実用新案法 第29条(損害の額の推定等)
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- 実用新案権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物品を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、実用新案権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。
- 一実用新案権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物品の単位数量当たりの利益の額に、自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物品の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該実用新案権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該実用新案権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額
- 二譲渡数量のうち実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(実用新案権者又は専用実施権者が、当該実用新案権者の実用新案権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾又は当該専用実施権者の専用実施権についての通常実施権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該実用新案権又は専用実施権に係る登録実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
- 2.実用新案権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、実用新案権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
- 3.実用新案権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対し、その登録実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
- 4.裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する登録実用新案の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、実用新案権者又は専用実施権者が、自己の実用新案権又は専用実施権に係る登録実用新案の実施の対価について、当該実用新案権又は専用実施権の侵害があつたことを前提として当該実用新案権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該実用新案権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。
- 5.第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、実用新案権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
この条文の基本情報
損害の額の推定等とは何ですか?
定義損害の額の推定等とは、実用新案法第29条に定められた規定で、「実用新案権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 実用新案法第29条(損害の額の推定等)は、日本の実用新案法に含まれる条文です。
- 実用新案法第29条の条文原文は「実用新案権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の実用新案権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その…」で始まります。
- 実用新案法第29条は第二節 権利侵害に置かれています。
- 実用新案法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 実用新案法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 実用新案法第29条の前の条は実用新案法第28条です。
- 実用新案法第29条の次の条は実用新案法第29条の2です。
- 実用新案法第29条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第29条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000123 - 本サイト収録
実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第29条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000123/29
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点実用新案法29条は、実用新案権侵害の損害賠償額を、譲渡数量に基づく逸失利益・侵害者の利益額の推定・実施料相当額の三方式で算定でき、権利者の立証負担を軽減すると定める規定である。
Q · 実用新案権をパクられたとき、いくら損害賠償を請求できるの?
三方式で算定でき、立証が苦手でも請求できます
実用新案法29条により、損害賠償額を三つの方式で算定できます。第一に侵害品の譲渡数量に自社製品1個あたりの利益を乗じた額(1項)。第二に侵害者が侵害で得た利益額を自分の損害と推定する方式(2項)。第三に最低でも実施料相当額(3項)。相手の売上や利益が外部から掴めなくても、2項で立証責任が相手側に移り、3項なら証拠が薄くても請求の足場になります。ただし1項には自社の実施能力を超える分を差し引く上限があり、2項の推定も反証で覆る点に注意が必要です。
解説
発明より手軽に取れる権利として実用新案権を取得した。ところが他社にそっくりな製品を量産され、安値で市場に流された。さて、いくら請求できるのか。ここで多くの権利者がつまずく。民法709条の原則どおりなら、あなたは「相手の行為で自分がいくら損したか」を自力で立証しなければならない。だが侵害品が何個売れたか、その利益がいくらか、社外のあなたに分かるはずがない。29条はこの立証の壁を三段構えで崩す。第一に、相手の販売数量にあなたの製品1個あたりの利益を掛けた額を損害とみなす(1項)。第二に、相手が侵害で得た利益額を、そのままあなたの損害と推定する(2項)。第三に、最低でも実施料相当額(正規にライセンスしたら取れたであろうライセンス料の相場)は必ず請求できる(3項)。立証できない空白を法律が肩代わりする、それがこの条文の正体だ。
法的な位置づけ
実用新案法29条は、実用新案権または専用実施権の侵害に対する損害賠償額の算定特則である。民法709条の一般原則では権利者が実損を立証する必要があるところ、本条は侵害品の譲渡数量に基づく逸失利益(1項)、侵害者の利益額の推定(2項)、実施料相当額(3項)という三段階の算定方式を定め、損害額の立証負担を軽減する機能を有する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.実用新案技術評価書を真っ先に取得する 権利行使の前にまず特許庁に実用新案技術評価書を請求する(29条の2)。これなしの警告は逆に自分の首を絞めかねず、評価ランクで勝負の可否を判断する
- 2.侵害品の販売実績の証拠を保全する 侵害品の販売数量・販売チャネル・価格の証拠を集める。購入記録やネット販売ページのスクリーンショットを日付つきで保全し、後の数量立証の足場にする
- 3.損害額を三本立てで試算する 自社の単位利益×数量(1項)、相手の利益額(2項)、実施料相当額(3項)をそれぞれ計算し、最も高くなる軸を主軸に据える。1項は自社の実施能力上限を考慮する
- 4.内容証明で評価書と金額根拠を明示して請求する 実用新案技術評価書と損害額の根拠を明示した内容証明郵便で請求する。応じなければ知財専門の弁護士・弁理士とともに提訴を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1実用新案 損害賠償 計算方法は?
実用新案法29条で三方式があります。譲渡数量×単位利益(1項)、侵害者の利益額の推定(2項)、実施料相当額(3項)を比較し、最も高い軸を主軸に据えるのが実務の定石です。
Q2実用新案技術評価書とは?
実用新案は無審査登録のため、登録の有効性を特許庁が評価した書面が技術評価書です。29条の2により、これを提示しての警告が権利行使の事実上の前提となります。
Q3実用新案権侵害の警告書が届いたら?
まず相手が実用新案技術評価書を提示しているか確認します。なければ権利行使の前提が欠けます。次に権利の有効性を疑い、先行技術調査で反撃の余地を探ります。
Q4実施料相当額とは?
正規にライセンスしていれば得られたであろうライセンス料の相場です。29条3項で最低保証的に請求でき、令和元年改正後は侵害前提の増額も考慮されます。
Q5実用新案 損害賠償 時効は?
損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年で消滅時効です(民法724条)。証拠が薄くても3項でまず時効を止める順番が重要です。
Q6特許と実用新案で損害賠償は違う?
勝てば算定構造はほぼ同じです。違いは入口で、実用新案は無審査のため技術評価書の提示が前提となり、無効時には警告者が逆に賠償責任を負います(29条の3)。
Q7実用新案 損害賠償の相場はいくら?
事案ごとに大きく異なります。侵害品の販売規模・自社の単位利益・実施料率で変動し、決まった相場はありません。三方式を試算して比較するのが基本です。
Q8実用新案は無審査でリスクがある?
あります。無審査登録なので権利が無効と判断される余地があり、評価書なしの警告で相手に損害を与えると、自分が賠償責任を負うリスクがあります(29条の3)。
この条文についての質問 AI による整理
Q1相手がいくら売って、いくら儲けたかなんて、こっちには分からないんですが、それでも請求できますか?
できます。それこそが29条の存在意義です。2項は相手が侵害で得た利益額をそのままあなたの損害と推定し、立証責任を相手側に移します。さらに数量や利益が掴めなくても、3項の実施料相当額なら確実に請求の足場になります。実務のポイント:訴訟では文書提出命令や計算鑑定で相手の販売帳簿を引き出せます。実務では「まず2項で相手に数字を出させ、足りなければ3項で底上げする」という二段構えが定石。最初から低い実施料だけで諦める必要はない
Q2実用新案って特許より弱いと聞きました。訴えても意味ないんでしょうか?
弱いのは事実ですが、勝てば29条の損害賠償は特許とほぼ同じ構造で使えます。問題は入口です。実用新案は無審査登録なので、権利行使には実用新案技術評価書(29条の2)の提示が前提で、評価が低い権利で警告して相手に損害を与えると、逆にあなたが賠償責任を負います(29条の3)。実務のポイント:弁理士は評価書の評価ランクを見て勝負するかを判断します。評価書で進歩性が肯定された権利は強い武器、否定された権利は抜かない方が安全。この一枚の評価書を取らずに警告状を出すのが、素人が最も踏みやすい地雷
Q33項の『実施料相当額』って、普通にライセンスしたときの料率より安く買い叩かれるんですか?
むしろ逆になりうるのが令和元年改正後の重要点です。4項により、裁判所は侵害があったことを前提に当事者が交渉したと仮定した対価を考慮できます。正規ライセンスは事前の善意の交渉ですが、侵害後の算定では侵害ペナルティ込みの増額が認められる余地があります。実務のポイント:かつては実施料相当額が事実上の上限みたいに低く抑えられ「侵害し得」と批判されました。改正はそれを是正する趣旨。だから3項を主張するときは『侵害がなければ強気の料率で交渉できたはずだ』という主張を意識的に組み込む
間違えやすい点 AI による整理
- 「いくら請求できるか」を考える前に、前提そのものが抜けている人が多い。実用新案権は特許と違い無審査で登録される。だから権利行使には実用新案技術評価書を提示した警告が事実上の前提(29条の2)であり、しかも後で権利が無効と判断されれば、警告したあなた自身が相手に賠償する責任を負う(29条の3)。請求額の前に、自分の権利が反撃の刃に変わるリスクを見ていない
- 2項の「相手の利益額=自分の損害と推定する」を知っている人でも、それが「推定」にすぎないことの重みを軽く見ている。推定は反証で覆る。相手が「この利益は自社のブランド力や販路によるもので、実用新案とは無関係だ」と立証すれば、推定額はそこから削られていく。立証の主戦場は、推定が出た後にこそ移動する
- 3項の実施料相当額を「最低保証のおまけ」程度に捉える人がいるが、令和元年改正後の4項では、侵害があった前提で交渉したと仮定した対価を裁判所が考慮できる。つまり正規のライセンス料より高い料率が認められうる。最低ラインだと思っていた数字が、交渉では侵害ペナルティ込みの上振れした額になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 算定の根拠 | 実用新案法29条:三方式(数量計算・利益推定・実施料相当額) | 実用新案法29条の2:権利行使前の技術評価書提示義務 民法709条:一般不法行為(実損の自力立証) |
| 立証負担 | 推定規定で侵害者側に負担を移す | 評価書の取得は権利者側の前提義務 損害額は権利者が全面的に立証 |
| 権利者のリスク | 1項は実施能力超過分を控除、2項は反証で減額 | 無効時は警告者が賠償責任(29条の3) 立証できなければ請求棄却 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は新型専利も専利法でカバーし、損害額の計算方法として差額説・利益説・実施料相当額を並列で規定する点で日本と類似する。
韓国は実用新案法が特許法の損害額推定規定を準用する構造で、譲渡数量・利益推定・実施料相当額の三方式は日本とほぼ同一。
ドイツは実用新案制度の発祥国。損害賠償は逸失利益・侵害者利益の引渡し・ライセンスアナロジーの三択(dreifache Schadensberechnung)として確立している。
米国に実用新案制度はなく特許で対照する。損害は『合理的実施料を下回らない額』を保障し、逸失利益も立証できれば請求可能。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 台所用品の構造で実用新案を取った中小メーカーが、大手に酷似品を量販された。相手が全国の量販店に何万個流したか、外部のあなたには掴めない。だが2項を使えば、相手の決算から推認される利益額がそのままあなたの損害と推定される。立証責任が相手側に裏返る、その一点で交渉のテーブルが変わる
- あなたの会社に「弊社の実用新案権を侵害している、製造販売を直ちに中止せよ」という警告書が届いた。だが実用新案権は審査なしで登録される権利。相手が実用新案技術評価書(29条の2)を添えずに警告してきたなら、まだ慌てる段階ではない。むしろ相手の権利の有効性を疑う側に立てる
- もし相手が「その数量は、そもそも貴社の生産能力では売り切れなかったはずだ」と反論してきたら、どうなるか。1項には「実施相応数量」という上限があり、あなたの生産販売能力を超える分や、販売できない事情がある分は損害額から差し引かれる。ただしその超過分も2号で実施料相当額として拾える
- 侵害に気付いてから時間が経っている。あと数か月で消滅時効が壁になる。損害額の精緻な計算が固まらなくても、3項の実施料相当額なら証拠が薄くても請求の足場になる。まず時効を止め、金額は後から積み上げる、その順番を間違えると請求権ごと消える
取るべき行動
被害を受けた側:1. 真っ先に実用新案技術評価書を取得(29条の2)、これなしの警告は逆に自分の首を絞めかねない2. 侵害品の販売数量・販売チャネル・価格の証拠を集める、購入記録やネット販売ページのスクショを日付つきで保全3. 損害額を三本立てで試算、自社の単位利益 × 数量(1項)、相手の利益額(2項)、実施料相当額(3項)を比較して最も高い軸を主軸に4. 内容証明で評価書と金額根拠を明示して請求、応じなければ知財専門の弁護士・弁理士と提訴を検討
訴えられた側:1. まず相手が実用新案技術評価書を提示しているか確認、なければ権利行使の前提が欠ける2. 権利自体の有効性を疑い、先行技術調査と無効審判(または評価書の内容)で反撃の余地を探る3. 損害額の推定に対しては、相手の利益が実用新案以外の要因(ブランド、販路、価格)によると立証して推定を切り崩す4. 1項に対しては、相手の生産販売能力を超える数量や、相手が販売できなかった事情を主張して損害額を圧縮する
時効(請求できる期限):損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年で消滅時効(民法724条、29条は損害額の算定特則であり時効そのものは民法の不法行為時効による)。侵害は継続的に発生するため、起算点は各侵害行為ごとに判断される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:29条の各推定規定は、知財侵害における損害額立証の構造的困難を権利者から侵害者へ移転する救済規定である一方、損害賠償の填補原則を逸脱しないよう、1項の実施相応数量の上限・控除や、2項の反証可能性が調整弁として機能すると解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成10年(1998年) 特許法102条1項と並行して、侵害者の譲渡数量に権利者の単位利益を乗じる逸失利益算定方式(1項)を新設。損害額立証の負担を大幅に軽減した
- 令和元年(2019年)公布、令和2年(2020年)施行 1項に実施相応数量を超える数量等についての実施料相当額(2号)を追加し、侵害があったことを前提とした対価を考慮できる旨(4項)を新設。いわゆる侵害し得の是正を図った
改正の年表
- 1.平成10年(1998年) 改正:特許法102条1項と並行して、侵害者の譲渡数量に権利者の単位利益を乗じる逸失利益算定方式(1項)を新設し、損害額立証の負担を大幅に軽減した。
- 2.令和元年(2019年) 改正:1項に実施相応数量を超える数量等についての実施料相当額(2号)を追加し、侵害があったことを前提とした対価を考慮できる旨(4項)を新設。いわゆる『侵害し得』の是正を図った(令和2年施行)。
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