民法 第577条(抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶)
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- 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
- 2.前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。
この条文の基本情報
抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶とは何ですか?
定義抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶とは、民法第577条に定められた規定で、「買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民法第577条(抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶)は、日本の民法に含まれる条文です。
- 民法第577条の条文原文は「買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。」で始まります。
- 民法第577条は第二款に置かれています。
- 民法の公布日は明治29年4月27日です。
- 民法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民法第577条の前の条は民法第576条です。
- 民法第577条の次の条は民法第578条です。
- 民法第577条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民法(明治二十九年法律第八十九号)第577条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 本サイト収録
民法(明治二十九年法律第八十九号)第577条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/129AC0000000089/577
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民法577条は、買った不動産に契約内容に適合しない抵当権の登記があるとき、買主は抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒めると定める。先取特権・質権にも準用される。
Q · 買った不動産に前の持ち主の抵当権が残っていたら、代金を払わなくていいの?
原則、抹消されるまで残代金の支払を拒めます
民法577条により、買い受けた不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒むことができます。先取特権・質権の登記にも準用されます。ただし、最初から抵当権付きと承知で買った場合は契約内容に適合するため拒絶できません。また、いったん代金を全額払えばこの抗弁は失われ、その後は契約不適合責任(562条以下)で抹消請求・代金減額・損害賠償を求めるしかなくなります。
解説
中古マンションを現金で買い、引き渡しを受けて住み始めた。数週間後、登記簿を取り寄せたら、前の所有者が組んだ住宅ローンの抵当権がまだ消えずに残っていた。前所有者が返済を滞れば、あなたの新居が競売にかけられる。こんなとき、あなたには一枚の切り札がある。民法577条は、買った不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるとき、買主は抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒めると定める。つまり、お金を払う前に登記をきれいにしろと言える権利だ。逆に売主の側に立てば、本条後段で抵当権消滅請求の手続を早く進めろと買主を急かす権利が用意されている。2017年の債権法改正でこの条文は書き換えられた。古い解説書は「抵当権の登記があるとき」と書いているが、現行法は「契約の内容に適合しない」という条件が加わっている。最初から抵当権付きと承知で買ったなら、この武器は使えない。
法的な位置づけ
民法577条は、買い受けた不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記がある場合における買主の代金支払拒絶権を定める規定である。買主は抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の支払を拒むことができ、売主は買主に対し遅滞なく同手続をすべき旨を請求できる。契約に適合しない先取特権・質権の登記にも準用される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.最新の登記事項証明書で抵当権を特定する 法務局またはオンラインで登記事項証明書を取得し、残っている抵当権の被担保債権・債権者・設定日を特定する。完済済みで抹消未了か、債務が残っているのかを切り分ける
- 2.残代金が未払いなら書面で支払拒絶を通知する 残代金が未払いのうちに、契約不適合の抵当権が抹消されるまで民法577条に基づき代金の支払を拒絶する旨を内容証明郵便などの書面で売主に通知し、支払を保留する。先に払うと抗弁を失う
- 3.売主に抹消または抵当権消滅請求の段取りを期限付きで求める 売主に対し、抵当権抹消登記または抵当権消滅請求の手続を期限を切って求める。決済と抹消を同時履行とするよう、司法書士を交えて段取りを組む
- 4.売主が応じなければ契約不適合責任へ切り替える 売主が抹消に応じなければ、追完請求・代金減額・損害賠償(562条以下)に切り替え、最悪は契約解除も視野に入れる。すでに払った場合は抹消請求と損害の証拠を速やかに固める
よくある質問 AI による整理
Q1民法577条とは何ですか?
買った不動産に契約内容に適合しない抵当権の登記があるとき、買主が抵当権消滅請求の手続終了まで代金支払を拒める権利を定める規定です。
Q2抵当権付きの不動産を買ってしまったらどうすればいい?
まず最新の登記事項証明書を取得し、残代金が未払いなら577条に基づき抹消まで支払を保留する旨を書面で通知します。先に払うと抗弁を失います。
Q3代金支払拒絶権はいつまで使えますか?
抵当権の登記が残る限り存続する抗弁権で、固有の時効はありません。ただし代金を支払ってしまうと、その時点で権利は消えます。
Q4抵当権消滅請求とは何ですか?
抵当不動産の第三取得者が、抵当権者に一定額を提供して抵当権を消滅させる手続です(民法379条以下)。577条が前提とする制度です。
Q5不動産の決済と抵当権抹消は同時にできますか?
実務では司法書士が立ち会い、抹消書類が揃ったのを確認してから残代金を支払う同時決済が一般的です。577条の支払拒絶権がその根拠です。
Q6先取特権や質権が残っている場合も代金を拒めますか?
拒めます。577条2項により、契約内容に適合しない先取特権・質権の登記がある場合にも1項が準用されます。
Q7住宅ローンの抵当権と前所有者の抵当権は同じ扱いですか?
別物です。577条が対象とするのは前所有者が付けた消えるべき抵当権で、買主自身が新たに設定するローンの抵当権は対象外です。
Q8抵当権が残ったまま引き渡されたら違法ですか?
刑事的な違法ではなく民事上の契約不適合の問題です。577条で代金支払を止め、抹消や契約不適合責任の追及で対応します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1抵当権が残ってるけど、もう代金払っちゃいました。今からでも何とかなりますか?
支払拒絶権(577条)はもう使えませんが、契約不適合責任(562条以下)で追完(抹消)請求・代金減額・損害賠償を求められます。売主が無資力なら抵当権者への弁済を自分で立替え、求償する選択肢も。実務のポイント:不動産売買の決済が司法書士の立会いで行われるのは、まさにこの払った後で抵当権が残る事故を防ぐため。司法書士は抹消書類が揃ったのを確認してから登記を申請する。立会いを省いて当事者だけで決済する取引が一番危ない
Q2前の持ち主のローンはもう完済されてるのに、登記だけ残ってる場合は?
抹消登記が未了なだけで実体上の抵当権が消えていれば、形式的には契約不適合として支払拒絶の理由になり得ますが、売主が弁済証書を示して直ちに抹消できる状態なら拒絶の正当性は弱まります。実務のポイント:完済後に抹消登記を放置している不動産は実は珍しくない。金融機関から渡された抵当権抹消書類には期限があり、放置すると再発行手続が要る。売主側は決済の数週間前に抹消書類の有無を必ず確認しておくと、当日の事故を防げる
Q3抵当権が残ってると分かって安く買ったんですが、それでも支払を止められますか?
原則できません。577条は契約の内容に適合しない抵当権が対象です。承知のうえで引き受けたなら契約内容に適合しているので、支払拒絶の根拠を欠きます。実務のポイント:任意売却や競売絡みの抵当権付きで引き渡す物件は、その分価格に織り込まれている。割安物件で抵当権の存在を承諾する条項にサインすると、後から577条を持ち出せなくなる。契約書の特約欄に抵当権を承認のうえ買い受けるとあるかを必ず読む
Q4売主側ですが、買主がずっと抵当権が残ってると言って残代金を払ってくれません。
577条1項後段で、買主に対し遅滞なく抵当権消滅請求の手続をすべき旨を内容証明で請求できます。並行して自ら被担保債権を弁済し抹消登記を入れれば、買主の拒絶根拠は消えます。実務のポイント:買主が支払拒絶を代金を払いたくない口実に使っているケースは実務で起こる。後段の請求と同時に、抵当権抹消と残代金支払を同時履行とする決済日を司法書士立会いで再設定すると、引き延ばし戦術を一気に封じられる
間違えやすい点 AI による整理
- 「抵当権が残っていても、いずれ売主が消すだろうから先に払って大丈夫」と思いがちだが、代金を払った後で売主が抹消費用を工面できなければ、抵当権はあなたの物件に居座り続ける。577条は払う前にしか機能しない。順序を逆にした瞬間、てこは消える
- 支払拒絶できる金額は代金全額だと誤解されやすい。条文上は全額の拒絶が認められるが、実務では抵当権の被担保債権額に見合う範囲に限定すべきという見解もあり、実務上、解釈が分かれている。全額を止められると過信して交渉すると、相手の反論で足をすくわれる
- 「抵当権が残った物件を買わされた=詐欺だ」と問いを立てる人がいるが、その問いの立て方が事態を見誤らせる。577条が用意しているのは詐欺の追及ではなく、代金支払を止めて登記の浄化を強制する民事の段取り。怒りで刑事告訴に走るより、支払拒絶という静かな圧力の方が早く新居をきれいにする
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 拒絶できる場面 | 577条:契約不適合の抵当権・先取特権・質権の登記があるとき | 576条:権利の全部または一部を失うおそれがあるとき 533条:相手方が反対給付を履行しないとき |
| 売主側の対抗手段 | 後段で遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求できる | 578条:買主に代金の供託を請求できる 自ら反対給付を履行すれば抗弁は消える |
| 拒絶が消える条件 | 抹消手続の完了、または承知のうえでの買受け | 相当の担保の提供、または危険の消滅 相手方が自らの債務を履行したとき |
他国ではどう定めているか 5 か国
買主が第三者の権利主張により買受権利の全部または一部を失うおそれがあるとき、その危険の限度で代金の支払を拒める点で日本577条と同趣旨。
第三者が権利を主張し買受権利を失うおそれがあるとき、その危険の限度で代金支払を拒否できる。日本法と構造がほぼ一致する。
第三者が目的物に権利を有する確証があるとき買受人は相応の代金支払を中止できるが、売主が適切な担保を提供すれば中止できない。
反対給付の留保(同時履行の抗弁)と土地の公租公課に関する規律で、買主の代金留保を一般的に基礎づける。
売主は瑕疵のない権原(marketable title)を移転する義務を負い、抵当権等の負担があれば買主は決済を拒める。州ごとに細部が異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 登記簿に前所有者の抵当権が残ったまま物件を引き渡された。残代金がまだ未払いなら、その支払を止めて「抹消されるまで一円も払わない」と言える。先に払ってしまうと、この強力なてこを自分から手放すことになる
- あなたが売主側で、買主が「抵当権が残っているから払わない」と代金支払を拒んできた。本条後段を使い、買主に対して遅滞なく抵当権消滅請求の手続をするよう逆に請求できる。買主がいつまでも手続をせず代金を握り続けるのを防ぐ反撃手段がある
- もし、抵当権が残っているのに気付かず残代金を全額払ってしまったら、どうなる? 577条の支払拒絶権は消える。あとは売主に抹消を求める契約上の請求と、応じなければ契約不適合責任の追及に切り替えるしかなくなる
- 決済日が三日後。司法書士から「抵当権抹消書類が売主側で揃っていない」と連絡が来た。この瞬間が分水嶺。同時抹消の段取りを今夜確認しないと、抵当権付きのまま代金を払う羽目になりかねない
- 競売物件や任意売却物件を、抵当権が付いているのを承知のうえで安く買った。この場合は契約の内容に適合しないには当たらず、577条の支払拒絶は使えない。割安には理由があると知っておく
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず最新の登記事項証明書を取得し、残っている抵当権の被担保債権・債権者・設定日を特定する2. 残代金が未払いなら、即座に書面で契約不適合の抵当権が抹消されるまで577条に基づき代金支払を拒絶すると通知し、支払を保留する3. 売主に抹消登記または抵当権消滅請求の段取りを期限付きで求める4. 売主が応じなければ、契約不適合責任(追完請求・代金減額・損害賠償、562条以下)へ切り替え、最悪は契約解除も視野に。すでに払ってしまった場合は速やかに抹消請求と損害の証拠を固める
訴えられた側:1. 売主として代金支払を拒まれたら、まず抵当権が契約の内容に適合しないものか確認。買主が抵当権付きと承知で買ったなら577条は適用されないと反論できる2. 適合しない抵当権なら、本条後段で買主に抵当権消滅請求を遅滞なくすべき旨を請求し、決済を停滞させない3. 自ら被担保債権を弁済して抹消登記を入れ、支払拒絶の根拠を消す4. 決済と同時抹消の段取りを司法書士と組み、双方の履行を引き換えにする
時効(請求できる期限):577条の支払拒絶権自体は、抵当権の登記が残る限り存続する抗弁権であり固有の時効はない。ただし背後にある契約不適合責任(代金減額・損害賠償等)は、権利の不適合のため566条の通知期間の制約を受けず、一般消滅時効(民法166条、知った時から5年または権利行使可能時から10年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:577条の代金支払拒絶権は、契約不適合の抵当権等の登記が残る限り存続する抗弁権であり、買主は抹消手続の完了まで代金の支払を拒める。承知のうえで買い受けた場合は契約内容に適合し、適用されない。
有力説(拒絶範囲):拒絶できる金額は文言上は代金全額だが、抵当権の被担保債権額に見合う範囲に限定すべきとする見解が有力で、実務上は解釈が分かれている。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 民法現代語化に伴う改正。文語体の表記を口語体に改めた。実質的な内容変更は伴わない
- 平成29年(2017年)債権法改正 瑕疵担保責任から契約不適合責任への転換に合わせ、単に抵当権の登記があるときから契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときへ要件を改めた。買主が抵当権の存在を承知で買った場合は支払拒絶できないことが文言上明確になった
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:民法現代語化に伴い文語体を口語体に改めた。実質的な内容変更は伴わない。
- 2.平成29年(2017年) 改正:債権法改正により、瑕疵担保責任から契約不適合責任への転換に合わせ、『抵当権の登記があるとき』を『契約の内容に適合しない抵当権の登記があるとき』へ要件を改めた。承知で買った場合に拒絶できないことが文言上明確になった。
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