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刑事訴訟法

昭和二十三年法律第百三十一号

公布日:1948-07-10

第一編
第一条

この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

第一章
第二条

裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地による。

国外に在る日本船舶内で犯した罪については、前項に規定する地の外、その船舶の船籍の所在地又は犯罪後その船舶の寄泊した地による。

国外に在る日本航空機内で犯した罪については、第一項に規定する地の外、犯罪後その航空機の着陸(着水を含む。)した地による。

第三条

事物管轄を異にする数個の事件が関連するときは、上級の裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

高等裁判所の特別権限に属する事件と他の事件とが関連するときは、高等裁判所は、併せてこれを管轄することができる。

第四条

事物管轄を異にする数個の関連事件が上級の裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、上級の裁判所は、決定で管轄権を有する下級の裁判所にこれを移送することができる。

第五条

数個の関連事件が各別に上級の裁判所及び下級の裁判所に係属するときは、事物管轄にかかわらず、上級の裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

高等裁判所の特別権限に属する事件が高等裁判所に係属し、これと関連する事件が下級の裁判所に係属するときは、高等裁判所は、決定で下級の裁判所の管轄に属する事件を併せて審判することができる。

第六条

土地管轄を異にする数個の事件が関連するときは、一個の事件につき管轄権を有する裁判所は、併せて他の事件を管轄することができる。

但し、他の法律の規定により特定の裁判所の管轄に属する事件は、これを管轄することができない。

第七条

土地管轄を異にする数個の関連事件が同一裁判所に係属する場合において、併せて審判することを必要としないものがあるときは、その裁判所は、決定で管轄権を有する他の裁判所にこれを移送することができる。

第八条

数個の関連事件が各別に事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、各裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定でこれを一の裁判所に併合することができる。

前項の場合において各裁判所の決定が一致しないときは、各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で事件を一の裁判所に併合することができる。

第九条

数個の事件は、左の場合に関連するものとする。

一人が数罪を犯したとき。
数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。
数人が通謀して各別に罪を犯したとき。

犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪及び贓物に関する罪とその本犯の罪とは、共に犯したものとみなす。

第十条

同一事件が事物管轄を異にする数個の裁判所に係属するときは、上級の裁判所が、これを審判する。

上級の裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で管轄権を有する下級の裁判所にその事件を審判させることができる。

第十一条

同一事件が事物管轄を同じくする数個の裁判所に係属するときは、最初に公訴を受けた裁判所が、これを審判する。

各裁判所に共通する直近上級の裁判所は、検察官又は被告人の請求により、決定で後に公訴を受けた裁判所にその事件を審判させることができる。

第十二条

裁判所は、事実発見のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。

前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

第十三条

訴訟手続は、管轄違の理由によつては、その効力を失わない。

第十四条

裁判所は、管轄権を有しないときでも、急速を要する場合には、事実発見のため必要な処分をすることができる。

前項の規定は、受命裁判官にこれを準用する。

第十五条

検察官は、左の場合には、関係のある第一審裁判所に共通する直近上級の裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。

裁判所の管轄区域が明らかでないため管轄裁判所が定まらないとき。
管轄違を言い渡した裁判が確定した事件について他に管轄裁判所がないとき。
第十六条

法律による管轄裁判所がないとき、又はこれを知ることができないときは、検事総長は、最高裁判所に管轄指定の請求をしなければならない。

第十七条

検察官は、左の場合には、直近上級の裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。

管轄裁判所が法律上の理由又は特別の事情により裁判権を行うことができないとき。
地方の民心、訴訟の状況その他の事情により裁判の公平を維持することができない虞があるとき。

前項各号の場合には、被告人も管轄移転の請求をすることができる。

第十八条

犯罪の性質、地方の民心その他の事情により管轄裁判所が審判をするときは公安を害する虞があると認める場合には、検事総長は、最高裁判所に管轄移転の請求をしなければならない。

第十九条

裁判所は、適当と認めるときは、検察官若しくは被告人の請求により又は職権で、決定を以て、その管轄に属する事件を事物管轄を同じくする他の管轄裁判所に移送することができる。

移送の決定は、被告事件につき証拠調を開始した後は、これをすることができない。

移送の決定又は移送の請求を却下する決定に対しては、その決定により著しく利益を害される場合に限り、その事由を疎明して、即時抗告をすることができる。

第二章
第二十条

裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。

裁判官が被害者であるとき。
裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。
裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき。
裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。
裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。
裁判官が事件について第二百六十六条第二号の決定、略式命令、前審の裁判、第三百九十八条乃至第四百条、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
第二十一条

裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官又は被告人は、これを忌避することができる。

弁護人は、被告人のため忌避の申立をすることができる。

但し、被告人の明示した意思に反することはできない。

第二十二条

事件について請求又は陳述をした後には、不公平な裁判をする虞があることを理由として裁判官を忌避することはできない。

但し、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

第二十三条

合議体の構成員である裁判官が忌避されたときは、その裁判官所属の裁判所が、決定をしなければならない。この場合において、その裁判所が地方裁判所であるときは、合議体で決定をしなければならない。

地方裁判所の一人の裁判官又は家庭裁判所の裁判官が忌避されたときはその裁判官所属の裁判所が、簡易裁判所の裁判官が忌避されたときは管轄地方裁判所が、合議体で決定をしなければならない。

ただし、忌避された裁判官が忌避の申立てを理由があるものとするときは、その決定があつたものとみなす。

忌避された裁判官は、前二項の決定に関与することができない。

裁判所が忌避された裁判官の退去により決定をすることができないときは、直近上級の裁判所が、決定をしなければならない。

第二十四条

訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない。この場合には、前条第三項の規定を適用しない。第二十二条の規定に違反し、又は裁判所の規則で定める手続に違反してされた忌避の申立を却下する場合も、同様である。

前項の場合には、忌避された受命裁判官、地方裁判所の一人の裁判官又は家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官は、忌避の申立てを却下する裁判をすることができる。

第二十五条

忌避の申立を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

第二十六条

この章の規定は、第二十条第七号の規定を除いて、裁判所書記にこれを準用する。

決定は、裁判所書記所属の裁判所がこれをしなければならない。

但し、第二十四条第一項の場合には、裁判所書記の附属する受命裁判官が、忌避の申立を却下する裁判をすることができる。

第三章
第二十七条

被告人又は被疑者が法人であるときは、その代表者が、訴訟行為についてこれを代表する。

数人が共同して法人を代表する場合にも、訴訟行為については、各自が、これを代表する。

第二十八条

刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十九条又は第四十一条の規定を適用しない罪に当たる事件について、被告人又は被疑者が意思能力を有しないときは、その法定代理人(二人以上あるときは、各自。以下同じ。)が、訴訟行為についてこれを代理する。

第二十九条

前二条の規定により被告人を代表し、又は代理する者がないときは、検察官の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければならない。

前二条の規定により被疑者を代表し、又は代理する者がない場合において、検察官、司法警察員又は利害関係人の請求があつたときも、前項と同様である。

特別代理人は、被告人又は被疑者を代表し又は代理して訴訟行為をする者ができるまで、その任務を行う。

第四章
第三十条

被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。

被告人又は被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる。

第三十一条

弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。

簡易裁判所又は地方裁判所においては、裁判所の許可を得たときは、弁護士でない者を弁護人に選任することができる。

ただし、地方裁判所においては、他に弁護士の中から選任された弁護人がある場合に限る。

第三十一条の二

弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。

弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。

弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。

第三十二条

公訴の提起前にした弁護人の選任は、第一審においてもその効力を有する。

公訴の提起後における弁護人の選任は、審級ごとにこれをしなければならない。

第三十三条

被告人に数人の弁護人があるときは、裁判所の規則で、主任弁護人を定めなければならない。

第三十四条

前条の規定による主任弁護人の権限については、裁判所の規則の定めるところによる。

第三十五条

裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。

但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。

第三十六条

被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。

但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

第三十六条の二

この法律により弁護人を要する場合を除いて、被告人が前条の請求をするには、資力申告書(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額(以下「資力」という。)及びその内訳を申告する書面をいう。以下同じ。)を提出しなければならない。

第三十六条の三

この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。

前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条

左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。

被告人が未成年者であるとき。
被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
その他必要と認めるとき。
第三十七条の二

被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。

ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

前項の請求は、勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

第三十七条の三

前条第一項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。

その資力が基準額以上である被疑者が前条第一項の請求をするには、あらかじめ、その勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。

前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十七条の四

裁判官は、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があると認めるときは、職権で弁護人を付することができる。

ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十七条の五

裁判官は、死刑又は無期拘禁刑に当たる事件について第三十七条の二第一項又は前条の規定により弁護人を付する場合又は付した場合において、特に必要があると認めるときは、職権で更に弁護人一人を付することができる。

ただし、被疑者が釈放された場合は、この限りでない。

第三十八条

この法律の規定に基づいて裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。

前項の規定により選任された弁護人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。

第三十八条の二

裁判官による弁護人の選任は、被疑者がその選任に係る事件について釈放されたときは、その効力を失う。

ただし、その釈放が勾留の執行停止によるときは、この限りでない。

第三十八条の三

裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。

第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。

弁護人を解任するには、あらかじめ、その意見を聴かなければならない。

弁護人を解任するに当たつては、被告人の権利を不当に制限することがないようにしなければならない。

公訴の提起前は、裁判官が付した弁護人の解任は、裁判官がこれを行う。この場合においては、前三項の規定を準用する。

第三十八条の四

裁判所又は裁判官の判断を誤らせる目的で、その資力について虚偽の記載のある資力申告書を提出した者は、十万円以下の過料に処する。

第三十九条

身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。

検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。

但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

第四十条

弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。

但し、証拠物を謄写するについては、裁判長の許可を受けなければならない。

前項の規定にかかわらず、第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体は、謄写することができない。

836条の本則 / 62条の附則