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法律略称 民訴法

民事訴訟法

みんじそしょうほう

法令番号
平成八年法律第百九号
公布日
平成八年六月二十六日
条数
本則593条・附則32条
第一編
第一章
第一条(趣旨)

民事訴訟に関する手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

民事訴訟法第 1 条は、民事訴訟の手続は他の法令に定めがあるものを除き本法によると定める趣旨規定で、同法が民事手続の一般法であることを示す。

よくある質問

Q · 民事訴訟法って、要するに民事の裁判のことを全部決めてる法律ですよね?

半分正解で半分誤解です。第1条が定めるとおり、民事訴訟法は『他の法令に定めるもののほか』に適用される一般法で、家事事件手続法・民事執行法・破産法・民事保全法などの特別な手続法があれば、そちらが優先します。業界裏話ヒント:実務家は紛争の相談を受けると、まず『これは民訴の事件か、家事の事件か、執行の事件か』を仕分けます。この入口を間違えると、提出先の裁判所も手続も全部ずれる

Q · じゃあ離婚の裁判も民事訴訟法に書いてあるんですか?

離婚そのものの裁判手続は人事訴訟法、その前段階の調停や親権・養育費などは家事事件手続法が定めており、民事訴訟法は補充的に準用されるにとどまります(人事訴訟法 第29条が民事訴訟法の準用を定める)。業界裏話ヒント:家事事件はいきなり訴訟ではなく原則として調停から、という『調停前置』のルールがあり、これも民事訴訟法ではなく家事事件手続法側の話。一般の裁判のつもりで進めると順番を間違える

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第二条(裁判所及び当事者の責務)

裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

民事訴訟法 2 条は、裁判所に公正かつ迅速な進行を、当事者に信義に従った誠実な訴訟追行を義務づける。禁反言や権利失効など個別法理の根拠となる。

よくある質問

Q · 訓示規定って、結局守らなくても罰則ないんですよね?

罰則という形ではありませんが、効果は実質的です。信義に反する訴訟追行をすると、その主張や証拠が排斥されたり、訴え自体が信義則違反で却下されることがあります(民訴 2 条)。業界裏話ヒント:弁護士は相手の『信義則違反』を、本筋の法律論が苦しいときの第二の戦線として温存します。正面から勝てなくても、相手のずるさを裁判官に印象づけて心証を動かし、全体の判断を有利に傾けるのが定石です

Q · 前に言ってたことと違う主張をしたら、それだけで負けますか?

それだけで即負けにはなりません。主張を変えるにも合理的理由(新事実の判明、事情変更)があれば許されます。問題は、相手を信頼させておいて裏切るような矛盾挙動です(禁反言、民訴 2 条の信義則の一適用)。業界裏話ヒント:裁判で過去の自分の主張は『自白』や『弁論の全趣旨』として後々まで効いてきます。経験ある代理人ほど、最初の準備書面を将来の展開まで読んで慎重に組み立てます。出だしの一文が、最後まで足かせになる

Q · 相手がわざと裁判を引き延ばしているんですが、止められますか?

止める手段があります。裁判所には公正かつ迅速な進行に努める責務があり(民訴 2 条)、当事者の引き延ばしは信義則違反です。時機に後れた攻撃防御方法は却下を申し立てられます(民訴 157 条)。業界裏話ヒント:引き延ばし戦術には、裁判所に『審理の計画』(民訴 147 条の 3)を促す上申書が効きます。裁判官も訴訟指揮の責任を問われたくないので、明確に問題提起すると進行が一気に引き締まることが多い

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第三条(最高裁判所規則)

この法律に定めるもののほか、民事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

民事訴訟法 3 条は、本法に定めのない民事訴訟手続の必要事項を、憲法 77 条に基づく最高裁判所規則(民事訴訟規則)に委ねることを定める規定である。

よくある質問

Q · 「最高裁判所規則」って、法律と何が違うんですか。国会が作ってないなら無視していいんですか。

無視できない。憲法 77 条が最高裁判所に規則制定権を与えており、訴訟手続の細目を定める正式な法規範だ。法律(国会)が大枠を、規則(最高裁)が具体的な運用を担うという役割分担になっている。業界裏話ヒント:実務で日々問題になる準備書面の提出期限、訴状の書式、証拠の出し方の多くは、民事訴訟法ではなく民事訴訟規則に書いてある。弁護士が手続を調べるときは、法律と規則を必ずセットで見る。法律だけを見て「規定がない」と判断すると、規則側の落とし穴を踏む。

Q · 本人訴訟をやるとき、民事訴訟法だけ読んでおけば足りますか。

足りない。訴状や準備書面の書式、添付書類、提出方法といった実務ルールは民事訴訟規則の側にあり、本条がその委任の根拠になっている。業界裏話ヒント:裁判所のウェブサイトには、規則に沿ったひな形と記載例が公開されている。本人訴訟で前に進む人は、法律の理屈を語るより先に、このひな形と規則の書式要件を正確に守る。形式不備で補正を命じられると、それだけで期日が延び、時間と気力を余計に削られる。

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第二章
第一節
第三条の二(被告の住所等による管轄権)

裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

裁判所は、大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、前項の規定にかかわらず、管轄権を有する。

裁判所は、法人その他の社団又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき、事務所若しくは営業所がない場合又はその所在地が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有する。

民事訴訟法 3 条の 2 は、被告の住所が日本国内にあるとき、または法人の主たる事務所・営業所が日本国内にあるときに、日本の裁判所が国際裁判管轄を有すると定める一般管轄の規定である。

よくある質問

Q · 海外の通販サイトで買った商品が壊れていました。相手は外国の会社ですが、日本の裁判所で訴えられますか?

相手が日本に住所も事務所も持たない純然たる外国企業なら、3条の2だけでは日本の管轄は生まれません。ただし消費者として事業者を訴える場合、3条の4第1項で「契約時または提訴時にあなたの住所が日本にあれば日本で訴えられる」という消費者保護の特則があります。業界裏話ヒント:多くの人が「外国企業は日本で訴えられない」と思い込みますが、消費者契約には住所地で戦える別ルートが用意されている。まず自分が消費者の立場かどうかを確認するのが分かれ道

Q · 相手の会社の本社は海外ですが、日本にも支店があります。日本で訴えられますか?

訴えられます。3条の2第3項は、主たる事務所・営業所が日本にあれば管轄を認め、加えて3条の3第4号は日本にある事務所・営業所の業務に関する訴えなら、その業務に関連する限り日本の管轄を認めます。業界裏話ヒント:日本の小さな支店一つでも管轄の足場になりますが、本社が海外で証拠も証人も国外という場合、3条の9の『特別の事情』で却下されるリスクが残る。支店の存在だけで安心せず、審理の重心が日本にあるかも見ておく

Q · 日本で訴えて勝っても、相手が外国にいると本当に取り立てられるんですか?

管轄の有無と執行できるかは別問題です。日本の判決を外国で執行するには、その国が日本の判決を承認・執行してくれる制度を持っているかに左右されます。業界裏話ヒント:実務では『日本に相手の財産があるか』を提訴前に確認するのが鉄則。日本国内に預金や不動産があれば日本の判決でそのまま差押えできるが、財産が全部海外だと、勝訴判決が紙切れになることもある。管轄を取りに行く前に回収の絵を描く

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第三条の三(契約上の債務に関する訴え等の管轄権)

次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。

民事訴訟法 3 条の 3 は、契約の履行地や被告の財産所在地など 13 の管轄原因を列挙し、その一つが日本にあれば外国の相手にも日本の裁判所に提訴できると定める。

よくある質問

Q · 契約書に何も書いていなくても、海外の相手を日本で訴えられますか?

可能な場合があります。管轄合意(3条の7)がなくても、債務の履行地が日本(1号)、相手の財産が日本にある(3号)、不法行為の結果が日本で生じた(8号)など、3条の3の13号のいずれかに当てはまれば日本の裁判所に管轄権が生じます。業界裏話ヒント:契約書が無言でも、報酬の振込先が日本の口座なら『義務履行地は日本』と構成できる余地があります。取引記録の中に日本との接点を一つでも見つけられるかが、弁護士の腕の見せ所です

Q · 日本の裁判所が管轄を認めても、結局却下されることがあるって本当ですか?

本当です。3条の3のどれかに当てはまって入口を通っても、3条の9の『特別の事情』により訴えが却下されることがあります。証拠や証人が外国にある、被告の応訴負担が過大、といった事情が考慮されます。業界裏話ヒント:原告側は提訴の段階で、なぜ日本での審理が公平かを補強する証拠(日本国内の被害、日本での履行実態)を意識的に積んでおくと、この却下リスクを下げられます。管轄は『立てて終わり』ではなく『守り切る』もの

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第三条の四(消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権)

消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。以下同じ。)と事業者(法人その他の社団又は財団及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、前条の規定は、適用しない。

民事訴訟法 3 条の 4 は、消費者の住所または労働者の労務提供地が日本にあれば、海外企業相手でも日本の裁判所に訴えられると定める。ただし事業者側からの提訴には拡張管轄が及ばない。

よくある質問

Q · 海外のサブスクに勝手に課金され続けています。アメリカの会社ですが、日本で訴えられますか?

訴えられます。あなたが個人消費者で、訴え提起時または契約締結時に日本に住所があれば、民訴 3条の4 第 1 項で日本の裁判所に提訴できます。利用規約に外国裁判所の専属管轄が書かれていても、消費者契約については 3条の7 がその合意を制限します。業界裏話ヒント:少額のサブスク被害は弁護士費用が割に合わないことが多いので、まず消費生活センター(電話 188)と、決済ルート(クレジットカード会社のチャージバック)を使う方が早い。裁判は最後の手段で、まず支払いを止めるのが実務の定石です

Q · 外資系企業でフルリモート、日本の自宅で働いていました。突然クビになったら、どこで争うんですか?

労務の提供地が日本国内(あなたの自宅)であれば、民訴 3条の4 第 2 項で日本の裁判所に訴えられます。雇用契約に「準拠法・管轄は米国」と書いてあっても、個別労働関係の紛争には労働者保護の例外が働きます。業界裏話ヒント:在宅勤務の労務提供地は「自宅の所在地」と解されるのが一般的ですが、契約書に勤務地を海外と明記されているとそこが争点になります。雇用契約書の「勤務地」欄を今すぐ確認し、日本の自宅で働いていた証拠(勤怠ログ、VPN 接続記録)を保存しておくこと

Q · 事業者の側です。海外の客から日本で訴えられました。応じるしかないですか?

必ずしも応じる必要はありません。相手が本当に「消費者」か(事業のための契約なら対象外)、提訴時・締結時に日本に住所があったかを争えます。さらに民訴 3条の9 の「特別の事情」(証拠や証人が海外に集中、応訴が著しく不公平など)を主張すれば、訴えが却下される余地があります。業界裏話ヒント:国際裁判管轄は「管轄があること」と「特別の事情で却下されること」が別レイヤーです。管轄を認めつつ 3条の9 で却下を狙う二段構えが実務の常套で、最初の答弁書でこの主張を落とすと後から立て直しにくい

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第三条の五(管轄権の専属)

会社法第七編第二章に規定する訴え(同章第四節及び第六節に規定するものを除く。)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第六章第二節に規定する訴えその他これらの法令以外の日本の法令により設立された社団又は財団に関する訴えでこれらに準ずるものの管轄権は、日本の裁判所に専属する。

登記又は登録に関する訴えの管轄権は、登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に専属する。

知的財産権(知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)第二条第二項に規定する知的財産権をいう。)のうち設定の登録により発生するものの存否又は効力に関する訴えの管轄権は、その登録が日本においてされたものであるときは、日本の裁判所に専属する。

民事訴訟法 3 条の 5 は、会社の組織・日本国内の登記登録・日本登録知財の効力に関する訴えを日本の裁判所の専属管轄とし、外国裁判所を選ぶ合意では覆せないと定める。

よくある質問

Q · 契約書に「海外の裁判所で争う」と書いてサインしたのに、それが効かないことがあるんですか?

あります。会社の組織に関する訴え、日本での登記・登録に関する訴え、日本登録の特許など登録型知財の効力を争う訴えは、民事訴訟法 3条の5 で日本の裁判所の専属とされ、3条の10 により合意管轄(3条の7)が適用されません。業界裏話ヒント:英文契約のフォーラム条項は万能だと思われがちですが、この三領域だけは別格です。M&A や合弁の契約レビューで弁護士が真っ先に確認するのがここで、外国専属と書いてあっても日本の専属に当たる訴えは引き戻されます

Q · 外国で特許無効の裁判を起こされて負けたら、日本でもその判決に従う必要がありますか?

原則ありません。日本で登録された特許の効力を争う訴えは日本の裁判所の専属(3条の5 第3項)なので、外国でその点を判断した判決は、間接管轄を欠くものとして日本では承認・執行されません(民事訴訟法 118条1号)。業界裏話ヒント:だからこそ、相手が外国で特許無効を勝ち取っても、日本国内のあなたの特許権は揺らぎません。逆に言えば、日本の特許を本当に潰したい相手は日本で争うしかなく、戦場を日本に限定できることが権利者側の大きな盾になります

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第三条の六(併合請求における管轄権)

一の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当該一の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができる。

ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。

民事訴訟法3条の6は、複数請求の一部のみ日本に管轄権がある場合でも、各請求に密接な関連があれば訴え全体を日本で提起できると定める。複数当事者には38条前段の要件が課される。

よくある質問

Q · 海外の会社に対して、契約違反の損害賠償と貸金の返還を、日本でまとめて訴えられますか?

片方の請求に日本の管轄権があり、二つの請求に密接な関連があれば、3条の6で一本化できます。ただし全く別個の貸金などは関連性を否定されることがあります。業界裏話ヒント:実務では主軸となる請求を日本の管轄が固い類型(被告の事業所所在地など、3条の2・3条の3)に置き、そこに関連請求を抱き合わせる順序で訴状を組む。入口の請求選びが、併合の成否を静かに決めている

Q · 被告が海外の会社と日本の会社、二社いる場合もまとめられますか?

複数被告の場合は3条の6ただし書により、38条前段の共同訴訟の要件(権利義務が共通、または同一の事実上もしくは法律上の原因に基づく)を満たす必要があります。単なる関連では足りません。業界裏話ヒント:日本法人をアンカーにして海外法人を引き込む手法は有効だが、両者の請求が同一原因といえる構成を作れるかが勝負。形だけ日本法人を被告に加える戦術は、関連性なしと見抜かれて崩れる

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第三条の七(管轄権に関する合意)

当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。

前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができない。

将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。

消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。

将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。

労働契約の終了の時にされた合意であって、その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業主が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、労働者が当該合意を援用したとき。

民事訴訟法 3 条の 7 は、当事者が書面または電磁的記録で、いずれの国の裁判所に訴えを提起できるかを合意できると定める。消費者契約と労働紛争では弱者保護の特則がある。

よくある質問

Q · 海外アプリの規約に『米国の裁判所が専属管轄』とあったら、トラブっても米国まで行って訴えるしかないんですか?

あなたが個人の消費者として使っているなら、3条の7第5項により、契約時に住んでいた国(日本)の裁判所で訴える権利は原則として奪われません。専属合意があっても、消費者には日本で争う選択肢が法律上残されています。業界裏話ヒント:海外事業者が日本で勝訴判決を執行するには民訴118条の外国判決承認のハードルがあり、相手も日本での回収困難を知っている。だから『日本で争う』と通告するだけで、相手の交渉姿勢が現実的になることが多い

Q · 外資系を辞めたあと、契約書に『本国の裁判所で』と書いてあっても、日本で残業代を請求できますか?

できる可能性が高いです。3条の7第6項は、労働契約の終了時にされた合意で、その時の労務提供地(日本で働いていたなら日本)の裁判所に訴えられる旨のものに限って効力を認めます。つまり退職時に日本勤務なら、日本の裁判所で争う道が守られます。業界裏話ヒント:入社時に署名した英文雇用契約の管轄条項は、6項の『終了時の合意』ではないため、労働者を一方的に縛る効力は弱い。入社時の契約書に怯える必要はなく、退職時点の勤務地が鍵になる

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第三条の八(応訴による管轄権)

被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。

民事訴訟法 3 条の 8 は、被告が管轄を争わずに本案について弁論をすると、日本の裁判所に応訴管轄が生じると定める。中身に反論する前に管轄を争わなければ、後から争えなくなる。

よくある質問

Q · 海外の会社を日本で訴えたいんですが、相手が日本に何も持っていなくても可能ですか?

管轄合意や、3 条の 2 以下の管轄原因(契約債務の履行地が日本、不法行為地が日本など)があれば可能です。それらがなくても、相手が日本の裁判所で管轄を争わずに本案に応じれば、3 条の 8 の応訴管轄で日本の裁判所に管轄権が生まれます。業界裏話ヒント:実務では、相手の代理人が外国弁護士だと国際裁判管轄のルールに不慣れで、うっかり本案から反論してくることがある。原告側はそれを待つだけで管轄を固められる場合がある。だからこそ訴状送達後の相手の第一手を黙って観察する価値がある

Q · 日本で訴えられたら、出廷したらもう負けですか?管轄を争うために何を出すべき?

出廷そのものでは負けません。応訴管轄が成立するのは『本案について弁論をした』場合であり、管轄を争うための出廷・主張は本案の弁論にあたりません(3 条の 8)。だから出廷して、まず『日本に管轄権がない』と述べることが正解です。業界裏話ヒント:危険なのは、答弁書で管轄に触れず、いきなり『請求には理由がない』と中身を書いてしまうこと。これが本案の弁論とみなされて管轄を失う典型例。答弁書は必ず管轄の抗弁を先頭に置き、本案は予備的にとどめる、この順序を弁護士に確認する

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第三条の九(特別の事情による訴えの却下)

裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く。)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部又は一部を却下することができる。

民事訴訟法 3 条の 9 は、日本に国際裁判管轄が認められても、証拠の所在や被告負担などの特別の事情があれば裁判所が訴えを却下できると定める。専属的合意管轄には適用されない。

よくある質問

Q · 日本の裁判所に管轄があると確認できたのに、なぜ却下されることがあるんですか?

管轄の有無と、その管轄を実際に行使するかは別問題だからです。民訴 3 条の 2 から 3 条の 8 で管轄が認められても、本条が、日本で審理すると当事者の衡平を害したり適正迅速な審理を妨げる特別の事情があれば却下できると定めています。業界裏話ヒント:本条はもともと最判平成 9.11.11 が築いた判例法理を 2011 年改正で条文化したものです。だから「条文に管轄ありと書いてあるから安全」ではなく、裁判官が証拠の所在や被告負担を総合衡量して最後に却下できる、という二段構えを前提に戦略を組む弁護士が勝つ

Q · 契約書に日本の裁判所を管轄と書いておけば、本条で却下される心配はないですよね?

それは専属的かどうかで結論が分かれます。本条は、日本の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の専属的合意に基づく訴えには適用されません。逆に、単に「日本の裁判所を管轄とする」程度の非専属的な書き方だと、本条による却下の余地が残ります。業界裏話ヒント:実務では英文契約の jurisdiction 条項が exclusive(専属的)か non-exclusive(非専属的)かを必ず確認します。この一語の違いが本条という抜け穴の有無を決める。テンプレを流用するときに最も見落とされ、最も高くつくのがこの点です(最新の改正状況をご確認ください)

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第三条の十(管轄権が専属する場合の適用除外)

第三条の二から第三条の四まで及び第三条の六から前条までの規定は、訴えについて法令に日本の裁判所の管轄権の専属に関する定めがある場合には、適用しない。

民事訴訟法 3 条の 10 は、日本の裁判所の専属管轄が法令で定められた事項について、管轄の合意や応訴管轄など柔軟な国際裁判管轄ルールの適用を一括して除外する規定である。

よくある質問

Q · 海外の会社と「全部ロンドンで裁判」って契約したのに、日本で裁判になるってどういうことですか?

契約の中身が日本にある不動産の登記や、日本で設立した会社の組織、日本で登録された特許権の有効性に関わると、それは日本の専属管轄事項(民訴 3 条の 5)です。専属事項については、3 条の 10 が管轄合意のルール(3 条の 7)の適用を除外するので、ロンドン合意はその部分で効きません。業界裏話ヒント:渉外弁護士は契約書を読むとき、フォーラム条項より先に『この取引の対象が専属管轄に触れるか』を見ます。条項そのものより、対象事項の性質が管轄を決めるからです

Q · 相手が日本の裁判所で争ってもいいと言えば、専属でも日本で裁判できますよね?

できません。通常の管轄なら被告が異議なく本案で争えば応訴管轄(民訴 3 条の 8)が生じますが、3 条の 10 は専属管轄事項について応訴管轄の適用も除外します。当事者双方が合意しても、専属の枠は動かないということです。業界裏話ヒント:実務では『当事者が両方とも日本でいいと言っているのだから日本で』と思い込んで手続を進め、後で管轄が否定されて全部やり直しになる事故があります。専属事項は当事者の意思では動かせない、と最初に肝に銘じるかどうかで結果が分かれます

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第三条の十一(職権証拠調べ)

裁判所は、日本の裁判所の管轄権に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。

民事訴訟法 3条の11 は、日本の裁判所の管轄権に関する事項について裁判所が職権で証拠調べをできると定める。国際裁判管轄は弁論主義の例外として職権探知に服する。

よくある質問

Q · 海外の会社を日本で訴えたいんですが、できますか?

相手の住所・主たる事務所が日本にあれば原則できますが(民事訴訟法 3条の2)、なくても契約の履行地が日本だったり、相手が日本に向けて事業活動をしていれば管轄が認められる場合があります(3条の3、3条の4)。裁判官はこの点を職権で調べます(3条の11)。業界裏話ヒント:相手が日本語のサイトで日本の消費者向けに販売していた、という事実が管轄を基礎づける決め手になることがある。トラブル前にサイトのスクショや日本向け広告を保存しておくと、後で管轄を立証する武器になる

Q · 日本で訴えられたけど、海外で裁判してほしい。断れますか?

第一回口頭弁論期日で本案について話す前に管轄違いを主張すれば争えます。ただし先に本案について弁論すると応訴管轄(民事訴訟法 3条の8)が成立し、日本の管轄を認めたことになります。さらに管轄があっても特別の事情があれば却下されうる(3条の9)。業界裏話ヒント:弁護士でも、ついうっかり最初の期日で本案の反論をして応訴管轄を作ってしまう事故がある。管轄を争う方針なら、最初の書面で「管轄を争う、本案は留保する」と明記させるのが鉄則

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第三条の十二(管轄権の標準時)

日本の裁判所の管轄権は、訴えの提起の時を標準として定める。

民事訴訟法 3 条の 12 は、日本の裁判所の国際裁判管轄を訴えの提起の時を基準に判定すると定める。提訴後に被告が海外へ移転しても、いったん成立した管轄は失われない。

よくある質問

Q · 訴えた後に相手が日本から完全撤退したら、裁判は無駄になりますか?

無駄になりません。民訴 3 条の 12 により管轄権は訴え提起の時で固定されるので、提訴時に日本の管轄根拠があれば、その後の撤退・移転は管轄を覆しません。審理はそのまま進みます。業界裏話ヒント:実務では相手の撤退の噂を聞いた段階で提訴を前倒しすることがある。根拠が残っているうちに訴状を出せば土俵を確保できるからで、このタイミング判断は弁護士が表立って急かさなくても内心で計算している

Q · 国際裁判管轄って、国内の管轄とは別の話なんですか?

別の段階の話です。まず日本の裁判所が扱えるか(国際裁判管轄、民訴 3 条の 2 以下)を判定し、その上でどの地方裁判所か(国内土地管轄、民訴 4 条以下)を決めます。標準時の考え方は国内管轄の 15 条と平行で、どちらも提訴時で固定します。業界裏話ヒント:国際裁判管轄が認められても、特別の事情があると訴えが却下されることがある(民訴 3 条の 9)。証拠や証人が全部海外にあるようなケースでは、管轄の根拠があっても却下されうるので、提訴前にこの落とし穴を確認しておく

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第二節
第四条(普通裁判籍による管轄)

訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。

大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。

法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

民事訴訟法 4 条は、訴えを原則として被告の住所地を管轄する裁判所に提起すべきと定める。法人は主たる事務所、外国法人は日本の事務所が基準となる。

よくある質問

Q · 相手が遠くに住んでいると、必ずその住所地まで行かないとダメなんですか?

金銭の請求なら、行かずに済むことが多い。4 条は被告住所地が原則ですが、5 条 1 号は義務履行地での提訴を認めており、金銭債務は民法 484 条で持参債務、つまり債権者であるあなたの住所が履行地になります。結果として自宅近くで訴えられます。業界裏話ヒント:実務では金銭請求のほぼすべてが、この義務履行地ルートで原告の地元に持ち込まれている。4 条の原則だけ読んで遠方まで出向こうとするのは、抜け道を知らない人の動きです

Q · 裁判所に毎回出向くのが無理なんですが、どうにかなりませんか?

近年の民事訴訟の IT 化で、ウェブ会議による期日参加やオンラインでの書面提出が広がっています。遠方の裁判所が管轄でも、出張せずに対応できる余地が出てきました。業界裏話ヒント:それでも管轄が著しく不便なら、17 条の移送申立で自分に近い裁判所へ移してもらう手がある。さらに少額訴訟や支払督促(簡易裁判所の手続)なら出廷負担そのものが軽い。「遠いから諦める」前に、手続の種類を変える発想を持つこと(最新の改正状況をご確認ください)

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第五条(財産権上の訴え等についての管轄)

次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。

民事訴訟法 5 条は、被告住所地(4 条)に加え、義務履行地・不法行為地・不動産所在地など 15 種類の特別裁判籍を列挙し、原告が関連地の裁判所にも提訴できると定める。

よくある質問

Q · 相手が遠くに住んでても、自分の近くの裁判所で訴えられるって本当ですか?

お金の支払いを求める訴えなら、本当のことが多いです。代金・貸金・返金・損害賠償などは財産権上の訴えで、5 条 1 号により義務履行地の裁判所に出せます。金銭債務は民法 484 条で原則『債権者の住所地で支払う』持参債務なので、請求する側であるあなたの住所地が義務履行地になります。業界裏話ヒント:弁護士はこの『義務履行地ルール』を交渉の段階から武器に使います。遠方の相手に『当方の地元で提訴する』と伝えるだけで、相手は出廷の手間と費用を計算し、強気から和解志向へ転じることが多い。場所は単なる手続ではなく、心理的なてこです

Q · 契約書に『紛争は東京地裁』と書いてあったら、地元では訴えられないんですか?

有効な管轄合意(11 条)があれば、原則としてその裁判所に縛られ、5 条の便利な選択肢は使えなくなります。ただし合意は書面(電磁的記録を含む)が要件で、消費者契約の場合は消費者契約法 10 条で無効になる余地があります。業界裏話ヒント:テンプレ契約書の管轄条項は相手が自社所在地を入れていることが多く、交渉の余地があります。契約前に『義務履行地(当社所在地)も管轄に含める』と一行交渉するだけで、紛争時に地元で戦える権利を確保できる。弁護士が契約書で真っ先に見るのは、実はこの管轄条項です

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第六条(特許権等に関する訴え等の管轄)

特許権、実用新案権、回路配置利用権又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)について、前二条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。

東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所東京地方裁判所

大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所大阪地方裁判所

特許権等に関する訴えについて、前二条の規定により前項各号に掲げる裁判所の管轄区域内に所在する簡易裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。

第一項第二号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴は、東京高等裁判所の管轄に専属する。

ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴については、この限りでない。

民事訴訟法 6 条は、特許・実用新案・回路配置・プログラムの著作権に関する訴えの第一審を、東京地裁または大阪地裁の専属管轄とする集中管轄を定める。当事者の合意では動かせない。

よくある質問

Q · プログラムの著作権って、普通の著作権と裁判所が違うんですか?

違います。プログラムの著作物についての著作者の権利は 6 条で東京地裁・大阪地裁の専属管轄ですが、小説や音楽や写真などプログラム以外の一般著作権は 6 条の 2 の対象で、地元の裁判所と東京・大阪のどちらにも訴えられます。業界裏話ヒント:同じ「著作権侵害」でも、争うのがソースコードかデザインかで提訴できる場所がまるごと変わる。訴状を書く前に、争点が本当にプログラムの著作物性なのか、それとも画面デザインなどの別著作物なのかを切り分けると、地元提訴の道が残る場合がある

Q · 地元の裁判所で知財の裁判をやりたいんですが、相手と合意すればできますか?

技術型知財(特許・実用新案・回路配置・プログラムの著作権)については、合意しても無理です。6 条は専属管轄なので 11 条の管轄合意では動かせず、地元に訴えても 16 条で東京か大阪へ移送されます。業界裏話ヒント:契約書のテンプレに「紛争は当社所在地の地裁を専属管轄とする」と書いてあっても、技術型知財の訴えにはその条項は効きません。逆に商標や一般著作権なら管轄合意が生きるので、知財条項を入れるときは対象の権利ごとに効力が違うことを意識すると無駄な条項を書かずに済む

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第六条の二(意匠権等に関する訴えの管轄)

意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く。)、出版権、著作隣接権若しくは育成者権に関する訴え又は不正競争(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第一項に規定する不正競争又は家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律(令和二年法律第二十二号)第二条第三項に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴えについて、第四条又は第五条の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。

前条第一項第一号に掲げる裁判所(東京地方裁判所を除く。)東京地方裁判所

前条第一項第二号に掲げる裁判所(大阪地方裁判所を除く。)大阪地方裁判所

民事訴訟法6条の2は、意匠・商標・著作権・不正競争などの知財訴訟について、通常の管轄に加えて東京地裁または大阪地裁にも提訴できる競合管轄を定める。特許の専属管轄とは異なり原告が選べる。

よくある質問

Q · うちは地方の会社なのに、なんで東京地裁で訴えられるんですか?

あなたの会社の所在地が東日本(前条1項1号の管轄区域)なら、原告は4条・5条の通常の裁判所に加えて、6条の2で東京地裁も選べるからです。これは原告に与えられた選択肢で、被告のあなたは原則これに従うことになります。業界裏話ヒント:東京地裁・大阪地裁には知財専門部があり、原告側が専門性を狙って意図的にこちらを選ぶことが多い。応訴する側も、知財専門部の運用に慣れた代理人でないと争点整理のスピードについていけず、実質的に不利になる

Q · 特許とデザインで、訴える裁判所のルールが違うって本当ですか?

本当です。特許権・実用新案権・回路配置利用権・プログラム著作権は6条で東京地裁か大阪地裁の専属管轄、つまりそこ『でしか』訴えられません。一方、意匠・商標・著作権(プログラム以外)・不正競争は6条の2で東京/大阪に『も』訴えられる競合管轄で、地元でも戦えます。業界裏話ヒント:この『専属か競合か』の線引きを知らずに、デザインや商標の事件をわざわざ遠い東京まで持っていって余計なコストを払う当事者がいる。逆に専門性が欲しいなら、あえて競合管轄を使って東京/大阪を選ぶ。違いを知る代理人とそうでない代理人で初動が分かれる

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第七条(併合請求における管轄)

一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。

ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。

民事訴訟法 7 条は、一つの訴えで複数の請求をする場合、いずれか一つの請求に管轄権を持つ裁判所へ全請求をまとめて提起できると定める。数人が関わる訴えは第 38 条前段の関係が必要。

よくある質問

Q · 同じ相手に二つの貸金があるんですが、別々に裁判するんですか?

いいえ、被告が同一人なら民訴 7 条で一つの裁判所にまとめて訴えられます(客観的併合)。どちらか一方の請求に管轄が立つ裁判所へ、両方を一緒に提起できる。業界裏話ヒント:金銭債権は義務履行地(民法 484 条、持参債務なら原則として債権者の住所地)に特別裁判籍が立つ(民訴 5 条 1 号)。これを軸にすれば、複数債権をまとめて自分の地元へ持ち込める。弁護士は訴状を書く前にこの組み立てを設計するが、本人訴訟だとバラバラに出して何度も遠方へ出張してしまう

Q · 相手が遠くにいると、こっちが出向いて裁判するしかないんですか?

必ずしもそうではありません。金銭の支払いを求める訴えは義務履行地でも提起でき(民訴 5 条 1 号)、持参債務ならあなたの住所地が義務履行地になります。別の請求があれば 7 条で合流させ、まとめて地元で戦えます。業界裏話ヒント:契約書に管轄合意(民訴 11 条)があるとこの組み立ては封じられる。だから取引相手は契約段階で「自社所在地を専属管轄」と入れてくる。提訴を考えるなら、まず契約書の管轄条項を確認するのが順番だ

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第八条(訴訟の目的の価額の算定)

裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。

前項の価額を算定することができないとき、又は極めて困難であるときは、その価額は百四十万円を超えるものとみなす。

民事訴訟法 8 条は、訴額を訴えで主張する利益で算定すると定める。140 万円以下なら簡易裁判所、超えれば地方裁判所が管轄し、算定困難な請求は 140 万円超とみなされる。

よくある質問

Q · 請求額をちょうど 140 万円にしたら、簡易裁判所と地方裁判所どっちですか?

簡易裁判所です。裁判所法 33 条は「140 万円を超えない」請求を簡裁の管轄とするので、140 万円ちょうどは簡裁、140 万 1 円から地裁になります。業界裏話ヒント:簡裁は手続が簡易で早く、訴額 60 万円以下なら 1 回の期日で終わる少額訴訟も使えます。あえて請求額を抑えて簡裁を選ぶ実務家もいる

Q · 慰謝料を少なめに請求すれば、簡裁で安く早く済むって本当ですか?

本当です。訴額が下がれば印紙代(民事訴訟費用等に関する法律 3 条)も安くなり、140 万円以下なら簡裁、60 万円以下なら少額訴訟も選べます。ただし一部請求は残りを別途請求できるか争いになる点に注意。業界裏話ヒント:弁護士は『回収可能性』と『手続コスト』を天秤にかけ、満額請求より一部請求で早期決着を狙うことがある。全額勝っても取れなければ意味がないからだ

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第九条(併合請求の場合の価額の算定)

一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。

ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。

果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。

民事訴訟法 9 条は、数個の請求を一の訴えでする場合の訴額算定を定める。各請求は原則合算されるが、利益が共通する請求と、果実・損害賠償等の附帯請求は訴額に算入されない。

よくある質問

Q · 遅延損害金も足したら訴額が 140 万円を超えます。絶対に地裁に行かないとダメですか?

いいえ。遅延損害金は「附帯の目的」として訴額に算入されません(民訴 9 条 2 項)。元本が 140 万円以下なら簡易裁判所の管轄(裁判所法 33 条)にとどまれます。業界裏話ヒント:本人訴訟で訴状を書くとき、元本と遅延損害金を一つの金額にまとめて書いてしまう人が多い。これだと訴額が膨らんで見える。元本と附帯請求を欄を分けて明記するだけで、簡裁の管轄と安い印紙代が確保できる

Q · 複数の人にお金を貸していて、まとめて訴えたら印紙代は安くなりますか?

原則は各請求を合算した額が訴額です(民訴 9 条 1 項本文)。別々の貸金は利益が共通しないので、まとめても合算され、印紙代は基本的に変わりません。業界裏話ヒント:但書(1 項但書)が効くのは各請求の利益が共通する場合だけで、単に相手が複数なだけでは合算は避けられない。逆に、まとめると訴額が上がって地裁送りになる場合は、あえて別訴にして各々簡裁で戦う選択肢もある

Q · 印紙代って訴額からどう計算するんですか?

民事訴訟費用等に関する法律の別表で、訴額に応じた手数料額が段階的に決まっています。訴額が上がるほど手数料も上がります。業界裏話ヒント:訴額の算定を誤って印紙が不足していると補正命令が出て、応じないと訴状が却下されます(民訴 137 条)。逆に訴額を実態より高く書いて払い過ぎても、誰も教えてくれない。提訴前に訴額を正確に出すことが、無駄な出費と手続の遅延を両方防ぐ(最新の手数料額はご確認ください)

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第十条(管轄裁判所の指定)

管轄裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときは、その裁判所の直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める。

裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、関係のある裁判所に共通する直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める。

前二項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

民事訴訟法 10 条は、管轄裁判所が法律上または事実上裁判権を行使できないとき、直近上級の裁判所が申立てにより決定で管轄裁判所を指定すると定める。この決定に不服は申し立てられない。

よくある質問

Q · 担当の裁判所がパンクして動かないとき、私の裁判はどうなるんですか?

消えはしません。民訴 10 条 1 項により、その裁判所の一つ上の裁判所(直近上級審)が、あなたの申立てによって代わりの管轄裁判所を指定します。除斥・忌避で裁判官が全員いなくなった、災害で庁舎が使えない、そうした「法律上または事実上裁けない」場合の安全装置です。業界裏話ヒント:この申立ては当事者なら誰でもできますが、実務上は代理人弁護士が動くことがほとんどで、本人申立ての書式は確立していません。早く動くほど審理の空白期間が短くなるので、機能不全に気づいたら待たずに上級審の窓口へ問い合わせるのが得策です。

Q · 指定された裁判所が遠くて不利、後から変えてもらえませんか?

できません。10 条 3 項は、指定決定に対する不服申立てを明確に禁じています。一度決まれば、たとえ遠方でも、その裁判所で審理を受けることになります。業界裏話ヒント:だからこそ勝負は申立ての段階にあります。管轄指定の申立書に「どの裁判所を指定すべきか」の希望と理由を書き込めるので、ここで自分に近い・有利な裁判所を具体的に提案しておく。何も書かずに上級審の裁量に丸投げすると、思わぬ遠方を指定されても覆せません。

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第十条の二(管轄裁判所の特例)

前節の規定により日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。

民事訴訟法 10 条の 2 は、日本に国際裁判管轄がありながら国内の管轄裁判所が定まらないとき、訴えを最高裁判所規則の定める東京地方裁判所の管轄とする補充規定である。

よくある質問

Q · 海外の業者に騙されたんですが、相手が日本にいなくても日本の裁判所で訴えられますか?

国際裁判管轄の要件(民訴 3 条の 2 以下、消費者契約なら 3 条の 4)を満たせば日本で訴えられます。問題はその先で、被告が日本に住所も財産もないと国内のどの裁判所かが決まりません。そこで 10 条の 2 が働き、最高裁規則の定める東京地裁に管轄が集まります。業界裏話ヒント:多くの人は『日本で訴えられるか』までしか調べず、『どこの裁判所か』で詰まる。国際事件は最初から東京地裁を前提に弁護士を探すと、この分野に強い事務所に当たりやすい

Q · なんで東京の裁判所なんですか? 自分は地方に住んでるのに不便です

10 条の 2 は『最高裁判所規則で定める地』とだけ書き、その規則(民事訴訟規則 6 条の 2)が東京都千代田区、つまり東京地裁を指定しているためです。国際事件の処理能力を一点に集約する趣旨です。業界裏話ヒント:原告が日本の消費者の場合、3 条の 4 や 5 条で別の管轄が立つこともあり、必ずしも東京に限られない。10 条の 2 はあくまで『他の規定で決まらないとき』の最後の受け皿。先に他の管轄原因がないか確認すれば、地元で戦える余地が残る

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第十一条(管轄の合意)

当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。

前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

民事訴訟法 11 条は、当事者が第一審に限り書面または電磁的記録で管轄裁判所を合意できると定める。専属管轄の合意があれば他の裁判所に訴えても職権で移送される。

よくある質問

Q · ネットで「同意する」を押した利用規約の管轄条項、本当に縛られるんですか?

原則は縛られます。電磁的記録による合意も民訴 11 条 3 項により書面によるものとみなされます。ただし消費者契約の場合、消費者契約法 10 条で『消費者の利益を一方的に害する条項』として無効になる余地があります。業界裏話ヒント:裁判所は近年、消費者の住所地から極端に遠い裁判所を専属管轄とする約款条項に厳しい目を向けています。『東京地裁を専属管轄』と書かれていても、地方在住の消費者が地元で訴えられる可能性は残る。テンプレだと諦める前に一度弁護士相談を

Q · 契約書に『あらゆる紛争は東京地裁』とだけ書いてあれば、それで管轄は決まりですか?

決まりとは限りません。11 条 2 項は『一定の法律関係に基づく訴え』に関する合意であることを要件にしています。特定の契約から生じる紛争を指していれば有効ですが、当事者間のおよそ一切の紛争を無限定に縛る趣旨だと、効力を争われる余地があります。業界裏話ヒント:実務では管轄条項の文言が雑な契約書ほど、いざ揉めたときに『この合意は特定性を欠く』と突かれる。攻める側なら相手の管轄条項の文言の粗さを最初に点検する価値がある

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第十二条(応訴管轄)

被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。

民事訴訟法 12 条は応訴管轄を定め、被告が管轄違いの抗弁を出さず本案について弁論をすると、その裁判所が管轄権を取得する。専属管轄の事件には及ばない。

よくある質問

Q · 間違った裁判所から訴えられたら、無視していれば裁判は無効になりますか?

なりません。無視すると相手の主張通りの欠席判決が出るうえ、管轄違いを争う機会も失います。出席したうえで、本案に触れる前に管轄違いの抗弁を出すのが正解です(民事訴訟法 12 条、16 条)。業界裏話ヒント:「管轄が違うなら出なくていい」は最も危険な誤解。正しくは「出るが、中身を語る前に場所の違いだけを主張する」。沈黙でも欠席でもなく、順番を守った発言が身を守る

Q · 弁護士に相談する時間がなくて、先に自分で反論を書いてしまいました。もう手遅れですか?

本案について弁論をしたと評価されれば、応訴管轄が成立し管轄違いは争えません(民事訴訟法 12 条)。ただし答弁書に「追って認否する」と留保しただけで、実質的な本案の弁論をしていなければ、まだ争える余地があります。業界裏話ヒント:「本案について弁論」にあたるかは微妙な判断で、形式的に答弁書を出しただけか、実質的に中身を争ったかで結論が分かれる。手遅れに見えても、何をどう陳述したかを弁護士に確認する価値がある

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第十三条(専属管轄の場合の適用除外等)

第四条第一項、第五条、第六条第二項、第六条の二、第七条及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない。

特許権等に関する訴えについて、第七条又は前二条の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には、前項の規定にかかわらず、第七条又は前二条の規定により、その裁判所は、管轄権を有する。

民事訴訟法 13 条は、法令に専属管轄の定めがある訴えでは、普通裁判籍・特別裁判籍・合意管轄・応訴管轄の規定を適用しないと定める。会社や家族に関する訴えが典型である。

よくある質問

Q · 契約書に管轄の合意を書いておけば、どんな裁判でもその裁判所でやれるんですよね?

いいえ、専属管轄が法律で定められた訴えでは効きません。民訴13條が、専属管轄の場合は合意管轄(11條)も応訴管轄(12條)も適用しないと定めているからです。会社の組織に関する訴え(会社法835條)や離婚などの人事訴訟(人事訴訟法4條)が典型です。業界裏話ヒント:弁護士は契約書の管轄条項を見たとき、まず『この種の紛争に法定専属管轄があるか』を確認します。合意の文言を磨く前に、そもそも合意できる土俵かを判定する、この順序を素人は逆にしがちです

Q · 専属管轄の裁判所が遠くて行けない場合、近くの裁判所に移してもらえませんか?

原則として難しいです。任意管轄なら17條で『当事者や証人の負担が大きい』として近くへ移送できますが、専属管轄の事件は20條で移送が原則制限されます。専属管轄は公益的な理由で定められているため、当事者の都合では動かせないのです。業界裏話ヒント:だからこそ会社の本店所在地や、人事訴訟なら住所地が将来の紛争地を事実上決めます。本店登記や住民登録を軽く扱うと、後で遠方の裁判所に通う運命を自分で確定させていることになります(最新の改正状況をご確認ください)

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第十四条(職権証拠調べ)

裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。

民事訴訟法 14 条は、裁判所が管轄に関する事項について職権で証拠調べをできると定める。管轄は職権調査事項であり、当事者の主張がなくても裁判所が自ら調査する。

よくある質問

Q · 管轄が間違ってる気がするんですが、証拠って自分で全部集めないとダメですか?

いいえ。管轄は職権調査事項で、裁判所は当事者の申立てがなくても職権で証拠調べができます(14 条)。本案の事実のように立証責任を全部背負う必要はなく、裁判所が自ら確認する余地があります。業界裏話ヒント:実務では「管轄について職権での証拠調べを求める」と一言申し立てておくと裁判所が動きやすい。黙って完璧な証拠集めに走るより、職権発動を促す方が早い

Q · 両当事者が納得してるなら、多少管轄が違っても進めてもらえますよね?

任意管轄なら応訴管轄(12 条)で固まりますが、専属管轄に反する場合は別です。裁判所が職権で調べ、管轄違いと判断すれば本来の裁判所へ移送します(16 条)。当事者の合意では動かせません。業界裏話ヒント:契約書に「東京地裁を専属管轄」と書いてあっても、それが法定専属管轄を覆すわけではない。合意管轄と法定専属管轄は別物で、後者は職権調査で必ず洗われる

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第十五条(管轄の標準時)

裁判所の管轄は、訴えの提起の時を標準として定める。

民事訴訟法 15 条は、裁判所の管轄を訴えの提起の時を標準として定める。提訴時に管轄が確定すれば、被告が後に転居し又は請求額を減らしても管轄は変わらない(管轄の恒定)。

よくある質問

Q · 訴えたあとに被告が引っ越したら、裁判はやり直しですか?

やり直しにはなりません。民訴 15 条で管轄は提訴時を基準に決まるので、提訴時にその裁判所に管轄があれば、被告がその後どこへ転居しても審理は同じ裁判所で続きます(管轄の恒定)。業界裏話ヒント:逆に言えば、相手が転居を繰り返すタイプなら、先に提訴した者が圧倒的に有利です。住所が不安定な相手ほど、所在をつかんだ瞬間に提訴するのが実務の鉄則。動きが遅いと所在不明で送達自体に苦労する

Q · 訴訟の途中で請求額を減らしたら、簡易裁判所に移されますか?

原則として移されません。管轄は提訴時の請求額を基準に決まるため(民訴 15 条)、提訴時に地裁の管轄(140 万円超)だった事件は、途中で減額しても地裁のまま進みます。業界裏話ヒント:ただし当事者の申立てや裁判所の裁量で移送される場合(民訴 18 条等)はあります。「減額すれば自動的に簡裁」という単純な話ではないので、減額を戦術に使うときは管轄への影響を弁護士に確認するのが安全です

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第十六条(管轄違いの場合の取扱い)

裁判所は、訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。

地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。

ただし、訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合は、この限りでない。

民事訴訟法 16 条は、訴訟が管轄に属しないとき、裁判所が申立て又は職権で管轄裁判所へ移送すると定める。訴えは却下されず、最初の提訴日が維持される。

よくある質問

Q · 裁判所を間違えて訴えたら、移送されるまでにどれくらい時間や費用が無駄になりますか?

移送は決定で行われ、確定すると記録ごと正しい裁判所へ送られます(民訴 22 条で移送先は拘束される)。数週間から数か月の遅れは生じますが、訴え自体は生き続け、提訴日も維持されます。業界裏話ヒント:実務では、明らかな管轄違いでも裁判所が職権で即移送せず、まず原告に意見を求めることが多い。だからこそ訴状段階で管轄原因をきちんと書いておくと、無用な移送の往復を避けられる。慌てて出すときほど、管轄の根拠を一行添えておく価値がある

Q · 相手が移送を申し立ててきたら、こちらは止められないんですか?

止める余地はあります。移送するかどうかは裁判所の判断で、当事者は意見を述べられ、移送の決定にも却下にも即時抗告(民訴 21 条)ができます。専属管轄でない限り、裁判の便宜や当事者の事情も考慮されます。業界裏話ヒント:管轄合意(民訴 11 条)による専属管轄は 16 条 2 項ただし書の例外から外れており、合意があれば地裁の自庁処理にも一定の制約がかかる。契約書の管轄条項一行が、後の移送の攻防を左右する

Q · 簡易裁判所に出したのに、地方裁判所が自分で裁くって言い出すことがあるんですか?

あります。16 条 2 項の自庁処理で、地裁が相当と認めれば、本来簡裁の事件でも自ら審理・裁判できます。争点が複雑な事案で使われます。業界裏話ヒント:自庁処理されると手続が簡裁の簡易さから地裁の本格仕様に変わり、書面や争点整理の負担が増える。少額・簡裁前提で本人訴訟を組んでいた人は、ここで弁護士の要否を再検討することになる

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第十七条(遅滞を避ける等のための移送)

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

民事訴訟法 17 条は、管轄が正しい場合でも、証人の住所や検証物の所在地等を考慮し、著しい遅滞の回避や当事者間の衡平のため、事件を他の管轄裁判所へ移送できると定める。

よくある質問

Q · 管轄違いの移送と、この 17 条の移送って何が違うんですか?

16 条の移送は『訴えた裁判所に管轄がない』ときに正しい裁判所へ送る是正措置で、原則として必ず移送されます。17 条は逆に『管轄は正しいが、その法廷で審理すると著しく遅れる、または当事者間が不公平になる』ときの裁量移送です。業界裏話ヒント:実務では『管轄は合っているから動かせない』と諦める当事者が大半ですが、証人や現場がすべて別の土地に集中している事案では、17 条の申立てが通る余地は意外に広い。管轄の有無と、その法廷の現実的な不便さは、別々に争えると知っておくべきです

Q · 契約書で東京地裁を管轄にすると合意したら、もう福岡には移せないですか?

専属的な合意管轄でも、20 条が移送を制限する『法律で定める専属管轄』とは性質が異なります。証人・検証物がすべて福岡にあるなど 17 条の事情が強ければ、合意があっても移送される可能性は残ります。業界裏話ヒント:合意管轄は当事者の便宜のための定めなので、その当事者本人が『この法廷では公平な審理ができない』と具体的に立証すれば、裁判所は移送に応じうる。契約書の管轄条項を絶対視して交渉を諦めるのは早計で、移送申立てというもう一枚のカードがある(最新の裁判例の動向はご確認ください)

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第十八条(簡易裁判所の裁量移送)

簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。

民事訴訟法 18 条は、簡裁の管轄事件でも相当と認めるときは、申立て又は職権で訴訟の全部又は一部を地方裁判所へ移送できると定める。

よくある質問

Q · 簡裁で訴えられたんですが、こっちから地裁に移してくれって本当に言えるんですか?

言えます。民訴 18 条は『申立てにより』移送できると定めており、原告・被告のどちらからでも申立て可能です。裁判所が『相当と認める』ことが条件で、事件の複雑さや専門性が判断材料になります。業界裏話ヒント:移送が通るかは申立ての時期で大きく変わる。審理が進んでから出すと『今さら移す実益がない』と退けられやすい。本格的な争点整理が始まる前の早い段階で、なぜ簡易手続では足りないかを具体的に書いて出すのが実務のコツ

Q · 地裁に移ったら、また一から裁判をやり直すことになって損しませんか?

やり直しにはなりません。移送前にした手続は移送後も効力を保ち、引き継がれます(民訴 22 条、移送の裁判の拘束力)。提出済みの書面や行った主張が無駄になることはありません。業界裏話ヒント:移送で実際に変わるのは審理の充実度と、控訴・上告のルートです。簡裁スタートだと控訴は地裁・上告は高裁ですが、地裁に移れば控訴は高裁・上告は最高裁になる。上級審まで見据えるなら、この違いは小さくない

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第十九条(必要的移送)

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者の申立て及び相手方の同意があるときは、訴訟の全部又は一部を申立てに係る地方裁判所又は簡易裁判所に移送しなければならない。

ただし、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、又はその申立てが、簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって、被告が本案について弁論をし、若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは、この限りでない。

簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。

ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。

民事訴訟法 19 条は必要的移送を定め、当事者の合意がある場合(1 項)や簡裁の不動産訴訟で被告の申立てがある場合(2 項)、裁判所は事件を他の裁判所へ移送しなければならない。

よくある質問

Q · 簡易裁判所と地方裁判所って、何がそんなに違うんですか?

簡裁は訴額 140 万円以下の比較的小さな事件を簡易・迅速に扱う裁判所です(裁判所法 33 条)。手続が柔軟な反面、複雑な不動産の権利関係をじっくり審理するには向きません。だから 19 条 2 項は不動産訴訟の被告に地裁への引き上げ権を与えています。業界裏話ヒント:簡裁は司法委員が関与したり和解志向が強かったりと、地裁より「ゆるい」審理になりがち。複雑な争点を本気で詰めたい被告には、地裁へ移すこと自体が戦略になる。逆に早期決着狙いなら簡裁に残す判断もある

Q · 移送を申し立てたら、必ず認められるんですか?

19 条は「移送しなければならない」とする必要的移送なので、要件を満たせば裁判所に拒否権はありません。ただし 1 項には但書があり、移送で著しく訴訟手続が遅滞する場合などは例外です。業界裏話ヒント:「必要的」とはいえ、申立てのタイミングを外すと但書で蹴られる。とくに被告が本案について弁論した後の申立ては原則アウト。弁護士は受任直後、まず「移送の窓がまだ開いているか」を確認する。窓が閉じる前に動けるかが、その後の土俵を決める

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第二十条(専属管轄の場合の移送の制限)

前三条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には、適用しない。

特許権等に関する訴えに係る訴訟について、第十七条又は前条第一項の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所に移送すべき場合には、前項の規定にかかわらず、第十七条又は前条第一項の規定を適用する。

民事訴訟法 20 条は、専属管轄の訴訟に移送規定(17〜19 条)を適用しないと定める。ただし 11 条の合意管轄は除外され、特許権等は東京・大阪地裁へ移送される。

よくある質問

Q · 遠くの裁判所に訴えられたんですが、近くの裁判所に移してもらえないんですか?

事件の種類によります。普通の金銭トラブルなら17条・19条で移送を申し立てられますが、会社の組織に関する訴訟(会社法835条)や特許訴訟(民訴6条)のような専属管轄事件は、20条が便宜移送を封じます。業界裏話ヒント:近年はウェブ会議によるオンライン期日が拡大し、遠方でも出張せず参加できる場面が増えた。移送が無理でも、期日のオンライン化を裁判所に求める手はある(最新の運用状況をご確認ください)。

Q · 契約書に『東京地裁を専属管轄とする』と書いてあったら、絶対に動かせないんですか?

法定の専属管轄とは違います。20条のかっこ書きは、当事者の合意による専属的合意管轄(11条)を移送制限の対象から外しており、移送のルール(17条等)が使えます。つまり動かせる余地があります。業界裏話ヒント:契約書の管轄条項が『専属的』か『付加的(専属とは書かれていない)』かで、後の移送の自由度が変わる。付加的合意なら他の法定管轄裁判所にも訴えられる。サインする前にこの一語を確認する人は少ない。

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第二十条の二(特許権等に関する訴え等に係る訴訟の移送)

第六条第一項各号に定める裁判所は、特許権等に関する訴えに係る訴訟が同項の規定によりその管轄に専属する場合においても、当該訴訟において審理すべき専門技術的事項を欠くことその他の事情により著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を第四条、第五条若しくは第十一条の規定によれば管轄権を有すべき地方裁判所又は第十九条第一項の規定によれば移送を受けるべき地方裁判所に移送することができる。

東京高等裁判所は、第六条第三項の控訴が提起された場合において、その控訴審において審理すべき専門技術的事項を欠くことその他の事情により著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を大阪高等裁判所に移送することができる。

民事訴訟法 20 条の 2 は、東京・大阪に集中する特許権等の訴えを、専門技術的事項を欠くなどの事情があるとき、申立てまたは職権で本来の地元の地方裁判所へ移送できると定める規定である。

よくある質問

Q · 特許の裁判って、なんで東京か大阪じゃないとダメなんですか?

特許権・実用新案権などの専門技術が絡む訴えは、判断に高度な技術理解が要るため、東京地裁(東日本管轄)と大阪地裁(西日本管轄)に集中させています(民訴 6 条 1 項)。専門部の裁判官と技術調査官が対応するためです。業界裏話ヒント:この集中対象にはプログラムの著作物も含まれます。つまりソフトウェアの著作権紛争は、自動的に東京・大阪行き。ただし 20 条の 2 で、技術判断が不要なら地元へ戻せる。多くの人はこの逆ルートを知らずに遠方で戦っている

Q · 技術の話じゃなくて契約の話なのに、東京まで行くしかないんですか?

いいえ、20 条の 2 の移送申立てという手があります。争点が契約の有無や金額だけで専門技術的事項を裁く必要がないなら、申立てまたは職権で本来の管轄を持つ地元の地裁へ移送できます。業界裏話ヒント:移送は職権でも可能ですが、裁判所が自発的に動くとは限りません。当事者が『著しい損害又は遅滞』を具体的に主張して申し立てるかどうかで結果が変わる。遠方の当事者は黙って待たず、争点整理に入る前の早期に申し立てるのが鉄則

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第二十一条(即時抗告)

移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。

民事訴訟法 21 条は、移送の決定および移送の申立てを却下した決定に対し即時抗告できると定める。期間は告知の日から一週間の不変期間である。

よくある質問

Q · 裁判所が移送を決めたら、もうその裁判所で裁判するしかないんですか?

いいえ、移送の決定には即時抗告ができます(民訴 21 条)。抗告すれば上級審が移送の当否を審査し直し、その間は移送の効力が確定しません。ただし期間は告知から一週間の不変期間です(民訴 332 条)。業界裏話ヒント:移送先が専属管轄を根拠とする場合(民訴 20 条)は抗告しても覆りにくい。まず争っている管轄が専属か任意かを見極めてから抗告の実益を判断するのが実務の勘どころです

Q · 即時抗告って自分で書けますか? 弁護士に頼まないとダメ?

本人でも抗告状を作成して提出できます。提出先は移送を決めた原裁判所で、そこから上級審へ記録が送られます。一週間以内の提出が絶対条件です(民訴 332 条)。業界裏話ヒント:抗告状の理由は後から補充書で追完できる場合が多い。期限が迫っているなら、まず『即時抗告する』という一枚を期間内に出して権利を確保し、詳しい理由は後日整えて提出する二段構えが使えます

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第二十二条(移送の裁判の拘束力等)

確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する。

移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない。

移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。

民事訴訟法 22 条は、確定した移送の裁判が移送先の裁判所を拘束し、再移送を禁じ、訴訟は初めから移送先に係属していたものとみなすと定める。これにより最初の出訴日が保全される。

よくある質問

Q · 間違えた裁判所に訴えちゃったんですけど、もう一回出し直しですか?

出し直しは不要です。管轄違いの場合、裁判所は訴えを却下せず移送します(民訴 16 条)。そして 22 条 3 項により、訴訟は最初から移送先に係属していたとみなされ、あなたが最初に訴えを出した日が出訴日として生きます。業界裏話ヒント:だからこそ実務では、時効が迫っているとき管轄に多少不安があっても、まず期限内に提起してしまう。却下されるのは管轄違い以外の重大な不備があるときだけで、単なる管轄違いは移送で救われる

Q · 移送が決まった後で、その裁判所がさらに別のところに回すことはできますか?

できません。22 条 2 項が、移送を受けた裁判所が事件をさらに他の裁判所へ移送することを明確に禁じています。これにより、事件が裁判所の間でたらい回しにされ、いつまでも審理が始まらない事態を防いでいます。業界裏話ヒント:ただし移送後に新たな事情(当事者の合意管轄の成立、著しい遅滞など)が生じた場合は、別条文(民訴 17 条等)による移送の余地が議論されることがある。完全に一度きりと思い込まず、移送後の事情変化があれば専門家に確認する価値はある

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第三節
第二十三条(裁判官の除斥)

裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。

ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。

裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。

裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。

裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。

裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。

裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。

裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。

前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。

民事訴訟法 23 条は、裁判官が当事者の近親者である場合や前審の裁判に関与した場合など六つの事由に該当するとき、その裁判官を職務から当然に除斥する規定。裁判所は職権でも除斥の裁判をする。

よくある質問

Q · 担当の裁判官が明らかに相手寄りなんですが、替えてもらえますか?

残念ながら「不利な判断をする」「態度が厳しい」だけでは替えられません。23条の除斥は親族・代理人歴・前審関与など客観的事由に限られ、それ以外で公正を疑うときは24条の忌避になります。業界裏話ヒント:忌避の申立てが認められる確率は極めて低く、ほとんどが却下されます。さらに訴訟引き延ばし目的とみなされると簡易に却下され、心証をかえって悪くする。心証の不満は忌避ではなく、上訴での実体的反論で勝負するのが実務の定石です

Q · 「前審に関与した裁判官は除斥」って、具体的にどういう意味ですか?

不服を申し立てられた前の審級の裁判に関与した裁判官は、上の審級では除斥されるという意味です(23条1項6号)。たとえば第一審の判決をした裁判官が、その控訴審を担当することは許されません。同じ人が二度判断すれば、上訴の意味が失われるからです。業界裏話ヒント:「関与」の範囲は判決の評議に加わったかが基準で、単なる手続の進行に関わっただけでは除斥されない場合があります。前審関与かどうかが争いになると、それ自体が独立した上訴の争点になりうる。気づいたら早期に記録で確認しておくことが効きます

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第二十四条(裁判官の忌避)

裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。

ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

民事訴訟法 24 条は、裁判の公正を妨げる事情があるとき、当事者が裁判官を忌避できると定める。ただし本案の弁論をした後は、原則として忌避権を失う。

よくある質問

Q · 裁判官が明らかに相手の味方をしている気がします。忌避できますか?

「気がする」だけでは難しい。24 条の忌避事由は当事者の主観ではなく、客観的に裁判の公正を妨げる事情が必要です。不利な心証を示された、訴訟指揮が厳しいというだけでは、判例上ほとんど認められません。業界裏話ヒント:実務では民事の忌避はめったに認容されず、多くは却下される。それでも本案弁論の前に申し立てておけば、後の控訴審で「公正を疑う事情があった」と主張する布石になる。認められなくても、記録に残す意味はある

Q · 忌避を申し立てたら、審理ってどうなるんですか。止まるんですか?

原則として、忌避の申立てがあると、その当否が決まるまで訴訟手続は停止します(民訴 26 条)。ただし急速を要する行為はこの限りでなく、停止中に判決はできません。業界裏話ヒント:この停止効果ゆえに忌避は引き延ばし目的で濫用されることがあり、訴訟遅延だけが目的と明らかな申立ては、忌避された裁判官自身が簡易に却下できる(実務・判例)。だから「とりあえず時間稼ぎ」で出すと逆効果。正当な事由の疎明をきちんと添えることが、停止効果を実際に得る条件になる

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第二十五条(除斥又は忌避の裁判)

合議体の構成員である裁判官及び地方裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、決定で、裁判をする。

地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。

裁判官は、その除斥又は忌避についての裁判に関与することができない。

除斥又は忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。

除斥又は忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。

民事訴訟法 25 条は、裁判官の除斥・忌避の申立てを所属裁判所が決定で裁くと定める。地方裁判所では合議体が判断し、対象裁判官は関与できず、却下決定には即時抗告ができる。

よくある質問

Q · 裁判官が明らかに自分に厳しい気がするんですが、交代してもらえますか?

単なる「厳しい印象」では認められない。忌避が通るのは「裁判の公正を妨げるべき事情」(24条1項)、つまり客観的に偏頗のおそれがある場合だ。訴訟指揮が不利に感じるだけでは事由にならない。業界裏話ヒント:実務で忌避が認容される例は極めて稀で、却下が圧倒的多数。それでも申し立てる戦略的意味があるのは、却下されても即時抗告(25条5項)で記録に中立性への疑義を残せるからだ

Q · 忌避を申し立てたら、その裁判官に逆恨みされて不利になりませんか?

その懸念にこそ 25条3項が答える。忌避された裁判官自身は、交代の可否を判断する手続に関与できない。判断するのは別の裁判官で、地裁なら合議体3人(2項)だ。だから「申立てを握りつぶされる」構造にはなっていない。業界裏話ヒント:却下後に同じ裁判官が審理を続ける場合の心証への影響を懸念する声は実務にある。だから申立ては勝てる事由を厳選し、却下時の即時抗告までセットで設計するのがプロの作法だ

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第二十六条(訴訟手続の停止)

除斥又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。

ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

民事訴訟法 26 条は、裁判官の除斥・忌避の申立てがあると、その決定が確定するまで訴訟手続を停止すると定める。ただし急速を要する行為は例外として停止中でも進められる。

よくある質問

Q · 裁判官が明らかに相手寄りなんですが、別の裁判官に代えてもらえますか?

「気に入らない」だけでは無理です。忌避(24 条)が認められるのは、公正な裁判を妨げるおそれを基礎づける客観的事情がある場合だけで、訴訟指揮への不満や不利な判断は原則として理由になりません。業界裏話ヒント:実務で忌避が通る確率は極めて低い。多くのベテラン弁護士は忌避に賭けるより、不公平な訴訟指揮を調書に残して控訴審で争う道を選ぶ。

Q · 忌避を申し立てたら、裁判はどれくらい止まるんですか?

原則として、その申立てへの決定が確定するまで手続全体が止まります(26 条)。ただし但書で「急速を要する行為」は除かれ、放置できない手続は進みます。業界裏話ヒント:時間稼ぎ目的が明らかな忌避は、停止効を生まないまま却下されるのが実務の扱い。裁判所は本気の忌避と引き延ばしの忌避を見抜くので、停止効だけを狙った申立ては逆効果になりやすい。

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第二十七条(裁判所書記官への準用)

この節の規定は、裁判所書記官について準用する。この場合においては、裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。

民事訴訟法 27 条は、裁判官の除斥・忌避規定(23〜26 条)を裁判所書記官に準用し、その裁判は書記官が所属する裁判所が行うと定める。

よくある質問

Q · 書記官って外せるんですか? 外せるのは裁判官だけだと思ってました

外せます。27 条が裁判官の除斥・忌避規定(23 条、24 条)を書記官に準用しているので、相手方との親族関係や事件への利害があれば申し立てられます。判断するのは書記官が所属する裁判所自身です。業界裏話ヒント:書記官の忌避が実際に使われる場面は極めて少なく、弁護士でも一生に数えるほど。だからこそ、明白な利害関係を突いて申し立てると、裁判所側も真剣に対応せざるを得ない。知っている当事者だけが持てる、静かな圧力になる

Q · 書記官を忌避したら、裁判が止まって自分が不利になりませんか?

除斥・忌避の申立てがあると原則として訴訟手続は停止します(26 条準用)。ただし急速を要する行為は例外で進められ、理由を欠く忌避は手続停止なしに簡易却下されることもあります。業界裏話ヒント:相手方が引き延ばし目的で濫用的な忌避を出してくることがある。そのときは「事由を欠く明白な忌避」として却下を求めれば、停止の効果を封じられる。攻めにも守りにも使える両刃だと理解しておくと、振り回されない

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第三章
第一節
第二十八条(原則)

当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。

民事訴訟法 28 条は、当事者能力・訴訟能力・法定代理を、特別の定めがある場合を除き民法その他の法令に従うと定める。能力を欠く者の訴えは法定代理人を立てなければ却下される。

よくある質問

Q · 認知症の親の代わりに、私が親のお金のことで裁判を起こせますか?

あなたが子であっても、勝手に親の名義で訴訟はできません。親に訴訟能力がない場合、家庭裁判所で成年後見人を選任し、その後見人が法定代理人として訴える形になります(民訴 28 条、31 条、民法 838 条以下)。業界裏話ヒント:後見人にあなた自身が就任できるとは限りません。親族間に対立があると、裁判所は第三者の専門職後見人(弁護士・司法書士)を選ぶ傾向が強い。財産紛争を急ぐなら、申立ての段階で後見人候補と紛争方針をすり合わせておく

Q · うちのマンション管理組合、法人になってないけど管理費の滞納者を訴えられますか?

訴えられます。法人でない社団でも、代表者または管理人の定めがあれば団体の名で原告・被告になれます(民訴 28 条が指す特別の定め、29 条)。管理規約・総会議事録・理事長の選任を示せば足ります。業界裏話ヒント:区分所有建物の管理組合は法人化もできますが、未法人でも 29 条で訴訟は可能。わざわざ法人化登記をしなくても訴えられる点を知らず、登記費用と手間をかけてしまう理事が多い

Q · 未成年の子の名前で示談や訴訟をする場合、親が代わりにやれば全部有効ですか?

原則、親権者が法定代理人として行います(民訴 28 条、民法 818 条、824 条)。ただし親と子の利益が対立する場面(親が相手方、または兄弟間の相続争い)では、親は代理できず、特別代理人の選任が必要です(民法 826 条)。業界裏話ヒント:相続で親と未成年の子が共同相続人になるのは利益相反の典型。親が子を代理して遺産分割すると、後でその分割が無効と争われる。特別代理人を立てる一手間が、十年後の紛争を防ぐ

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第二十九条(法人でない社団等の当事者能力)

法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

民事訴訟法 29 条は、代表者または管理人の定めがある法人でない社団・財団に当事者能力を認め、団体の名において訴え・応訴することを可能にする規定である。

よくある質問

Q · 町内会って、本当に裁判の当事者になれるんですか?

なれます。民事訴訟法29条により、代表者の定めがあり団体としての実体を備えた町内会は、その名義で訴え、訴えられます。判例(最判昭和39.10.15)は、組織性、多数決原則、構成員が変わっても続く存続性、財産管理の確立、この4要件を求めます。業界裏話ヒント:要件を満たすかは「規約があるか」だけでなく「総会や会計が実際に機能しているか」の実態で判断される。形だけの規約しかない団体は、当事者能力を否定されて訴え自体が却下されることがある

Q · うちの団体、法人じゃないんですが、団体名義で不動産を持てますか?

口座は「団体名+代表者名」の形で作れることが多いですが、不動産は団体名義で登記できません。権利能力なき社団の財産は構成員全員の総有とされ、登記実務上は代表者個人名義か全員の共有名義になります(判例)。業界裏話ヒント:代表者個人名義で登記すると、その代表者が亡くなったり交代したりするたびに相続や名義変更の紛争リスクが生じる。長く続く団体なら、早めに一般社団法人化して団体名義で登記できる体制にした方が、後の世代が揉めない

Q · 団体が訴訟で負けたら、メンバー個人も支払わされるんですか?

原則として、責任は団体の総有財産に限られ、構成員個人の財産には及びません(判例の確立した立場)。ただし代表者や構成員が個人として連帯保証していたり、個人名義で契約していた場合は別です。業界裏話ヒント:実務では、団体に資力がないと見るや、原告側は「代表者個人の不法行為責任」や「個人としての契約締結」を別途構成して個人を狙ってくる。代表を引き受けるときは、団体としての契約か個人としての契約か、署名欄の肩書きまで意識する

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第三十条(選定当事者)

共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。

訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する。

係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる。

第一項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。

選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。

民事訴訟法 30 条は、共通の利益を持つ多数の者がその中から代表(選定当事者)を選び全員のために訴えられると定める。判決の効力は選定者全員に及ぶ。

よくある質問

Q · 代表に選ばれたら、私が裁判に負けたとき他の人から責任を取れと言われませんか?

選定当事者(代表)は全員のために訴訟を追行する立場で、判決の効力は選定者全員に及びます(民訴115条1項2号)。つまり勝敗は全員の自己責任であり、代表個人が他の選定者に賠償する関係ではありません。業界裏話ヒント:実務では代表と選定者の間で費用分担と方針決定の覚書を事前に交わすのが定石です。誰が弁護士費用をいくら負担し、和解の可否を誰が決めるかを書面化しておかないと、勝った後の分配や負けた後の費用で内紛になります。

Q · 途中で代表のやり方に納得できなくなったら、抜けられますか?

選定者はいつでも選定を取り消し、または選定当事者を変更できます(民訴30条4項)。ただし個別に抜けて自分一人で訴える場合は、それまでの訴訟追行の効果や時効の扱いに注意が要ります。業界裏話ヒント:代表を変更しても訴訟自体は中断せず継続するため、タイミングを誤ると主張の一貫性が崩れます。不満があるなら、抜けるより代表団を複数人にして相互に牽制させる設計を最初から組む方が実務的に強いです。

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第三十一条(未成年者及び成年被後見人の訴訟能力)

未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。

ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。

民事訴訟法 31 条は、未成年者と成年被後見人は法定代理人によらなければ訴訟行為ができないと定める。本人が単独でした行為は原則無効で、裁判所が職権で補正を命じる。

よくある質問

Q · 子どもが勝手にゲームに課金した、親が取り戻せますか?

取り戻せる余地があります。未成年者が親権者の同意なくした契約は取り消せます(民法 5 条 2 項)。ただし返金を裁判で求める場合、訴訟能力のない子ども本人ではなく、親権者が法定代理人として訴えます(民訴 31 条)。業界裏話ヒント:プラットフォーム側は「保護者の管理下にあった」として返金を渋ることが多い。子のアカウントと支払い手段が分離されていたか、課金時の操作状況の証拠を最初に押さえておくと、交渉が一気に有利になる。

Q · 認知症の親に代わって、未払い分を相手に訴えたいのですが?

親に判断能力がなければ、まず家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、成年後見人を選任してもらう必要があります。後見人でなければ本人に代わって訴訟行為はできません(民訴 31 条)。業界裏話ヒント:後見開始の審判は鑑定を含め数か月かかる。緊急に手を打つ必要があれば、特別代理人の選任(民訴 35 条)や保全処分という別ルートもある。時効が迫っているなら、申立てと並行して弁護士に保全策を相談するのが定石。

Q · 18 歳の子は、もう一人で裁判を起こせますか?

起こせます。2022 年 4 月 1 日から成年年齢が 18 歳になり、18 歳・19 歳は未成年者ではなくなりました(民法 4 条)。訴訟能力もあり、法定代理人なしで訴訟行為ができます。業界裏話ヒント:境目に注意。2022 年 4 月 1 日時点で既に 18 歳・19 歳だった人は、その日に一斉に成年となった。子の契約トラブルで「未成年だから取り消せる」と思い込んでいると、実はもう成年で取消しが効かないことがある。

Q · 相手が未成年だと知らずに訴えてしまったら、どうなりますか?

訴え自体が直ちに無効になるわけではありません。裁判所は訴訟能力の欠缺を職権で調べ、法定代理人による追認や補正を促します(民訴 34 条)。補正されれば手続は有効に進みます。業界裏話ヒント:相手が未成年・被後見人だと後で判明すると、それまでの期日が無駄になり時間を大きく失う。提訴前に相手の年齢や後見登記(後見登記制度で確認できる)を当たっておくと、こうした足止めを避けられる。

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第三十二条(被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則)

被保佐人、被補助人(訴訟行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。次項及び第四十条第四項において同じ。)又は後見人その他の法定代理人が相手方の提起した訴え又は上訴について訴訟行為をするには、保佐人若しくは保佐監督人、補助人若しくは補助監督人又は後見監督人の同意その他の授権を要しない。

被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が次に掲げる訴訟行為をするには、特別の授権がなければならない。

訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第四十八条(第五十条第三項及び第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による脱退

控訴、上告又は第三百十八条第一項の申立ての取下げ

第三百六十条(第三百六十七条第二項、第三百七十八条第二項及び第三百八十一条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による異議の取下げ又はその取下げについての同意

民事訴訟法 32 条は、被保佐人らが相手方の訴え・上訴に防御する訴訟行為には授権を要しないが、訴えの取下げ・和解・控訴・上告など処分的行為には特別の授権を要すると定める。

よくある質問

Q · 保佐人がついている家族は、訴えられても自分では何も対応できないんですか?

対応できます。民事訴訟法 32 条 1 項が、相手から起こされた訴えや上訴に対する防御の訴訟行為については、保佐人や保佐監督人の同意は要らないと定めています。答弁、反論、証拠提出は本人が単独でできます。業界裏話ヒント:実務では「保佐が付いている=何もできない」と思い込み、わざわざ同意書を取りに行って、その間に答弁書の提出期限を逃すケースがある。防御は自由、と知っているだけで初動が変わる

Q · 後見人が本人のために結んだ和解、あとから「無効だ」と言われることはありますか?

あり得ます。和解は 32 条 2 項の特別授権事項で、後見監督人がいる場合はその同意その他の授権が必要です。授権を欠いた和解は効力を争われます。業界裏話ヒント:後見監督人が選任されているかどうかで手続が変わる。監督人がいなければ後見人単独で授権できる場面もあるが、財産処分を伴う場合は家庭裁判所の許可(民法 859 条関連の手続)が別途必要になることがある。和解の前に、自分の権限範囲を家裁か弁護士に確認するのが鉄則

Q · なぜ防御は自由なのに、控訴や和解には特別な許可がいるんですか?

防御は攻撃されている本人を守る行為で本人を害さないが、控訴・和解・取下げ・請求の放棄や認諾は本人の権利を手放したり負担を負ったりする処分行為だからです(32 条 2 項各号)。判断能力が不十分な人がこれらを軽率にすると取り返しがつかない。業界裏話ヒント:この非対称は訴訟代理人(弁護士)にも及ぶ。民事訴訟法 55 条 2 項で、弁護士でも取下げ・和解・上告などには本人の特別委任が要る。委任状に「一切の訴訟行為」とあっても、これらは別枠の授権が必要、という落とし穴がある

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第三十三条(外国人の訴訟能力の特則)

外国人は、その本国法によれば訴訟能力を有しない場合であっても、日本法によれば訴訟能力を有すべきときは、訴訟能力者とみなす。

民事訴訟法 33 条は、外国人が本国法では訴訟能力を有しない場合でも、日本法によれば有すべきときは訴訟能力者とみなすと定める。能力を補う方向にのみ働き、奪う方向には働かない。

よくある質問

Q · 取引相手が外国人で若いんですが、訴訟で「うちの国では未成年だから無効」と言われたら、それで終わりですか?

終わりません。原則として人の能力は本国法で決まります(法の適用に関する通則法4条)が、民事訴訟法33条がこれを修正します。本国法で未成年でも、日本法の成人年齢18歳の基準で能力があれば訴訟能力者とみなされ、相手の訴訟行為は有効です。業界裏話ヒント:この後出しの抗弁は一見手強そうですが、33条で日本基準が補充されるため通りません。契約段階で相手の本国の成人年齢をメモしておくだけで、後の能力争いを未然に防げます。

Q · 外国人の私が日本で訴えられました。本国では成人扱いされないんですが、自分で対応していいんですか?

対応して構いません。あなたが本国では未成年でも、日本法で成人なら民事訴訟法33条であなたは訴訟能力者とみなされ、自分一人で訴え、また訴えられます。法定代理人を立てる必要はありません。業界裏話ヒント:逆に本国で成人でも日本基準で未成年というケースには33条は働かず、別の処理になります。自分がどちらのパターンかで対応が180度変わるので、まず両国の成人年齢を確認し、渉外に強い弁護士に整理してもらうのが安全です。

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第三十四条(訴訟能力等を欠く場合の措置等)

訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。

訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。

前二項の規定は、選定当事者が訴訟行為をする場合について準用する。

民事訴訟法 34 条は、訴訟能力・法定代理権・授権を欠くとき、裁判所が期間を定めて補正を命じ、追認により訴訟行為が行為の時にさかのぼって有効になると定める。

よくある質問

Q · 訴訟の途中で『代理権がなかった』と分かったら、それまでの裁判は全部無駄になるんですか?

無駄にはなりません。正当な本人または法定代理人が追認すれば、過去の訴訟行為が行為の時に遡って有効になります(民訴 34 条 2 項)。それまでの主張や証拠調べも生き返ります。業界裏話ヒント:実務では、代理権の連続性に不安がある案件で、念のため正規の代表者から包括的な追認書を先に取っておくことがある。後から相手に突かれても即座に塞げるよう、先回りして穴を埋めておくのがプロの所作

Q · 認知症の親の代わりに、後見人選任を待たずに先に訴えてしまいました。大丈夫ですか?

救済の道があります。後見人が選任された後にその後見人が追認すれば、訴え提起は最初の日に遡って有効になり、時効の完成猶予も提訴日で確定します(民訴 34 条 2 項)。業界裏話ヒント:成年後見の申立てから選任まで数か月かかることがあり、その間に時効が完成しそうな緊急案件では、まず本人名義で訴えを起こして時効を止め、後で追認するという順序が現実的な選択肢になる。順番を知っているかどうかで結果が変わる

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第三十五条(特別代理人)

法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。

裁判所は、いつでも特別代理人を改任することができる。

特別代理人が訴訟行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。

民事訴訟法 35 条は、相手に訴訟能力がなく法定代理人もいないとき、遅滞による損害のおそれを疎明して受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てられると定める。

よくある質問

Q · 相手がボケてしまって話も通じないんですが、訴えること自体できるんですか?

できます。相手に訴訟能力がなくても(民訴 31 条)、法定代理人がいないか動けないなら、あなたが裁判所に特別代理人の選任を申し立てられます(35 条)。証明ではなく疎明で足りるので、後見開始の審判確定を待つより速い。業界裏話ヒント:特別代理人には中立の弁護士が選ばれることが多く、家族より冷静に損得で判断するため、かえって和解がまとまりやすい。相手に窓口がいないことは、必ずしも不利ではない

Q · 選ばれた特別代理人と和解したのに、あとで「無効だ」と言われました。なぜ?

特別代理人が訴えの取下げ、和解、請求の放棄や認諾をするには、後見人と同じ特別の授権が必要だからです(35 条 3 項、32 条 2 項)。授権のないまま結んだ和解は効力を否定されることがある。業界裏話ヒント:和解の前に、特別代理人がその和解について特別授権を得ているかを必ず書面で確認する。ここを飛ばすと、和解調書が後で覆り、訴訟が振り出しに戻る。弁護士でも見落とすことがある勘所

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第三十六条(法定代理権の消滅の通知)

法定代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ、その効力を生じない。

前項の規定は、選定当事者の選定の取消し及び変更について準用する。

民事訴訟法 36 条は、法定代理権の消滅は本人または代理人から相手方に通知しなければ効力を生じないと定める。通知前は旧代理人の訴訟行為も本人を拘束する。

よくある質問

Q · 訴訟中にうちの会社の社長が代わったんですが、相手にどう知らせればいいんですか?

本人(会社)または前代表者から相手方に通知すれば効力が生じます(民訴 36 条 1 項、37 条で法人代表者に準用)。口頭でも理論上は可能ですが、到達と内容を立証できる書面(内容証明郵便など)で行うのが実務の鉄則です。業界裏話ヒント:商業登記で代表者交代を公示しても、それだけでは訴訟上の権限消滅の効力に直結しないと解されています。登記したから大丈夫と油断せず、相手方その人へ別途通知を到達させること

Q · 前の社長が会社に無断で不利な和解をしてしまったら、もう取り消せないんですか?

相手方への消滅の通知が到達する前なら、その和解は有効に会社を縛ります(民訴 36 条 1 項)。訴訟上の効力は原則として覆りません。前社長個人に対して善管注意義務違反等の責任を追及する道は残りますが、それは別の戦いです。業界裏話ヒント:だからこそ代表者を交代させた瞬間に通知を打つかどうかが分水嶺になります。退任者が会社に恨みを持つケースほど、通知の一日の遅れが致命傷になる

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593条の本則 / 32条の附則

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民事訴訟法(平成八年法律第百九号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/408AC0000000109

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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本頁資料來源:e-Gov 法令検索(デジタル庁)·整理提供:法律人 LawPlayer· lawplayer.com