土地収用法 第78条(移転困難な場合の収用請求権)
クイックジャンプ
前条の場合において、物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することに因つて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の収用を請求することができる。
この条文の基本情報
移転困難な場合の収用請求権とは何ですか?
定義移転困難な場合の収用請求権とは、土地収用法第78条に定められた規定で、「前条の場合において、物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することに因つて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第78条(移転困難な場合の収用請求権)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第78条の条文原文は「前条の場合において、物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することに因つて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者…」で始まります。
- 土地収用法第78条は第一節 収用又は使用に因る損失の補償に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第78条の前の条は土地収用法第77条です。
- 土地収用法第78条の次の条は土地収用法第79条です。
- 土地収用法第78条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第78条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第78条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/78
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法78条は、物件の移転が著しく困難な場合や、移転で従来の目的に使えなくなる場合に、所有者が移転料ではなく物件の収用を請求できると定める。
Q · 土地収用で「機械は移転料を払うから自分で移して」と言われたら、従うしかないの?
移転が著しく困難なら物件ごとの収用を請求できる
土地収用法77条により、土地にある物件は移転料で補償するのが原則です。しかし同法78条は、物件の移転が著しく困難なとき、又は移転すると従来利用していた目的に使うことが著しく困難になるときは、所有者がその物件の収用を請求できると定めます。収用されれば補償は移転料ではなく物件の相当な価格(80条)で算定されます。この請求は所有者が自ら主張しなければ発動しないため、メーカー等の意見書を揃え、収用委員会の審理までに明示しておくことが重要です。
解説
土地収用で動かされるのは土地だけではない。そこにある建物、工作物、立木もどかさなければならない。原則は「移転料を払うから、自分で移せ」である(土地収用法77条)。ところが、地中深くに据え付けた大型プレス機、何十年も育てた庭木、地下タンクと一体になったガソリンスタンド設備のように、移転そのものが著しく困難な物件や、移しても従来の用途に使えなくなる物件がある。78条は、そのような場合に所有者のほうから「移転料ではなく、この物件ごと買い取れ(収用せよ)」と請求できる権利を定める。あなたが知っておくべきなのは、この請求は所有者側が自分で主張しないと発動しないという点である。主張しなければ、移転料という枠組みのまま補償額が算定される。移転料で中途半端な移設を強いられるか、物件の価格(80条:近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格)として補償を受けるか。分かれ目は、あなたが裁決前にこの一条を持ち出すかどうかにある。
法的な位置づけ
土地収用法78条は、物件の収用請求権を定める規定である。土地の収用等に伴い物件の移転料を補償する場合(同法77条)において、物件の移転が著しく困難であるとき、又は移転により従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときに、物件の所有者が当該物件の収用を請求できる旨を規定する。移転料補償の原則に対する所有者側の例外請求として機能する。
手順
- 1.対象物件ごとに移転可否と移転後の用途を整理 収用対象地にある建物・機械・立木・工作物を一覧化し、物理的に移転できるか、移転後に従来の目的どおり使えるかを物件ごとに書き出す
- 2.専門業者の意見書を取得 機械はメーカー、庭木は造園業者、工作物は施工業者に依頼し、移転の技術的困難さや移設後の性能劣化・許認可再取得の見通しを書面化してもらう
- 3.起業者に移転工法と算定根拠を書面で求める 任意交渉の段階で、起業者が想定する移転工法と移転料の算定根拠を書面で開示させ、意見書と突き合わせて従来どおり使えない点を指摘する
- 4.収用委員会の審理で78条の収用請求を明示 任意交渉で合意できない場合、収用委員会に提出する意見書や審理の場で、78条に基づく物件の収用請求を明確に主張し、意見書を証拠として提出する
- 5.裁決の補償額に不服なら6か月以内に提訴 裁決の補償額に不服がある場合は、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に損失補償に関する訴え(133条)を検討する。期限管理のため早めに弁護士へ相談する
よくある質問 AI による整理
Q1土地収用法78条とは何ですか?
移転が著しく困難な物件や、移すと従来の用途に使えなくなる物件について、所有者が移転料ではなく物件そのものの収用を請求できると定めた規定です。
Q2立ち退きで工場の機械が移転できない場合はどうなる?
原則は移転料補償ですが、移転が著しく困難、又は移転後に従来どおり稼働させることが著しく困難なら、土地収用法78条で機械ごとの収用を請求できます。
Q3収用で庭木や立木は補償される?
立木も物件として原則は移転料(移植費用)で補償されます。大木で移植すると枯死の恐れが高いなど移転が著しく困難なら、78条で立木の収用を請求する余地があります。
Q4物件の収用請求はいつまでにすればいい?
収用委員会の裁決前に、審理の場で意見書等により明示しておく必要があります。具体的な時期は手続規定と収用委員会の運用を事前に確認してください。
Q5物件を収用された場合の補償額はどう決まる?
土地収用法80条により、近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格で算定されます。移転料(77条)とは計算の土台がまったく異なります。
Q6移転料が高すぎる場合、起業者は何ができる?
移転料が物件の取引価格を超えるときは、起業者の側から物件の収用を請求できます(土地収用法79条)。78条と対になる規定です。
Q7収用委員会の補償額に納得できないときは?
裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に、損失補償に関する訴えを提起できます(土地収用法133条)。補償額の不服は審査請求の理由にできません。
Q8移転料と物件収用で税金の扱いは違う?
収用等の課税特例は原則として対価補償金が対象で、移転補償金は扱いが異なります。どちらで受け取るかで税額が変わり得るため、税理士に確認してください。
この条文についての質問 AI による整理
Q1移転料と、物件ごと収用してもらうのと、結局どっちがお金になるんですか?
一概には言えません。移転料は移すための費用(77条)、収用の場合は物件の相当な価格(80条)で、計算の土台が違います。古い建物や設備は取引価格が低く出ることもあり、収用のほうが少なくなる場合もあります。実務のポイント:比較すべきは額面だけではありません。移転後に従来どおり使えないなら、移転料を受け取っても追加の出費が発生します。その損失を立証できるかで、どちらを選ぶべきかが決まります
Q2役所の担当者に「移転できますよ」と言われたら、もう反論できないんですか?
できます。「移転が著しく困難か」「移転後に従来の目的に供することが著しく困難か」は、最終的に収用委員会が判断します(78条)。担当者の見解は起業者側の一つの主張にすぎません。実務のポイント:起業者側の工法選定は、損失補償基準に沿った標準的な検討で組まれていることが多く、個別の機械や用途の特殊事情までは拾われていない場合があります。メーカーや専門業者の意見書は、この隙間を埋める最も強い材料です
間違えやすい点 AI による整理
- 「収用されるなら、建物や設備も当然役所が買い取ってくれる」と考えがちだが、原則は移転料の補償である(77条)。物件を買い取ってもらう形にするには、移転が著しく困難であること等を理由に所有者が78条の請求をしなければならない。黙っていれば移転前提で算定される
- 移転が「できるかどうか」だけが基準だと思っていると、半分しか見ていない。78条には二つの入口がある。物理的に移転が著しく困難な場合と、移転はできても従来利用していた目的に供することが著しく困難になる場合である。後者は技術的・用途的な事情の立証勝負であり、こちらのほうが実務では争点になりやすい
- 問いを「移転料と収用、どちらが得か」とだけ立てるのは前提がずれている。物件の収用を選べば物件の所有権は起業者に移り、移転後の再利用という選択肢は消える。一方で、補償金の税務上の扱い(対価補償か移転補償か)や、事業の継続方法まで連動して変わる。比べるべきは金額ではなく、収用後の生活と事業の設計図である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 請求・補償の主体 | 78条:所有者が物件の収用を請求 | 79条:起業者が物件の収用を請求 77条:請求不要、移転料補償が原則 |
| 発動要件 | 移転が著しく困難、又は移転で従来の目的に供することが著しく困難 | 移転料が物件の取引価格を超えるとき等 物件を移転させる場合一般 |
| 補償の算定基準 | 物件の相当な価格(80条) | 物件の相当な価格(80条) 移転に要する費用(移転料) |
| 所有者に残るもの | 物件の所有権は失うが価格で補償 | 物件の所有権は失い価格で補償 物件を保持し移転後も利用可能 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は土地改良物を土地とともに一併徵收するのが原則で、所有者が取回して自ら移転する場合は例外とする。日本とは原則と例外の向きが逆になっている
韓国も移転費補償を原則とし、移転が困難な場合や移転すると従来の目的どおり使えなくなる場合は物件の価格で補償する。日本と非常に近い構造
米国連邦法は、取り除かれる又は悪影響を受ける建物・構造物・改良物について、行政機関が土地と同等の権利を取得することを求める
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 町工場の床にアンカーで固定した30トンの鍛造プレス。解体・再据付をすると精度が戻らず、メーカーの保守も切れる。起業者の担当者は「移転工法で補償します」と言うが、所有者は78条で物件ごとの収用を請求する余地がある。決め手は「移しても従来の目的に使えるか」を示す技術的資料である
- 道路拡幅にかかった祖父の代からの庭園。樹齢80年の松は掘り起こせば枯死の可能性が高い。移植費用を移転料として受け取り、移植後に枯れたら誰が責任を負うのか? 移転が著しく困難だと立証できれば、立木そのものの収用を求める道がある
- 収用委員会の審理期日の通知が届いた。明渡裁決まで残り数か月。意見書でこの請求を出していないことに、今になって気付いた
- あなたが起業者側の用地担当だとしたら、どうなる? 所有者が78条を主張してきたとき、移転工法の検討が甘いままだと「移転困難」を否定できない。工法比較の資料を先に固めておかないと、補償額の想定が崩れる
- 地下貯蔵タンクと配管が土地と一体化した給油所。タンクは掘り出せても、移転先で消防法上の許可を取り直す必要があり、同じ形で営業できる保証はない。移転後に従来目的に供することが著しく困難かどうかが争点になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 対象物件ごとに、移転の可否と移転後に従来の用途で使えるかを整理する。機械ならメーカー、庭木なら造園業者、工作物なら施工業者の意見書を取る2. 起業者が提示する移転工法・移転料の算定根拠を書面で求める3. 任意交渉で合意できなければ、収用委員会の審理で意見書により78条の収用請求を明示する4. 裁決の補償額に不服があれば、損失補償に関する訴え(133条)を検討する。弁護士または補償コンサルタントへの早期相談が有効
訴えられた側:1. 起業者側は、移転工法の比較検討(曳家、再築、復元等)と移転後の機能確保を資料で示し、「著しく困難」に当たらないことを説明できるようにしておく2. 逆に移転料が物件の取引価格を超える場合は、起業者自身が79条で物件の収用を請求できるので、両方の算定を並べて検討する3. 所有者の主張を聞かずに工法を決め打ちすると、審理で前提が崩れ補償額が膨らむ。早い段階で所有者側の技術的事情を聴取する
時効(請求できる期限):78条の収用請求は、収用委員会の裁決前、審理の場で主張しておく必要がある(請求の時期については手続規定と運用を事前に確認すること)。裁決の補償額に不服がある場合の訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内(土地収用法133条)。損失補償の不服は収用委員会の裁決に対する審査請求の理由にできない(同法132条2項)ので、訴訟ルートを前提に期限を管理する
学説
通説:78条は移転料補償を原則とする77条の例外として、物件の価値が場所や用途と一体である場合に所有者の不利益を防ぐ規定と解される。「著しく困難」の判断は物理的困難のみならず、技術的・経済的・用途的事情を総合して行われる
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和26年(1951年) 新設:現行土地収用法の制定により、移転料補償の原則(77条)とともに所有者側の物件収用請求(78条)、起業者側の物件収用請求(79条)が規定された
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める