約の解除)

商人及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、二箇月前までに予告し、その契約を解除することができる。

前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、商人及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる。

商法 30 条は、期間の定めのない代理商契約を、商人・代理商の双方が 2 ヶ月前の予告で解除できると定める。やむを得ない事由があれば即時解除も可能。

よくある質問

Q · 契約書に「いつでも解約できる」と書いてあったら、本当に明日にでも切られるんですか?

原則として契約の定めが優先します。商法30条は期間の定めがない場合の補充ルールで、契約が予告期間を定めればそれが優先します。ただし長年の継続的契約では、契約書どおりの即時解約でも信義則上、無効や制限を受けることがあります(継続的契約の法理、実務上、解釈が分かれる場面もある)。業界裏話ヒント:弁護士は契約書の文言よりも「関係が何年続き、相手がいくら投資したか」を先に見る。文言上は即時解約可でも、実質で予告期間と補償を勝ち取れるケースは少なくない

Q · 「やむを得ない事由」ってどこまで認められるんですか?業績が悪いだけじゃダメ?

単なる業績不振や経営方針の変更は、原則として30条2項の「やむを得ない事由」に当たりません。横領、背任、重大な契約違反、信頼関係の破壊など、契約継続が客観的に困難な事情が必要です。業界裏話ヒント:即時解除する側は、やむを得ない事由を立証できないと解除自体が無効になり、逆に損害賠償を負う。だからこそ慎重な側は2項の即時解除を避け、1項の予告解除を選ぶ。即時解除されたら、まずその事由の重大性を突くのが定石

Q · 代理店契約とフランチャイズ契約って、同じ商法30条が使えますか?

フランチャイズ契約は商法上の「代理商契約」とは限らず、加盟店が独立して自己名義で営業する場合は代理商(30条の前提となる27条の定義)に当たらないことが多いです。ただし継続的契約である点は共通し、解約には継続的契約の法理(信義則・正当な理由・相当な予告期間)が及びます。業界裏話ヒント:「代理商か否か」より「継続的契約か否か」が解約争いの実質的な分かれ目。代理商に当たらなくても、長年の継続的取引なら裁判所は同様の保護を働かせる。形式論に引きずられず実質で攻める

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第三十一条(代理商の留置権)

代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。

ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。

商法31条は、代理商が代理・媒介で生じた債権の弁済期が来たとき、弁済を受けるまで本人のために占有する物や有価証券を留置できると定める。牽連性は不要である。

よくある質問

Q · 預かっている書類をずっと返さないでいたら、横領で訴えられませんか?

適法な留置権の行使である限り横領にはならない。商法31条が明文で認める権利であり、弁済期の到来した債権があって占有が適法に始まっていれば、返還を拒んでも違法ではない。業界裏話ヒント:留置の意思を明確にしておくことが鍵。「単に返し忘れていた」のではなく「31条に基づき留置する」と書面で通知すれば、後の紛争で適法な権利行使だったと立証しやすい。黙って握っているだけだと、相手に横領だと騒がれる隙を与える

Q · 本人の会社が倒産したら、留置している物はどうなりますか?

商事留置権は破産手続で別除権として扱われる(破産法66条)。一般債権者の配当の列に並ばず、留置物から優先的に回収できる。業界裏話ヒント:倒産の兆候を感じたら、倒産する「前」に適法に占有を始めて留置しておくことが決定的。倒産後に新たに物を握っても別除権にはならない。早く動いた代理商だけが優先弁済を受けられる

Q · 民法の留置権と何が違うんですか?同じじゃないんですか?

決定的に違うのは牽連性の要否。民法295条の留置権は留置する物とその債権に直接の関連が必要だが、商法31条の代理商留置権はそれが不要。先月の取引で預かった物を、今月の別の未払い手数料のために留置できる。業界裏話ヒント:この牽連性不要こそ商事留置権の最強の武器。継続的取引で次々と物を預かる代理商は、過去に生じた未払い分を、いま手元にある全く別の物で担保できる

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第二編
第一章
第五百一条(絶対的商行為)

次に掲げる行為は、商行為とする。

利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為

他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為

取引所においてする取引

手形その他の商業証券に関する行為

商法501条は、利益目的の有償取得・譲渡、供給契約、取引所取引、手形等の商業証券に関する行為の四類型を、行為者が商人でなくても当然に商行為となる絶対的商行為と定める。

よくある質問

Q · メルカリの転売って、本当に商法が適用されるんですか?

利益を得る意思で仕入れて売る行為は、商法501条1号の絶対的商行為に当たります。あなたが商人でなくても、その取引自体には商法が適用されます。業界裏話ヒント:弁護士が転売トラブルでまず確認するのは「これは絶対的商行為か」です。商行為だと判断されると、相手が複数なら連帯債務の推定(商法511条)が働き、一人に全額請求できる。民法だけを前提に「自分の分だけ払えばいい」と考えていると、足をすくわれます

Q · 一回でも商行為をしたら、税金や許認可も商人扱いで変わるんですか?

商法上の「商行為・商人」と、税法上の「事業者」や許認可の対象は別々の判断です。501条で商行為に当たっても、それだけで自動的に課税や届出義務が発生するわけではありません。業界裏話ヒント:この二つを混同して不安になる人が多い。商法の商人該当性(4条)と、所得税法上の事業所得・雑所得の区別、古物営業法の許可要否は、それぞれ別の基準で判断されます。一括りにせず、論点ごとに切り分けて確認するのが正攻法です

Q · 商行為だと時効が短くなるって聞いたけど、本当ですか?

それは古い知識です。かつては商事消滅時効5年(旧商法522条)がありましたが、2017年の民法改正(2020年4月施行)で廃止され、民法166条に一本化されました。商法514条の商事法定利率6%も同時に廃止されています。業界裏話ヒント:いまだに「商取引は5年」と説明する古い記事やテンプレ書式が残っています。現在は権利を行使できると知った時から5年または行使できる時から10年で、商事か民事かで一律に分かれるわけではない。時効の主張をする側もされる側も、改正後の起算点で計算し直すのが鉄則です(最新の改正状況をご確認ください)

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第五百二条(営業的商行為)

次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。

ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為

他人のためにする製造又は加工に関する行為

電気又はガスの供給に関する行為

運送に関する行為

作業又は労務の請負

出版、印刷又は撮影に関する行為

客の来集を目的とする場屋における取引

両替その他の銀行取引

保険

寄託の引受け

十一仲立ち又は取次ぎに関する行為

十二商行為の代理の引受け

十三信託の引受け

商法 502 条は、賃貸・製造加工の受託・運送・場屋取引・銀行取引・保険など 13 種の行為を、営業として反復継続するときに商行為と定める。これを業とする者は商人となる。

よくある質問

Q · メルカリでめちゃくちゃ売ってるんですけど、私も商人になっちゃうんですか?

転売目的の仕入れと売却は502条ではなく、501条の絶対的商行為(投機購買及びその実行行為)に当たり、一回でも商行為です。ただ「商人」になるかは商法4条で『業として』反復継続しているかで判断します。業界裏話ヒント:税務署の『事業所得か雑所得か』の判定と、商法上の『商人』判定は別の物差しです。税務上は事業者でも商法上は非商人、という食い違いが普通に起きるので、両方を一緒くたに考えると足をすくわれる

Q · 個人事業主なら、みんな『商人』ってことですよね?

そうとは限りません。502条・501条の商行為を業としない自由職業(医師、弁護士、農家などの原始生産者)は、事業者でも商人ではありません(商法4条)。商人でなければ512条の報酬請求権も521条の商事留置権も使えません。業界裏話ヒント:医師の未収金回収が商人と扱いが違うのはここが理由。農家も店舗で物品販売をすれば擬制商人(商法4条2項)になるなど線引きは細かく、士業でも自分が商人か非商人かを意識していない人が多い

Q · 週末だけ民泊をやってます。法律上、何か気をつけることはありますか?

宿泊サービスの反復提供は502条1号(賃貸)や7号(場屋取引)に近く、業として行えば商人扱いになりえます。住宅宿泊事業法の届出とは別問題です。業界裏話ヒント:盲点は596条の場屋営業者責任。客が部屋に置いた荷物が壊れると、あなたに過失がなくても賠償義務が生じうる(高価品は597条で別扱い)。多くのホストはこの民事責任を施設賠償保険でカバーしておらず、トラブル時に自腹になる

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第五百三条(附属的商行為)

商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。

商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。

商法 503 条は、商人が営業のためにする行為を商行為とし、商人の行為は営業のためと推定すると定める。これにより連帯責任や報酬請求など商法の効果が及ぶ。

よくある質問

Q · 個人事業主って、法律上は『商人』なんですか?普通の個人とは違うんですか?

反復継続して営業をしていれば、開業届の有無にかかわらず商法上の商人に当たりうる(商法4条)。そして商人が営業のためにした行為は商行為になる(503条1項)。普通の個人の買い物とは適用ルールが変わり、複数人の債務が連帯になったりする。業界裏話ヒント:税務上の『個人事業主』と商法上の『商人』は別概念。確定申告で事業所得を申告していても商人性が直接決まるわけではなく、営業の実態(反復・継続・営利目的)で判断される。ここを混同して『自分は個人だから商法は関係ない』と油断する人が多い

Q · 『これは事業と関係ない個人的な取引だ』と言えば、商法の適用を逃れられますか?

簡単ではない。503条2項が、商人の行為は営業のためと推定すると定めているので、個人的だと主張する側がそれを立証しなければならない(503条2項)。口頭の主張だけでは推定は覆らない。業界裏話ヒント:裁判で推定を覆せるかは、客観的な経理処理がものを言う。事業の帳簿に載せていない、私的な口座で決済している、といった一貫した記録があれば私的行為と認められやすい。逆に事業経費として計上しておきながら『個人的だった』と言っても通らない。日頃の経理が、いざというときの立証材料になる

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第五百四条(商行為の代理)

商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。

ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

商法 504 条は、商行為の代理人が本人のために行うことを示さなくても、その行為は本人に効力を生じると定める。ただし代理と知らない相手方は代理人にも請求できる。

よくある質問

Q · 会社の人と契約したのに、その人が「自分は関係ない、会社に言ってくれ」って逃げるのはアリなんですか?

その取引が会社の事業のためのものなら、商法504条本文どおり契約は会社本人に効くので、担当者個人が「関係ない」と言うのはむしろ筋が通っています。問題はあなたがどちらに請求できるかで、代理だと知らなかったなら本人にも代理人個人にも請求の道があります(同条但書)。業界裏話ヒント:実務では会社が「担当者の暴走で代理権がなかった」と無権代理を持ち出して争うことが多い。だからこそ発注書や稟議の痕跡など『会社が承認していた』証拠の有無が勝負を分ける

Q · 本人の会社と、名乗らなかった代理人個人の、両方から取れるってことですか?

両方を二重に取ることはできませんが、代理だと知らなかった相手方は、本人と代理人個人のどちらに履行を請求するかを選べます(504条但書、最大判昭和43.4.24)。両者は択一的に併存する関係です。業界裏話ヒント:この選択権は一度使うと撤回できない。資力のない代理人個人を先に選んで内容証明を送ってしまい、後から資力のある会社に切り替えられず回収不能になる事故が現実に起きる。請求書を出す前に、まず相手の資力を調べる

Q · 民法では名乗らないと代理人本人が責任を負うって習いました。商法だと逆なんですか?

そのとおり逆です。民法100条では顕名(本人のためと示すこと)がないと原則として代理人自身に効果が帰属しますが、商法504条本文は商行為についてこれを覆し、名乗らなくても本人に効くとしています。商取引の迅速性を優先した特則です。業界裏話ヒント:試験でも実務でも、まず『これは商行為か』を先に判定するのが鉄則。商行為でなければ民法100条に戻り、結論が正反対になる。入口の性質決定を飛ばすと、答え全体がひっくり返る

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第五百五条(商行為の委任)

商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

商法505条は、商行為の受任者が委任の本旨に反しない範囲内であれば、委任を受けていない行為もできると定める。判断基準は本人の主観でなく同業の取引通念である。

よくある質問

Q · 従業員が勝手に結んだ契約、会社は払わなきゃいけないんですか?

商法505条により、その行為が委任の本旨、つまり任せた仕事の目的に反しない範囲なら、会社は縛られます。日常的な仕入れや在庫補充を任せていた従業員が同種の取引を新規先と行った場合などが典型です。逆に、任せた業務と無関係な投機取引は本旨を逸脱し縛られません。業界裏話ヒント:争点は常に「本旨の範囲か」の一点で、これは社内でどう指示したかの記録(メール・議事録・職務分掌規程)で決まる。口頭で曖昧に任せた会社ほど、後から「本旨外」と主張しても通りにくい

Q · 民法の委任と何が違うんですか?商法505条があるとどう得するんですか?

民法644条では受任者は委任の本旨に従って事務を処理しますが、明示されていない行為まで当然にできるとは書いていません。商法505条は、商行為の受任者には本旨に反しない限り委任を受けていない行為もできると一歩踏み込み、商取引のスピードを止めないための特則を置きました。業界裏話ヒント:実務では「505条があるから民法より広い裁量が認められる」と単純化されがちだが、民法の解釈でも合理的な付随行為は認められるため、505条独自の意義は限定的という見解も有力。実務上、解釈が分かれている論点なので、契約書で代理権の範囲を明記する方が確実

Q · 取引先の担当者に「権限がなかった」と言われて支払いを拒まれています。

相手が商人で、その担当者が商行為の受任者なら、商法505条に加え表見代理(民法109条、110条、112条)を併せて主張できます。本旨に反しない通常の取引なら、担当者個人の内部的権限の有無にかかわらず会社が責任を負う構成が可能です。業界裏話ヒント:相手方の立場では、505条よりも表見代理や商法504条(非顕名でも本人に効果帰属)の方が使い勝手がよい場面が多い。「誰を相手に、どの条文で攻めるか」を最初に選ぶことが回収可能性を分ける

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第五百六条(商行為の委任による代理権の消滅事由の特例)

商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。

商法 506 条は、商行為の委任による代理権は本人の死亡によって消滅しないと定める。民法 111 条の原則の例外で、相続人が解任を通知するまで代理人の権限は存続する。

よくある質問

Q · 社長が亡くなったのに、その会社の担当者と結んだ契約って本当に有効なんですか?

有効です。商法 506 条により、商行為の委任で生じた代理権は本人の死亡では消滅しません。民法 111 条の原則(本人死亡で代理権消滅)の例外です。業界裏話ヒント:止めるには相続人側からの能動的な解任通知が必要で、通知が届くまでに結ばれた取引は有効に残る。死亡を知った時点ですぐ内容証明で通知するかどうかで、後から背負う債務額が変わる

Q · 相続人なら、亡くなった親の代理人をすぐクビにできますよね?

解任(委任の解除)はできますが、それまでに代理人が結んだ取引は有効です。商法 506 条で代理権は自動消滅しないため、解任通知が到達して初めて止まります。業界裏話ヒント:実務では、誰がどんな代理権を持っていたか相続人が把握していないことが多い。委任状・取引先台帳・銀行届出印の管理者を最初に押さえないと、知らない場所で権限が動き続ける

Q · 支配人や番頭さんだけの話ですか、ちょっとした集金係でも同じ?

規模を問いません。商行為の委任であれば、日々の仕入れや集金を任せた小さな授権でも代理権は存続します(商法 506 条)。業界裏話ヒント:金額の大小ではなく『商行為の委任かどうか』が分かれ目。個人事業主が知人に集金を頼んでいた程度でも該当しうるので、相続時には小さな委任ほど見落とされ、後で揉める

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第五百七条

削除

商法第 507 条は現在「削除」されており、効力ある規律はない。平成 29 年の民法改正で契約の申込みのルールが民法側に一本化されたため削除された。

よくある質問

Q · 商法 507 条は削除されたのですか?

はい。商法第 507 条は現在「削除」となっており、効力ある規律は存在しません。条番号だけが欠番として残っています。

Q · 商法 507 条はなぜ削除されたのですか?

平成 29 年(2017 年)の民法(債権法)改正により、契約の申込みのルールが民法側へ一本化され、商法に特則を置く意味が失われたためです。

Q · 商法 507 条の現行ルールはどこにありますか?

契約の申込みに関する現行ルールは民法の申込み規定に置かれています。商法 507 条を引く代わりに民法の該当条文を参照してください。

Q · 削除された条文を引用しても大丈夫ですか?

削除条文は効力がないため、根拠条文として引用すべきではありません。現行の民法規定を確認して引用する必要があります。

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第五百八条(隔地者間における契約の申込み)

商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

民法第五百二十四条の規定は、前項の場合について準用する。

商法 508 条は、商人である隔地者間で承諾期間を定めない契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しないとき、その申込みは効力を失うと定める。

よくある質問

Q · 見積書って、ただの参考価格でしょう? 法律的に縛られるんですか?

見積書は多くの場合、法的には「契約の申込み」に当たります。相手が承諾すれば契約成立です。商人同士で承諾期限を書かなければ 508 条で相当期間後に自動失効しますが、それまでは生きた申込みです。業界裏話ヒント:実務では見積書に「本見積りは発行日から○日間有効」と一行入れるのが鉄則。これで失効日が明確になり、相当の期間という曖昧な争いを丸ごと回避できる。入れていない見積書は、いつ消えたか後で揉める火種になる

Q · 相手が忘れた頃に「あの見積りで」と発注してきたら、断れますか?

商人同士で相当の期間を過ぎていれば、その申込みはすでに失効しており、応じる義務はありません(508 条 1 項)。相手の発注は遅延した承諾として、あなたが新たな申込みとみなし現在の条件を提示できます(524 条準用)。業界裏話ヒント:「前回の見積りは失効しています、現在の価格はこちらです」と書面で返すと相手は反論しにくい。508 条を知らない相手は『前に出したじゃないか』と押してくるが、条文番号を添えるだけで交渉の主導権が移る

Q · 自分は小さな個人事業だけど、508 条は関係ありますか?

関係します。商法 4 条の「商人」は広く、自己の名で営利取引を反復継続する個人事業主も含まれます。相手も商人で隔地者間なら 508 条が適用されます。業界裏話ヒント:「うちは小規模だから民法の感覚で平気」という思い込みが危ない。自分が商人かは、屋号で取引しているか、反復継続しているかで実質判断される。BtoB で動くなら、自分は商人だと前提を置いた方が事故が少ない

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第五百九条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)

商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。

商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

商法 509 条は、商人が平常取引をする者から営業の部類に属する契約の申込みを受けたとき、遅滞なく諾否を通知すべき義務を定める。怠れば申込みを承諾したものとみなされる。

よくある質問

Q · 『遅滞なく』って、具体的に何日以内ですか?

条文は日数を明示していません。『遅滞なく』は取引の性質・業界慣行・申込みの内容によって変わる相対的な基準で、生鮮品なら数時間、複雑な大口契約なら数日が一つの目安です。業界裏話ヒント: 裁判で争われると『その業界で通常どれくらいで返事をするのが普通か』が問われます。社内の過去のやり取りで自分が普段どれくらいで返信していたかが、逆に自分を縛る証拠になることがある。普段の返信スピードが、あなたの『遅滞なく』のラインを決める

Q · 口約束の申込みでも、返事しないと承諾になりますか?

なります。509 条は申込みの方式を限定していません。電話、対面、メール、FAX、どの媒体でも『平常取引をする者』からの『営業の部類に属する』申込みであれば諾否通知義務が生じます(509 条 1 項)。業界裏話ヒント: 問題は口頭申込みの『証明』です。後から『そんな申込みは受けていない』と言われると、申込みの存在自体を立証しなければならない。だから申込みをする側は、口頭で伝えた後に必ずメールで『先ほどの件、改めて発注します』と一筆残すのが鉄則

Q · うちは個人事業主だけど、509 条は適用されますか?

適用されます。509 条の主語は『商人』で、商人とは自己の名をもって商行為をすることを業とする者です(商法 4 条 1 項)。法人か個人かは関係なく、継続的に営利目的で取引していれば個人事業主も商人にあたります。業界裏話ヒント: 逆に、たまにフリマアプリで売るだけの人や純粋な消費者は『商人』ではないので 509 条の義務を負いません。あなたが BtoB と BtoC のどちらの立場で取引しているかで、沈黙の法的な意味が 180 度変わる

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第五百十条(契約の申込みを受けた者の物品保管義務)

商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。

ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。

商法510条は、商人が営業の申込みとともに受け取った物品を、申込みを拒絶しても申込者の費用で保管する義務を定める。ただし価額が費用に満たないとき等は除く。

よくある質問

Q · 注文していないのに送られてきた商品、勝手に捨てたら本当に賠償ですか?

あなたが商人で、その商品が営業の部類に属する契約の申込みとともに届いたなら、拒絶しても保管義務があり(商法510条)、雑に扱って毀損すれば賠償の可能性があります。逆に商品価額が保管費用に満たないなら、ただし書きで義務は外れます。業界裏話ヒント:「商人かどうか」「営業の部類か」の二つの入口を相手が立証しなければ義務は発生しません。送られた側はまずこの入口を争うのが定石で、安易に保管義務を認めない方がよい

Q · 保管費用は誰が払うんですか? ずっと立て替えるのは納得いきません

費用は申込者(送ってきた側)の負担です(商法510条本文「申込者の費用をもって」)。あなたが立て替えた保管費用は申込者に償還請求できます。業界裏話ヒント:黙って保管していると後で費用回収が難しくなります。届いた時点で「費用はそちら負担で保管している」と書面で通知しておくと、償還請求の証拠が固まる。通知一通の有無が、立て替え費用を取れるか取りこぼすかを分ける

Q · うちは個人でネット販売してるだけ。これも「商人」に入りますか?

反復継続して営利目的で物品の売買をしていれば、商法上の「商人」(商法4条)と認定されうるので、510条の保管義務が及ぶ可能性があります。趣味の単発出品なら商人ではありません。業界裏話ヒント:「商人」かどうかは規模や継続性で実質判断され、開業届の有無だけでは決まりません。ECで仕入れ販売を続けている人は、自覚なく商人扱いされ、消費者向けの送りつけ商法対策(特定商取引法59条)が使えないことがある

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第五百十一条(多数当事者間の債務の連帯)

数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。

保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。

商法 511 条は、商行為で共同負担した債務を連帯債務とし、主債務または保証が商行為のときは保証を連帯保証とする。連帯保証人は催告・検索の抗弁を持たない。

よくある質問

Q · 友達の会社の保証人になっただけなのに、銀行がいきなり私に全額払えと言ってきました。本人に先に請求すべきでは?

商行為による保証は連帯保証になり(商法 511 条 2 項)、連帯保証人には「まず本人に請求しろ」という催告の抗弁(民法 452 条)も「まず本人の財産を差し押さえろ」という検索の抗弁(民法 453 条)もありません。だから銀行はいきなりあなたに全額請求できます。業界裏話ヒント:ただし 2020 年 4 月以降に事業のための借金を保証したなら、契約前に公正証書で保証意思を確認していなければ無効です(民法 465 条の 6)。この一手続の欠落が全額を帳消しにすることがある。まず契約日と公正証書の有無を確認してください

Q · 3 人で共同事業の資金を借りました。私は 3 分の 1 だけ払えばいいんですよね?

いいえ。商行為として共同で負った債務は連帯債務になり(商法 511 条 1 項)、債権者はあなた一人に全額を請求できます。3 分の 1 で済むのは、全額を払った後に他の 2 人へ求償(民法 442 条)できた場合だけです。業界裏話ヒント:求償権は紙の上の権利にすぎません。相手が無資力なら回収はゼロで、結局あなた一人が全額をかぶる。だから借りる前に、共同債務者の資力と、誰が一番先に狙われそうかを冷静に見ておくことが、最大の防御になります

Q · 連帯保証人を頼まれたけど、上限がないと怖いです。何か身を守る方法はありますか?

保証契約に極度額(保証する上限額)を明記させることです。個人が事業債務などを継続的に保証する根保証では、極度額の定めがなければ保証契約自体が無効になります(民法 465 条の 2)。業界裏話ヒント:極度額を空欄や「一切の債務」としたまま署名を求める書式は、後で無効を主張する格好の的になります。署名前に上限額の数字を必ず入れさせ、入れないなら保証を断る。この一言を言えるかどうかで、人生が変わることがあります

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第五百十二条(報酬請求権)

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

商法 512 条は、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたとき、相当な報酬を請求できると定める。報酬の合意がなくても有償と推定される点が、民法の無償原則と異なる。

よくある質問

Q · 報酬の金額を決めていなかったら、いくら請求されるんですか?

「相当な報酬」、つまり同業者の標準的な料金、作業量、地域の取引慣行をもとに算定された額です(商法512条)。当事者が後から一方的に決められるものではなく、争えば最終的に裁判所が相場から認定します。業界裏話ヒント:相場の立証には同業者の料金表や見積書が効きます。請求する側は事前に『うちの標準料金はこれ』という資料を持っておくと、裁判で『相当額』として認められやすい。逆に請求される側は、提示額が相場より高いことを別業者の見積もりで示せば減額できる

Q · 友達に頼んだだけなのに、本当にお金を取られるんですか?

相手が商人で、その営業範囲内の行為なら、友達でも512条の報酬請求権は発生します。「友達だから無償」という法的推定はありません。ただし事前に無償の約束(特約)があれば請求は排除されます。業界裏話ヒント:512条は任意規定なので、無償の合意が最優先されます。頼む側が『これはご厚意でお願いしたい、無償で』と一言メールに残すだけで、後の請求権を消せる。多くの人はこの一行を惜しんで、後から相当額を払う羽目になる

Q · 不動産屋に口頭で物件探しを頼んだだけ。媒介契約書がなくても仲介手数料を払うんですか?

宅地建物取引業者は商人なので、書面がなくても512条で相当な報酬を請求しうる立場にあります。ただし宅地建物取引業法が報酬の上限を定め、媒介契約の書面化も義務づけています(宅地建物取引業法34条の2、46条)。業界裏話ヒント:不動産仲介では『512条で請求できる』ことと『宅建業法の規制』がせめぎ合います。書面を交わしていない取引は宅建業法上も問題があるため、業者側も強気に出にくい。媒介契約書のない段階での請求には、宅建業法を盾に交渉する余地が残されている

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第五百十三条(利息請求権)

商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。

商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。

商法 513 条は、商人間の金銭消費貸借では利息の約束がなくても貸主が法定利息を請求でき、商人が営業の範囲内で立替払いをすれば立替日以降の法定利息も当然に請求できると定める。

よくある質問

Q · 取引先にお金を貸すとき、契約書に利息を書かなかったら、結局いくら取れるんですか?

商人同士なら、利息の約束がなくても法定利息を請求できます(商法 513 条 1 項)。利率は民法 404 条の法定利率で、2020 年 4 月からは変動制、現在は年 3% です(最新の改正状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:多くの実務書や古いテンプレートには『商事法定利率 6%』と書かれたままです。この 6% を定めていた商法 514 条は 2020 年に削除済み。6% で請求書を作ると過大請求になり、相手の代理人に突かれる隙を与えます

Q · 代わりに支払ってあげた立替金、利息まで請求したら『せこい』と思われませんか?

商人が営業の範囲内で立て替えたなら、立替日からの法定利息を請求できるのは法律上当然の権利です(商法 513 条 2 項)。せこさの問題ではなく、商取引では資金の時間的価値を計上するのが標準です。業界裏話ヒント:大企業の経理部は立替金に当然のように利息を計上します。請求しない側が損をしているのが実態。BtoB の継続取引で立替利息を請求しないと、税務上『無利息の利益供与』として寄附金課税の論点を招くこともあります

Q · 私は個人でやっている小さな商売ですが、これって会社じゃないと関係ない話ですよね?

いいえ、個人事業主でも商法上の『商人』に該当すれば適用されます(商法 4 条、513 条)。自己の名で商行為を業として行えば、法人格がなくても商人です。業界裏話ヒント:『商人かどうか』は開業届や登記の有無ではなく営業の実態で判断されます。フリーランスや個人ネットショップでも、反復継続して取引していれば商人とされ、貸金や立替金に当然利息を乗せられる立場になる。逆に、相手から商事利息を請求される立場にもなります

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第五百十四条

削除

商法514条は商事法定利率(年6分)を定めていたが、2017年改正で削除され、2020年4月以降は民法404条の変動制(当初年3%)に一本化された。

よくある質問

Q · 商法514条はなぜ削除されたのですか?

商事と民事で法定利率を区別する合理性が乏しく、低金利時代に年6分が実態と乖離したため、2017年の債権法改正で削除され、民法404条の変動制に一本化されました。

Q · 商事法定利率の年6分はいつまで適用されますか?

2020年3月31日以前に生じた商事債務には、経過措置によりなお旧商法514条の年6分が適用されます。2020年4月1日以降に生じた債務は民法404条の法定利率が適用されます。

Q · 商事法定利率と民事法定利率の違いは何ですか?

かつて商事は年6分(商法514条)、民事は年5分(旧民法404条)と区別されていました。2020年4月1日からは区別が廃止され、すべて民法404条の変動制に統一されています。

Q · 現在の法定利率は何%ですか?

2020年4月1日の施行時点で年3%です。民法404条により3年ごとに見直す変動制で、基準割合に応じて改定されます。商事・民事を問わず同じ利率が適用されます。

Q · 法定利率の変動制とは何ですか?

民法404条が定める仕組みで、3年を1期として、銀行の短期貸付利率の平均(基準割合)の変動に応じて法定利率を1%刻みで見直す制度です。施行当初は年3%でした。

Q · 2020年4月より前に発生した商取引の利率はどうなりますか?

改正法の経過措置により、2020年3月31日以前に利息が生じた商事債務には旧商法514条の年6分が適用されます。利息が生じた時点で適用法が決まる点に注意が必要です。

Q · 約定利率の定めがない商取引の遅延損害金は何%ですか?

現在は民法404条・419条により法定利率(当初年3%)で計算します。2020年3月31日以前に履行遅滞となった商事債務は年6分で計算されます。

Q · 法定利率は何年ごとに見直されますか?

民法404条により3年ごとに見直されます。各期の基準割合と直近変動期の基準割合との差が1%以上のときに、1%単位で法定利率が改定されます。

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第五百十五条(契約による質物の処分の禁止の適用除外)

民法第三百四十九条の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。

商法 515 条は、商行為で生じた債権を担保する質権について、流質契約を禁じる民法 349 条を適用しない。商取引では流質特約が原則有効だが、暴利は民法 90 条で制限される。

よくある質問

Q · 質屋で流れた質草も、この商法515条のせいで取られるんですか?

いいえ、一般消費者が利用する質屋は質屋営業法という別の特別法で流質が認められており、商法515条が直接効くのは事業者間の商事質です。質屋営業法では質屋は流質期限の経過で質物の所有権を取得でき、原則として差額の清算義務はありません。業界裏話ヒント:同じ『質に入れる』でも、相手が許可を受けた質屋か一般の貸主かで適用法が全く違う。許可業者でない者が高価な担保に流質特約を付けてきたら、それは商法515条か、さもなくば暴利行為の問題になる。まず相手の業態を確かめる

Q · 商売の借金なら、担保が借金の何倍の価値でも全部取られて文句言えないんですか?

原則として流質特約は有効ですが、担保価値が債務額を著しく超える場合は別です。判例・通説は暴利行為(民法90条の公序良俗違反)として特約を無効にしたり、債権者に差額の清算義務を負わせたりする余地を認めています。515条が外すのは民法349条の保護だけで、公序良俗の壁までは外しません。業界裏話ヒント:実務では『流質特約+差額清算条項』をセットで入れるのが堅い貸し手のやり方。清算条項があると暴利の主張を封じられる。逆に清算条項のない一方的な流質特約を見たら、その不均衡自体が無効主張の材料になる

Q · 個人事業主が事業の運転資金で担保を出した場合も、流質特約は有効ですか?

事業のための借入は附属的商行為(商法503条)と評価されることが多く、その場合は商行為由来の債権として515条が適用され、流質特約は有効になりえます。個人か法人かではなく、取引が商行為かどうかで判断されます。業界裏話ヒント:『自分は会社じゃないから商法は関係ない』という思い込みが一番危ない。商人とは反復継続して営業する者を指し、個人事業主やフリーランスの事業性取引は広く商行為に取り込まれる。商法が効くかどうかは肩書ではなく取引の中身で決まる

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第五百十六条(債務の履行の場所)

商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。

商法516条は、商行為で生じた金銭債務などを、契約で定めがなければ債権者の現在の営業所で履行すべきと定める。この履行地は義務履行地管轄として裁判所も左右する。

よくある質問

Q · 代金って、結局どこで払えばいいんですか? 振り込みなら場所は関係ない話では?

実務の振込と、法律上の「履行場所」は別の概念です。商法516条では、契約で決めていなければ債権者(受け取る側)の営業所が履行場所になります。振込で払うこと自体は問題ありませんが、この「法的な場所」が義務履行地となり、紛争時の裁判所を決めます(民訴5条1号)。業界裏話ヒント:弁護士は契約書を見るとき、管轄条項がなければ「支払はどちらの営業所か」を真っ先に確認します。これ一つで、揉めたときどちらが出張する側になるかが決まるからです

Q · 契約書に裁判所のことを何も書いていません。揉めたら近くの裁判所で争えますか?

書いていないからこそ、516条と民訴5条1号のdefaultが作動します。金銭債務なら債権者の営業所が義務履行地となり、相手がそこの裁判所であなたを訴えられます。あなたが債務者(払う側)なら、相手の地元に呼ばれる可能性が高い。業界裏話ヒント:契約書の空欄は「中立」ではなく、多くの場合お金を受け取る側に有利に働きます。次の契約では支払場所か管轄の一行を必ず入れる、それだけで土俵が変わります

Q · フリーランスで報酬を払ってもらえません。遠くの相手を地元で訴えられますか?

可能性が高いです。報酬を受け取るあなたが債権者なので、516条により履行場所はあなたの営業所(なければ住所)。義務履行地管轄(民訴5条1号)で、あなたの地元の裁判所に提訴できます。業界裏話ヒント:これは数少ない受注側に有利なdefaultです。委託者が契約書に「支払場所は当社」と書いていない限り、あなたのホームで戦えます。契約時に相手がこの行を入れてこなければ、あえて指摘せず空けておくのも一手です

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第五百二十一条(商人間の留置権)

商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。

ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

商法521条は、商人間の双方的商行為から生じた弁済期の債権について、債権者が占有する債務者所有の物・有価証券を弁済まで留置できると定める。民事留置権と違い牽連性は不要である。

よくある質問

Q · 預かってる相手の商品、勝手に売っちゃってもいいんですか?

ダメです。商法521条の留置権は「占有を続けて引き渡しを拒む権利」であって、処分権ではありません。勝手に売れば横領になりかねない。現金化したいなら民事執行法195条の形式競売を申し立てるのが筋です。業界裏話ヒント:実は「留置できること」と「優先弁済を受けられること」は別物。留置権には本来、優先弁済効はありません。だからこそ後述の倒産時の特別先取特権化が決定的に効いてくる

Q · 不動産にも商事留置権が使えるって本当ですか?

本当です。最高裁は平成29年(2017年)に、不動産も商法521条の「物」に含まれ、商事留置権の目的物となりうると判断しました。建設業者が施主の土地建物を占有して請負代金回収の盾にできる場面が典型です。業界裏話ヒント:ただし先行する抵当権との優劣など、実務上、解釈が分かれている論点が残っています。占有を始めるタイミングと、すでに登記された担保権の有無を最初に確認するかどうかで、結論が変わる

Q · 相手が倒産したら、留置権なんて意味ないんじゃないですか?

逆です。倒産時こそ最大の価値が出ます。民事留置権は破産すると効力を失いますが(破産法66条3項)、商事留置権は破産法66条1項で特別の先取特権とみなされ、別除権として優先回収できます。業界裏話ヒント:これが商事留置権と民事留置権の最大の差です。多くの取引担当者は「倒産=売掛金は紙くず」と諦めますが、相手の物を握っている商人だけは別格の地位に立てる。倒産が見えた瞬間、物を返さない判断ができるかどうかが、回収できる側とできない側を分ける

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第二章
第五百二十四条(売主による目的物の供託及び競売)

商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。

損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。

ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

商法524条は、商人間売買で買主が受領を拒んだとき、売主が目的物を供託し、または相当の期間を定めて催告した後に競売へ付し、その代価を代金に充当できると定める。傷みやすい物は催告不要。

よくある質問

Q · 取引先が受け取らない商品、本当に勝手に売っていいんですか?

条件を満たせば売れる。必要なのは、売主・買主の双方が商人であること、そして原則として相当の期間を定めた催告を先に行うこと(商法524条1項)。無催告で売れるのは傷みやすい物だけだ(同2項)。業界裏話ヒント:催告の「相当の期間」をどれだけ取るかで、後の紛争で競売の有効性が争われる。短すぎると無効リスク、長すぎると損害が膨らむ。実務では物の性質に応じて数日から二週間程度を内容証明郵便で通知し、証拠を残すのが定石

Q · 供託と競売、どっちを選べばいいんですか?

供託は商品をそのまま供託所に預ける方法で、商品自体は保管される。競売は商品を換価して代価を回収する方法だ(524条1項)。在庫として価値が落ちない物なら供託、保管コストが高い物や値崩れする物なら競売が合理的。業界裏話ヒント:供託すれば、その時点で売主は引渡債務を免れる。受領遅滞の責任と保管リスクが買主側に移るので、代金回収を急がないなら、まず供託で自分の債務を切り離すのが安全策になる

Q · 競売って手続きが大変で、結局損するんじゃないですか?

競売は代価を供託する義務があるが、未払い代金があればその分を充当できる(524条3項)。問題は手続の適正さで、これを軽視すると後で買主から「不当に安く売った」と損害賠償を請求されるリスクがある。業界裏話ヒント:手続を踏まずに任意で投げ売りすると、その差額が自分に跳ね返る。誰に・いくらで・どんな方法で売ったかを記録に残しておくことが、自分を守る盾になる。証拠化こそが回収額を確定させる

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483条の本則 / 66条の附則

この法令を引用する

商法(明治三十二年法律第四十八号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/132AC0000000048

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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本頁資料來源:e-Gov 法令検索(デジタル庁)·整理提供:法律人 LawPlayer· lawplayer.com