消防法 第29条
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- 消防吏員又は消防団員は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは、火災が発生せんとし、又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。
- 2.消防長若しくは消防署長又は消防本部を置かない市町村においては消防団の長は、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認めるときは、延焼の虞がある消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。
- 3.消防長若しくは消防署長又は消防本部を置かない市町村においては消防団の長は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときは、前二項に規定する消防対象物及び土地以外の消防対象物及び土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。この場合においては、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があるときは、時価により、その損失を補償するものとする。
- 4.前項の規定による補償に要する費用は、当該市町村の負担とする。
- 5.消防吏員又は消防団員は緊急の必要があるときは、火災の現場附近に在る者を消火若しくは延焼の防止又は人命の救助その他の消防作業に従事させることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 消防法第29条は、日本の消防法に含まれる条文です。
- 消防法第29条の条文原文は「消防吏員又は消防団員は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは、火災が発生せんとし、又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用…」で始まります。
- 消防法第29条は第六章に置かれています。
- 消防法の公布日は昭和23年7月24日です。
- 消防法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年4月5日時点では廃止情報はありません。
- 消防法第29条の前の条は消防法第28条です。
- 消防法第29条の次の条は消防法第30条です。
- 消防法第29条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第29条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC1000000186 - 本サイト収録
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第29条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年4月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC1000000186/29
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点消防法29条は、火災時に消防が建物や土地を使用・破壊・使用制限できる権限を定める。補償は延焼のおそれがない物件を処分した場合に限り、市町村が時価で支払う。
Q · 消防に家を壊されたら、自治体は弁償してくれるの?
延焼の危険がない物件を壊された場合だけ、市町村が時価で補償
消防法29条は処分の対象を三つに分けています。燃えている物件(1項)と延焼のおそれがある物件(2項)については、補償の規定がありません。補償されるのは、延焼のおそれがない物件を緊急の必要から使用・処分した場合(3項)に限られ、損害を受けた人が求めれば市町村が時価で支払います(4項)。1項・2項の損害は、自分の火災保険の「消防損害」補償で回収するのが現実的な手段です。
解説
燃えていない家でも、消防は壊せる。しかも多くの場合、一円も補償されない。消防法29条は、火災現場での「破壊消防」の根拠となる条文であり、三つの段に分かれている。第一段は、燃えている建物とその土地である。現場の消防吏員(消防署の職員)や消防団員の判断で、使用・破壊・立入制限ができる(1項)。第二段は、まだ燃えていないが延焼のおそれがある建物である。消防長・消防署長が火の勢いや風向きから合理的に判断すれば、同じことができる(2項)。この二つの段には補償の規定がない。補償が出るのは第三段、つまり延焼のおそれすらない建物を緊急の必要から使用・破壊した場合だけであり、市町村が時価で支払う(3項・4項)。あなたの家がどの段に分類されるかで、受け取れる額はゼロか時価かに分かれる。隣家の火事で自宅を壊されたとき、「消防に弁償させる」と息巻く前に開くべきは、自分の火災保険の約款である。
法的な位置づけ
消防法29条は、いわゆる破壊消防の根拠規定である。消防吏員・消防団員または消防長等が、消火・延焼防止・人命救助のために消防対象物と土地を使用・処分・使用制限できる権限を定め、延焼のおそれがない物件を処分した場合に限って、市町村による時価での損失補償を義務づける。あわせて、火災現場付近にいる者を消防作業に従事させる権限も定めている。
よくある質問 AI による整理
Q1破壊消防とは何ですか?
火災の延焼を防ぐため、消防が建物や工作物を壊したり使ったりする消火手法です。消防法29条が根拠で、所有者の同意は必要ありません。
Q2消防が家に入って窓を割るのは違法?
消火・延焼防止・人命救助のために必要であれば、消防法29条に基づく適法な処分です。所有者の同意や事前の通知は要件になっていません。
Q3破壊消防の損失補償はいくらもらえる?
29条3項に当たる場合は「時価」で補償されます。新しく建て直す費用(再調達価額)ではなく、築年数などで減価した後の価値が基準です。
Q4破壊消防の補償は誰に請求する?
処分をした消防が属する市町村に請求します(29条4項)。消防署ではなく、自治体に対して補償を求めることになります。
Q5火事の消火活動で壊されたら火災保険は使える?
多くの火災保険は、消火活動による破損や水濡れを補償の対象に含めています。ただし範囲は約款によって違うため、契約内容を確認してください。
Q6賃貸の部屋を消防に壊されたら大家と借主どちらの負担?
建物部分は所有者である大家側の保険、家財は借主の家財保険で対応するのが一般的です。借主が自分で家財保険に入っていなければ、家財は自己負担になりやすいです。
Q7消防に協力を求められたら断れる?
29条5項により、消防は火災現場付近の人を消防作業に従事させることができます。正当な理由なく援助を拒むと、軽犯罪法1条8号の対象になりえます。
Q8消防の破壊が行き過ぎだったら国家賠償できる?
処分そのものが違法なら国家賠償法1条による請求の余地があります。適法を前提とした29条3項の損失補償とは、要件も立証の方法も異なります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1隣の火事で消防が放水して、うちの一階が水浸しです。誰も払ってくれないんですか?
延焼のおそれがあった建物への放水や破壊は消防法29条2項による処分とされ、条文上、補償の規定はありません。隣人も、重大な過失がなければ失火ノ責任ニ関スル法律により賠償責任を負いません。実務のポイント:最後の砦は自分の火災保険の「消防損害」補償です。家財保険を付けていなければ、家財の水濡れ被害は自己負担になります。賃貸住まいの人ほど、家財保険の有無が結果を左右します
Q2消防団の人に手伝えと言われて作業中にケガしたら、補償はあるんですか?
29条5項による従事命令で消防作業に従事し、死亡・負傷した場合は、消防法36条の3に基づいて市町村が補償します。補償の基準は政令で定められています。実務のポイント:自発的に手伝った場合と、隊員に求められて従事した場合とでは、扱いが変わりうります。誰にどう指示されたかを後で示せるよう、隊員の所属や特徴を控えておくことが、補償を受けられるかどうかの分かれ目になります
Q3延焼しそうになかったのに壊された気がします。どうやって争えばいいですか?
焦点は、当時延焼のおそれがあったかどうかです。おそれがなかったのに緊急の必要から処分されたのであれば、29条3項に基づいて市町村に時価での補償を求められます(最判昭和47.5.30)。実務のポイント:消防署は火災調査の記録を作成しており、そこには延焼状況や出動時刻のデータが含まれます。情報公開条例や個人情報保護法に基づいて開示請求すれば、消防側の判断根拠を自分の目で確認できます
間違えやすい点 AI による整理
- 「消防が壊したのだから自治体が弁償するはず」と思われがちだが、補償義務を定めているのは3項(延焼のおそれがない物件)だけである。燃えていた建物や燃え移りそうだった建物への破壊・放水による損害は、原則として補償の対象外となる
- 「消防の判断ミスで壊されたのでは」と問う前に、問いの立て方を変える必要がある。客観的に延焼のおそれがなかった場合、それは違法の問題ではなく、3項に基づく適法な処分への損失補償の問題として処理されうる(最判昭和47.5.30)。違法を争う国家賠償と、適法を前提とする損失補償とでは、要件も集めるべき証拠もまったく違う。どちらの構成をとるべきかは事案ごとに判断が分かれる
- あなたから見れば、家財は思い出の詰まった財産である。しかし法律から見れば、延焼を広げる燃料にすぎない。2項が補償を予定していないのは、「壊されなくてもどうせ燃えていた」という評価が前提にあるからだ。この発想の落差を知らないまま交渉の席に着くと、一言で黙らされる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権限の内容 | 消防法29条:物件・土地の使用、処分(破壊)、使用制限+現場付近の人への従事命令 | 消防法28条:消防警戒区域を設定し、区域からの退去命令・出入りの禁止や制限 消防法36条の3:消防作業に従事した者の死亡・負傷に対する市町村の災害補償 |
| 誰の財産・身体に関わるか | 火元、延焼のおそれがある物件、その他の物件の所有者・占有者 | 警戒区域に出入りしようとする人 29条5項などにより消防作業に従事した人 |
| 補償の有無 | 3項の物件(延焼のおそれなし)のみ時価で補償、1項・2項は規定なし | 補償の規定なし 政令の基準により補償あり |
他国ではどう定めているか 3 か国
火災現場とその周辺の土地・建物等を使用・損壊・使用制限できる。補償は「実際の状況を見て酌量して」とされ、火災に責任がある者は補償されない。日本の時価補償より裁量の幅が広い
強制処分として、消防対象物や土地の使用・処分・使用制限を認める。損失補償は同法の別の条文で規律されている
延焼防止のための家屋破壊を public necessity として正当化し、私人への賠償責任を否定した古典的判例。補償の有無は州法によって異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 隣のアパートが火事になり、消防隊があなたの家の雨戸を叩き割って二階の窓から放水した。燃えていない部屋まで水浸しになったが、修理代は誰が払うのか? 延焼のおそれがあったのなら、原則として誰も払わない。そこで頼りになるのは、あなた自身の火災保険である
- 工場の火災現場に駆けつけた社長のあなたは、隊員が隣の自社倉庫の壁を壊そうとするのを見て「待て、中に在庫が三千万円分ある」と立ちはだかった。気持ちは分かる。だが、その数分の妨害は公務執行妨害罪(刑法95条)や消火妨害罪(刑法114条)に問われるおそれがある
- 火事場で見物していたら、消防団員に「ホースを持って」と声をかけられた。29条5項に基づく従事命令である。作業中にけがをすれば、市町村の補償対象になる
- 鎮火から一週間がたった。あなたの店舗は火元から離れていて延焼の危険はなかったはずなのに、消防車の進入路を確保するため看板と外壁を撤去された。3項に基づく補償を請求するなら、撤去前後の写真、当日の風向き、火元からの距離を示す資料を今のうちに固める必要がある。現場が片付けられた後で「延焼のおそれがあった」と言われても、反論の材料はもう残っていない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 鎮火後すぐ、破壊・放水された箇所を撮影し、火元からの距離と当日の風向きを記録する2. 消防署に、誰の判断で、何項に基づいて処分したのかを照会し、回答を書面でもらう3. 自分の火災保険に「消防損害」として申告する4. 延焼のおそれがなかったと考えるなら、市町村に3項に基づく時価補償を請求する。処分そのものが違法だと考えるなら、国家賠償法1条による請求を弁護士と検討する
訴えられた側:火災現場で消防活動を妨げた、あるいは従事命令を断ったとして責任を問われている場合:1. 活動を物理的に妨げたかどうか、それが何分間だったかを正確に整理する2. 口頭での抗議にとどまるなら、刑法95条・114条の成立は限られる3. 従事を断った理由(自分の負傷、幼児の世話など)を「正当な理由」として具体的に示す4. 取調べの前に弁護士へ相談する
時効(請求できる期限):消防法には補償請求の期限の定めがない。市町村に対する金銭債権として、地方自治法236条により、権利を行使できる時から5年と解するのが一般的だが、実務上、解釈が分かれる余地はある。処分を違法として国家賠償を求める場合は、損害及び加害者を知った時から3年となる(国家賠償法4条により民法724条を適用)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
一般的理解:1項・2項の物件は処分しなくても焼失を免れなかったと評価されるため、財産権の内在的制約として補償は不要と解される。3項の物件は延焼の危険と無関係な特別の犠牲にあたるため、憲法29条3項の趣旨から補償が必要とされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:消防法の制定に伴い、破壊消防・損失補償・従事命令を一体として規定
- 消防法 第2条消防対象物の定義(2条3項)
- 消防法 第25条関係者の応急消火義務と協力
- 消防法 第28条消防警戒区域の設定と出入制限
- 消防法 第36条の3消防作業従事者の災害補償
- 国家賠償法 第1条違法な消防活動に対する賠償
- 刑法 第114条火災時の消火妨害の処罰
- 軽犯罪法 第1条変事の際の援助要請拒否(1条8号)
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