会社法 第286条(出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任)
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- 前条第一項第三号に掲げる場合には、次に掲げる者(以下この条において「取締役等」という。)は、株式会社に対し、同号に定める額を支払う義務を負う。
- 一当該新株予約権者の募集に関する職務を行った業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下この号において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるもの
- 二現物出資財産の価額の決定に関する株主総会の決議があったときは、当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるもの
- 三現物出資財産の価額の決定に関する取締役会の決議があったときは、当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるもの
- 2.前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、取締役等は、現物出資財産について同項の義務を負わない。
- 一現物出資財産の価額について第二百八十四条第二項の検査役の調査を経た場合
- 二当該取締役等がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合
- 3.第一項に規定する場合には、第二百八十四条第九項第四号に規定する証明をした者(以下この条において「証明者」という。)は、株式会社に対し前条第一項第三号に定める額を支払う義務を負う。ただし、当該証明者が当該証明をするについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
- 4.新株予約権者がその給付した現物出資財産についての前条第一項第三号に定める額を支払う義務を負う場合において、次に掲げる者が当該現物出資財産について当該各号に定める義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
- 一取締役等第一項の義務
- 二証明者前項本文の義務
この条文の基本情報
出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任とは何ですか?
定義出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任とは、会社法第286条に定められた規定で、「前条第一項第三号に掲げる場合には、次に掲げる者(以下この条において「取締役等」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社法第286条(出資された財産等の価額が不足する場合の取締役等の責任)は、日本の会社法に含まれる条文です。
- 会社法第286条の条文原文は「前条第一項第三号に掲げる場合には、次に掲げる者(以下この条において「取締役等」という。」で始まります。
- 会社法第286条は第三款 責任に置かれています。
- 会社法の公布日は平成17年7月26日です。
- 会社法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 会社法第286条の前の条は会社法第285条です。
- 会社法第286条の次の条は会社法第286条の2です。
- 会社法第286条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社法(平成十七年法律第八十六号)第286条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086 - 本サイト収録
会社法(平成十七年法律第八十六号)第286条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/417AC0000000086/286
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社法286条は、新株予約権行使時の現物出資が過大評価だった場合、評価に関与した取締役等が会社へ不足額を支払う義務を定める。検査役調査か無過失立証がなければ免責されない。
Q · ストックオプションの行使で受け取った現物を高く評価しすぎたら、誰が責任を取るの?
評価に関与した取締役個人が会社へ不足額を支払います
会社法286条により、新株予約権の行使時に現物出資された財産の価額が定められた額に著しく不足する場合、その評価決定に関与した業務執行取締役・執行役・議案提案取締役(取締役等)は、会社に対し不足額を支払う義務を負います。会社の金庫ではなく取締役個人の資産から支払う点が重要です。免責されるのは、検査役の調査(284条2項)を経た場合か、職務について注意を怠らなかったことを自ら立証した場合の二つだけです。価額を証明した専門家(証明者)も別途3項で責任を負い、これらの者は連帯債務者となります。
解説
スタートアップで共同創業者や従業員に新株予約権、いわゆるストックオプションを発行し、その行使の対価として現金ではなく特許やソフトウェア、機材といった現物の払い込みを受ける。問題はその現物をいくらと評価するかだ。高く見積もれば、相手は少ない出資で多くの株式を手にできる。だが評価が実際より過大だった場合、会社の資本は見かけより薄くなる。会社法286条は、この差額を埋める義務を、新株予約権者本人だけでなく、その評価決定に関与した取締役、執行役、議案を提案した取締役にまで負わせる。しかも会社の金庫からではなく、彼らの個人資産から支払わせる。あなたが取締役会でその評価額に賛成の挙手をした瞬間、会社の損失を自分の財布で穴埋めする可能性を引き受けている。逃げ道は二つだけ。検査役の調査を経たか、自分が注意を怠らなかったと立証できるか、それだけだ。
法的な位置づけ
会社法286条は、新株予約権の行使時における現物出資財産の不足額填補責任を定める規定である。当該財産の価額が定められた額に著しく不足するとき、評価決定に関与した取締役・執行役・議案提案取締役は、会社に対し連帯して不足額を支払う義務を負う。検査役の調査を経た場合、または職務について注意を怠らなかったことを証明した場合に限り免責される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.対価に現物出資が混ざっていないか洗い出す 新株予約権スキームを設計する段階で、行使の対価が現金のみか、知的財産・ソフトウェア・機材・サービス・債権など現金以外が含まれるかを一行ずつ確認する。現金以外が動けば286条の評価問題が発生する
- 2.検査役の調査(284条)を入れるか判断する 現物出資財産の価額について検査役の調査を経れば、286条2項1号で取締役等は原則として免責される。費用と時間はかかるが、後の株主代表訴訟リスクと天秤にかけて要否を決める
- 3.専門家の証明と自らの検討記録を残す 検査役を入れない場合は2項2号の無過失立証に備える。弁護士・公認会計士・税理士の価額証明(284条9項4号)を取得し、評価の前提資料・照会記録・取締役会の検討経過を証拠化する
- 4.取締役会議事録に評価根拠を明記する 現物出資案を上程する取締役会では、評価額・算定根拠・専門家証明の参照を議事録に明記する。「外部評価だから大丈夫」では足りず、各取締役が職務上注意を尽くした事実を後から立証できる記録を残す
よくある質問 AI による整理
Q1現物出資の不足額填補責任とは?
会社法286条が定める責任で、新株予約権行使時の現物出資財産の価額が著しく不足する場合、評価に関与した取締役等が会社へ差額を支払う義務を負う制度です。会社ではなく取締役個人が負担します。
Q2会社法286条の取締役等の範囲は?
募集に関する職務を行った業務執行取締役・執行役、価額決定の株主総会や取締役会に議案を提案した取締役で、法務省令が具体的範囲を定めます。決定本人でなくても職務上関与すれば対象となり得ます。
Q3検査役の調査を受ければ取締役は免責される?
はい。284条2項の検査役の調査を経た現物出資財産については、286条2項1号により取締役等は原則として填補責任を負いません。免責を狙うなら最も確実なルートです。
Q4現物出資の証明者の責任とは?
284条9項4号で価額が相当と証明した弁護士・公認会計士・税理士等は、286条3項により会社へ不足額を支払う義務を負います。証明に際し注意を怠らなかったと立証できれば免責されます。
Q5新株予約権の現物出資はいつ評価される?
新株予約権の行使時に給付された現物出資財産が評価対象です。その価額が定められた額に著しく不足するときに、286条の填補責任が発生します。
Q6取締役の填補責任は無過失でも負う?
原則として負います。286条は立証責任を転換しており、取締役が職務について注意を怠らなかったことを自ら証明できなければ免責されません。黙っていれば責任を負う構造です。
Q7会社法285条と286条の違いは?
285条は現物出資をした新株予約権者本人の不足額填補責任、286条はその評価決定に関与した取締役等・証明者の責任です。両者は連帯債務者となります(286条4項)。
Q8ストックオプションで知的財産を払い込める?
可能ですが、特許やソフトウェア等を現物出資すると価額評価の問題が生じます。過大評価だった場合、付与を決めた取締役が286条で個人責任を負うため、評価手続の設計が重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ストックオプションの現物出資なんて、普通のスタートアップでやるものなんですか?
頻度は高くありませんが、知的財産や開発した技術を対価に株式・新株予約権を割り当てる設計は実在します。現金の代わりに「価値あるもの」を入れる以上、その評価が過大なら本条1項の責任が発動します。実務のポイント:現金以外を対価にした取引はすべて現物出資の評価問題を抱えます。「うちは現金だけ」と思っていても、サービス提供や債権の現物出資が混ざっていれば対象。スキームを組む前に、何が対価として動くかを一行ずつ洗い出すのが弁護士の最初の作業です
Q2外部の専門家に評価してもらえば、取締役は安全ですよね?
それだけでは安全になりません。証明者自身も3項で会社に責任を負い、取締役は2項2号で別途自分の無過失を立証する必要があります。専門家の証明は免責の十分条件ではなく、材料の一つにすぎません。実務のポイント:取締役を確実に外す唯一のクリーンなルートは、本条2項1号の検査役調査(284条)を経ることです。検査役は費用と時間がかかるため敬遠されがちですが、後の株主代表訴訟のリスクと天秤にかければ、入れておく価値があるケースは多い
Q3会社が損したのに、なぜ取締役が個人で払わされるんですか?
会社の資本を実態どおりに保つ「資本充実の原則」を守るためです。過大評価で薄まった資本は、最終的に債権者や他の株主の損失になります。本条はその責任を、評価に関与した取締役へ個人資産で負わせて抑止します。実務のポイント:この責任は過失の有無にかかわらず原則発生し、立証責任が転換されている点が重い。会社側が「過失あり」を証明するのではなく、取締役が「無過失」を証明できなければ負けます。意思決定時の議事録と検討資料を残すことが、唯一の防御の蓄積になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「現物の評価は専門家がやるのだから、取締役は責任を負わない」と思われている。だが専門家の証明があっても、取締役自身が無過失を立証しない限り免責されない(2項2号)。専門家への丸投げは、責任の移転ではなく、責任者が二人に増えるだけだ
- 取締役の填補責任は知られているが、それが「立証責任の転換された責任」であることまでは知られていない。会社側が取締役の過失を立証するのではなく、取締役の側が「注意を怠らなかった」と立証できなければ責任を負う。攻守が逆で、黙っていれば負ける構造になっている
- 「現物出資なんてうちの会社はやっていない」と考える人が多いが、問いの立て方が逆だ。問題は現金以外の何かが対価として動いたかどうか。知的財産やサービス、機材を新株予約権の払込みに充てた瞬間、それは現物出資として評価対象になり、本条の射程に入る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 責任主体 | 286条:評価に関与した取締役等・証明者 | 285条:現物出資をした新株予約権者本人 213条:募集株式の現物出資に関与した取締役等 |
| 発生場面 | 新株予約権の行使に伴う現物出資の過大評価 | 新株予約権の行使に伴う現物出資の過大評価(出資者側) 募集株式の発行に伴う現物出資の過大評価 |
| 免責要件 | 検査役の調査を経た、または無過失を立証 | 原則免責なし(出資者本人の填補責任) 検査役の調査を経た、または無過失を立証 |
| 連帯関係 | 取締役等・証明者・新株予約権者が連帯債務者(286条4項) | 取締役等・証明者と連帯(286条4項) 出資者・取締役等が連帯(213条4項) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は現物出資(技術・財産抵繳股款)を認めつつ、資本不実については第9条で発起人・負責人の責任を定める。取締役個人の差額填補という構造は日本ほど明示的でない
韓国も現物出資について裁判所選任の検査人による調査制度を持ち、過大評価に対する補填・責任の枠組みは日本と類似する
ドイツは現物出資(Sacheinlage)の過大評価について差額責任(Differenzhaftung)を発達させており、本条の制度的源流にあたる
米国は資本概念が緩やかで、過大評価は主に『watered stock』法理として処理される。取締役の一律な差額填補責任という形ではない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 創業期のスタートアップで、共同創業者に新株予約権を割り当て、その行使時に彼が開発した独自アルゴリズムを現物で払い込ませた。評価額は社内で「これくらいの価値はある」と決めた。数年後、資金調達のデューデリでその評価が過大と判明し、付与を決めた取締役が会社に差額を支払う側に立たされる。福利厚生のつもりが経営陣の個人債務に化ける
- あなたが税理士・公認会計士として現物出資財産の価額を「相当である」と証明した(284条9項4号)。その証明が後で過大だったとされれば、本条3項により会社へ差額を支払う義務を負う。「自分は専門家として頼まれただけ」では済まない。免責には、自分が証明に際して注意を怠らなかったことの立証が要る
- 取締役会で現物出資案に何気なく賛成の挙手をした。提案した本人でなくても、業務執行に職務上関与した者として責任を負う場合がある。「自分は決めた本人じゃない」が通らないことがある
- もし株主代表訴訟の訴状が自宅に届いたら? 評価の妥当性を裏づける議事録も、専門家の証明書も手元にない。無過失を立証する材料を集める時間は、もう残されていない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 株主の立場で過大評価を疑ったら、まず取締役会議事録、評価の根拠資料、専門家の証明書(284条9項4号)を閲覧請求し、評価額と実態の乖離を数値で押さえる2. 会社に対し責任追及の訴え提起を請求(会社法847条、株主代表訴訟の前置手続)3. 会社が60日以内に提訴しなければ、株主自身が代表訴訟を提起4. 被告は新株予約権者本人(285条)、関与取締役・執行役(本条1項)、証明者(本条3項)が連帯債務者(本条4項)。資力のある相手を漏らさず被告に含める
訴えられた側:1. 自分が「業務執行に職務上関与した者」「議案を提案した取締役」に法務省令上該当するか、関与の度合いをまず確認2. 検査役の調査(284条)を経ていれば、2項1号で原則として責任を免れる、議事録で確認3. 検査役を経ていない場合は、2項2号の無過失立証へ。評価の前提資料、専門家への照会記録、取締役会での検討経過を証拠化4. 証明者を兼ねる立場なら、証明時に注意を怠らなかったことの立証も別途必要(3項ただし書)
時効(請求できる期限):本条の填補責任に特有の短期時効はない。一般の消滅時効(民法166条1項、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年)が適用される。起算点は会社が差額および責任者を把握し得た時。株主代表訴訟自体は、提訴請求から原則60日の経過が提訴の要件(会社法847条、最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条の填補責任は資本充実の原則を担保するものであり、立証責任が取締役側へ転換された責任である。会社が取締役の過失を立証するのではなく、取締役が無過失を立証できなければ責任を負う。検査役の調査と無過失立証が二つの免責ルートとして並立する。
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)会社法制定 旧商法の関連規定を会社法に移行して新設された条文。新株予約権の現物出資における取締役等の填補責任を定める。その後の平成26年・令和元年改正での本条への影響の有無は要確認
改正の年表
- 1.平成17年(2005年) 新設:会社法(平成17年法律第86号)の制定により、旧商法の関連規定を会社法へ移行して整備された条文。新株予約権の行使に伴う現物出資の過大評価について、取締役等の不足額填補責任を明文化した。
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