土地収用法 第80条の2(原状回復の困難な使用の補償)
クイックジャンプ
- 土地を使用する場合において、使用の方法が土地の形質を変更し、当該土地を原状に復することを困難にするものであるときは、これによつて生ずる損失をも補償しなければならない。
- 2.前項の規定による土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額については、第七十一条の例による。
この条文の基本情報
原状回復の困難な使用の補償とは何ですか?
定義原状回復の困難な使用の補償とは、土地収用法第80条の2に定められた規定で、「土地を使用する場合において、使用の方法が土地の形質を変更し、当該土地を原状に復することを困難にするものであるときは、これによつて生ずる損失をも補償しなければなら…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第80条の2(原状回復の困難な使用の補償)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第80条の2の条文原文は「土地を使用する場合において、使用の方法が土地の形質を変更し、当該土地を原状に復することを困難にするものであるときは、これによつて生ずる損失をも補償しなければなら…」で始まります。
- 土地収用法第80条の2は第一節 収用又は使用に因る損失の補償に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第80条の2の前の条は土地収用法第80条です。
- 土地収用法第80条の2の次の条は土地収用法第81条です。
- 土地収用法第80条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第80条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第80条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/80_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法80条の2は、土地の使用が形質を変更し原状回復を困難にする場合、使用の補償に加えてその損失の補償を義務付ける。補償額は71条の例により算定する。
Q · 工事で一時的に貸した土地が元に戻らないとき、使用料以外に補償はもらえるの?
原状回復が難しければ、使用料とは別に損失の補償を受けられる
土地収用法80条の2により、土地の使用の方法が形質を変更し、原状に戻すことを困難にする場合、起業者は72条の使用の補償に加えて、その損失も補償しなければなりません。額は71条の例により、事業認定告示時の相当価格を基準に物価変動を修正して算定されます。なお、形質を変更する使用であれば、土地所有者は81条により土地の収用を請求する選択肢もあります。
解説
「使用」と聞けば、期間が終われば土地は戻ってくると考えるのが普通だ。だが現場の「使用」は違う。農地に砕石を敷き詰める、斜面を切って工事用道路を通す、地下に撤去予定のない構造物を埋める。期間が終わって返ってきた土地は、もう田んぼに戻らない。土地収用法80条の2は、このずれを正面から扱っている。使用の方法が土地の形質(地形・土質など、土地そのものの姿)を変え、原状に戻すことが難しい場合、起業者(道路会社や自治体など、事業を行う側)は通常の使用の補償に加えて、その損失も補償しなければならない。額は71条の例により、事業認定の告示時点の相当価格を基準に、物価変動を反映させて算定する。用地交渉の席で使用料の見積書しか渡されていないなら、そこには一行足りないかもしれない。その一行を指摘できるかどうかで、受け取る額が変わる。
法的な位置づけ
土地収用法80条の2は、原状回復困難な土地使用に対する損失補償を定める規定である。土地の使用の方法が土地の形質を変更し、原状に復することを困難にするときは、起業者は使用に対する補償に加え、これによって生ずる損失も補償しなければならない。所有権以外の権利に対する補償を含め、補償金の額は同法71条の例により算定される。
手順
- 1.工事計画図で形質変更の有無を確認する 使用の打診を受けたら、起業者から工事計画図を取り寄せ、切土・盛土・舗装・砕石敷き・埋設物の有無と、撤去予定の有無を確認する。原状回復が困難な工事かどうかを最初に見極める
- 2.着工前の現況を記録する 着工前に、土地を四方から撮影し、地形・排水・土質の状態を測量や土壌分析で残す。日付入りの記録が、後で原状回復の困難性を立証する決め手になる
- 3.本条の補償と81条の収用請求を比較する 72条の使用補償に本条の損失補償を加えた額と、81条で収用を請求した場合の補償額を比べ、返還後の土地の使い道も考えて方針を決める
- 4.収用委員会の審理で意見書と証拠を出す 協議が整わず裁決手続に入った場合、審理の段階で形質変更による損失を意見書に明記し、現況記録を証拠として提出する。81条の収用請求をするならこの段階で行う
- 5.裁決後は期限内に補償額を争う 裁決の補償額に不服があれば、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内に、起業者を相手として損失補償に関する訴えを提起する(133条)
よくある質問 AI による整理
Q1土地収用法80条の2とは何ですか?
土地を一時使用する公共事業で、形質を変えて元に戻すのが難しくなる場合に、使用料とは別にその損失も補償させる規定です。
Q2土地の形質変更とはどういう意味ですか?
切土・盛土、砕石敷き、舗装、構造物の埋設などで、地形や土質といった土地そのものの姿を変えることを指します。
Q3公共工事で土地を貸すと補償はいくらですか?
基本は72条の使用の補償(地代相当額など)です。形質変更で原状回復が困難なら、本条によりその損失分が加算されます。
Q4原状回復が困難かどうかは誰が判断しますか?
協議が整わなければ収用委員会が裁決で判断します。工事図面や着工前の現況記録が判断材料になります。
Q5工事ヤードに使われた農地は元に戻してもらえる?
返還と原状回復が原則です(105条)。ただし原状回復が困難な部分は、本条による金銭補償で手当てされる構造です。
Q6土地使用の補償額に不服があるときはどうする?
補償額への不服は審査請求では争えず、裁決書の送達を受けた日から6か月以内に起業者を相手に訴えを起こします(133条)。
Q7所有者以外の借地人や耕作者も補償を受けられる?
受けられます。本条2項は所有権以外の権利に対する補償も対象とし、その額は71条の例により算定されます。
Q8使用ではなく収用(買取り)を求めることはできる?
できます。使用が3年以上に及ぶ場合、形質を変更する場合、所有者の建物がある場合は、81条により収用を請求できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1「使用」なら、期間が終われば元どおりにして返してもらえるんじゃないんですか?
返還と原状回復が原則です(105条)。ただし本条は、原状回復が困難な使用について、その損失を補償で手当てする仕組みです。実務のポイント:補償を受けた範囲では、後から「元に戻せ」と求めにくくなる構造があります。お金で済ませるか、回復させるか、または81条で収用を求めるか。裁決の前に、自分で方針を決めておく必要があります
Q2補償額って、いつの時点の値段で決まるんですか?
本条2項により71条の例によります。事業認定の告示時点の相当価格を基準に、権利取得裁決時までの物価変動を修正率で反映する仕組みで、地価の値上がり待ちは効きません。実務のポイント:事業認定の告示後、土地所有者は起業者に補償金の支払いを請求できます(46条の2)。粘って値上がりを待つより、早く受け取って運用するほうが合理的な場面もあります
Q3形を変えられるくらいなら、いっそ買い取ってほしい。そんなこと言えるんですか?
言えます。使用によって土地の形質が変わる場合、使用が3年以上にわたる場合、土地所有者の建物がある場合には、土地所有者は収用を請求できます(81条)。実務のポイント:起業者から最初に提示されるのは使用の補償のほうが多く、収用請求の選択肢を自分から説明してもらえるとは限りません。返還後にその土地をどう使えるかで、どちらが得かは逆転します
間違えやすい点 AI による整理
- 「使用なのだから期間が終われば元どおりにして返してもらえる」と思われがちだ。返還と原状回復が原則なのは確かだが(105条)、形質を変えて原状回復が難しい使用は、本条の補償という金銭で手当てする構造になっている。「元に戻してもらう」前提で黙っていると、戻らない土地と、補償に入っていない損失だけが残る
- 「使用料をいくらに上げられるか」という問いの立て方自体がずれている。形質を変える使用であれば、地権者は81条で土地の収用(実質的な買取り)を請求できる。先に考えるべきは単価ではない。「使用のまま受けるか、収用を求めるか」という選択である
- 補償額が告示時点の価格を基準にすることは知っていても、その重さを知らない人が多い。71条の例による算定では、交渉が長引いても地価上昇分は乗らず、反映されるのは物価変動の修正だけだ。粘れば上がるという民間取引の感覚は、ここでは通用しない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 補償の対象 | 80条の2:形質変更で原状回復が困難になることによる損失 | 72条:土地の使用そのものに対する補償(地代相当額など) 81条:土地所有者の請求による収用(所有権の取得) |
| 発動の条件 | 使用の方法が形質を変更し、原状回復を困難にする | 土地を使用するすべての場合 使用3年以上、形質変更、所有者の建物がある場合のいずれか |
| 土地所有者に残るもの | 所有権+使用補償+損失補償(返還後の土地は形が変わったまま) | 所有権+使用補償(返還時は原状回復が原則、105条) 所有権は失い、収用の補償金を受ける |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は一時使用を「徴用」と呼び、使用期間が3年を超える場合に所有者が徴収を請求できる。形質変更そのものを独立の補償項目とする日本の構造とは整理の仕方が異なる
韓国は使用の補償と、3年以上の使用・形質変更・建物所在の場合の買収請求を定め、日本の72条・81条と構造が近い
米国では一時的な占用も Takings Clause の補償対象となりうるとされ、補償の算定は判例で個別に扱われる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 高速道路の工事ヤードとして4年間貸した畑が、砕石と重機の轍で固められたまま返ってきたら、どうなる? 使用料だけ受け取って終わりにしていれば、本条の損失分はどこにも計上されていない。耕せない畑だけが手元に残る
- あなたは自治体の用地担当で、河川改修の仮設道路のために私有地の使用裁決を申請する。法面を切り盛りする計画なのに、補償を72条の使用の補償だけで積算した。審理で地権者側に本条を指摘されれば、裁決額は予算を超える。形質変更の有無を、積算の段階で工事図面と照らし合わせておくべきだった
- 地下に送水管を通すための使用。管を撤去する予定はない。原状回復は事実上不可能である
- 収用委員会の裁決書が届いた。形質変更の損失が補償額に反映されていない。審査請求では補償額への不服を理由にできず(132条2項)、起業者を相手に、送達を受けた日から6か月以内に訴えを起こすしかない(133条)。カレンダーをめくるたびに残り時間が減っていく
- 実家の母から電話で「鉄塔の工事で山を数年貸してほしいと言われた」と相談された。尾根を削って作業道を通す計画なら、使用料の話では済まない。本条の補償に加えて、81条の収用請求まで視野に入れた相談になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 使用の打診を受けたら、工事計画図で切土・盛土・舗装・埋設物の有無を確認し、形質変更に当たるかを見極める2. 着工前に写真・測量・土壌の状態を記録する3. 形質変更がある場合、本条の補償を受けるか、81条で収用を請求するかを比較する4. 収用委員会の審理で意見書と証拠を出す5. 裁決後も補償額に不服があれば、133条の訴えを期限内に起こす
訴えられた側:1. 起業者側は、積算の段階で使用の方法を図面と照合し、原状回復が難しい部分を特定する2. 72条の使用の補償と本条の損失補償を分けて積算し、根拠資料を整える3. 81条の収用請求が出る可能性を見込み、収用時の補償額との比較表を用意する4. 返還時の原状回復の範囲と、補償で代える範囲を合意書や裁決で明確にしておき、返還時の紛争を防ぐ
時効(請求できる期限):収用委員会の裁決のうち損失補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内(133条2項)。補償以外の点で裁決を争う審査請求は、送達を受けた日の翌日から30日以内(130条)。81条の収用請求は収用委員会の審理の中で行う必要がある(最新の改正状況をご確認ください)
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める