実用新案法 第20条(無効審判の請求登録前の実施による通常実施権)
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- 次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許法第百二十三条第一項の特許無効審判(以下この項において単に「特許無効審判」という。)の請求の登録前に、特許が同条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における実用新案権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
- 一実用新案登録に係る考案と特許に係る発明とが同一である場合において、特許を無効にした場合における原特許権者
- 二特許を無効にしてその発明と同一の考案について正当権利者に実用新案登録をした場合における原特許権者
- 三前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
- 2.当該実用新案権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
この条文の基本情報
無効審判の請求登録前の実施による通常実施権とは何ですか?
定義無効審判の請求登録前の実施による通常実施権とは、実用新案法第20条に定められた規定で、「次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許法第百二十三条第一項の特許無効審判(以下この項において単に「特許無効審判」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 実用新案法第20条(無効審判の請求登録前の実施による通常実施権)は、日本の実用新案法に含まれる条文です。
- 実用新案法第20条の条文原文は「次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許法第百二十三条第一項の特許無効審判(以下この項において単に「特許無効審判」という。」で始まります。
- 実用新案法第20条は第一節 実用新案権に置かれています。
- 実用新案法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 実用新案法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 実用新案法第20条の前の条は実用新案法第19条です。
- 実用新案法第20条の次の条は実用新案法第21条です。
- 実用新案法第20条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第20条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000123 - 本サイト収録
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第20条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000123/20
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点実用新案法20条は、特許が無効となり同一考案の実用新案権が残る場合、無効審判の請求登録前から善意で実施していた者に、相当の対価を条件として通常実施権(中用権)を認める規定である。
Q · 信じて投資した特許が無効になったら、もう製品を作れなくなるの?
いいえ。善意なら対価を払って作り続けられます
実用新案法20条により、特許が無効審判で無効とされ、同一の考案について他人の実用新案権が残っても、無効審判の請求登録より前から「特許が無効になる事情を知らないで」事業をしていた、または準備していた原特許権者等は、その発明および事業の目的の範囲内で通常実施権(中用権)を法律上当然に取得します。ただし2項により、実用新案権者または専用実施権者へ相当の対価を支払う義務がセットになります。差止めを受けて撤退する代わりに、対価を払って操業を続ける中間の道が用意されています。
解説
特許を信じて製造ラインを組み、量産に何千万円も注ぎ込んだ。ところが数年後、その特許が他社の実用新案登録と同一の考案だったとして、無効審判で消し飛ぶ。普通なら、あなたの投資は丸ごとパーになり、しかも今度はその実用新案権者から差止めを食らう側に回る。だがこの条文は別の結末を用意している。無効審判の請求が登録される前に、特許が無効になる事情を知らずに事業をしていた、または準備に入っていたなら、あなたはその実用新案について通常実施権、つまり「使い続ける権利」を法律上当然に手にする。代わりに相当の対価は払う。ゼロか百かではなく、対価を払って事業を生かす中間の道がここにある。条文番号を知らないまま交渉に臨むと、相手の弁理士はこの権利の存在を自分からは教えてくれない。
法的な位置づけ
実用新案法20条の中用権とは、特許を無効にした場合の実用新案権または専用実施権について、無効審判の請求登録前から善意で当該発明を実施または準備していた原特許権者等に、法律上当然に発生する通常実施権をいう。発明および事業の目的の範囲内に限られ、実用新案権者に相当の対価を支払う義務を伴う。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.無効審判の請求登録日を特定する 中用権の成否は「特許無効審判の請求の登録時」を基準に固定される。まず特許原簿・審判記録から請求登録の正確な日付を確定し、自社の事業開始または準備着手がそれより前かを照合する
- 2.善意と実施・準備を裏付ける証拠を日付付きで固める 「特許が無効になる事情を知らなかった」善意と、請求登録前の実施または事業準備を証明する。社内決裁、発注書、設計図、量産記録の日付を整理し、単なる構想段階ではなく準備に至っていたことを示す資料を確保する
- 3.実用新案権者へ中用権を内容証明で通知し対価交渉に入る 通常実施権(中用権)を有する旨を内容証明郵便で通知し、相当の対価について協議を申し入れる。相手の姿勢が差止め一辺倒から対価交渉へ切り替わるのは、この権利を提示した時点である
- 4.対価で折り合わなければ額は司法判断に委ね操業は止めない 対価額で合意できない場合でも、中用権そのものは法律上当然に存在するため操業は継続できる。額の確定は裁判所の判断に委ね、事業を止めずに紛争を進める
よくある質問 AI による整理
Q1中用権とは何ですか?
特許が無効になり同一考案の実用新案権が残る場合に、無効審判の請求登録前から善意で実施していた者へ法律上当然に発生する通常実施権です。実用新案法20条が根拠です。
Q2中用権と先用権の違いは何ですか?
先用権は出願時に既に実施していた者の保護、中用権は特許が無効になった後に同一考案の実用新案権から守る保護です。発生の基準時と前提が異なります。
Q3中用権はいつまでに実施していれば認められますか?
無効審判の請求の登録時が基準です。それより前から善意で事業をしていたか準備に入っていれば成立し、登録後の着手では認められません。
Q4中用権の対価はどう決まりますか?
実施規模・利益・業界相場をもとに当事者の協議で決めます。折り合わなければ最終的に裁判所が相当の対価を判断します。実用新案法20条2項が根拠です。
Q5中用権の「善意」とはどういう意味ですか?
特許が無効になる事情(無効理由)を知らなかったことを指します。知って実施していた場合は中用権が成立しません。立証は実施者側に課されます。
Q6中用権は他社に譲渡できますか?
通常実施権は原則として実用新案権者の承諾や事業とともにする等の要件下で移転し得ます。事業の目的の範囲を超える拡大利用には及びません。
Q7特許法80条の中用権と実用新案法20条は同じですか?
構造はほぼ同じで、特許法80条は無効になった特許と同一発明に別の特許がある場合、実用新案法20条は実用新案権が残る場合を扱います。
Q8実用新案権者から差止め警告が来たら中用権で反論できますか?
請求登録前から善意で実施していれば、中用権を主張して操業を継続できます。相手に残るのは差止めではなく相当の対価の請求権です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許が無効になったら、その技術はもう自由に使えるんじゃないんですか?
いつもそうとは限りません。無効になった特許と同一の考案について他人の実用新案権が存続していれば、その権利が技術を独占し続けます。本条はそうした場面で、善意の実施者に通常実施権を与えて救済します(実用新案法20条1項)。実務のポイント:特許が消えても周辺の実用新案が生きているケースは実務でよくあり、無効審判の勝訴イコール自由実施とはならない。勝った後にこそ実用新案の存在を確認する
Q2ライセンスだけ受けて作っていた下請けの自分も、守ってもらえますか?
守られます。本条は原特許権者だけでなく、その特許権についての専用実施権者や通常実施権者も保護対象に含めています(20条1項3号)。あなたが特許権者本人でなくても、無効審判の請求登録前から善意で実施していれば通常実施権を得られます。実務のポイント:保護範囲が下請け・ライセンシーまで及ぶことを知らず、警告書一通で操業を止めてしまう中小製造業は少なくない。契約上の地位を確認してから対応を決める
Q3通常実施権をもらえるなら、対価はタダですか?
タダではありません。本条2項で、実用新案権者または専用実施権者は通常実施権者から相当の対価を受ける権利を持ちます。対価額は実施規模・利益・業界相場で決まり、当事者の協議で折り合わなければ最終的に裁判所が判断します。実務のポイント:相手が対価交渉に応じる時点で、差止めという最悪のカードはすでに消えている。だから対価交渉に持ち込めること自体が、実施者にとって大きな勝ちだと理解しておく
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許が無効になったら、その技術はもう誰でも自由に使える」と思われがちだが、同一の考案について他人の実用新案権が生きている場合は自由には使えない。無効になった特許の穴から、別の独占権が顔を出す
- 20条の通常実施権があること自体は知っていても、それが「タダで使える権利」だと誤解している人が多い。実際は2項で実用新案権者に相当の対価を払う義務がセットになっている。権利の存在を知るだけでは足りず、対価の相場を読めるかどうかで交渉力が決まる
- 「守られるのは特許権者本人だけ」という前提で読むと、条文を取り違える。保護対象は原特許権者にとどまらず、その下でライセンスを受けていた専用実施権者・通常実施権者にも及ぶ。誰が保護されるのかという問いの立て方そのものが狭すぎる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権利が発生する場面 | 20条(中用権):特許が無効になり同一考案の実用新案権が残る場合 | 19条:実用新案権者の許諾による通常実施権 特許法80条:無効特許と同一発明に別の特許がある場合の中用権 |
| 発生の根拠 | 請求登録前の善意の実施・準備(法定) | 当事者の合意(許諾) 請求登録前の善意の実施・準備(法定) |
| 対価の有無 | 2項により相当の対価の支払義務あり | 許諾条件として合意で定める 特許法80条2項により相当の対価の支払義務あり |
| 保護される範囲 | 実施・準備をしている発明及び事業の目的の範囲内 | 許諾された範囲内 実施・準備をしている発明及び事業の目的の範囲内 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は先使用権を中心に善意の先行実施者を保護する。無効後の中用権に直接対応する独立規定は限定的で、先使用権の法理で類似の保護を図る点が日本と異なる
韓国特許法104条は日本の中用権とほぼ同型で、無効審判の請求登録前の善意実施者に通常実施権を認め、対価支払義務を課す
ドイツは先使用権を広く認めるが、無効後の中用権という独立構成ではなく、先使用権と再審理制度の枠内で善意実施者を保護する
米国は先使用の抗弁に加え、再発行特許に対する介在権(intervening rights)で善意の先行実施者・投資者を保護する。州法ではなく連邦特許法が一律に規律する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 自社製品の根幹特許が、競合の実用新案と丸かぶりだと無効審判で指摘されたら、ラインを止めるしかないのか? いや、無効審判の請求登録より前から善意で量産していたなら、20条の通常実施権で操業を続けられる。問われるのは「いつから」「知っていたか」の二点だ
- あなたが実用新案権者の側で、無効になった特許の元権利者が今も同じ製品を売り続けている。差止めできると思って警告書を送ったら、相手から20条の通常実施権を盾に返された。あなたに残るのは差止めではなく、相当の対価を請求する権利だけになる
- ライセンスを受けて製造していた下請けも対象になる。元の専用実施権者や通常実施権者まで保護される。「特許権者本人ではないから自分は関係ない」と思っていたら、その読みは外れている
- 無効審判の請求登録まであと数週間。この瞬間より前に事業を始めていたか、準備に入っていたかで、あなたが通常実施権を持てるかどうかが決まる。登録後に着手しても手遅れだ。発注書や設計図の日付を、今のうちに固めておく必要がある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 無効審判の請求が登録された日付を特定する。あなたの事業開始や準備着手がそれより前なら20条の通常実施権を主張できる2. 「特許が無効になる事情を知らなかった」善意を裏付ける証拠(社内決裁、発注書、設計資料の日付)を固める3. 実用新案権者へ通常実施権を有する旨を内容証明で通知し、対価交渉に入る4. 対価額で折り合わなければ、額は裁判所の判断に委ね、操業そのものは止めない
訴えられた側:1. 相手が本当に請求登録前から善意で実施していたか、開始時期と認識を精査。単なる構想段階で準備に至っていなければ20条は及ばない2. 善意要件を崩せれば通常実施権の成立自体を否定できる3. 成立を覆せない場合は2項の相当の対価を最大化する方向へ切り替え、実施規模に見合った額を請求4. 「発明及び事業の目的の範囲内」を超える拡大利用には権利が及ばないので、相手の実施範囲を画定する
時効(請求できる期限):通常実施権の発生自体に出訴期限はないが、成立要件は「無効審判の請求の登録時」を基準に固定される。2項の相当の対価請求権は債権なので、一般消滅時効(民法166条、行使できる時から5年または権利を行使できる時から10年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:中用権は、特許制度を信頼して善意で先行投資した者の既得権を保護する趣旨の法定通常実施権であり、無効審判の請求登録時を基準に成否が固定される。保護対象は原特許権者にとどまらず、その下の専用実施権者・通常実施権者にも及ぶ。差止めの全否定を避け、2項の相当の対価による調整で実用新案権者との均衡を図ると解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行実用新案法(昭和34年法律第123号)の制定に伴い、特許無効後の善意実施者を保護する中用権規定として整備された。特許法80条と同型の構造を持つ。
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