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法律

刑法

けいほう

法令番号
明治四十年法律第四十五号
公布日
明治四十年四月二十四日
条数
本則370条・附則36条
第一編
第一章
第一条(国内犯)

この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。

日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。

刑法 1 条は、日本国内で罪を犯したすべての者に、国籍を問わず日本の刑法を適用する属地主義を定める。日本船舶・日本航空機内の犯罪にも及ぶ。

よくある質問

Q · 外国人が日本で罪を犯したら、その人の国の法律で裁かれるんですか?

いいえ、日本の刑法で裁かれます。刑法 1 条 1 項の属地主義により、日本国内で犯した罪は国籍を問わず日本の刑法が適用され、母国の法律は関係ありません。業界裏話ヒント:逆に同じ行為が母国でも犯罪なら、帰国後に母国でも処罰される二重処罰の問題が起きうる。刑法 5 条は外国判決があっても日本で再度処罰できる(ただし執行済みの刑は減免)と定めており、国境をまたぐ事件は一つの行為で二国に追われることがある

Q · 海外から日本人をネットで騙した場合、日本の警察は何もできないんですよね?

そうとは限りません。被害(結果)が日本で発生していれば、隔地犯として国内犯になり(遍在説、通説・判例)、日本の刑法が適用されます。行為地が海外でも、結果地が日本なら捜査対象です。業界裏話ヒント:実務では結果がどこで発生したかの立証が勝負になる。送金先口座、被害者の所在、被害金の流れが日本にあることを示せれば国内犯として動かせる。「海外サーバーだから無理」と最初に言われても、結果地の資料を揃えて再度相談する価値がある

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第二条(すべての者の国外犯)

この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。

削除

第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪

第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪

第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪

第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪

第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪

第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪

第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪

刑法2条は、通貨偽造や公文書偽造など日本の国家的法益を害する罪について、犯人の国籍や犯行場所を問わず日本の刑法を適用すると定める。対象は閉じた列挙に限られる。

よくある質問

Q · 外国人が海外でやった犯罪を、日本がわざわざ裁く意味あるんですか?

あります。2条が並べているのは通貨偽造(148条)や公文書偽造(155条)など、日本という国家の信用や秩序を直接壊す犯罪だけ。被害者が個人ではなく国家システムそのものだから、犯人の国籍や場所を問わず日本が手を出す。これを保護主義といいます。業界裏話ヒント:殺人や強盗は2条のリストに『ない』。だから外国人が海外で日本人以外を殺しても2条では裁けません。何が載って何が載っていないかが全てで、この線引きこそ国外犯処罰の急所です

Q · リストに載ってる犯罪なら、すぐに日本で逮捕されるんですか?

いいえ。2条は『日本の刑法を適用できる』という規定で、身柄を確保できるかは全くの別問題です。相手が外国にいれば、逃亡犯罪人引渡法や国際捜査共助の手続を経なければ手は届きません。業界裏話ヒント:適用『できる』ことと実際に『裁ける』ことの間には、引渡条約の有無という巨大な溝があります。条約のない国に逃げ込まれると、リストに載っていても事実上手が出せないことが多い。法の射程図と執行の現実図は、別々に読む必要があります

Q · 条文の最初に『削除』ってありますけど、あれ何ですか?

戦前あった『皇室に対する罪』(不敬罪など)が、1947年(昭和22年)の刑法改正で国外犯リストから外され、その跡地が『削除』の二文字として残っています。条番号の体系を維持するため、空欄を詰めずに削除と記すのが日本の立法慣行です。業界裏話ヒント:条文中の『削除』は単なる空白ではなく、その時代に何が罰せられ、何が罰せられなくなったかの歴史記録。削除条文を読むと、その法律が経てきた価値観の転換が見えてきます

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第三条(国民の国外犯)

この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。

第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪

第百十九条(現住建造物等浸害)の罪

第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪

第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪

第百七十六条、第百七十七条及び第百七十九条から第百八十一条まで(不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、不同意わいせつ等致死傷)並びに第百八十四条(重婚)の罪

第百九十八条(贈賄)の罪

第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪

第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪

第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪

第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪

十一第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪

十二第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪

十三第二百三十条(名誉毀損)の罪

十四第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷)、第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・不同意性交等及び同致死)並びに第二百四十三条(未遂罪)の罪

十五第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪

十六第二百五十三条(業務上横領)の罪

十七第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪

刑法 3 条は、日本国外で殺人・傷害・詐欺・性犯罪など一定の重大犯罪を犯した日本国民に日本の刑法を適用すると定める。窃盗・強盗は対象に含まれない。

よくある質問

Q · 海外で罪を犯しても、その国で無罪や不起訴になれば日本では裁かれませんよね?

そうとは限りません。刑法5条は、外国で確定判決を受けても日本で同じ行為について改めて処罰できると定めます(外国で執行された刑は日本の刑の執行で考慮)。一事不再理は国境を越えないのです。業界裏話ヒント:「現地で釈放された」という報道を見て安心するのは早い。日本の検察は外国の処分とは独立に起訴・不起訴を判断するため、海外での結末は日本での立件可能性を消さない

Q · その国では合法な行為なら、日本国民でも罪に問われないのでは?

刑法3条の国外犯では、いわゆる双罰性(行為地でも犯罪であること)は要件とされていません。列挙された罪に該当すれば、行為地の法律がどうであれ日本国民には日本刑法が適用されます。業界裏話ヒント:刑法2条(保護主義)と3条(属人主義)は双罰性不要、これに対し3条の2(国民以外の者の国外犯)や4条の2(条約による国外犯)は要件が異なる。どの条文が根拠になるかで結論が変わるので、専門家は最初にそこを切り分ける

Q · 海外で会社の金を横領したら日本で裁けると聞きました。窃盗はどうなんですか?

業務上横領(253条)・詐欺(246条)・恐喝(249条)は刑法3条の対象ですが、窃盗(235条)と強盗(236条)はこの一覧に入っていません。同じ財産犯でも線引きが違うのです。業界裏話ヒント:この非対称は条文を逐一読まないと気付けない。海外でのリスク評価で「財産犯なら全部対象」と雑にまとめると判断を誤る。一覧の罪名を一つずつ照合するのが実務の作法だ

Q · 海外で外国の役人に賄賂を渡したら、贈賄罪(刑法198条)で日本で裁かれますか?

刑法198条の贈賄は日本の公務員を相手にした場合の規定で、外国公務員は対象外です。ただし不正競争防止法18条が外国公務員への贈賄を禁じ、日本国民の国外犯として処罰します(同法21条)。業界裏話ヒント:海外進出企業の法務が最も警戒するのがこれ。現地の商習慣だと思って渡したファシリテーション・ペイメントが、日本で外国公務員贈賄罪になりうる。刑法3条の発想が特別法側で生きている典型例だ

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第三条の二(国民以外の者の国外犯)

この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。

第百七十六条、第百七十七条及び第百七十九条から第百八十一条まで(不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、不同意わいせつ等致死傷)の罪

第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪

第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪

第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪

第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪

第二百三十六条(強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷)並びに第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・不同意性交等及び同致死)の罪並びにこれらの罪(同条第一項の罪を除く。)の未遂罪

刑法 3 条の 2 は、日本国外で日本国民を被害者として殺人・性犯罪・略取誘拐・強盗等の重大犯罪を犯した外国人に日本刑法を適用する規定。窃盗や詐欺は対象外で、被疑者の身柄確保が訴追の前提となる。

よくある質問

Q · 海外で日本人が外国人に殺されたら、本当に日本で裁判できるんですか?

できます。刑法 3 条の 2 が、日本国外で日本国民に対し殺人・傷害・強盗・性犯罪・略取誘拐などの重大犯罪を犯した外国人に日本刑法を適用すると定めています(2003 年新設)。ただし被疑者の身柄が日本の手に渡ること(入国・引渡し)が現実の前提です。業界裏話ヒント:対象は列挙された重大犯罪のみで、窃盗や詐欺は入っていません。まず自分の事件が列挙罪名に当たるかを確認するのが、弁護士が最初に見るポイントです

Q · 現地でもう裁判が終わって刑を受けた犯人を、日本でもう一度裁いたら二重処罰では?

日本の刑法は属地主義が原則で、外国判決があっても日本での処罰自体は妨げられません(刑法 5 条本文)。ただし外国で言い渡された刑の全部または一部の執行を受けた者には、日本での刑が必要的に減軽または免除されます(同条但書)。業界裏話ヒント:「外国で裁かれたからもう日本では無罪放免」ではなく、「日本でも訴追はされ得るが、受けた刑は差し引かれる」が正確な理解。減免の主張は弁護側が積極的に立証すべき部分です

Q · 対象になる犯罪とならない犯罪の線引きはどこですか?

本条が列挙するのは、不同意わいせつ・不同意性交等(176・177・179〜181 条)、殺人とその未遂(199 条)、傷害・傷害致死(204・205 条)、逮捕監禁(220・221 条)、略取誘拐・人身売買(224〜228 条)、強盗・強盗致死傷など(236・238〜241 条)に限られます。業界裏話ヒント:生命・身体・性的自由・人身の自由という核心法益が守備範囲で、財産だけの被害(純粋な窃盗・詐欺)は外れます。複合的な事件では、どの罪名で構成するかで日本の管轄が及ぶかが変わるため、罪名の組み立てが戦略の入口になる

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第四条(公務員の国外犯)

この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。

第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪

第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪

第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪

刑法4条は、日本の公務員が国外で収賄・職権濫用・虚偽公文書作成などの罪を犯した場合、行為地が国外でも日本の刑法を適用すると定める属地主義の例外規定である。

よくある質問

Q · 海外で起きたことなのに、本当に日本の警察や検察が動けるんですか?

動けます。刑法4条が列挙する罪(収賄、職権濫用、虚偽公文書作成など)を日本の公務員が国外で犯した場合、日本の刑法が直接適用されます。捜査は帰国後の身柄確保や国際捜査共助を使って進みます。業界裏話ヒント:実務では本人が日本に戻るタイミングが勝負どころ。国外にいる間は捜査が滞りやすく、帰国・転勤・退職の前後に動きが集中する

Q · 外交官って特権で守られてて、結局おとがめなしなんじゃないですか?

それは誤解です。外交特権が免除するのは任地の国の裁判権であって、本国である日本の処罰権は別です(刑法4条)。むしろ任地で裁けないからこそ、日本が自国の公務員を裁く意味が大きい。業界裏話ヒント:任地国で起訴できない事案こそ、日本側の刑法4条が最後の砦になる。特権イコール完全な免責、という思い込みが油断を生む

Q · 民間人が海外で似たことをしても、同じように日本で裁かれますか?

罪によります。一般の日本人の国外犯は刑法3条(属人主義)で別に規定され、対象犯罪の範囲が異なります。4条は公務員の官職に絡む罪に特化した規定です(刑法3条・4条)。業界裏話ヒント:同じ海外での不正でも、その人が公務員か民間人かで適用条文も処罰範囲も変わる。立場の違いが、裁けるか裁けないかを分ける

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第四条の二(条約による国外犯)

第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。

刑法 4 条の 2 は、第 2 編の罪のうち条約が国外犯処罰を義務付けた犯罪について、国籍や犯行地を問わず日本国外で犯した者全員に日本刑法を適用する規定である。

よくある質問

Q · 外国で罪を犯してその国で罰を受けたら、日本ではもう裁かれないですよね?

そうとは限りません。刑法 5 条は、外国で確定判決を受けても日本で同じ行為を処罰することを妨げないと定めています。ただし外国で刑の全部または一部の執行を受けたときは、日本での刑を減軽または免除できます。つまり『二重に裁かれうるが、執行は調整される』という建て付けです。業界裏話ヒント:実務では外国判決の存在は量刑で大きく考慮されますが、自動的に免責されるわけではありません。海外で前科がある事件では、その判決書と執行記録を早期に取り寄せ、5 条の減免を主張する材料にするのが定石です。

Q · テロやハイジャックって、この刑法の条文で裁かれるんですか?

多くは刑法本体ではなく特別法で裁かれます。ハイジャックは航空機の強取等の処罰に関する法律、人質事件は人質による強要行為等の処罰に関する法律など、それぞれが独自の国外犯規定を持っています。4 条の 2 は、刑法第二編の罪のうち条約が国外犯処罰を求めるものを補充的に拾う規定です。業界裏話ヒント:どの法律で立件されるかで法定刑も国外犯の範囲も変わるため、国際事件では『刑法か特別法か』の見極めが弁護の第一歩になります。報道の『〜罪』という言葉だけで条文を特定しないことが重要です。

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第五条(外国判決の効力)

外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。

ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。

刑法5条は、外国で確定裁判を受けても同一の行為について日本が更に処罰できると定める。ただし外国で刑の執行を受けた分は、日本の刑が減軽または免除される。

よくある質問

Q · 海外で罰金を払って終わった事件、日本でまた捕まることってあるんですか?

あり得ます。刑法5条本文は、外国で確定裁判を受けても同一行為について更に処罰することを妨げないと定めています。ただし同条但書で、外国で刑の執行を受けた分は減軽または免除されます。業界裏話ヒント:実務では海外で軽微な処分で終わった事件を日本が改めて立件するのは稀ですが、麻薬・贈収賄・国際詐欺など重大事件では再訴追例があります。海外で「示談で終わった」と安心せず、帰国前に刑事に強い弁護士へ相談するかどうかが分かれ道になる

Q · 外国で無罪判決をもらったのに、日本で起訴されるなんておかしくないですか?

感覚的におかしく思えても、それが日本の制度です。外国の無罪判決は日本の裁判所を拘束しません(刑法5条の前提)。日本の検察が独自に証拠を評価し、有罪の心証を得れば起訴できます。業界裏話ヒント:外国の無罪が証拠不十分によるものか、その行為が現地でそもそも犯罪でなかったのかで、日本での見られ方が大きく変わります。判決の理由部分まで翻訳して保全しておくことが、後の防御で効いてくる

Q · 海外で服役した分は、日本の刑から全部引いてもらえるんですか?

全部引いてもらえるとは限りません。刑法5条但書は「刑の執行を減軽し、又は免除する」とあり、裁判所の裁量に幅があります。外国での服役期間や事件の性質によっては、日本でなお実刑が残ることもあります。業界裏話ヒント:「免除」を勝ち取るには、外国での服役が日本の刑期に実質的に見合うことを具体的に立証する必要があります。服役日数だけでなく現地刑務所の処遇の厳しさまで主張材料にする弁護人もいる。証明資料の厚みが、減軽止まりか免除かを分ける

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第六条(刑の変更)

犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

刑法 6 条は、犯罪後の改正で刑が軽くなった場合に軽い新法を適用すると定める。重い改正は遡及せず、犯行から判決までで最も軽い中間時法も比較対象となる。

よくある質問

Q · 過去にやったことが、あとから厳罰化されて重く罰せられることはある?

ない。犯行時より重い法律を遡って適用することは憲法39条が禁じ、刑法6条は逆に軽くなった場合だけ新法を適用する。つまり改正は被告人に有利な方向にしか遡らない。業界裏話ヒント:「厳罰化」報道で不安になる人は多いが、重い新法が及ぶのは原則として施行日以後の行為だけ。あなたの過去の行為は、その時点の(より軽い)法定刑の枠で裁かれる

Q · 懲役と禁錮が拘禁刑に変わったって聞いたけど、前にやった事件はどっちになるの?

2025年6月1日施行の拘禁刑は、原則として施行日以後の行為に適用される。施行前の犯行は改正法の経過措置で旧来の懲役・禁錮の枠で処理されるのが基本で、境界の事件は犯行日が決め手になる。業界裏話ヒント:改正法には必ず「附則(経過規定)」があり、どの行為からどちらの刑かはそこに書いてある。条文本体だけ見ても答えは出ず、附則を読むのが実務家の習慣だ。(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 裁判の途中で法律が何度も変わったら、一番軽いやつを選べるの?

選べる。判例・通説では、行為時から裁判時までに刑が複数回変更された場合、その中で最も軽い刑(途中で一番軽かった中間時法を含む)を適用する。刑の軽重の比較は刑法10条の基準による。業界裏話ヒント:この「中間時法も比較対象に入る」という点は見落とされやすい。犯行後にいったん軽くなり、その後また重くなった場合でも、一番軽かった時期の刑を主張できる

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第七条(定義)

この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。

この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。

刑法 7 条は『公務員』を、国・地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する者と定義する。雇用形態でなく公務従事という機能で範囲が決まり、特別法によるみなし公務員も含まれうる。

よくある質問

Q · 私鉄の駅員を殴ったら公務執行妨害になりますか?

なりません。公務執行妨害罪(95 条)の対象は刑法 7 条の『公務員』に限られ、私鉄・私バスの駅員や乗務員は民間企業の社員なので公務員ではありません。暴行罪(208 条)や傷害罪(204 条)にはなります。業界裏話ヒント:現場で警備員や駅員から『公務執行妨害だ』と言われても、相手が公務員でなければ法的に成立しません。市営・都営の交通局職員なら公務員、私鉄なら民間。この区別を知らずに重い罪だと思い込み、示談額を吊り上げられるケースがある

Q · 郵便局員や国立大学の職員に贈り物をしたら賄賂になるんですか?

職務に関する見返りなら、贈賄罪になりうる。日本郵便の社員や国立大学法人の教職員は、特別法で『みなし公務員』とされ、刑法の適用では公務員として扱われる場合があります(刑法 7 条の『法令により公務に従事する職員』の延長線上)。業界裏話ヒント:民営化・独立行政法人化された組織の職員は、見た目が民間人でも罰則適用で公務員扱いになることが多い。取引先が独法・国立大学法人・特殊法人なら、接待や謝礼の前にみなし公務員規定の有無を確認するのが、コンプラ担当者の常識です(最新の改正状況をご確認ください)

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第七条の二

この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。

刑法 7 条の 2 は電磁的記録を、人の知覚では認識できない方式で作られ、電子計算機の情報処理に供される記録と定義する。IC カード残高やポイント等が該当する。

よくある質問

Q · 自分のポイントカードのポイントを、自分で増やしたら、それも犯罪ですか?

なりえます。ポイント残高は発行事業者の電子計算機による情報処理に供される電磁的記録で、それを権限なく増やせば電磁的記録不正作出罪(刑法 161 条の 2)に当たります。「自分のカード」でも記録の管理権限は事業者側にあるためです。業界裏話ヒント:実務では「自分のものだから」という弁解はほぼ通りません。捜査側が重視するのは権限の範囲で、利用規約で禁じられた操作は権限外と評価されやすく、規約違反の改変は刑事リスクが跳ね上がる

Q · 紙の書類を書き換えるのと、エクセルのデータを書き換えるのは、罪が違うんですか?

適用条文が変わります。紙は文書偽造罪(刑法 159 条等)、コンピュータ処理用のデジタルデータは電磁的記録不正作出罪(161 条の 2)です。ただし人が目で読むだけの印刷物は文書扱いになることもあり、境界は微妙です。業界裏話ヒント:同じ改ざんでも、対象が「情報処理に供される」かどうかで罪名が分かれる。画面表示用の見た目部分と、システムが読み取る背後のデータは別物で、どちらを改変したかで構成要件が変わるため、弁護側はこの切り分けを最初に狙う

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第八条(他の法令の罪に対する適用)

この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。

ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。

刑法8条は、刑法総則の規定が他の法令の罪にも適用されると定める。特別刑法の犯罪にも故意や正当防衛の原則が及ぶが、その法令に特別の規定があればそちらが優先される。

よくある質問

Q · 道路交通法違反って刑法じゃないですよね?刑法の話は関係ないんですか?

関係あります。8条本文により、刑法総則(故意、正当防衛、責任能力など)は道交法のような他の法令の罪にも適用されます。だから道交法違反でも、故意がなければ原則不可罰(刑法38条1項)です。業界裏話ヒント:道交法には過失も罰する明文を持つ罪と、持たない罪が混在しています。起訴された条文が過失犯処罰を含むかどうかで、防御の組み立てが正反対になる。弁護人はまずそこを見る

Q · 会社が法律違反したとき、なんで社長や担当者だけじゃなく会社にも罰金がいくんですか?

それが8条但書の『特別の規定』である両罰規定です。独占禁止法95条や金融商品取引法207条のように、特別法が行為者だけでなく法人も処罰すると定めている場合、総則の原則を修正して法人にも罰金が科されます。業界裏話ヒント:両罰規定でも、法人が従業員の選任・監督に相当の注意をしていたと立証できれば免責される、という判例の流れがある。コンプライアンス体制の証拠が、そのまま法人の防御材料になる

Q · 特別な法律の犯罪でも、正当防衛とか心神喪失は主張できるんですか?

できます。8条本文により、正当防衛(刑法36条)も心神喪失・心神耗弱(同39条)も、特別法の犯罪に総則経由でそのまま適用されます。特別法側に排除する特別の規定がない限り、これらの盾は外れません。業界裏話ヒント:特別法事件だと、検察も弁護人も構成要件の有無に集中しがちで、総則の責任能力や違法性阻却の検討が後回しになりやすい。総則の論点を早い段階で立てられるかが、結果を分けることがある

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第二章
第九条(刑の種類)

死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

刑法 9 条は刑罰の種類を死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料の主刑と没収の付加刑に限定する。没収は主刑に付随してのみ科され、単独では言い渡せない。

よくある質問

Q · 罰金と科料って、同じ「お金を払う罰」じゃないんですか?

別物である。罰金は1万円以上(刑法15条)、科料は1000円以上1万円未満(刑法17条)で、刑の軽重の順序(刑法10条)でも科料の方が軽い。業界裏話ヒント:どちらも刑罰なので有罪なら前科がつく。多くの人は科料を交通違反の反則金と同じ感覚で捉えるが、反則金は行政上の処分で前科にならない一方、科料は刑罰で前科になる。この差を知らずに「軽いから」と安易に認めると、記録が残る

Q · 2025年に懲役と禁錮がなくなったって本当ですか?

本当である。令和4年(2022年)公布の改正で「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に統合され、令和7年(2025年)6月1日に施行された(刑法9条、12条)。作業義務の有無による区別が消え、受刑者ごとに柔軟な処遇を組む方向になった。業界裏話ヒント:施行前に確定した判決の懲役・禁錮はそのまま扱われ、施行後の判決から拘禁刑になる。だから当面は古い刑と新しい刑が併存する。古い解説書の記述を鵜呑みにしない

Q · 没収だけを単独でされることはありますか?

原則としてない。没収は付加刑(刑法9条)であり、主刑の言渡しがあって初めて付け加えられる刑だからだ。主刑なしに没収だけを命じることはできない。業界裏話ヒント:ただし犯罪収益は組織的犯罪処罰法などの特別法で広く没収・追徴の対象になり、現物が残っていなければ追徴(刑法19条の2)で価値相当額を金銭で取り立てられる。「物を処分すれば逃げられる」は成り立たない

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第十条(刑の軽重)

主刑の軽重は、前条に規定する順序による。

同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。

二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。

刑法 10 条は主刑の軽重を比較する基準を定める規定で、刑の軽重はまず 9 条の刑種順序により決まり、同種の刑は長期の長い方または多額の多い方を重い刑とする。

よくある質問

Q · 罪をいくつも犯したら、その分だけ刑が足し算されるんですか?

単純な足し算ではありません。併合罪では最も重い罪の刑を基準に、その上限の 1.5 倍までの範囲で一つの刑が言い渡されます(刑法 47 条)。どれが「最も重い罪」かは 10 条の比較ルールで決まります。業界裏話ヒント:一個の行為が複数の罪に当たる観念的競合(54 条)なら、最も重い一罪の刑しか科されません。同じ「複数の罪」でも、別々の行為か一個の行為かで刑の天井が大きく変わる。弁護人はまずこの罪数評価から組み立てる

Q · 起訴された後に法律が変わって刑が軽くなったら、得しますか?

得します。犯行後に刑が変更されて軽くなった場合、軽い方が適用されます(刑法 6 条)。その「軽いかどうか」の判定こそが 10 条の役割です。業界裏話ヒント:上限が下がっても下限が上がるなど、新旧で一長一短のときは比較が難しく、実務上、解釈が分かれる場面があります。改正をまたぐ事件は、どちらが本当に軽いかを精密に詰める価値がある。(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 懲役と禁錮って、どっちが重いんですか?

2025 年 6 月 1 日以降、その問い自体が過去のものになりました。懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化され、区別がなくなったためです(刑法 9 条の改正)。それ以前は同じ期間なら懲役の方が重いと扱われていました。業界裏話ヒント:古い参考書や判例解説の多くは旧刑種を前提に書かれており、軽重の説明がそのままでは現行法に合いません。施行日をまたぐ事件では、行為時と裁判時のどちらの刑種で考えるかが論点になる。(最新の改正状況をご確認ください)

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第十一条(死刑)

死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。

死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。

刑法 11 条は、死刑を刑事施設内で絞首して執行すると定める。死刑確定者は執行に至るまで刑事施設に拘置され、執行には法務大臣の命令を要する。

よくある質問

Q · 死刑が確定したら、すぐ執行されるんですか?

いいえ。法務大臣が執行命令書に署名して初めて執行されます(刑事訴訟法475条)。確定から執行まで平均で数年、長いと十数年かかり、再審請求や恩赦の出願中は事実上執行されません。業界裏話ヒント:法務大臣によって執行への姿勢は大きく異なり、在任中に一度も命令を出さない大臣もいます。誰が法務大臣かによって確定者が生きる時間が変わるという、制度の不均一さがあまり報じられない現実です

Q · 死刑って絞首以外の方法は選べないんですか?

現行法では絞首のみです(刑法11条1項)。電気椅子や薬物注射といった選択肢はありません。絞首刑が憲法36条の残虐な刑罰に当たるかは長く争われましたが、最高裁は合憲と判断しています(最大判昭和30.4.6)。業界裏話ヒント:絞首の具体的方法は明治6年の太政官布告で定められ、今も効力を持つとされます(最大判昭和36.7.19)。執行方法の科学的妥当性をめぐる弁護側の主張は、近年の死刑事件でも提起されています

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第十二条(拘禁刑)

拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。

拘禁刑は、刑事施設に拘置する。

拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

刑法 12 条の拘禁刑は、2025 年 6 月施行で懲役と禁錮を統合した自由刑。有期は一月以上二十年以下、無期は期限なしで、改善更生のため作業や指導を柔軟に組み合わせる。

よくある質問

Q · 懲役と禁錮って、結局何が違ったんですか?今はどうなったんですか?

旧法では懲役は刑務作業が義務、禁錮は作業なしで、主に政治犯や過失犯に用いられました。2025年6月、両者は拘禁刑に統合され、作業の有無は罪名ではなく改善更生の必要性で個別判断されます(刑法12条3項)。業界裏話ヒント:実は禁錮受刑者の多くが、退屈に耐えかねて自ら作業を願い出ていた(請願作業)。区別が現場で形骸化していたからこそ統合された、というのが実務の本音

Q · 拘禁刑になったら、刑が重くなったり軽くなったりするんですか?

刑期の長さ自体は変わりません。有期は一月以上二十年以下のままで、変わったのは執行の中身です。作業と指導を柔軟に組み合わせ、改善更生の度合いが仮釈放の判断(刑法28条)などに反映されやすくなりました。業界裏話ヒント:名前が変わっても『重くなった軽くなった』で語るのは的外れ。本質は、出所後に再び罪を犯さないための処遇設計に重心が移った点にある。再犯率という社会コストを下げる狙いだ

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第十三条

削除

刑法 13 条が定めていた禁錮は、令和 4 年改正で懲役と統合され「拘禁刑」となった。本条は削除され、2025 年 6 月 1 日から自由刑は第 12 条の拘禁刑に一本化されている。

よくある質問

Q · 禁錮刑とは何ですか?

禁錮は刑事施設に拘置するが刑務作業を義務づけない自由刑でした。令和 4 年改正で懲役と統合され、2025 年 6 月から拘禁刑になりました。

Q · 拘禁刑とは何ですか?

拘禁刑は懲役と禁錮を一本化した新しい自由刑です。作業義務の有無で分けず、改善更生に応じて処遇を柔軟に決められます。刑法 12 条が定めます。

Q · 禁錮と懲役の違いは何でしたか?

禁錮は刑務作業の義務がなく、懲役は作業義務がありました。政治犯や過失犯に禁錮が用いられましたが、令和 4 年改正で区別は廃止されました。

Q · 拘禁刑はいつから始まりましたか?

令和 4 年(2022 年)に法改正が成立し、令和 7 年(2025 年)6 月 1 日から施行されました。これにより禁錮を定めた刑法 13 条は削除されました。

Q · 禁錮刑はもうないのですか?

2025 年 6 月 1 日以降、新たに禁錮刑が言い渡されることはありません。それ以前に確定した禁錮刑には経過措置が適用されます。

Q · 拘禁刑になって何が変わりましたか?

作業義務の有無による区別がなくなり、受刑者ごとに作業や指導を柔軟に組み合わせられるようになりました。再犯防止と改善更生が目的です。

Q · 刑法 13 条は今どうなっていますか?

刑法 13 条は令和 4 年改正で削除され、条文は「削除」と表示されています。自由刑の内容は第 12 条の拘禁刑に移行しました。

Q · 過失犯の刑も拘禁刑になりますか?

従来禁錮が科されていた過失運転致死傷罪などの自由刑も、2025 年 6 月以降は拘禁刑に統一されます。各罪の法定刑の表記も順次改正されています。

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第十四条(有期拘禁刑の加減の限度)

死刑又は無期拘禁刑を減軽して有期拘禁刑とする場合においては、その長期を三十年とする。

有期拘禁刑を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。

刑法14条は有期拘禁刑の加重・減軽の限度を定める。併合罪や累犯で加重すると長期は三十年まで上がり、死刑・無期からの減軽でも三十年が天井となる。減軽が重なれば一月未満まで下げられる。

よくある質問

Q · 罪をいくつも犯したら、刑は全部足し算されるんですか?

足し算ではありません。併合罪(刑法47条)では、最も重い罪の長期の一・五倍が枠になり、その上に14条の三十年という絶対上限がかぶさります。十年の罪を三つ犯しても三十年で頭打ちです。業界裏話ヒント:検察官は「併合罪加重」を強調して重い印象を作りますが、実際の算定は一・五倍ルールと三十年上限の二重の縛りを受ける。弁護人がこの計算を判決前に正確に詰めておくと、求刑の数字に惑わされず現実的な落としどころが見える

Q · 死刑が減軽されたら、結局何年になるんですか?

死刑または無期拘禁刑が減軽されて有期になる場合、その長期は三十年です(14条1項)。通常の有期上限は二十年(12条)ですが、減軽の場合だけ三十年まで認められます。業界裏話ヒント:死刑事件で弁護側が減軽を目指すとき、ゴールは単なる「死刑回避」ではなく、無期と有期三十年のどちらが依頼人の社会復帰にとって現実的かまで見据える。無期でも仮釈放はありうるが運用は厳しく、確定的な三十年とどちらが良いかは一概に言えない

Q · 減軽が重なると、刑はどこまで軽くなりますか?

14条2項により、有期拘禁刑を減軽する場合は一月未満まで下げられます。通常の下限は一月(12条)ですが、減軽すればその床を割れます。法律上の減軽(68条)と酌量減軽(66条)が重なれば、刑はさらに下がります。業界裏話ヒント:「減軽は一回まで」と思われがちですが、法律上の減軽事由が複数あれば重ねて減軽でき、さらに酌量減軽を上乗せできる(71条)。弁護人がどの減軽事由をいくつ積めるか設計できるかで、執行猶予が射程に入るかどうかが決まる

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第十五条(罰金)

罰金は、一万円以上とする。

ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。

刑法 15 条は、罰金を一万円以上と定める。一万円未満の金銭刑は科料(刑法 17 条)と区別され、罰金は前科がつき、不完納なら労役場留置となる。

よくある質問

Q · 罰金と科料って何が違うんですか? どっちも同じようなものでは?

金額の境界が違います。罰金は1万円以上(刑法15条)、科料は千円以上1万円未満(刑法17条)で、科料はより軽微な犯罪に科されます。業界裏話ヒント:どちらも前科記録には残りますが、資格の欠格事由を「罰金以上の刑」と定める法律が多く、科料はその線引きの下に来ることがある。自分の処分が罰金か科料かで、後の資格審査の結果が変わる場合があるので、命令書の罪名と刑名を必ず確認する。

Q · 罰金がどうしても払えなかったら、どうなっちゃうんですか?

最終的に労役場に留置され、1日あたりの金額に換算して、その日数だけ施設で労役に服します(刑法18条)。留置は罰金で最長2年、科料で最長30日が上限です。業界裏話ヒント:いきなり労役場に送られるわけではなく、検察庁の徴収担当に分割納付や猶予を相談できる。自己破産しても罰金は免責されない(破産法253条1項7号)ので「破産で消す」発想は通用しない。払えそうにないと感じたら、放置せず早めに連絡するのが鉄則。

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第十六条(拘留)

拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

拘留に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

刑法 16 条の拘留は、一日以上三十日未満、刑事施設に拘置する自由刑で最も軽い刑。ただし執行猶予の対象外で、数日でも現実に拘置される。

よくある質問

Q · 「拘留」と「勾留」、結局どう違うんですか?

拘留は刑法16条が定める刑罰で、有罪確定後に一日以上三十日未満、刑事施設に拘置されます。勾留は刑事訴訟法60条の裁判前の身柄拘束で、逃亡や証拠隠滅を防ぐため逮捕後に行われ、最大23日です。業界裏話ヒント:読みも字も似ているため弁護士でも口頭では『刑罰のこうりゅう』『未決のこうりゅう』と言い分けることがある。報道の字幕でどちらの漢字かを見れば、その事件が裁判前か判決後かが一目で分かる。

Q · 拘留って軽い刑だから、執行猶予で済みますよね?

済みません。執行猶予を定める刑法25条の対象は、3年以下の拘禁刑(旧・懲役/禁錮)と50万円以下の罰金だけで、拘留と科料は外れています。つまり拘留と言い渡されたら、たとえ数日でも現実に拘置されます。業界裏話ヒント:だからこそ弁護では『拘留』そのものを避け、財産刑である『科料』に落とせないかを争点にすることがある。同じ軽微事案でも、身柄拘束か罰金的処理かで人生への影響がまるで違う。

Q · 2025年から拘留でも作業させられるって本当ですか?

本当です。令和4年(2022年)改正、令和7年(2025年6月1日)施行で刑法16条2項が新設され、改善更生のため必要な作業や指導を行えるようになりました。従来の拘留は労働を伴わない純粋な拘置でしたが、ここが変わりました。業界裏話ヒント:これは懲役と禁錮を『拘禁刑』に一本化した大改正の一環。刑罰体系全体が『閉じ込める』から『立ち直らせる』へ舵を切った象徴的変化で、古い参考書の記述はもう正確ではない。

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第十七条(科料)

科料は、千円以上一万円未満とする。

刑法 17 条は科料を千円以上一万円未満と定める。科料は刑法上の刑罰であり前科となる点で、似た名の過料(行政罰)とは異なる。完納できなければ労役場に留置されうる。

よくある質問

Q · たった数千円の科料でも、本当に前科になるんですか?

なります。科料は刑法9条が主刑として列挙する正式な刑罰なので、額が千円台でも前科として記録が残ります。よく混同される「過料」は行政上・民事上の制裁で前科になりませんが、別物です。業界裏話ヒント:弁護士が略式手続を相談されたとき真っ先に確認するのは金額ではなく、それが刑罰(罰金・科料)か行政罰(過料)かです。前科がつく科料なら、命令が確定する前に起訴猶予を狙う動きが取れる。確定してからでは前科は消せない

Q · 科料を払えなかったら、どうなりますか?

完納できない場合、検察官は労役場留置の手続を進めます。科料は1日以上30日以下の範囲で労役場に留置されうる(刑法18条)ので、数千円を払えないだけで身柄を拘束される事態が起こりえます。業界裏話ヒント:払えないなら放置が最悪手です。納付期限前に検察庁の徴収担当へ分納や納付猶予を相談すれば、留置を避けられる余地がある。役所からの紙は怖くて机に放置されがちだが、科料こそ期限前に動くかどうかで身柄が分かれる

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第十八条(労役場留置)

罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。

科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。

罰金を併科した場合又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。

罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。

罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。

罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。

刑法 18 条は、罰金を完納できない者を 1 日以上 2 年以下、科料は 30 日以下、労役場に留置すると定める。換算額は判決で言い渡される。

よくある質問

Q · 罰金が払えないと、必ず労役場に入れられるんですか?

必ずではない。確定後 30 日(科料は 10 日)の猶予期間内に検察庁の徴収係へ分割納付や納付延期を申し出れば、収容を避けて分割で払える場合が多い(5 項)。業界裏話ヒント:検察庁の徴収担当は、本人から相談があれば現実的な分割に応じる運用が一般的である。何も言わず放置した人だけが、猶予期間の経過後に収容手続へ進む。動いた人と動かなかった人で結末が分かれる

Q · 労役場って刑務所と何が違うんですか?前科はつきますか?

労役場は刑事施設に併設された留置施設で、収容中は作業に従事する。法的には罰金刑のままで、懲役などの自由刑とは別である。前科は有罪判決が確定した時点で既についており、収容の有無で増えるわけではない(18 条)。業界裏話ヒント:労役場留置は「自由刑を受けた」記録にはならないが、現実には身柄を拘束され作業をする。お金で済むはずの刑が、実態として収容に転じる点を知らない人が多い

Q · 自己破産したら罰金も払わなくてよくなりますか?

ならない。罰金は破産法 253 条の非免責債権であり、免責決定が出ても残る。払えなければ労役場留置の対象であり続ける(刑法 18 条)。業界裏話ヒント:借金整理の相談で、依頼者が罰金も消えると誤解しているケースは珍しくない。免責の対象外であることを早く知り、破産手続とは別に検察庁と納付計画を組むかどうかで、収容を回避できるかが分かれる

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第十九条(没収)

次に掲げる物は、没収することができる。

犯罪行為を組成した物

犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物

犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物

前号に掲げる物の対価として得た物

没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。

ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

刑法 19 条は、犯罪に使われた物や犯罪で得た物などを没収できると定める。原則として犯人以外の者の物は没収できないが、犯罪後に事情を知って取得した第三者の物は例外的に没収される。

よくある質問

Q · 友達に貸しただけのスマホが、本当に没収されることなんてありますか?

事件当時あなたが何も知らずに貸していたなら、19条2項本文により犯人以外の者の物として原則没収できません。危ないのは但書で、犯罪の後に『これ使ったから』と事情を知りつつ返してもらった場合は、あなたの物でも没収されうる。業界裏話ヒント:分かれ目は『情を知った時点』です。事件後に事情を聞かされたら、その物の返却を急いで受け取らないこと。知って受け取った記録が残ると、善意の主張が崩れる

Q · メルカリで買った物が実は犯罪で得た物だったら、私が損するんですか?

あなたが事情を知らずに買ったなら19条2項で保護され、没収されないのが原則です。ただし相場から明らかに不自然に安い等、犯罪性に気づいていたと評価されると1項4号・2項但書で没収されうる。業界裏話ヒント:たとえ没収されても払った代金は国からは戻りません。出品者に返還請求するしかなく、相手が逃げれば回収不能。『安すぎる出品』を避けるのが、没収と代金喪失の両方を防ぐ唯一の盾です

Q · 没収って必ずされるんですか、裁判官の判断で逃れられないんですか?

刑法19条の没収は『することができる』の任意的没収で、裁判所の裁量です。必要性・相当性を争えば没収されないこともある。ただし麻薬特例法、組織的犯罪処罰法、関税法などの特別法では必要的没収が定められ、要件を満たせば裁判官に裁量はなく必ず没収されます。業界裏話ヒント:自分の事件にどの法律が適用されるかで、争い方が180度変わる。『一般刑法か特別法か』を最初に弁護人と確認するのが、没収対策の出発点です

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第十九条の二(追徴)

前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。

刑法 19 条の 2 は、犯罪により得た物(19 条 1 項 3 号・4 号)を没収できないとき、その価額を追徴できると定める。費消しても価額として回収され、賄賂・薬物では必要的となる。

よくある質問

Q · もらった賄賂、もう使っちゃったんですけど取られますか?

取られます。賄賂罪では没収・追徴が必要的(刑法197条の5)で、現金を費消しても受領額が価額として追徴されます。使った・残っているは結論を変えません。業界裏話ヒント:追徴額は受け取った額そのままで、生活費に消えた分も控除されない。さらに共犯がいても、各自が自分の受け取った分について追徴されるのが原則です

Q · 追徴金が払えなかったら刑務所に行くんですか?

行きません。これが罰金との決定的な違いです。罰金・科料は払えないと労役場留置(刑法18条)ですが、追徴に労役場留置はなく、財産への強制執行(刑訴490条)で回収されます。業界裏話ヒント:だから「払えないから身代わりに入る」はできない一方、回収できる財産が実際になければ、執行されないまま終わることもある。資力の有無で結末が大きく分かれます

Q · 転売や副業で得た金が犯罪収益だと言われたら、経費は引いてもらえますか?

原則として引かれません。実務では追徴額を「得た額」(受領額・粗利益)で計算し、原価や手数料を控除しない運用が一般的です(事案により判断が分かれる場面もあります)。業界裏話ヒント:「儲けは少なかった」という弁解は追徴額をほとんど下げない。争うなら、その金が本当に犯罪収益なのか、評価の時点はいつかという算定の前提から崩す必要があります

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第二十条(没収の制限)

拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。

ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。

刑法 20 条は、拘留または科料のみに当たる軽い罪では、特別の規定がない限り没収を科せないと定める。ただし犯罪を組成した物(19 条 1 項 1 号)は例外として没収できる。

よくある質問

Q · 科料と過料って、どっちも軽いお金の話ですよね?

似て非なるものです。科料は刑法 9 条が定める刑罰の一種で、有罪判決ですから前科がつき、20 条の没収制限もこの科料の罪にかかります。過料は行政上の秩序罰で前科はつかず、刑法は適用されません。業界裏話ヒント:略式命令で「科料」と書かれた瞬間、それは前科記録に残ります。「たった数千円」と軽く払う人が多いですが、争うなら 14 日以内の正式裁判請求が唯一の道。金額の小ささに惑わされない

Q · 軽い罪なら、警察に持ち物を取り上げられても必ず返ってきますか?

必ずとは言えません。20 条で原則没収はできませんが、例外として 19 条 1 項 1 号の『犯罪を組成した物』、たとえば所持自体が禁じられた物や偽造物は、軽い罪でも没収されます。業界裏話ヒント:捜査段階の『押収』と刑罰としての『没収』は別物です。押収は一時的な証拠保全で、事件が終われば還付請求(刑訴法 222 条等)で取り戻せることが多い。『没収』と『押収』を混同して諦める人が損をする

Q · 没収って、主刑なしで単独でやられることはあるんですか?

一般刑法では原則ありません。没収は刑法 9 条で付加刑と位置づけられ、主刑(拘留・科料など)に上乗せする形でのみ科されます。だから主刑が軽すぎる拘留・科料のみの罪では、20 条が上乗せ自体を封じるわけです。業界裏話ヒント:特別法では被告人死亡時などに組成物等の没収だけを認める例もありますが、一般刑法の世界では『没収だけ単独』は基本ない。求刑に没収が単独で出てきたら、その根拠条文を必ず確認する

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第二十一条(未決勾留日数の本刑算入)

未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる。

刑法 21 条は、未決勾留の日数の全部又は一部を本刑に算入できると定める。算入は第一審裁判所の裁量で、自動ではない。上訴中の勾留は刑訴 495 条で法定通算される。

よくある質問

Q · 勾留されてた日数って、刑期から自動で引かれるんですよね?

そう思われがちですが、刑法21条は「算入することができる」と定めており、第一審での算入は裁判官の裁量です。実務上は相当程度算入されますが、全部とは限りません。一方、控訴・上告中の未決勾留は刑事訴訟法495条で法定通算され、こちらは自動です。業界裏話ヒント:判決主文に「未決勾留日数中○○日を本刑に算入する」と書かれているかは、弁護人でも判決当日に主文を聞いて初めて確認するもの。被告人本人や家族は、量刑の年数だけ聞いて安心しがちですが、算入日数まで確認しないと、実際に何日収監されるかは分からない

Q · 無実を主張して否認し続けたら勾留が半年になりました。その分ちゃんと刑期から引かれますか?

原則として算入の対象ですが、裁判所が「被告人が手続を不当に遅延させた」と評価した場合、全部ではなく一部しか算入しない裁量を行使することがあります。正当な防御は萎縮させるべきではありませんが、運用上はそうした考慮が働く余地が残ります。業界裏話ヒント:これがいわゆる「人質司法」批判の一側面です。否認すると勾留が延び、その長い勾留が必ず満額算入される保証もない。だからこそ否認方針を固める前に、勾留の見通しと算入リスクを弁護人と具体的に詰めておくことが、知っている被告人と知らない被告人の分かれ目になります

Q · 結局無罪になったんですが、勾留されてた日数は刑期から引くものがないですよね。何ももらえないんですか?

刑法21条の算入はあくまで有罪で刑が科される場合の話なので、無罪なら算入する刑自体がありません。代わりに憲法40条と刑事補償法に基づき、抑留・拘禁された日数について金銭補償を請求できます。補償額は1日あたり1,000円から最大12,500円の範囲で裁判所が定めます(最新の改正状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:刑事補償は自動では支払われず、無罪判決が確定した後に自分で請求しなければなりません。請求できる期間にも制限があるので、無罪を勝ち取った安堵で動かずにいると、補償を受け損ねることがあります

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第三章
第二十二条(期間の計算)

月又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。

刑法22条は、月または年で定めた期間を暦に従って計算すると定める。起算日の応当日の前日が末日となり、うるう年をまたぐ1年は実際には366日になる。

よくある質問

Q · 「懲役1年」って、ちょうど365日のことですか?

厳密には違います。刑法22条の暦計算では、起算日の翌年の同じ日付の前日までが「1年」です。うるう年の2月29日を含む区間なら実日数は366日、含まなければ365日になります。起算は裁判確定日(23条)、初日は時間に関係なく1日と数えます(24条)。業界裏話ヒント:同じ「懲役1年」でも、刑が確定した時期が2月29日をまたぐかどうかで、実際に施設にいる日数が1日変わる。施設の処遇部門はこれを正確に計算しているので、自分の見込みとずれたら遠慮なく照会してよい

Q · 刑期の初日って、入ったのが夜遅くでも丸1日と数えるんですか?

そのとおりです。刑法24条は受刑の初日を「時間にかかわらず、1日として計算する」と定めています。深夜に収容されても、その日は1日としてカウントされます。時効期間の初日も同じ扱いです。業界裏話ヒント:これは民法140条の『初日不算入』原則と真逆の特則です。普段の契約や時効の感覚で『初日は数えない』と思い込んで刑期を計算すると、満了日が1日ずれる。刑事の期間計算は民法とは別ルールで動くと覚えておくと、見通しを誤らない

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第二十三条(刑期の計算)

刑期は、裁判が確定した日から起算する。

拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。

刑法 23 条は、刑期は裁判が確定した日から起算し、拘禁されていない日数は確定後であっても刑期に算入しないと定める。判決前の未決勾留は別途 21 条で算入される。

よくある質問

Q · 逮捕されてからずっと拘置所にいたんですが、その分は刑期から引かれますよね?

自動では引かれません。刑法23条は刑期を裁判確定日から起算すると定めており、判決前の勾留(未決勾留)は別問題です。裁判官が判決主文に「未決勾留日数中○日を本刑に算入する」と書いて初めて差し引かれます(刑法21条)。業界裏話ヒント:算入日数は裁判官の裁量で、全日数が入るとは限らない。弁護人が量刑弁論で算入を具体的に求めたかどうかが効いてくる。主文に算入の記載がなければ、控訴でその点を争える余地がある

Q · 判決が出た日から、刑期が始まるんですか?

違います。刑期の起算は「裁判が確定した日」です(23条1項)。第一審判決の後、控訴提起期間14日(刑事訴訟法373条)が過ぎるか、控訴を放棄して初めて確定します。つまり判決日と起算日には2週間以上のズレが生じます。業界裏話ヒント:控訴を放棄すれば早く確定して刑期も早く始まる、と単純に考える人もいるが、未決勾留の算入や上訴のメリットとの兼ね合いがある。確定を急ぐ損得は単純ではないので、放棄を決める前に必ず弁護人と計算する

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第二十四条(受刑等の初日及び釈放)

受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。時効期間の初日についても、同様とする。

刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。

刑法 24 条は、受刑の初日を時間にかかわらず一日と計算し、刑期終了時の釈放を終了日の翌日に行うと定める。初日算入は刑の時効の起算にも準用される。

よくある質問

Q · 刑期が終わる日に、刑務所の前で待っていれば本人は出てきますか?

出てきません。釈放は刑期終了日の当日ではなく、その翌日(刑法 24 条 2 項)に行われます。満期当日はまだ収監されており、翌朝に出所します。業界裏話ヒント:実務では仮釈放(刑法 28 条)で満期より前に出るケースも多く、その場合の出所日は満期計算とは別物です。家族は通知が満期日と仮釈放日のどちらを指しているかを必ず確認する

Q · 深夜に収監されたら、その日は刑期に入らないんですか?

入ります。刑法 24 条 1 項は、受刑の初日は時間にかかわらず一日として計算すると定めています。深夜 11 時に収監されても、その日が丸一日算入されます。業界裏話ヒント:この初日算入が未決勾留日数の算入(刑法 21 条)と合わさると、最終的な釈放日が直感とずれることがある。算入日数の計算は刑事施設側でもまれにミスが起きるため、弁護人に検算を依頼する受刑者家族もいる

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第四章
第二十五条(刑の全部の執行猶予)

次に掲げる者が三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が二年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。

ただし、この項本文の規定により刑の全部の執行を猶予されて、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

刑法 25 条は、3 年以下の拘禁刑等を言い渡された初犯者等について、情状により 1 年以上 5 年以下の期間、刑の全部の執行を猶予できる制度を定める。猶予期間を無事に経過すれば刑の言渡しは効力を失う。

よくある質問

Q · 執行猶予なら前科はつかないんですよね?

つきます。執行猶予も有罪判決なので前科になります。ただ猶予期間を無事に過ぎれば刑の言渡しは効力を失い(刑法27条)、刑務所には行きません。業界裏話ヒント:市区町村が管理する犯罪人名簿は猶予期間満了などで抹消されますが、検察庁の前科調書は消えず、再犯時の量刑や一部資格の欠格判断で一生参照され続ける。満了は完全リセットではない

Q · 執行猶予中にまた捕まったら、どうなるんですか?

猶予中に新たな罪で拘禁刑以上の実刑が確定すると、原則として前の執行猶予は必ず取り消され(刑法26条)、新旧二つの刑をまとめて服役します。罰金など軽い処分なら裁量的取消(26条の2)にとどまることもある。業界裏話ヒント:取消を避ける鍵は猶予期間内に確定するか否か。期間が満了した後に確定すれば取り消せない。期間満了間際の事件では、手続のタイミングが運命を分ける

Q · 前に執行猶予をもらった人でも、もう一度もらえますか?

可能ですが極めて狭き門です。再度の執行猶予(刑法25条2項)は、言い渡される刑が2年以下の拘禁刑で、情状に特に酌量すべき事情があり、しかも前回が保護観察付き猶予中の再犯でないことが条件。認められれば保護観察が必要的に付きます(25条の2)。業界裏話ヒント:実務では情状に特に酌量すべきのハードルが非常に高く、認容例は限られる。二度目を狙うより、一度目を確実に取り切る弁護が現実的

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第二十五条の二(刑の全部の執行猶予中の保護観察)

前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。

前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。

前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。

刑法25条の2は執行猶予中の保護観察を定める。25条1項では裁量的、25条2項の再度の猶予では必要的に付され、行政官庁の処分で仮に解除できる。

よくある質問

Q · 普通の執行猶予と、保護観察付きの執行猶予って何が違うんですか?

普通の執行猶予は期間中に新たな罪を犯さず取消事由がなければ刑が消えますが、保護観察付き(25条の2第1項)は加えて保護司との面会や届出など遵守事項を守る義務が課されます。違反が重いと26条の2第2号で猶予が取り消されます。業界裏話ヒント:25条1項の通常猶予では保護観察を付けるかは裁判官の裁量です。つまり弁護活動で『付けない』方向に争える余地がある。判決が出た後では動かせないので、勝負は宣告前にある

Q · 保護観察中に引っ越したり旅行したりしたら、いちいち報告しないとダメなんですか?

遵守事項として転居や一定期間以上の旅行に届出が求められるのが通常で、無断で動くと遵守事項違反になりえます。違反の情状が重いと猶予取消しの対象です(26条の2第2号)。業界裏話ヒント:取消しは『違反したら即実刑』ではなく『情状が重いとき』の裁量判断。やむを得ない事情を事前に保護司へ相談し記録を残しておくと、後で取消しを争う際の決定的な材料になる。黙って動くのが最悪手です

Q · 仮解除って聞いたことがないんですが、どういう制度ですか?

保護観察の成績が良好なとき、行政官庁の処分で観察を一時的に外す制度です(本条2項)。仮解除中は法律上『保護観察に付されなかった』とみなされ(本条3項)、25条2項ただし書や26条の2第2号の不利益が及びません。業界裏話ヒント:仮解除は単なる『ご褒美』ではなく将来の保険です。万一その後に再犯しても、仮解除されていれば再度の執行猶予の道が残る。これを意識して良好な成績を積みにいくかどうかで、数年後の選択肢の数が変わる

Q · 前に保護観察付きの執行猶予をもらった人は、もう二度と執行猶予はもらえないんですか?

原則として、保護観察付き猶予の期間中にさらに罪を犯した者は再度の執行猶予を受けられません(25条2項ただし書)。ただしその保護観察を仮解除されていれば、本条3項により『付されなかった』とみなされ、再度の猶予の可能性が残ります。業界裏話ヒント:ここを知らないまま諦めて実刑を受け入れる人がいます。過去の保護観察が仮解除されていたかどうかは記録で確認できる。弁護人にこの一点を必ず洗わせるべきです

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第二十六条(刑の全部の執行猶予の必要的取消し)

次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。

ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。

猶予の期間内に更に罪を犯して拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。

猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。

猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

刑法26条は、執行猶予期間中の再犯で実刑を受けた場合など三つの事由について、刑の全部の執行猶予を必ず取り消すと定める。取り消されると前の刑が復活し、新しい刑と合算して服役する。

よくある質問

Q · 執行猶予中にまた捕まったら、もう絶対に刑務所行きですか?

そうとは限りません。26条1号で前の猶予が必ず取り消されるのは、新しい罪の刑の全部について執行猶予がつかなかったときです。新しい罪にも執行猶予がつけば(25条2項の再度の執行猶予)、前の猶予は取り消されません。業界裏話ヒント:二度目の執行猶予はハードルが高い(言い渡される刑が1年以下、特に酌量すべき情状が必要)ですが、判決前の示談と被害弁償の有無で可否が大きく動く。捕まった直後から動くかどうかが分水嶺です

Q · 取り消されたら、前の刑と新しい刑、両方とも服役するんですか?

はい。26条で取り消されると、止まっていた前の刑がそのまま執行され、新しい罪の刑と合わせて服役します。執行猶予2年に新たな実刑1年なら、合計の期間、自由を失うことになります。業界裏話ヒント:この合算の重さを見落として「どうせバレないだろう」と再犯に走る人がいますが、最も損な賭けです。前の猶予が大きいほど、取り消し時のダメージは跳ね上がる。猶予期間中は、失うものが平時より遥かに大きいと意識すべきです

Q · 執行猶予中に罰金刑を受けたら、それも取り消し対象ですか?

26条の必要的取消しの対象にはなりません。26条は「拘禁刑以上の刑」が条件で、罰金はこれに当たらないからです。ただし26条の2第1号の裁量的取消しの対象にはなりうるので、油断はできません。業界裏話ヒント:罰金で済んだから安心、ではない。裁量的取消しは裁判官の判断次第なので、罰金刑であっても反省の態度や事案の悪質性が問われる。軽微な事件でも、執行猶予中という事実が判断を厳しくする方向に働きます

Q · 昔の前科が後から発覚した場合、いつまで遡って取り消されるんですか?

26条3号は、猶予の言渡しより前に犯した罪で拘禁刑以上に処せられていたことが発覚したときに適用されます。ただし、ただし書により、その前科を踏まえても猶予がつけられた立場(25条1項2号該当)などの場合は必要的取消しから外れます。業界裏話ヒント:余罪や前科を隠して執行猶予を得ても、後から発覚すれば猶予が吹き飛ぶ。一度目の事件のうちに包み隠さず処理しておくことが、結果的に自分の自由を守る最善手になります(最新の改正状況をご確認ください)

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第二十六条の二(刑の全部の執行猶予の裁量的取消し)

次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。

猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。

第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。

猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。

刑法 26 条の 2 は、執行猶予中の罰金刑、保護観察の遵守事項違反、前の執行猶予の発覚を事由として、裁判所が刑の全部の執行猶予を裁量で取り消せると定める規定である。

よくある質問

Q · 執行猶予中に罰金になったら、絶対に取り消されるんですか?

絶対ではありません。刑法 26 条の 2 第 1 号は「取り消すことができる」という裁量的取消しで、必ず取り消す 26 条とは別物です。裁判所が更生状況や事件の軽重を総合判断します。業界裏話ヒント:検察官が取消請求を出すかどうかにも裁量があり、軽微な罰金事案では請求自体を見送ることもある。だからこそ新事件の段階で弁護人がつき、悪質でないと示せるかが効いてくる。請求が出てから動くより、処分が固まる前から動いた方が勝率が高い

Q · 保護観察のルールを一回破っただけでも取り消されますか?

一回の違反で即取消しにはなりにくいです。26 条の 2 第 2 号は「遵守事項を遵守せず、その情状が重いとき」と限定しており、違反の継続性や態度の悪質さが評価されます。業界裏話ヒント:危ないのは「一回くらい」と軽視して連絡を絶つこと。保護司との関係が切れた状態が続くと、それ自体が「情状が重い」と評価されやすい。逆に、違反後すぐに保護観察所へ連絡し立て直す姿勢を見せれば、取消しを避けられる余地が大きく広がる

Q · 取り消されたら、新しい罪の刑と元の刑、両方を受けるんですか?

はい。猶予が取り消されると、猶予されていた元の刑が現実に執行され、新たな罪の刑とは別個に服することになります(併合罪として処理される範囲を除く)。執行猶予の身軽さを失う代償は大きいのです。業界裏話ヒント:この「二つの刑が一度に来る」リスクこそ、執行猶予中の人が軽い事件でも徹底的に争うべき理由。弁護士は元の刑の重さと新事件の軽さを天秤にかけ、たとえ新事件で不利な条件をのんでも罰金・不起訴を取りに行く戦略を組むことがある

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第二十六条の三(刑の全部の執行猶予の取消しの場合における他の刑の執行猶予の取消し)

前二条の規定により拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑(次条第二項後段又は第二十七条の七第二項後段の規定によりその執行を猶予されているものを除く。次条第六項、第二十七条の六及び第二十七条の七第六項において同じ。)についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

刑法26条の3は、一方の全部執行猶予が取り消されたとき、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も義務的に取り消すと定める。連鎖部分に裁判所の裁量はない。

よくある質問

Q · 執行猶予が二つあって、片方が取り消されたら、本当にもう一方も自動で取り消されるんですか?

原則そうなります。刑法26条の3は、26条・26条の2により一方の全部猶予が取り消されたとき、執行猶予中の他の拘禁刑についても「取り消さなければならない」と定めており、裁判所に裁量はありません。業界裏話ヒント:取消しは自動ではなく、検察官が刑事訴訟法349条で請求して裁判所が決めます。つまり手続が動き出す前に弁護士が介入し、一枚目の取消事由自体を争えれば、連鎖そのものを発生させずに済む可能性がある

Q · 連鎖して取り消されるのを止める方法はないんですか?

二つ目だけを単独で守る方法はありません。止められるのは一つ目の取消しを阻止することだけです。裁量的取消し(26条の2)であれば情状で取消しを免れる余地があり、それが防げれば連鎖も起きません。業界裏話ヒント:弁護人は「今回の新件」より「古い方の猶予の存在」を先に確認します。守る価値が高いのは残刑の長い方であり、戦略の力点をどちらに置くかで身柄拘束の総期間が大きく変わる

Q · 一部執行猶予の場合も同じように連鎖するんですか?

一部執行猶予には別系統の取消し規定(刑法27条の7)があり、26条の3の連鎖からは括弧書きで一定範囲が除外されています。全部猶予と一部猶予で扱いが分かれるため、自分の猶予がどちらかの確認が出発点です。業界裏話ヒント:一部執行猶予は2016年施行の比較的新しい制度で、取消しの連鎖関係が条文上きわめて複雑。自己判断せず、必ず条文の根拠まで弁護士に確認してもらうべき領域です(最新の改正状況をご確認ください)

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第二十七条(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)

刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

前項の規定にかかわらず、刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、同項の刑の言渡しは、当該期間が経過した日から第四項又は第五項の規定によりこの項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(以下この項及び次項において「効力継続期間」という。)、引き続きその効力を有するものとする。この場合においては、当該刑については、当該効力継続期間はその全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。

前項前段の規定にかかわらず、効力継続期間における次に掲げる規定の適用については、同項の刑の言渡しは、効力を失っているものとみなす。

第二十五条、第二十六条、第二十六条の二、次条第一項及び第三項、第二十七条の四(第三号に係る部分に限る。)並びに第三十四条の二の規定

人の資格に関する法令の規定

第二項前段の場合において、当該罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。

ただし、当該罪が同項前段の猶予の期間の経過後に犯した罪と併合罪として処断された場合において、犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。

第二項前段の場合において、当該罪について罰金に処せられたときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。

前二項の規定により刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

刑法 27 条は、執行猶予を取り消されず猶予期間を経過すると刑の言渡しが効力を失うと定める。ただし 2025 年改正で、期間中の罰金以上の罪が満了時に係属中なら効力が継続する。

よくある質問

Q · 執行猶予が明けたら、前科は本当に消えるんですか?

消えるのは資格制限の効果です。刑法 27 条 1 項で刑の言渡しが効力を失い、医師免許などの欠格事由は外れます。ただし検察庁の前科調書は残り、次に罪を犯したときの執行猶予の可否(刑法 25 条)に影響します。業界裏話ヒント:履歴書の賞罰欄は、効力を失った前科なら原則として記載義務がないと解されています。ただし資格職は個別法令で扱いが違うので、就く前に確認しておく

Q · 猶予期間中にスピード違反で罰金になったら、執行猶予は取り消されますか?

罰金刑にとどまる場合、刑法 27 条 5 項で取消しは「できる」、つまり裁量です。必ず取り消されるわけではありません。拘禁刑以上の実刑だと 4 項で必要的取消しになります。業界裏話ヒント:同じ違反でも罰金で収まるか拘禁刑へ進むかが運命の分かれ目。略式で罰金に持ち込めるよう新件の段階から弁護人をつけるかどうかで、執行猶予が生き残るかが変わる

Q · あと 1 か月で猶予期間が終わるのに、半年前の事件で今ごろ起訴されました。逃げ切れますか?

2025 年 6 月施行の改正で逃げ切れなくなりました。刑法 27 条 2 項により、期間中に犯した罰金以上の罪で起訴され係属中なら、満了後もその決着まで刑の言渡しの効力が続きます。業界裏話ヒント:改正前は『満了まで判決が出なければ取消しを免れる』という時間切れ狙いが通用しました。今は通用しません。古いネット記事を信じて油断するのが一番危ない

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第二十七条の二(刑の一部の執行猶予)

次に掲げる者が三年以下の拘禁刑の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。

前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

前に拘禁刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者

前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者

前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。

前項の規定にかかわらず、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった時において他に執行すべき拘禁刑があるときは、第一項の規定による猶予の期間は、その執行すべき拘禁刑の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から起算する。

刑法27条の2は、三年以下の拘禁刑について刑の一部のみを服役させ、残部を一年以上五年以下の期間執行猶予できると定める。猶予期間は実刑部分の終了後から起算される。

よくある質問

Q · 一部執行猶予って、結局どれくらい刑務所に入るんですか?

刑全体のうち裁判官が「執行猶予しない」と定めた部分だけ服役します。たとえば拘禁刑二年で六月を一部猶予なら、一年六月服役して残り六月が猶予期間(一年から五年で別途設定)になります。猶予期間は出所日から数え始めます(刑法27条の2第2項)。業界裏話ヒント:実刑部分と猶予期間は別々に裁判官が決めるので、弁護活動次第で実際に服役する月数が動きます。「二年の判決=二年服役」ではない。判決主文の読み方を弁護人に必ず説明させること

Q · 覚せい剤で何回も捕まっていますが、一部猶予の可能性はゼロですか?

刑法27条の2の一般要件を満たさなくても、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律という特別法が、薬物事犯に限って一部猶予の道を別に用意しています。こちらは保護観察が必須です。業界裏話ヒント:この特別法は、繰り返す薬物依存を「隔離より治療」で断ち切る発想で作られたもの。依存症治療プログラムへの参加意欲を具体的に示せると、裁判官が一部猶予を選びやすくなる。やる気を口で言うだけでなく、受診予約や自助グループ参加の記録という形にするのが効く

Q · 猶予期間中にまた何かやったら、どうなるんですか?

一部執行猶予は、取消事由(刑法27条の4以下)に当たると猶予が取り消され、猶予されていた残りの刑を服役することになります。再犯の内容によっては必ず取り消される類型もあります。業界裏話ヒント:一部猶予には多くの場合保護観察が付き、遵守事項違反だけでも取消しの引き金になりうる。出所して気が緩んだ時期が最も危ない。保護司との面接や住所届出など、地味な遵守事項を一つ落とすだけで再収監されたケースが現実にある。出所後こそ気を抜かないこと

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第二十七条の三(刑の一部の執行猶予中の保護観察)

前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。

前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。

前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、第二十七条の五第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。

刑法 27 条の 3 は、刑の一部執行猶予の期間中に保護観察を付すかを裁判所の裁量とし、付された観察は行政官庁の処分で仮に解除できると定める。

よくある質問

Q · 一部執行猶予って、普通の執行猶予と何が違うんですか?

通常の(全部)執行猶予は刑の全部の執行を猶予しますが、一部執行猶予は刑期の一部だけ服役し、残りを猶予します(刑法二十七条の二)。例えば懲役二年のうち六月を猶予なら、一年六月服役後に社会へ戻り、その社会内期間に保護観察が付くかを定めるのが二十七条の三です。業界裏話ヒント:実務では一部執行猶予は薬物事犯の社会内処遇を狙って設計された面が強く、薬物以外の事件で使われる例は限定的。罪名によって適用の根拠も保護観察の要否も変わる点を、判決前に弁護人へ確認すべきです

Q · 保護観察って、途中で外してもらえるんですか?

外せます。刑法二十七条の三第二項により、行政官庁(地方更生保護委員会)の処分で「仮に解除」できます。良好な経過が前提です。さらに第三項で、仮解除中は二十七条の五第二号の取消し判断について観察に付されなかったものとみなされ、観察ルール違反を理由とする取消しリスクから外れます。業界裏話ヒント:この仮解除のメリットを知らずに漫然と観察期間を過ごす人が多い。早期の仮解除は生活の自由度だけでなく刑務所への逆戻りリスクの軽減にも直結するので、良好経過が積み上がったら積極的に相談する価値があります

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第二十七条の四(刑の一部の執行猶予の必要的取消し)

次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。

ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十七条の二第一項第三号に掲げる者であるときは、この限りでない。

猶予の言渡し後に更に罪を犯し、拘禁刑以上の刑に処せられたとき。

猶予の言渡し前に犯した他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられたとき。

猶予の言渡し前に他の罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。

刑法 27 条の 4 は、一部執行猶予者が新たに拘禁刑以上の刑に処せられた場合などに、裁判所が裁量なく猶予を取り消すべきことを定める必要的取消しの規定である。

よくある質問

Q · 一部執行猶予中に交通違反で罰金になったら、猶予は取り消されますか?

取り消されません。27条の4が必要的取消しを発動させるのは、新しい罪で「拘禁刑以上」の刑に処せられた場合だけです。罰金や科料にとどまるなら、第1号の要件を満たさず猶予はそのまま生き残ります。業界裏話ヒント:だからこそ猶予中の弁護では、新件を「拘禁刑から罰金へ落とせるか」が最大の勝負どころになる。同じ事件でも刑種ひとつで結末が正反対になることを、弁護人は知っていても本人は気づかないまま判決の日を迎えがちだ

Q · 必要的取消しと裁量的取消しって、何が違うんですか?

27条の4の必要的取消しは、要件に当たれば裁判所が取り消す以外の選択肢がなく、情状は通用しません。一方27条の5の裁量的取消しは、保護観察の遵守事項違反などを理由に、取り消すかどうかを裁判所が判断します。業界裏話ヒント:取消請求が来たとき、まず確認すべきは「どちらの条文に基づくか」。裁量的取消しなら反省や生活環境の整備で覆せる余地があるが、必要的取消しの土俵に乗ってしまうと、戦える場所は要件該当性そのものしか残らない

Q · 猶予がつく前に犯した古い罪が後から見つかった場合も、取り消されるんですか?

第2号と第3号がまさにその場面を�NRP捉えています。猶予の言渡し前に犯した別の罪で拘禁刑以上に処せられたり、前科の存在が後から発覚したりすると、原則として必要的取消しの対象になります。ただし第3号には但書があり、あなたが27条の2第1項第3号に当たる者なら取消しを免れます。業界裏話ヒント:余罪の有無は猶予判決の前に整理しておくべきで、後から発覚するほど立場は不利になる。自分が但書の保護圏内にいるかどうかを最初に確認しておくと、いざ発覚しても落ち着いて防御できる

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第二十七条の五(刑の一部の執行猶予の裁量的取消し)

次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。

猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。

第二十七条の三第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。

刑法27条の5は、一部執行猶予中に罰金刑を受けたり保護観察の遵守事項に違反したとき、裁判所が裁量で猶予を取り消せると定める。実刑の場合は27条の4で必ず取消しとなる。

よくある質問

Q · 執行猶予中に交通違反で罰金になったら、刑務所に戻されますか?

戻されるとは限りません。新たな罪の刑が罰金なら、刑法27条の5の裁量的取消し事由にあたり、裁判所が取り消すかどうかを判断します。懲役の実刑なら27条の4で必ず取り消されますが、罰金は別です。業界裏話ヒント:検察官が取消請求をするかどうかにも裁量があり、軽微な事案では請求自体を見送ることもある。弁護人を通じて更生状況を伝えることで、請求前に止められる場合がある

Q · 保護観察の面接に一度行けなかっただけで取り消されますか?

一度の不参加で直ちに取り消されることは通常ありません。27条の5第2号は遵守事項違反を裁量的取消し事由としますが、違反の程度・回数・理由を総合判断します。業界裏話ヒント:保護観察所はいきなり取消請求をせず、まず警告や指導を行うのが通常の運用。警告を無視して違反を重ねた段階で初めて取消しに動く。だから警告が来た時点が本当の分岐点で、ここで態度を改めれば取消しを避けられることが多い

Q · 一部執行猶予が取り消されたら、残りの刑期はどうなりますか?

猶予されていた部分の刑を服役することになります。例えば懲役2年のうち6月が猶予されていれば、その6月を改めて服役します。業界裏話ヒント:取消しは「猶予部分」だけで、すでに服役した実刑部分が戻るわけではない。さらに新たな罪の刑とも併せて執行される。トータルで何年服役するのかを最初に計算しておかないと、争うべき重みの判断を誤る

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第二十七条の六(刑の一部の執行猶予の取消しの場合における他の刑の執行猶予の取消し)

前二条の規定により刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

刑法27条の6は、一部執行猶予が前二条により取り消されたとき、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消さなければならないと定める。裁量の余地はなく連鎖的に取り消される。

よくある質問

Q · そもそも一部執行猶予って、普通の執行猶予と何が違うんですか?

刑の一部だけを実際に服役し、残りの一部を猶予する制度です(刑法27条の2)。例えば「2年の拘禁刑のうち1年6月を服役、残り6月を2年間猶予」のように刑を分割します。実刑と全部猶予の中間で、薬物事犯の社会内更生に多く使われます。業界裏話ヒント:一部執行猶予は2016年6月から始まった比較的新しい制度で、古い解説書や検索で出てくる情報は全部執行猶予の話と混在していることが多い。自分の判決がどちらの猶予なのか、判決主文の文言を弁護人と一字一句確認しておかないと、リスクの大きさを読み違える

Q · 別件の猶予まで取り消されるのは、本当に絶対なんですか? 裁判官の判断で残してもらえないんですか?

27条の6は「取り消さなければならない」と定める義務規定で、別件の猶予を残す裁量はありません。連鎖を止めたいなら、引き金となる一部執行猶予の取消し自体を防ぐしかない、という構造です。業界裏話ヒント:だからこそ勝負は連鎖が起きた後ではなく、取消事由が裁量的取消し(27条の5)にとどまる段階にある。必要的取消し(27条の4、猶予期間内の再犯で拘禁刑以上の刑が確定など)に至ると連鎖は確定的になる。弁護活動の山場は、必要的取消しの要件を満たさせないところにある

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第二十七条の七(刑の一部の執行猶予の猶予期間経過の効果)

刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その拘禁刑を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする拘禁刑に減軽する。この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。

前項の規定にかかわらず、刑の一部の執行猶予の言渡し後その猶予の期間を経過するまでに更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、当該期間が経過した日から第四項又は第五項の規定によりこの項後段の規定による刑の一部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(以下この項及び次項において「効力継続期間」という。)、前項前段の規定による減軽は、されないものとする。この場合においては、同項の刑については、当該効力継続期間は当該猶予された部分の刑の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。

前項前段の規定にかかわらず、効力継続期間における次に掲げる規定の適用については、同項の刑は、第一項前段の規定による減軽がされ、同項後段に規定する日にその執行を受け終わったものとみなす。

第二十五条第一項(第二号に係る部分に限る。)、第二十七条の二第一項(第三号に係る部分に限る。)及び第三項、第二十七条の四、第二十七条の五、第三十四条の二並びに第五十六条第一項の規定

人の資格に関する法令の規定

第二項前段の場合において、当該罪について拘禁刑以上の刑に処せられたときは、同項後段の規定による刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。

ただし、当該罪が同項前段の猶予の期間の経過後に犯した罪と併合罪として処断された場合において、犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。

第二項前段の場合において、当該罪について罰金に処せられたときは、同項後段の規定による刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。

前二項の規定により刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

刑法27条の7は、一部執行猶予の猶予期間を取り消されず経過すれば、拘禁刑を服役した部分まで減軽し執行を終えたものとみなすと定める。期間中の罪の起訴があれば減軽は留保される。

よくある質問

Q · 一部執行猶予の期間を無事に過ぎたら、前科は消えるんですか?

刑の執行は終わったとみなされますが(刑法27条の7第1項)、前科そのものが消えるわけではありません。資格制限などが消える『刑の消滅』は刑法34条の2が別に定めており、拘禁刑なら執行を終えてから10年間罰金以上の刑を受けなければ刑の言渡しが効力を失います。業界裏話ヒント:『執行を終えた』と『刑が消滅した』は別物です。就職や資格取得の場面で効いてくるのは34条の2のほう。出所イコールまっさらではなく、そこから10年のカウントがまた静かに走り始めている

Q · 猶予期間が終わる直前に事件を起こしたら、もう逃げ切れますか?

逃げ切れません。2項は、猶予期間が経過するまでに犯した罪について起訴されていれば、期間を過ぎても減軽をストップさせます。経過後に起訴されたとしても、犯行が期間中であれば効力継続期間として宙づりが続きます。業界裏話ヒント:『期間が過ぎたから勝ち』という発想は通用しません。判断の基準は『いつ犯したか』であって、『いつ起訴されたか』『いつ期間が終わったか』ではない。ここを取り違えて安心してしまう人がとても多い

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第五章
第二十八条(仮釈放)

拘禁刑に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

刑法28条は、改悛の状がある拘禁刑受刑者について、有期刑は刑期の3分の1、無期刑は10年を経過した後、行政官庁の処分で仮釈放できると定める。

よくある質問

Q · 無期懲役って本当に10年で出られるんですか?

条文上は10年経過後に仮釈放の「審理が可能になる」だけで、自動的に出られるわけではありません(刑法28条)。地方更生保護委員会の裁量判断で、実際の無期刑受刑者が仮釈放されるまでの平均在所期間は30年を超え、一生出所できない人も少なくありません。業界裏話ヒント:報道やドラマの「無期=10年で出所」というイメージは現実と大きくずれている。無期刑は事実上の終身刑に近い運用がされており、近年は仮釈放のハードルがさらに上がっている。

Q · 仮釈放されたら、もう刑は終わったってことですか?

違います。仮釈放は刑の執行が「仮に」止まっているだけで、残りの刑期が満了するまで保護観察下に置かれます(刑法28条、更生保護法48条)。遵守事項に違反したり再犯すれば仮釈放は取り消され、残りの刑期を施設で過ごすことになります(刑法29条)。業界裏話ヒント:無期刑の仮釈放者は残刑期間が「無期」なので、一生保護観察が続く。つまり無期刑は仮釈放されても法的な拘束が生涯解けない。

Q · 家族が刑務所にいます。早く出すために外から何かできますか?

最も効きやすいのは帰住先と身元引受人の確保です。仮釈放は帰る場所と監督してくれる人がいることが事実上の前提で、家族が「帰ってきていい」と引受を表明するかどうかが審理を左右します。業界裏話ヒント:本人がどれだけ施設内で模範的でも、帰住先が決まらなければ仮釈放は進まない。逆に家族が早期に保護観察所へ相談し受入環境を整えると審理が前に動きやすい。多くの家族は、この「外側の準備」が鍵だと知らない。

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第二十九条(仮釈放の取消し等)

次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。

仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。

仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。

仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。

仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。

刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その刑について仮釈放の処分を受けた場合において、当該仮釈放中に当該執行猶予の言渡しを取り消されたときは、その処分は、効力を失う。

仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。

刑法 29 条は仮釈放の取消しを定める。仮釈放中の再犯による罰金以上の刑、仮釈放前の他罪、遵守事項違反があれば取り消され、取消し時は釈放中の日数が刑期に算入されない。

よくある質問

Q · 仮釈放されたら、もう刑務所には戻らなくていいんですよね?

そうとは限りません。仮釈放は残りの刑期を社会内で過ごす制度で、刑の執行が終わったわけではありません。第29条1項各号の事由(新たな犯罪、遵守事項違反など)があれば取り消され、再収容されます。業界裏話ヒント:取消しになると第29条3項で、社会で過ごした日数は刑期に一切算入されません。満了直前の取消しほどダメージが大きく、残刑をまるごと務め直す。『あと少しだから大丈夫』という気の緩みが、最も高くつく

Q · 遵守事項って、どこまで守らないと取り消されるんですか?

一般遵守事項(健全な生活態度、保護観察官の指導に従う等)と特別遵守事項(転居・旅行の制限など)があり、その不遵守は第29条1項4号の取消し事由です。ただし取消しは『できる』規定で、地方更生保護委員会の裁量です。業界裏話ヒント:一度の軽微な違反で即取消しとは限らず、警告で済む場合もある。分かれ目は違反後の態度。逃げて連絡を絶つと取消しに傾き、自ら出向いて立て直す姿勢を見せると猶予されることがある

Q · 昔の事件の罰金が今ごろ確定したら、それでも取り消されますか?

あり得ます。第29条1項2号・3号は、仮釈放前に犯した他の罪で罰金以上の刑に処せられた場合も取消し事由とします。仮釈放後に発覚・確定した古い事件でも対象です。業界裏話ヒント:仮釈放中は、係属中の別事件があれば必ず弁護人に共有しておくこと。罰金一つで仮釈放が飛ぶ構造を知らないと、本人が軽く考えて不利な処理(略式命令の受け入れ等)をしてしまう

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第三十条(仮出場)

拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。

罰金又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。

刑法 30 条は、拘留に処せられた者および罰金・科料の未納で労役場に留置された者を、情状により行政官庁の処分でいつでも仮に出場させられると定める。仮釈放と違い保護観察は付かない。

よくある質問

Q · 罰金が払えなかったら、結局どうなるんですか?

まず検察庁が財産の差押えを試み、それでも回収できなければ労役場留置に切り替わります(刑法 18 条)。判決で定めた換算額で日割りした日数だけ作業に従事し、その途中で情状により仮出場が許されることもあります(刑法 30 条)。業界裏話ヒント:労役場留置に入る前なら、検察庁の徴収担当に分割納付を願い出られる余地があります。窓口で一度断られても、生活状況を具体的に示すと応じてもらえるケースがある。留置が始まってからでは選択肢が一気に狭まるので、納付書が届いた段階で動くのが鉄則です

Q · 仮出場と仮釈放って同じものですか?

別物です。仮釈放(刑法 28 条)は懲役、拘禁刑の受刑者が対象で、保護観察が付き、違反すれば取り消されて残りを服役します。仮出場(刑法 30 条)は拘留と労役場留置が対象で、保護観察も取消しもありません。業界裏話ヒント:仮出場は条件なしの早期解放に近いのに、制度としての知名度が低く、本人も家族も「申請の対象になりうる」と気付かないことが多い。拘留や労役場留置は期間が短い分、動くなら早く。施設の担当者に情状を伝えるところから始めると、判断が前に進みやすい

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第六章
第三十一条(刑の時効)

刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。

刑法 31 条は、死刑を除く刑の言渡しを受けた者が、確定後に執行されないまま法定期間が過ぎると、時効により執行の免除を得ると定める。死刑は 2010 年改正で対象外となった。

よくある質問

Q · 公訴時効と刑の時効って、結局なにが違うんですか?

公訴時効(刑事訴訟法 250 条)は、犯人を起訴できる期限です。これが過ぎると、たとえ犯人が分かっても裁判にかけられません。一方、刑の時効(刑法 31 条、32 条)は、有罪が確定した後に、その刑を執行できる期限です。前者は裁ける入口、後者は罰を実現できる出口の話。業界裏話ヒント:実務でも一般の方の多くがこの二つを混同します。報道で「時効」と聞いたら、まず起訴前か確定後かを見極めるだけで、その事件の本当の局面が読めるようになります

Q · 有罪確定後に逃げ切れば、本当に刑を受けずに済むんですか?

理屈の上では時効完成で執行を免れますが、現実には極めて困難です。国外にいる間は時効が停止し(刑法 33 条)、国内でも逮捕・差押えなどの執行行為があれば中断してゼロから数え直し(刑法 34 条)になります。業界裏話ヒント:2010 年改正で国外滞在中の停止が明文化された結果、「海外に逃げて時効を待つ」という戦略はほぼ封じられました。逃げるほど時計は止まるという、直感と逆の構造になっています

Q · 死刑判決を受けた人も、逃げ切れば時効になるんですか?

なりません。2010 年(平成 22 年)の改正で、死刑は刑の時効の対象から外されました(刑法 31 条の「死刑を除く」)。何十年逃亡しても死刑の執行は消えません。業界裏話ヒント:改正前は死刑にも 30 年の時効がありました。実際に時効完成が現実味を帯びた逃亡事件をきっかけに、公訴時効の見直しと同時に死刑の刑の時効も廃止された、という立法の流れがあります

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第三十二条(時効の期間)

時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。

無期拘禁刑については三十年

十年以上の有期拘禁刑については二十年

三年以上十年未満の拘禁刑については十年

三年未満の拘禁刑については五年

罰金については三年

拘留、科料及び没収については一年

刑法32条は、刑の確定後に一定期間執行を受けないと刑の時効が完成し執行が免除されると定める。無期拘禁刑30年、罰金3年などで、執行行為があれば中断する。

よくある質問

Q · 罰金を払わずに3年逃げれば、本当に払わなくてよくなるんですか?

理屈の上では刑の時効は罰金で3年(刑法32条5号)です。だが現実は甘くない。検察庁が督促状を送ったり財産を差し押さえたりする執行行為をすると時効は中断し、そこからまた3年が振り出しに戻ります(刑法34条2項)。完納できなければ労役場留置(刑法18条)で身柄を拘束されることもある。業界裏話ヒント:実務では検察庁が時効完成前に必ず執行行為を入れるため、罰金が刑の時効で消えるケースはほぼ皆無。逃げるより分納や減額の相談に動いた方が、生活への打撃は小さい

Q · ニュースで聞く『時効』と、この『刑の時効』は同じものですか?

別物です。ニュースで多い「時効」は公訴時効(刑事訴訟法250条)で、犯人が起訴される前に一定期間逃げ切ると起訴できなくなる制度。刑法32条の「刑の時効」は、有罪判決が確定した後、その執行を逃げ切ると執行できなくなる制度です。前者は判決前、後者は判決後の話。業界裏話ヒント:2010年改正の「殺人の時効廃止」は公訴時効の話ですが、同じ改正で死刑確定者の刑の時効も別途廃止されています。二つは混同されがちですが、別の条文の別々の改正です

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第三十三条(時効の停止)

時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。

拘禁刑、罰金、拘留及び科料の時効は、刑の言渡しを受けた者が国外にいる場合には、その国外にいる期間は、進行しない。

刑法 33 条は刑の時効の停止を定める。法令で執行を猶予・停止した期間と、拘禁刑・罰金等で刑を受けた者が国外にいる期間は、時効が進行しない。

よくある質問

Q · 海外に逃げていれば、確定した刑の時効も成立するんですよね?

拘禁刑・罰金・拘留・科料については成立しません。本条2項により、刑の言渡しを受けた者が国外にいる期間は時効が進行しないからです(刑法33条2項)。国内に戻った瞬間からまた時計が動き出し、執行の可能性が残ります。業界裏話ヒント:多くの人が混同しますが、起訴の期限である『公訴時効』(刑事訴訟法250条)と、確定刑の執行期限である『刑の時効』(刑法31条・32条)は別の制度です。ニュースの『時効』はほとんど前者の話で、確定後の逃亡には本条が効きます

Q · 昔の交通違反の罰金を払い忘れたまま何年も経ちました。もう時効ですか?

罰金の刑の時効は3年(刑法32条、最新の改正状況をご確認ください)ですが、本条で進行が停止した期間は算入されません。さらに督促や財産調査などの中断事由(刑法34条)があれば時効はリセットされます。業界裏話ヒント:罰金未納は時効を待つより、労役場留置(1日あたり一定額に換算して身柄を拘束する手続)のリスクが現実的です。加えて国外にいた期間は時効が止まるので、海外赴任歴があると『もう時効』の計算が狂います。安易に時効を当てにしない方がいい

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第三十四条(時効の中断)

拘禁刑及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。

罰金、科料及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。

刑法34条は刑の時効の中断を定める。拘禁刑・拘留は執行のための拘束で、罰金・科料・没収は執行行為で時効が中断し、経過期間はゼロに戻る。

よくある質問

Q · 公訴時効と刑の時効って、何が違うんですか?

公訴時効(刑事訴訟法250条)は犯人を起訴できる期限、刑の時効(刑法31条、32条)は確定した刑を執行できる期限です。前者は裁判前、後者は判決確定後の話で、全く別の制度です。業界裏話ヒント:ニュースの「時効」はほぼ公訴時効を指します。確定判決後に逃げた人の刑の時効は別制度で、しかも34条の中断で何度もリセットされうるため、実際に逃げ切るのは極めて難しい

Q · 罰金を払わずに放置していたら、いつか消えますか?

理論上は刑の時効(罰金は3年、刑法32条)の完成で執行を免れますが、検察庁が差押えなどの執行行為をすれば34条2項で中断し、ゼロから数え直しになります。業界裏話ヒント:罰金未納者は労役場留置という形で身柄を拘束されることもあり(刑法18条)、その場合は実質的に逃げ切れません。「放置で消える」は期待しない方がいい(最新の改正状況をご確認ください)

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第三十四条の二(刑の消滅)

拘禁刑以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。

刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。

刑法 34 条の 2 は、拘禁刑以上の刑の執行を終えた者が罰金以上の刑を受けずに 10 年を経過すれば刑の言渡しが効力を失うと定める。罰金以下は 5 年、刑の免除は 2 年である。

よくある質問

Q · 前科って結局、一生消えないんですよね?

法律上の効力は刑種に応じて10年・5年・2年で失われます(刑法34条の2)。失われれば累犯加重の基礎にもならず、資格制限も外れるのが通説です。ただし検察庁が管理する犯歴データは生涯保管されます。業界裏話ヒント:市町村の犯罪人名簿は効力消滅で抹消されるのに、捜査機関の前科照会には一生ヒットする。「消える」と「残る」が同居しているのが日本の前科制度の実像です

Q · 10年経ったら、履歴書の賞罰欄は空欄でいいんですか?

刑の言渡しが効力を失った後は、その前科を記載しなくても経歴詐称にはあたらないとするのが通説です(刑法34条の2)。業界裏話ヒント:ただし企業が「過去すべての賞罰を申告せよ」と独自に質問してきた場合の扱いは、実務上、解釈が分かれている論点です。不安なら、応募前に弁護士に確認しておくと足元をすくわれない

Q · 執行猶予が満了したのと、この34条の2は何が違うんですか?

執行猶予は猶予期間の満了で言渡しの効力が失われます(刑法27条)。一方34条の2は、実刑などを終えた後に10年などの期間経過を要件とします。ルートは別ですが、前科の法律効果が消える点は共通です。業界裏話ヒント:執行猶予満了の方が早く効力が消えるため、実刑より猶予判決の方が前科の影響が短く済むという逆転現象が起きます

Q · 前科があると、看護師や介護の資格はもう取れないんですか?

多くの資格法は「刑の執行終了から一定期間を経過しない者」を欠格としますが、刑の言渡しが効力を失えば前科のない者として扱われ、欠格事由から外れるのが一般的な解釈です(刑法34条の2)。業界裏話ヒント:各資格法が独自の年数を定めていることもあり、34条の2の10年と資格法の年数のどちらが効くかは法律ごとに違う。資格を諦める前に、その資格法の条文を直接読む価値があります

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第七章
第三十五条(正当行為)

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

刑法 35 条は、法令又は正当な業務による行為を罰しないと定める。医療・報道・スポーツ・正当な争議行為などは違法性が阻却されるが、目的の正当性と手段の相当性が要件となる。

よくある質問

Q · お医者さんが手術で失敗して患者が亡くなったら、35 条があるから無罪なんですか?

手術自体が正当業務行為として違法性を阻却されても、その過程に過失があれば業務上過失致死罪(刑法 211 条)が別問題として成立しえます。35 条が外すのは故意の傷害の違法性であって、過失責任まで免除するものではありません。業界裏話ヒント:医療事故では、刑事(過失)、民事(損害賠償)、行政(医師免許の処分)の三つが別々に進みます。刑事で不起訴でも民事で賠償が認められることは普通にある。一つの結果に三つの戦場があると知っておく

Q · プロレスやボクシングで相手を殴るのは、なぜ傷害罪にならないんですか?

ルールに従い社会的に相当な範囲であれば、35 条の正当業務行為として違法性が阻却されるからです。ただし無制限ではなく、ルールを逸脱した故意の加害(リング外での暴行、凶器の使用)は阻却されず傷害罪になりえます。業界裏話ヒント:「相手が同意していたから」だけでは説明しきれません。被害者の同意とは別に、その競技自体が社会的に承認された業務であることが鍵。だから違法な賭け試合や私的な決闘は、同意があっても正当化されにくい

Q · 労働組合のストライキで会社の業務が止まっても、罪にならないんですか?

正当な争議行為であれば、労働組合法 1 条 2 項が刑法 35 条の適用を明示しており、威力業務妨害罪(刑法 234 条)などの違法性が阻却されます。ただし暴力を伴う行為は正当性を失います(労働組合法 1 条 2 項但書)。業界裏話ヒント:正当な争議行為かどうかは、目的(労働条件の維持改善か)、手段(暴力や財産破壊を伴わないか)、主体(組合の意思決定を経たか)で判断されます。山猫スト(組合の統制を外れた行動)や純粋な政治ストは、正当性を否定されやすい

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第三十六条(正当防衛)

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

刑法 36 条は、急迫不正の侵害に対し自己または他人の権利を守るためやむを得ずにした行為を正当防衛として罰しない。ただし防衛の程度を超えると過剰防衛となり、刑が減免されるにとどまる。

よくある質問

Q · 殴られそうになったから先に殴ったら、正当防衛になりますか?

なる場合があります。刑法36条の急迫不正の侵害は、攻撃がまさに切迫していれば、現実に殴られる前でも認められます。ただし「相手が殴りそうな気がした」程度では足りず、客観的に侵害が間近に迫っていることが必要です。業界裏話ヒント:実務では先制攻撃はほぼ過剰防衛か喧嘩と評価されやすく、純粋な正当防衛が認められるのは相手が凶器を構えた等の明白な切迫状況に限られます。先に手を出すなら、その切迫を裏づける証拠が要る

Q · 過剰防衛だと、結局どうなるんですか?

36条2項により、刑の減軽または免除が「できる」にとどまります。免除されれば実質無罪に近いですが、減軽どまりなら有罪で前科がつきます。減免するかは裁判所の裁量です。業界裏話ヒント:過剰防衛でも、恐怖や驚愕で我を忘れた状況が認められると刑が免除されやすくなります。弁護では「どれだけ怖かったか」「興奮状態だったか」を具体的に立証することが、減軽と免除の分かれ目になる

Q · 他人を助けるために加勢したら、自分が捕まることもありますか?

あります。36条は他人の権利の防衛も正当防衛に含めますが、加勢した相手が実は加害者側だった、防衛の程度を超えた、というケースでは過剰防衛や傷害罪に問われます。業界裏話ヒント:誤想防衛といって、本当は正当防衛の状況でないのにそうだと誤信して加勢した場合、故意が否定され処罰を免れる余地があります(刑法38条との関係)。ただし不注意なら過失犯が残ることがあるので、飛び込む前の見極めが要る

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370条の本則 / 36条の附則

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刑法(明治四十年法律第四十五号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/140AC0000000045

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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