土地収用法 第80条(物件の補償)
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前二条の規定によつて物件を収用する場合において、収用する物件に対しては、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。
この条文の基本情報
物件の補償とは何ですか?
定義物件の補償とは、土地収用法第80条に定められた規定で、「前二条の規定によつて物件を収用する場合において、収用する物件に対しては、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第80条(物件の補償)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第80条の条文原文は「前二条の規定によつて物件を収用する場合において、収用する物件に対しては、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。」で始まります。
- 土地収用法第80条は第一節 収用又は使用に因る損失の補償に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第80条の前の条は土地収用法第79条です。
- 土地収用法第80条の次の条は土地収用法第80条の2です。
- 土地収用法第80条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第80条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第80条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/80
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法80条は、78条・79条により物件を収用する場合、近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格で補償すると定める。基準は再築費ではない。
Q · 道路工事で古い建物が収用されたら、建て直せるだけのお金はもらえるの?
取引価格が基準で、再築費は原則出ない
土地収用法80条により、78条・79条で物件そのものが収用される場合の補償は「近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格」です。基準は再築費ではないため、古い建物ほど建て直し費用との差が大きくなります。ただし、引越し費用や営業休止などの損失は88条の「通常受ける損失」として別途補償される余地があり、裁決額に不服があれば133条の訴えで裁判所に額を認定し直してもらうこともできます。
解説
収用で受け取れるのは、建物を建て直す費用ではなく、その建物を売ったらいくらになるかという額である。土地収用法80条は、78条・79条によって物件そのものが収用される場合、その補償を「近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格」と定めている。ここで仕組みが分かれる。物件の補償には二つの道がある。一つは物件を別の場所へ移す費用をもらう「移転料」(77条)、もう一つは物件そのものを起業者(道路や鉄道などの事業を行う国・自治体・会社)に取得させ、その価格をもらう「物件収用」(80条)である。78条により、移転料が物件の価格を超えるとき、起業者は物件の収用を請求できる。築40年の木造家屋や古い倉庫は、移すのに大金がかかるのに市場価値は低い。この場合、補償は安い方の物差しで決まる可能性がある。一方で79条は所有者側にも、移転が著しく困難なときに収用を求める権利を与えている。どちらの道を選ぶかで手元に残る額が変わる。その分かれ道がここにある
法的な位置づけ
土地収用法80条は、同法78条(起業者の請求)または79条(所有者の請求)により物件そのものを収用する場合の補償基準を定める規定である。補償額は、近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格とされ、移転料補償(77条)とは別の算定方式として位置付けられる。
手順
- 1.補償内訳と算定方式を書面で確認 用地担当者に補償額の内訳を書面で求め、移転料(77条)と物件収用(80条)のどちらの方式で算定されたか、比較に使った移転工法と取引事例を確認する
- 2.通常損失の項目を洗い出す 物件価格とは別に、移転雑費・仮住まい費用・営業休止損失など88条の通常受ける損失に当たる項目を一覧化し、提示額に含まれているか照合する
- 3.79条の収用請求を検討 物件の移転が著しく困難、または移転すると従来の用途に供することが著しく困難な事情があれば、所有者側から物件の収用を請求することを検討する
- 4.独自鑑定を取り収用委員会で主張 任意交渉が決裂したら不動産鑑定士に独自鑑定を依頼し、近傍同種の取引事例や再調達原価からの算定根拠を収用委員会の審理で提出する
- 5.期限内に損失補償の訴えを提起 裁決の補償額に不服があれば、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に、起業者を被告として損失補償の訴え(133条)を提起する
よくある質問 AI による整理
Q1物件の収用とは何ですか?
建物や工作物を移転させずに、物件そのものを起業者に取得させる手続です。土地収用法78条・79条で請求でき、補償額は80条の相当な価格で決まります。
Q2収用の補償金はどうやって計算されますか?
物件収用の場合、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して相当な価格を算定します(80条)。これとは別に、移転雑費や営業損失などの通常損失(88条)が加算され得ます。
Q3収用の補償金に税金はかかりますか?
譲渡所得として課税対象になり得ますが、租税特別措置法の収用等の5,000万円特別控除が使える場合があります。買取り申出からの期間要件があるため、最新の要件を税務署等で確認してください。
Q4収用委員会とは何をするところですか?
都道府県に置かれる行政委員会で、収用する範囲や補償額などを裁決します。起業者の見積りに拘束されず、当事者の主張や鑑定を踏まえて判断します。
Q5補償額に不満なら審査請求できますか?
できません。損失補償への不服は審査請求の理由にできず(132条2項)、裁決書の送達から6か月以内に損失補償の訴え(133条)を起こす必要があります。
Q6庭木やブロック塀も補償の対象になりますか?
土地に定着する工作物や立木も物件として補償の対象になり得ます。移転料で補償するか、物件として収用して取引価格等で補償するかが争点になります。
Q7任意買収と土地収用の違いは何ですか?
任意買収は起業者との合意による売買契約、土地収用は合意できない場合に収用委員会の裁決で強制的に権利を取得する手続です。補償の考え方自体は共通する部分が多くあります。
Q8収用補償の算定に不動産鑑定は必要ですか?
法律上の義務ではありませんが、起業者の算定に対抗するには有力な証拠になります。特に取引事例が乏しい物件では、独自鑑定の有無で主張の説得力が大きく変わります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1移転料と物件の買取り、どっちになるかって役所が勝手に決めるんですか?
勝手ではないが、起業者に選択の余地がある。78条は、移転料が物件の取引価格を超えるとき起業者が物件の収用を請求できるとし、79条は移転が著しく困難なとき所有者側が収用を請求できるとする。最終的に決めるのは収用委員会の裁決である。実務のポイント:移転料の見積りは採る工法で大きく変わる。工法の前提を崩せば、比べる土台そのものが動く
Q2収用委員会が決めた補償額って、もう裁判でもひっくり返せないんですか?
ひっくり返せる。最高裁(最判平成9.1.28)は、裁判所は収用委員会の判断に拘束されず、証拠に基づいて正当な補償額を客観的に認定できるとした。訴えは起業者を相手方とする当事者訴訟(133条3項)で、期限は裁決書の送達から6か月である。実務のポイント:訴訟では鑑定の質が勝負を分ける。収用審理の段階から鑑定書を準備しておくと、訴訟でも主張がぶれにくい
Q3古い家だと建て直せないくらいの金額しか出ないって、それ本当に合法なんですか?
80条の文言上、基準は取引価格であって再築費ではない。判例の完全補償論(最判昭和48.10.18)も、財産価値の等価を求めるにとどまる。ただし、引越し費用、仮住まい、営業休止などの損失は88条で別途補償される余地がある。実務のポイント:実務の損失補償基準には、物件価格とは別建ての補償項目が数多くある。項目を一つずつ確認するだけで総額が変わることは珍しくない
間違えやすい点 AI による整理
- 「公共事業で家を取られるなら、同じ家を建て直せるだけの金が出る」と考える人は多い。だが80条の基準は取引価格である。再築費ではない。古い建物ほど、この差が大きく開く。完全補償の判例(最判昭和48.10.18)も、収用前と後で「財産価値」を等しくすることを求めるにとどまる。従前と同じ暮らしの再現までを当然に保障するものではない
- 損失を一つの額で考えていること自体が出発点の誤りである。物件そのものの価格(80条)とは別に、引越し費用や営業休止による損失など「通常受ける損失」(88条)が積み上がる構造になっている。物件価格の数字だけで交渉を終えると、請求できたはずの項目を自分で捨てることになる
- 所有者から見れば「役所が決めた補償額」は動かせない公定価格に見える。だが法律の上では、収用委員会の裁決した額でさえ、裁判所が客観的に正しい額を認定し直せる(最判平成9.1.28)。行政の言い値と法的に正当な額は別物である。この違いを知らないまま判を押す人が後を絶たない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 補償の対象 | 80条:収用される物件そのものの価格 | 77条:物件を移転させるための移転料 88条:移転雑費・営業損失など通常受ける損失 |
| 算定の物差し | 近傍同種の物件の取引価格等を考慮した相当な価格 | 移転に要する費用(移転工法により変動) 実際に通常生ずる損失の額 |
| 適用される場面 | 78条(起業者請求)・79条(所有者請求)で物件収用となった場合 | 物件を移転させる原則的な場合 収用・使用に伴い通常生ずる損失がある場合(80条・77条と併存し得る) |
| 所有者側の注意点 | 古い物件ほど再築費との差が大きい | 移転料が物件価格を超えると78条で物件収用に切り替えられ得る 項目を自ら洗い出さないと請求漏れが生じる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は建築改良物の補償を徴収時の重建価格で見積もる。取引価格を基準とする日本80条とは物差しが異なり、古い建物の所有者にとって差が出やすい
韓国も原則は移転費補償とし、移転費が物件価格を超える場合等は物件価格で補償する構造で、日本の77条・78条・80条の組合せに近い
ドイツは収用補償の基準を取引価格(Verkehrswert)とし、市場価値を物差しとする点で日本と共通する
米国の正当な補償は公正市場価格(fair market value)が基準。移転費用は連邦の Uniform Relocation Act 等で別途手当てされる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 県道の拡幅で、祖父の代から続く木造の作業小屋がかかった。役所の担当者は「移転は費用が過大なので物件として買い取る形になります」と言う。提示額は驚くほど低い。理由は78条と80条の組み合わせにある。移転料と物件価格を比べ、安い方が採られたのである
- 店舗兼住宅の裏に建てた大型の冷凍倉庫が、駅前再開発の区域に入った。倉庫を移す先の土地がなく、移しても同じ使い方ができない。そこであなたは79条で収用を求めることにする。その瞬間から、勝負は80条の「相当な価格」をどう積み上げるかに移る
- 起業者側の用地担当として、相手方の古い工作物の補償額を出す立場になったら、どうなるか? 近傍同種の取引事例がほとんどない物件では、算定根拠の説明が甘いと収用委員会で崩される。裁判所は補償額を独自に審理し直すからである
- 収用委員会の明渡裁決書が届いた。補償額に納得がいかない。額を争う訴えの期限は、送達から6か月である
- 隣人の母屋が収用対象になり、相談を受けた。「移すのと買い取られるのと、どっちが得なの?」。答えは一つではない。移転料の見積り、物件の取引価格、営業や引越しにかかる付随損失の三つを並べないと判断できない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 提示額の内訳を書面で求め、移転料(77条)と物件収用(80条)のどちらの方式か確認する2. 移転が困難な事情があれば79条の収用請求を検討する3. 物件価格とは別に、88条の通常受ける損失(移転雑費・営業補償等)の項目を洗い出す4. 任意交渉で折り合わなければ独自の鑑定を取り、収用委員会で主張する5. 裁決額に不服があれば、損失補償の訴え(133条)を期限内に起こす
訴えられた側:起業者側の対応:1. 78条で物件収用を請求する前に、移転料見積りと近傍同種の取引事例の両方を記録で固める2. 取引事例が乏しい物件は、再調達原価からの減価など算定過程を説明できるようにしておく3. 所有者の79条の請求には、移転困難の事情を具体的に検証して応答する4. 裁判所は補償額を独自に認定するため、根拠の弱い低額査定は訴訟で覆るリスクがあると心得る
時効(請求できる期限):収用委員会の裁決のうち損失補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内(土地収用法133条2項)。裁決の取消しを求める訴えは3か月以内(同条1項)。補償額への不服は審査請求の理由にできない(132条2項)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
完全補償説(通説・判例):憲法29条3項の正当な補償は、収用される財産の客観的な市場価値を全額補償することを意味する。80条の取引価格基準はこれを物件について具体化したものと理解される
生活権補償論:取引価格のみでは従前の生活再建が困難な場合があるとして、通常損失補償や生活再建措置により財産価値の補償を超える配慮を求める見解。80条の限界を補う議論として位置付けられる
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和26年(1951年) 新設:現行土地収用法の制定に伴い、物件を収用する場合の補償基準として規定された
- 土地収用法 第77条移転料補償、物件収用との代替関係
- 土地収用法 第78条起業者による物件収用の請求
- 土地収用法 第79条所有者による物件収用の請求
- 土地収用法 第88条通常受ける損失の別途補償
- 土地収用法 第133条損失補償の訴えと出訴期間
- 行政事件訴訟法 第4条補償額訴訟を形式的当事者訴訟とする根拠
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