自衛隊法 第92条の2(防衛出動時の緊急通行)
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第七十六条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により出動を命ぜられた自衛隊の自衛官は、当該自衛隊の行動に係る地域内を緊急に移動する場合において、通行に支障がある場所をう回するため必要があるときは、一般交通の用に供しない通路又は公共の用に供しない空地若しくは水面を通行することができる。この場合において、当該通行のために損害を受けた者から損失の補償の要求があるときは、政令で定めるところにより、その損失を補償するものとする。
この条文の基本情報
防衛出動時の緊急通行とは何ですか?
定義防衛出動時の緊急通行とは、自衛隊法第92条の2に定められた規定で、「第七十六条第一項(第一号に係る部分に限る。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 自衛隊法第92条の2(防衛出動時の緊急通行)は、日本の自衛隊法に含まれる条文です。
- 自衛隊法第92条の2の条文原文は「第七十六条第一項(第一号に係る部分に限る。」で始まります。
- 自衛隊法第92条の2は第七章 自衛隊の権限に置かれています。
- 自衛隊法の公布日は昭和29年6月9日です。
- 自衛隊法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 自衛隊法第92条の2の前の条は自衛隊法第92条です。
- 自衛隊法第92条の2の次の条は自衛隊法第92条の3です。
- 自衛隊法第92条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第92条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000165 - 本サイト収録
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第92条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000165/92_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点自衛隊法92条の2は、武力攻撃事態で防衛出動した自衛官が、迂回のため私道や私有の空地・水面を通行できると定める。損失は被害者の要求があれば補償される。
Q · 有事に自衛隊がうちの私道や畑を通ったら、補償はもらえるの?
もらえるが、自分から補償を要求しなければ支払われない
自衛隊法92条の2は、76条1項1号の武力攻撃事態で防衛出動した自衛官が、迂回のため私道・私有の空地・水面を通行することを認めています。後段で、通行により損害を受けた者から損失補償の要求があるときは、政令で定めるところにより補償すると定めています。つまり補償は自動ではなく、被害者の要求が起点です。存立危機事態(同項2号)による出動や災害派遣は本条の対象外です。
解説
武力攻撃を受けた非常時でも、自衛隊は他人の土地を自由に通れるわけではない。通行できる場面は、本条が細かく絞り込んでいる。条件は四つある。(1)防衛出動(首相が命じる、外国からの武力攻撃への対処)のうち、自衛隊法76条1項1号の「武力攻撃事態」で命令が出ていること。同項2号の「存立危機事態」はわざわざ除かれている。(2)行動地域の中で緊急に移動する場面であること。(3)道が壊れている、ふさがっているなど、通行に支障がある場所を迂回するために必要であること。(4)認められるのは「通行」だけであること。対象になるのは私道、農道、私有の空き地、ため池のような水面である。陣地を作ったり土地に居座ったりするのは別の条文(103条)の仕事で、本条では許されない。そしてもう一つ見落とされやすい点がある。畑が踏み荒らされても、補償は自動では払われない。条文は「要求があるとき」に補償すると書いている。黙っていれば一円も入らない構造である。
法的な位置づけ
自衛隊法92条の2は、防衛出動時の緊急通行を定める規定である。同法76条1項1号の武力攻撃事態に基づき出動した自衛官が、行動地域内を緊急に移動する際、通行支障箇所を迂回するため必要な限度で、一般交通の用に供しない通路、公共の用に供しない空地または水面を通行することを認め、あわせて要求に基づく損失補償を定める。
よくある質問 AI による整理
Q1自衛隊法92条の2とは何ですか?
防衛出動中の自衛官が、壊れた道などを迂回するために私道・私有の空地・水面を通行できると定めた規定です。損害には要求に応じた補償があります。
Q2存立危機事態でも自衛隊は私有地を通行できる?
本条は76条1項1号(武力攻撃事態)に限ると明記しており、2号の存立危機事態による出動には本条の通行権は及びません。
Q3災害派遣で自衛隊が私有地に入るのは違法?
災害派遣は本条の対象外です。災害時の立入りや土地使用は災害対策基本法など別の法律の権限で判断されます。
Q4自衛隊の緊急通行の損失補償はどこに請求する?
防衛省や地方防衛局などの窓口に、本条後段に基づく補償を書面で要求するのが基本です。具体的手続は政令で定められているため窓口で確認してください。
Q5自衛隊の緊急通行で補償請求はいつまでできる?
本条に期限の明記はありませんが、国への金銭請求権は会計法30条により一般に5年で時効消滅するとされます。早めの請求が安全です。
Q6自衛隊は私有地に陣地を作ることもできる?
本条で許されるのは迂回のための通行だけです。土地の使用や物資の収用は103条の別手続で、都道府県知事の関与などが必要です。
Q7ため池や空き地も自衛隊の通行対象になる?
なります。条文は「公共の用に供しない空地若しくは水面」を対象に含めており、私有のため池や空き地も迂回路になり得ます。
Q8自衛隊の緊急通行に所有者の同意は必要?
76条1項1号の防衛出動中で迂回の必要性など要件を満たせば、所有者の同意がなくても通行は適法とされます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1有事に自衛隊が来たら、うちの土地を通るのを断れるんですか?
76条1項1号の防衛出動中で、緊急の迂回に必要という本条の要件を満たすなら、所有者の同意がなくても通行は適法になる。一方で、通行を超える使用や占有は103条の別手続になる。実務のポイント:争点になるのは「断れるか」よりも、その行為が本当に「通行」の範囲に収まっているかである。長時間の駐車や資材置き場としての利用は、本条の射程を外れる可能性が高い
Q2畑を荒らされた補償って、いくらくらい出るんですか?
本条後段は、政令で定めるところにより損失を補償すると定める。一般に損失補償は、通常生ずべき損失、つまり作物の損害や修繕費などが基準になる(憲法29条3項の「正当な補償」)。実務のポイント:補償額を左右するのは、被害直後の記録の精度である。収穫予定量、過去数年の出荷伝票、修繕見積書を揃えた人とそうでない人とでは、同じ畑でも査定がまったく違ってくる
間違えやすい点 AI による整理
- 「有事になれば自衛隊は何でもできる」と思われがちだが、本条が認めるのは迂回のための「通行」だけである。土地の使用、家屋の撤去、物資の収用は103条の別手続で、都道府県知事の関与や公用令書の交付といった手順が組み込まれている。通行許可を占有許可と混同すると、越権かどうかの判断を誤る
- 補償は国が当然払ってくれるものと安心している人は多い。しかし条文は「損失の補償の要求があるとき」と書く。被害者が声を上げなければ手続は動かない。有事の後の混乱期に、踏み荒らされた畑の記録を残さなかった人は、補償の土俵にすら上がれない。自動で支払われると思い込んでいること自体が、最大のリスクである
- 「自衛隊の出動」とひとまとめにされがちだが、法律上は防衛出動(76条)、治安出動(78条、81条)、災害派遣(83条)で権限の中身がまったく違う。しかも防衛出動の中でも、武力攻撃事態(1号)と存立危機事態(2号)で扱いが分かれる。どの出動かを確認しないまま「違法だ」「合法だ」と論じても、議論の出発点がずれている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 発動の前提 | 92条の2:76条1項1号(武力攻撃事態)の防衛出動に限る | 103条:防衛出動時等の土地使用・物資収用(知事の関与あり) 92条:防衛出動時の公共の秩序維持の権限 |
| 許される行為 | 迂回のための「通行」のみ | 土地・家屋の使用、物資の収用、工作物の撤去など 警察官職務執行法の準用等による秩序維持措置 |
| 手続の重さ | 現場の自衛官の判断で通行可、事前の令書なし | 公用令書の交付など事前手続が組み込まれている 出動命令を前提に、準用される法令の要件に従う |
| 損失補償 | 被害者の要求があるとき政令に基づき補償 | 同条に基づき通常生ずべき損失を補償 本条に独自の補償規定なし |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は動員時の物資・土地の徴用と補償を動員法制で包括的に規律する。日本のように「通行のみ」を切り出した個別条文とは設計が異なる
韓国は戦時・事変時の土地・物資の徴発と補償を徴発法で規律する。徴発は使用・収用を含む広い概念である
ドイツは防衛目的の給付・使用を連邦給付法で規律し、補償を伴う点で日本と共通する
米国では公用収用に正当な補償を求める憲法上の原則が基礎となる。有事の私有地通行を個別に定める条文は確認できていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 有事で幹線道路が寸断され、自衛隊の車列があなたの家の私道と裏の畑を抜けていった。キャタピラの跡が残る畝を前に、誰に何を言えばいいのか。答えは本条の後段にある。損失補償を自分から要求する。写真と被害面積の記録が第一歩になる
- もし出動命令が76条1項2号の「存立危機事態」に基づくものだったら、あなたの土地に同じ通行権は発生するのか? 条文は「第一号に係る部分に限る」と明記している。本条の根拠がない以上、自衛隊は所有者の同意なしに私有地を通る法的な足場を持たない
- あなたは町役場の防災担当である。住民から「自衛隊が勝手に私有地を通った、違法ではないか」と電話が殺到している。適法な通行でも、補償の窓口案内を誤れば住民の不信は一気に広がる。平時のうちに、政令に基づく補償手続の流れを確認しておく必要がある
- 大地震で自衛隊が災害派遣された。倒木を避けて、あなたの私有林道に入ってきた。これは本条の場面ではない。防衛出動ではないからだ。災害時の自衛官の権限は災害対策基本法などの別ルートで組まれている
- ため池を持つ農家のあなた。有事の混乱が収まったあと、池の堤が車両の通行で崩れていたことに気付いた。国に対する金銭請求には会計法上5年の時効がある。復旧の見積もりを取るなら、記憶と痕跡が鮮明な今しかない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通行の痕跡を日付入りの写真と動画で記録し、被害範囲、作物、構造物の損傷を一覧にする。2. 分かる範囲で通行した部隊と日時を控え、近隣の証言も集める。3. 防衛省、地方防衛局などの窓口に、本条後段に基づく損失補償を書面で要求する。手続の詳細は政令で定められているので、窓口に確認する。4. 修繕の見積書や、作物の減収を示す資料を添付する。5. 補償額に納得できなければ、弁護士に相談し、当事者訴訟(国などを相手に金銭の支払いを求める訴訟)を検討する(最新の運用をご確認ください)
訴えられた側:通行する部隊側や、住民対応をする自治体側にいる場合の要点。1. 命令の根拠が76条1項1号であることと、迂回の必要性(障害の具体的内容)を記録に残す。2. 通行は迂回に必要な範囲にとどめ、使用や占有に及ぶ場合は103条の手続に切り替える。3. 通過地点と日時を記録し、補償要求に備える。4. 住民には補償を要求できることと、その窓口を積極的に知らせる。黙っていれば紛争が長引く
時効(請求できる期限):本条自体に特定の期限はない。ただし国に対する金銭給付請求権は、一般に会計法30条により5年で時効消滅する。起算点は損失が発生し、請求できる状態になった時と解されるのが一般的である(最新の改正状況をご確認ください)。政令で要求の手続や期限が定められている可能性もあるので、早めに窓口へ確認すること
学説
通説:本条は憲法29条3項の要請を受け、適法な通行による損失についても補償を明記したもの。通行を超える使用・占有は103条の手続によるべきで、本条を根拠に拡張することは許されないと解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年)有事関連法制(要確認) 武力攻撃事態への対処法制の整備に伴い、防衛出動時の緊急通行の規定として追加されたとされる。新設時期と改正法の特定は人的検証が必要
- 平成27年(2015年)平和安全法制(要確認) 76条1項が1号(武力攻撃事態)と2号(存立危機事態)に分けられたことに伴い、本条の適用を「第一号に係る部分に限る」とする文言に改められたとみられる
改正の年表
- 1.平成15年(2003年) 新設:武力攻撃事態への対処法制の整備に伴い、防衛出動時の緊急通行規定として追加されたとされる(改正法の特定は要確認)
- 2.平成27年(2015年) 改正:平和安全法制により76条1項が1号・2号に分けられたことに伴い、適用を「第一号に係る部分に限る」とする文言に改められたとみられる(要確認)
- 自衛隊法 第76条防衛出動命令、本条発動の前提(1号限定)
- 自衛隊法 第103条土地使用・物資収用と損失補償の別手続
- 自衛隊法 第92条防衛出動時の公共の秩序維持の権限
- 自衛隊法 第88条防衛出動時の武力行使の権限と限界
- 武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 第9条対処基本方針、防衛出動の手続的前提(通称 事態対処法)
- 会計法 第30条国への金銭請求権の5年時効
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