民法 第950条(相続人の債権者の請求による財産分離)
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- 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
- 2.第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条から第九百三十四条まで、第九百四十三条から第九百四十五条まで及び第九百四十八条の規定は、前項の場合について準用する。ただし、第九百二十七条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない。
この条文の基本情報
相続人の債権者の請求による財産分離とは何ですか?
定義相続人の債権者の請求による財産分離とは、民法第950条に定められた規定で、「相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民法第950条(相続人の債権者の請求による財産分離)は、日本の民法に含まれる条文です。
- 民法第950条の条文原文は「相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。」で始まります。
- 民法第950条は第五章に置かれています。
- 民法の公布日は明治29年4月27日です。
- 民法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民法第950条の前の条は民法第949条です。
- 民法第950条の次の条は民法第951条です。
- 民法第950条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民法(明治二十九年法律第八十九号)第950条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - 本サイト収録
民法(明治二十九年法律第八十九号)第950条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/129AC0000000089/950
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民法950条は、相続財産が相続人の固有財産と混合しない間、相続人の債権者が家庭裁判所に財産分離を請求できると定める。認められれば固有財産から優先弁済を受けられる。
Q · お金を貸している相手が借金だらけの遺産を相続したら、貸金はもう回収できないの?
混合前なら財産分離を請求して優先弁済を確保できる
民法950条により、相続人の債権者は、相続人が限定承認をできる間または相続財産が相続人の固有財産と混合しない間に、家庭裁判所へ財産分離(第二種財産分離)を請求できます。これが認められると相続財産と固有財産が分別管理され、相続人の固有財産については相続人の債権者が被相続人の債権者に優先して弁済を受けられます。ただし預金の払い戻しや相続登記などで財産が混合した後は請求自体ができなくなり、また相続人が949条に基づき弁済や相当の担保を提供すれば請求を防止できます。
解説
あなたが知人 B に500万円を貸しているとする。B の父親が亡くなった。普通なら「相続で B に資産が入る、これで回収できる」と安堵する場面だ。だが父親の遺産が借金まみれだったとしたら、話は逆転する。B が単純承認すれば、父親の債権者たちが B 自身の財産にまで襲いかかり、あなたの500万円の回収原資が一気に薄まる。民法950条は、まさにこの瞬間のあなたに武器を渡す。相続人の債権者であるあなたは、家庭裁判所に財産分離を請求できる。父親の遺産と B 自身の財産を法的に切り分け、B の固有財産からはあなたが被相続人の債権者に優先して弁済を受けられる。ただし条件が厳しい。B が限定承認できる間、または相続財産がまだ B の財産と混ざりきっていない間にしか請求できない。一度混ざってしまえば、この扉は閉じる。
法的な位置づけ
民法950条が定める第二種財産分離とは、相続人の債権者が家庭裁判所に請求し、相続財産と相続人の固有財産を分別して管理させる制度である。相続人が限定承認をできる間、または両財産が混合しない間に限り請求でき、相続人の固有財産については相続人の債権者が被相続人の債権者に優先して弁済を受けられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.債務者が相続したら即座に遺産の中身を調査 お金を貸している相手が相続人になったと知ったら、遺産の資産と負債を概算し、債務超過かどうかを見極める。債務超過なら相続人の固有財産が被相続人の債権者に食われるリスクがあるため、財産分離の検討に入る
- 2.財産が混合していないかを確認 預金が動いていないか、相続登記が変わっていないかを確認する。混合は事実状態で判断されるため、遺産が動く前のタイミングが請求権の生死を分ける。一週間の遅れが致命傷になり得る
- 3.家庭裁判所に財産分離を請求 相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に財産分離の申立てを行う。限定承認をできる間(相続開始を知ってから3か月)または未混合の間がリミット。申立書に合意ではなく請求の根拠と債権の存在を疎明する
- 4.認められたら公告・催告を主導 請求が認められたら950条2項但書に従い、財産分離を請求した債権者が自ら公告・催告を行い、他の債権者を手続に呼び込む。手続の主導権は配当の場面で情報の優位につながる
よくある質問 AI による整理
Q1第二種財産分離とは何ですか?
相続人の債権者が家庭裁判所に請求し、相続財産と相続人の固有財産を分別管理させる制度です。民法950条が根拠で、固有財産から優先弁済を受けられます。
Q2財産分離はいつまで請求できますか?
相続人が限定承認をできる間(相続開始を知ってから3か月)、または相続財産が固有財産と混合しない間です。預金の払い戻しや登記で混合すると請求できなくなります。
Q3第一種財産分離と第二種財産分離の違いは?
第一種(941条)は相続債権者・受遺者が請求し相続財産から優先弁済を受けます。第二種(950条)は相続人の債権者が請求し相続人の固有財産から優先弁済を受けます。
Q4財産分離を請求できるのは誰ですか?
第二種財産分離(950条)を請求できるのは相続人の債権者です。相続人自身の意思とは無関係に、債権者が単独で家庭裁判所に請求できます。
Q5財産分離の請求先はどこですか?
家庭裁判所です。家事事件手続法により家事審判事項とされ、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
Q6相続財産の混合とは何を指しますか?
相続財産と相続人の固有財産が事実上一体化することです。預金が一つの口座にまとまる、不動産の名義が動くといった事実で混合と扱われ、財産分離の窓が閉じます。
Q7財産分離されると相続人はどうなりますか?
相続財産が分別管理下に置かれ、相続人は自由に処分しにくくなります。ただし949条により弁済または相当の担保を提供すれば財産分離を防止できます。
Q8財産分離と相続財産破産はどちらを使うべきですか?
遺産の債務超過が大きい場合は破産法222条の相続財産破産の方が手続として強力なことがあります。遺産の規模と債権者構成で有利な手続が変わります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1財産分離って、相続放棄や限定承認と何が違うんですか?
相続放棄・限定承認は相続人自身が選ぶ手続ですが、財産分離は相続人の意思と無関係に、相続人の債権者(または相続債権者)が家庭裁判所に請求する制度です(民法950条、941条)。相続人が単純承認していても、混合前なら債権者が財産分離をかけられます。実務のポイント:実務で第二種財産分離が使われる例は極めて少なく、多くの弁護士も手続経験がない。だからこそ、これを的確に持ち出せる債権者は、相続人側を一気に守勢へ回せる
Q2債務者が遺産を相続したら、その遺産を直接差し押さえればいいのでは?
債務超過の遺産だと、被相続人の債権者が先に並んでいて、あなたの取り分は薄まります。財産分離をかけると、相続人の固有財産についてはあなた(相続人の債権者)が被相続人の債権者に優先します(950条による準用)。実務のポイント:ポイントは「どの財産プールから優先弁済を受けるか」。財産分離は遺産を差し押さえる制度ではなく、二つの財布を分けて優先順位を組み替える制度です。この発想の転換ができるかどうかで回収率が変わる
Q3請求すれば必ず財産分離が認められますか?
いいえ。家庭裁判所が必要性を判断します。また相続人が949条に基づき弁済または相当の担保を提供すれば、財産分離を防止できます。タイミングも厳格で、混合後は請求自体ができません。実務のポイント:相続人側の防御は949条の担保供与です。逆に債権者側は、相続人が担保を出す前に、混合前のタイミングを突いて素早く請求するのが定石。スピードがすべてを決める
間違えやすい点 AI による整理
- 「相続は債務者に資産が増えるから債権者に有利」と思いがちだが、相続する遺産が債務超過なら逆である。被相続人の債権者という新たなライバルが、債務者の固有財産にまで押し寄せ、あなたの取り分は減る
- 財産分離という制度の存在は知っていても、その時間的シビアさを甘く見ている人が多い。「相続財産が混合しない間」という要件は、預金が一つの口座に混ざる、不動産の名義が動くといった事実だけで満たされなくなる。動けるのは事実上、相続開始から数か月の窓だけである
- 「債務者が相続放棄すれば自分も困る」と心配する債権者がいるが、問いの立て方が逆になっている。債務超過の遺産なら、債務者が放棄してくれた方があなたには好都合。むしろ警戒すべきは、債務者が資産だけ期待して単純承認し、結果あなたの回収原資が被相続人の債権者に食われるケースだ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 請求権者 | 第二種財産分離(950条):相続人の債権者 | 第一種財産分離(941条):相続債権者・受遺者 相続財産破産(破産法222条):相続債権者・受遺者・相続人等 |
| 優先弁済を受ける財産プール | 相続人の固有財産(相続人の債権者が優先) | 相続財産(相続債権者・受遺者が優先) 相続財産を破産財団化して按分弁済 |
| 請求先・手続 | 家庭裁判所への財産分離請求 | 家庭裁判所への財産分離請求 地方裁判所への破産申立て |
| 時間的制限 | 限定承認をできる間または財産が混合しない間 | 相続開始から3か月以内または財産が混合しない間 相続財産につき清算が必要な間(債務超過が要件) |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾は2009年改正で概括承継有限責任を原則化し、遺産と相続人固有財産を分別清算する仕組みで相続人の固有財産を当然に保護する。日本の財産分離が債権者の請求を要するのと対照的。
韓国民法も財産分離を明文で規定し、相続債権者・受遺者および相続人の債権者の請求を認める。日本の二類型構造と類似する。
ドイツは遺産管理(Nachlassverwaltung)と遺産倒産(Nachlassinsolvenz)により相続人の責任を遺産に限定し、財産の分離を実現する。請求権者と手続の建て付けは日本と異なる。
フランスの séparation des patrimoines は日本の財産分離の沿革上の源流。2006年相続法改正で再整理され、相続債権者・受遺者と相続人の債権者の双方に分離請求を認める。
コモンロー圏では遺産は人格代表者(executor / administrator)の管理下で固有財産と当然に分別清算されるため、債権者請求による財産分離という独立の制度は存在しない。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが貸金を抱える相手の親が亡くなった。遺産は資産より借金が多い債務超過。このまま相手が単純承認したら、あなたの債権はどうなるか。被相続人の債権者という新顔があなたの債務者の財産に群がり、あなたの回収率は静かに下がっていく
- 相続開始を知ってから3か月。限定承認の期限が迫る。遺産はまだ動いていない。今動けば財産分離が間に合う。明日には預金が払い戻され、窓が閉じるかもしれない
- あなたが相続人で、被相続人が資産家だったのに、自分の借金取りから突然「財産分離を請求した」と通知が届く。慌てる必要はない。949条で弁済または相当の担保を出せば、この請求は止められる。だが何もしなければ、遺産はあなたの債権者の手続的管理下に置かれる
- あなたが連帯保証している主債務者が、借金まみれの遺産を相続した。あなたは直接の貸し手ではないが、主債務者の固有財産が被相続人の債権者に食われれば、あなたの求償権の価値も連動して下がる。財産分離は、保証でつながったあなたの問題でもある
- 友人が「親の遺産、借金の方が多いらしい」と相談してきた。あなたは三つの選択肢を示せる。相続放棄、限定承認、そして友人にお金を貸している人がいるなら財産分離。誰がどれを使うかで結末が変わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 債務者が相続したと知ったら即座に遺産の中身を調査、資産と負債を概算して債務超過かを見極める2. 債務超過なら、相続財産がまだ混合していないか(預金が動いていないか、登記が変わっていないか)を確認3. 家庭裁判所に財産分離を請求、限定承認できる間または未混合の間がリミット4. 請求が認められたら950条2項但書に従い、自ら公告・催告を行い他の債権者を手続に呼び込む
訴えられた側:あなたが相続人で、自分の債権者から財産分離を請求された側なら、949条の請求防止(債権者への弁済または相当の担保供与)で財産分離を阻止できる。あなたが被相続人の債権者の立場なら、財産分離されると相続人の固有財産への追及が制限されるため、相続人が無資力かを見極め、必要なら相続財産破産など別手続を検討する
時効(請求できる期限):財産分離の請求期限は、相続人が限定承認をすることができる間(自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月、民法915条)、または相続財産が相続人の固有財産と混合しない間。混合は事実状態で判断されるため、明確な日付の締切ではなく、遺産が動いた瞬間に窓が閉じる
学説
通説:第二種財産分離は、相続による財産の混合から相続人の債権者を保護する制度であり、相続人の固有財産につき相続人の債権者が被相続人の債権者に優先する効果を持つ。混合という事実状態を境界とし、混合後は請求できないと解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 民法現代語化に伴う改正。片仮名文語体から平仮名口語体へ表記を改めた。請求権者・要件・準用構造に実質的な変更はない
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:民法現代語化(平成16年法律第147号)に伴い、片仮名文語体から平仮名口語体へ表記を改めた。請求権者・要件・準用構造に実質的変更はない。
- 民法 第941条相続債権者・受遺者の請求による第一種財産分離
- 民法 第942条財産分離の効力、優先弁済の根拠
- 民法 第949条弁済・担保供与による財産分離の請求防止
- 民法 第927条債権者・受遺者への公告及び催告、本条で準用
- 民法 第915条限定承認をすることができる期間、請求期限の基準
- 破産法 第222条相続財産破産、債務超過の遺産に対する代替手続
- 家事事件手続法 第39条財産分離を家庭裁判所の家事審判事項とする手続的根拠
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