土地収用法 第79条(移転料多額の場合の収用請求権)
クイックジャンプ
第七十七条の場合において、移転料が移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格をこえるときは、起業者は、その物件の収用を請求することができる。
この条文の基本情報
移転料多額の場合の収用請求権とは何ですか?
定義移転料多額の場合の収用請求権とは、土地収用法第79条に定められた規定で、「第七十七条の場合において、移転料が移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格をこえるときは、起業者は、その物件の収用を請求することができる…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第79条(移転料多額の場合の収用請求権)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第79条の条文原文は「第七十七条の場合において、移転料が移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格をこえるときは、起業者は、その物件の収用を請求することができる…」で始まります。
- 土地収用法第79条は第一節 収用又は使用に因る損失の補償に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第79条の前の条は土地収用法第78条です。
- 土地収用法第79条の次の条は土地収用法第80条です。
- 土地収用法第79条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第79条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第79条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/79
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法79条は、物件の移転料が相当物の取得価格を超えるとき、起業者がその物件の収用を請求できると定める。要件の判断は収用委員会が行う。
Q · 道路工事にかかった蔵や庭木は、移転ではなく買い取り(収用)にされることがあるの?
移転料が相当物の取得価格を超えれば、収用されうる
土地収用法77条は、事業区域内の建物や立木などを移転させ、移転料を補償するのが原則です。ただし同法79条により、移転料がその物件に相当するものを取得するのに要する価格を超えるときは、起業者は物件そのものの収用を請求できます。比較の基準は古い物件の時価ではなく「相当物の取得価格」です。要件を満たすかどうかは収用委員会が裁決で判断するため、所有者は両方の算定根拠を確認し、意見書で争うことができます。
解説
築六十年の土蔵、祖父が植えた松、移築が難しい古い木造家屋。道路や河川の事業区域にかかったとき、まず検討されるのは物件を移転させて移転料を払う方法である(土地収用法77条)。ただし、例外の道がある。移転料が「同等のものを新たに手に入れる価格」を上回るとき、起業者(事業を行う国・自治体・鉄道会社など)は、その物件そのものの収用を請求できる。わかりやすく言えば、「動かすより買い取るほうが安いなら、買い取らせてほしい」と申し出る権利である。あなたが「先祖代々の蔵を移して残したい」と望んでいても、費用の比較次第で、移転ではなく収用に切り替わることがある。逆に言えば、あなたの手元には二つの数字を見比べる視点が必要になる。移転料の見積額と、相当物の取得価格である。この二つを確認しないまま補償内訳書に判を押すと、思い入れのある物件を失うかどうかの判断を、相手の算定に任せることになる。
法的な位置づけ
土地収用法79条は、物件の移転料が当該物件に相当するものを取得するのに要する価格を超える場合に、起業者が物件そのものの収用を請求できる旨を定める規定である。同法77条の移転補償原則に対する起業者側の例外であり、移転困難時の所有者側の収用請求を定める78条と対をなす。要件充足の判断は収用委員会の裁決による。
手順
- 1.補償内訳書の二つの数字を確認 起業者から補償内訳書を受け取ったら、移転工法・移転料の見積額と、相当物の取得価格の両方が記載・開示されているかを確認する。片方しかない場合は書面で算定根拠の開示を求める
- 2.別業者から移転費の相見積もりを取る 移転を望む場合、曳家業者や造園業者など別の業者に移転費用の見積もりを依頼し、起業者の見積額より安い工法がないかを確認する
- 3.収用委員会の審理で意見書を出す 裁決手続に入ったら、相見積もりなどを添付して、移転料が相当物の取得価格を超えておらず79条の要件を満たさない旨を意見書で主張する
- 4.署名・申告前に税理士へ確認 移転補償か収用対価かで税務上の扱いが変わりうるため、契約書への署名や確定申告の前に、収用等の課税特例の適用可否を税理士に確認する
よくある質問 AI による整理
Q1土地収用法79条とは?
物件の移転料が、同等の物件を取得する価格を超える場合に、起業者が移転ではなく物件そのものの収用を請求できると定めた規定です。
Q2移転料が高いと必ず収用される?
自動的には収用されません。起業者が収用を請求し、収用委員会が「移転料が相当物の取得価格を超える」という要件を満たすと判断した場合に限られます。
Q3相当物の取得価格は誰が算定する?
まず起業者が補償基準に沿って見積もりますが、最終的には収用委員会が審理を経て判断します。所有者は算定根拠の開示を求め、反対資料を出せます。
Q4収用請求に所有者の同意は必要?
不要です。79条の請求権は起業者側にあり、所有者が移転を望んでも、要件を満たせば収用委員会の裁決で収用が認められることがあります。
Q5庭木や庭石も収用の対象になる?
なりえます。土地収用法上の「物件」には建物のほか立木や工作物なども含まれ、移植費が同規格品の取得価格を超えれば79条の請求対象になりえます。
Q6古い蔵や文化的価値のある建物でも収用される?
79条の比較は金額のみで、思い入れなどの主観的価値は入りません。ただし文化財保護法上の指定がある場合は別の手続や配慮が問題になります。
Q7収用委員会の裁決に不服 いつまで?
審査請求は裁決書正本の送達を受けた日の翌日から30日以内、損失補償に関する訴えは送達から6か月以内が目安です。最新の改正状況を確認してください。
Q8移転を続けたい場合どう争う?
別業者や別工法による安い移転見積もりを示し、移転料が相当物の取得価格を超えないと収用委員会の審理で主張するのが基本的な争い方です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1うちの蔵、移したいって言っても無理やり買い取られちゃうんですか?
移転料が同等の物件を取得する価格を超える場合に限り、起業者は収用を請求できる(土地収用法79条)。要件を満たすかどうかは収用委員会が判断する。実務のポイント:移転料の見積もりは、起業者が選んだ工法を前提にしていることが多い。別の工法や業者で安く移転できるという見積もりを出せば、比較の結果が変わることがある
Q2収用になったら、もらえるお金は移転料より減るんですか?
物件を収用する場合の補償は、近傍同種の物件の取引価格などを考慮した相当な価格になる(同法80条)。そのほか、通常受ける損失の補償(同法88条)も別に検討される。実務のポイント:物件本体の補償額だけを見ず、動産の移転費や仮住まい費用など88条の項目が漏れていないかを一行ずつ確認する。ここが取りこぼされやすい
Q3移転じゃなくて収用扱いになると、税金って変わりますか?
変わりうる。収用の対価には、租税特別措置法の収用等の課税特例(代替資産の特例や特別控除)の適用が検討される。移転補償金には別の取扱いがある。実務のポイント:移転補償金を受け取って実際には建物を取り壊した場合、対価補償として扱える規定もある。名目と実態が食い違う場面こそ、署名前に税理士に確認する価値がある(最新の改正状況をご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 「収用されるのは土地だけで、建物や木は移転させてもらえる」と思われがちである。実際は77条で移転が原則とされているにすぎず、79条の条件を満たせば、建物・工作物・立木といった物件そのものも収用の対象になる
- 収用請求ができるのは起業者だけだと知っている人も、その比較基準を見誤っていることが多い。比べられるのは、古い物件の時価ではなく「相当するものを取得するのに要する価格」である。基準を時価と思い込んで反論すると、論点を外す
- 「移転と収用、どちらが得か」と考える所有者は多い。だが、問題の立て方として不十分である。79条の要件を満たすかどうかを判断するのは収用委員会であり、得か損かより先に、算定根拠が正しいかを問う必要がある。損得は、その結果として決まる
- 所有者は「思い出の詰まった蔵」として見ている。法律は「移転料と相当物の価格という二つの金額の比較」として見ている。感情的な価値は79条の比較に入らないため、その落差に気づかないまま交渉すると、主張が噛み合わない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 誰が主導するか | 79条:起業者が物件の収用を請求 | 77条:起業者が移転料を補償して移転させる(原則) 78条:所有者が物件の収用を請求 |
| 発動の条件 | 移転料が相当物の取得価格を超えるとき | 物件を移転させる必要があるとき(原則形態) 移転が著しく困難、または移転により従来の目的に供することが著しく困難なとき |
| 物件の行方 | 物件は収用され所有者の手元に残らない | 物件は移転され所有者の手元に残る 物件は収用され所有者の手元に残らない |
| 制度の狙い | 公共事業費の合理性の確保 | 所有者の財産存続の尊重 移転を強いられる所有者の不利益回避 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は土地改良物を土地と一併徵收するのが原則で、所有者が自ら遷移を求める構造。日本の「移転が原則、費用次第で収用」とは原則と例外が逆になっている
建築物等は移転費補償を原則とし、移転費が物件の価格を超える場合などは物件の価格で補償する。日本の77条・79条と構造が近い
ドイツは建設法典で収用(Enteignung)と補償を規律。収用の範囲の拡張・限定に関する規定があるが、日本の移転料比較型の請求権とは構造が異なる
米国は連邦資金事業での取得と移転支援を統一的に規律。移転支援は主に居住者・事業者の移転費用の補填に重点がある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 県道の拡幅で、庭の樹齢百年のクスノキが事業区域にかかった。曳家業者の見積もりでは移植費が数百万円。同じ規格の成木を造園市場で買えばはるかに安い。起業者は79条の収用請求に切り替える方針を示した。木はあなたの手元に残らない
- 古い土蔵を残したい、と言ったら断られた。なぜ? 移転料が同等の蔵を取得する価格を超えていたからである
- もし、あなたが起業者側の用地担当者で、移転工法の見積額が物件の取得価格の倍に膨らんでいたら、どうする? 77条の移転補償を続ければ予算は大きく膨らむ。79条に基づく収用請求を収用委員会に出すかどうかが、事業費の分かれ目になる
- 収用委員会の裁決書が届いた。審査請求の期限は送達の翌日から30日、補償額を争う訴えは送達から6か月。蔵が「移転」でなく「収用」と判断された理由を確かめる時間は限られている
- 実家の相続を控えたあなたに、親から「区画整理だか道路だかで、蔵を買い取るって言われた」と電話が来た。親は移転料の話だと思い込んでいる。補償の名目が違えば、受け取るお金の性質も税務上の扱いも変わりうる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 補償内訳書を受け取ったら、移転工法・移転料の見積額と、相当物の取得価格の算定根拠を書面で開示請求する2. 移転を望むなら、別の業者から移転費用の相見積もりを取り、移転料が取得価格を下回ることを示す材料にする3. 収用委員会の手続では意見書で79条の要件不充足を主張する4. 補償名目の違いで税務上の扱いが変わりうるため、署名前に税理士に確認する
訴えられた側:1. 起業者側は、移転料と相当物取得価格の比較を、公共用地の取得に伴う損失補償基準に沿った資料で立証できるよう整える2. 所有者の希望(移転存置)を記録し、収用へ切り替える理由を丁寧に説明して紛争化を避ける3. 文化的価値がある物件は、比較だけで押し切ると審理や世論で不利になる。代替案を検討する4. 収用委員会の審理で、算定の前提に争いがあることを見越して資料を準備する
時効(請求できる期限):79条固有の時効はない。収用委員会の裁決に不服がある場合、審査請求は裁決書正本の送達を受けた日の翌日から30日以内(土地収用法130条)。損失補償に関する訴えは送達を受けた日から6か月以内(同法133条)。補償額への不服は審査請求の理由にできず(同法132条)、訴訟で争う(最新の改正状況をご確認ください)
学説
条文解釈(一般的理解):79条の比較対象は既存物件の時価ではなく「相当するものを取得するのに要する価格」であり、主観的・感情的価値は比較に含まれない。要件充足は起業者の判断ではなく収用委員会の裁決で確定する
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和26年(1951年) 新設:現行土地収用法(昭和26年法律第219号)の制定により設けられた
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める