意匠法 第33条(通常実施権の設定の裁定)
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- 意匠権者又は専用実施権者は、その登録意匠又はこれに類似する意匠が第二十六条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をするための通常実施権又は特許権若しくは実用新案権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
- 2.前項の協議を求められた第二十六条の他人は、その協議を求めた意匠権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は特許権若しくは実用新案権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする登録意匠又はこれに類似する意匠の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
- 3.第一項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、意匠権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
- 4.第二項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第二十六条の他人は、第七項において準用する特許法第八十四条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
- 5.特許庁長官は、第三項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第二十六条の他人又は意匠権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
- 6.特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第三項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
- 7.特許法第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二まで(裁定の手続等)の規定は、第三項又は第四項の裁定に準用する。
この条文の基本情報
通常実施権の設定の裁定とは何ですか?
定義通常実施権の設定の裁定とは、意匠法第33条に定められた規定で、「意匠権者又は専用実施権者は、その登録意匠又はこれに類似する意匠が第二十六条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその登録意匠又はこれに類似する意匠の実…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 意匠法第33条(通常実施権の設定の裁定)は、日本の意匠法に含まれる条文です。
- 意匠法第33条の条文原文は「意匠権者又は専用実施権者は、その登録意匠又はこれに類似する意匠が第二十六条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその登録意匠又はこれに類似する意匠の実…」で始まります。
- 意匠法第33条は第一節に置かれています。
- 意匠法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 意匠法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 意匠法第33条の前の条は意匠法第32条です。
- 意匠法第33条の次の条は意匠法第34条です。
- 意匠法第33条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第33条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000125 - 本サイト収録
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第33条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000125/33
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点意匠法33条は、登録意匠が他人の先願特許等を利用・抵触するとき、許諾協議が不成立なら特許庁長官の裁定で通常実施権を設定できると定める規定である。
Q · 意匠登録を取ったのに、他社の特許があって製品を作れないとき、どうすればいい?
協議が決裂すれば特許庁長官の裁定で通常実施権を得られます
意匠法33条により、まず先願権利を持つ相手方に通常実施権の許諾協議を申し入れます。協議が成立しない、または協議自体ができないときは、特許庁長官に裁定を請求できます(3項)。相手方も、あなたの意匠の範囲内で逆にライセンスを求めるクロス裁定を、答弁書提出期間内に限り請求できます(4項)。ただし、通常実施権の設定が当事者の利益を不当に害する場合、特許庁長官は裁定をすることができません(5項・6項)。得られるのは通常実施権であって専用実施権ではない点に注意が必要です。
解説
あなたが新型家電のフォルムで意匠登録を取った。ところが、その製品を量産するには他社が先に押さえた特許の機構を使わざるを得ないと判明する。この瞬間、あなたは自分の意匠権を持ちながら、製品を一台も売れない立場に立たされる。意匠法26条が「他人の先願の特許・実用新案・意匠・商標を利用したり抵触したりする意匠は実施できない」と定めているからだ。33条は、この行き止まりを合法的に開ける唯一の扉である。まず相手にライセンス(通常実施権、相手の独占を崩さず使わせてもらう権利)の協議を申し入れ、相手が応じない、あるいは話がまとまらないときは、特許庁長官に裁定(国が当事者の合意なしに強制的にライセンスを設定する判断)を請求できる。さらに相手側も、あなたの意匠の範囲内で逆にライセンスを求める「クロス裁定」を仕掛けられる。デザインの権利を握っただけでは市場に出られない、その現実を突破する仕組みがここにある。
法的な位置づけ
意匠法33条は、登録意匠が他人の先願権利を利用・抵触する場合における通常実施権設定の裁定を定める規定である。意匠権者・専用実施権者はまず相手方に許諾協議を求め、協議が成立しないまたはできないときは特許庁長官に裁定を請求できる。相手方も一定範囲でクロス裁定を請求でき、利益を不当に害する場合は裁定が制限される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.実施可能性調査で利用関係を確定させる 自己の登録意匠を実施すると他人の先願の特許・実用新案・意匠・商標を利用・抵触しないか、FTO 調査(実施可能性調査)で確定させる。26条の利用関係に該当するかがすべての起点になる
- 2.相手方に通常実施権の許諾協議を書面で申し入れる 利用関係に該当するなら、先願権利者に対し通常実施権(または特許権・実用新案権についての通常実施権)の許諾協議を書面で申し入れる。応諾の有無と交渉経過を必ず記録に残し、後の協議不能の立証に備える
- 3.協議が決裂・不能なら特許庁長官に裁定を請求する 協議が成立しない、または相手が応じず協議自体ができないときは、特許庁長官に通常実施権設定の裁定を請求する(33条3項)。手続は特許法84条以下を準用し、対価の相当性と5項・6項の不裁定事由が争点になる
- 4.相手が先に裁定請求してきたら期間内に逆の裁定を請求する 先願権利者から先に裁定請求された場合、自己もクロス裁定を請求できるのは、特許庁長官が指定した答弁書提出期間内に限られる(33条4項)。この期限を逃すと逆の裁定請求権を永久に失うため厳守する
よくある質問 AI による整理
Q1意匠法33条とは何ですか?
登録意匠が他人の先願権利を利用・抵触する場合に、許諾協議と、協議不成立時の特許庁長官による通常実施権設定の裁定を定めた規定です。
Q2意匠の利用関係とはどういう意味ですか?
自分の登録意匠を実施すると、他人の先願の特許・実用新案・意匠・商標を必然的に使ってしまう関係です。意匠法26条により、この場合は自分の意匠権があっても実施できません。
Q3通常実施権の設定の裁定はいつ請求できますか?
相手方への許諾協議が成立しない、または協議自体ができないときに、特許庁長官へ請求できます(33条3項)。協議を経ずにいきなり裁定請求はできません。
Q4意匠権と特許が抵触したら製品はもう作れないのですか?
作れないわけではありません。相手にライセンス協議を申し入れ、決裂すれば特許庁長官の裁定で通常実施権を設定できる道が33条にあります。
Q5クロス裁定(相手からの逆の裁定請求)とは何ですか?
後発意匠権者が裁定請求すると、先願権利者も答弁書提出期間内に限り、その意匠の範囲でライセンスを求める逆の裁定を請求できます(33条4項)。
Q6裁定請求の手続はどこに準用されますか?
特許法84条以下(裁定の手続・対価等)が準用されます(33条7項)。答弁書提出、対価の決定などが特許の裁定と同じ枠組みで進みます。
Q7意匠法26条と33条の違いは何ですか?
26条は利用・抵触する意匠の実施を禁じる「壁」を定め、33条はその壁を協議と裁定で越える「非常口」を定めます。26条が禁止、33条が救済の関係です。
Q8裁定で設定されるのは独占的な権利ですか?
いいえ、設定されるのは通常実施権にすぎません。相手は他社にも同じライセンスを出せるため、市場を独占したい戦略には向きません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1意匠登録したのに、なんで自由に製品を作れないんですか?
意匠権は「他人が同じ・似たデザインを使うのを止める権利」であって、あなた自身が作れる保証ではないからです。製品の構造が他社の先願特許を使っていれば、意匠法26条の利用関係に当たり、あなたの意匠権があっても実施が止まります。実務のポイント:知財実務では意匠出願の前に実施可能性調査(FTO調査)をかけ、先行特許とぶつからないか確認するのが鉄則。これを省くと、登録は取れても売れない飾りの権利になる
Q2裁定でライセンスが認められたら、タダで使えるんですか?
無料ではありません。裁定で通常実施権が設定される場合でも、特許庁長官が相当な対価(ロイヤリティ)を定め、あなたはそれを相手に支払います(33条7項で準用する特許法86条以下)。実務のポイント:実は意匠の利用関係で裁定が実際に下りた例はほとんどなく、大半は裁定請求をちらつかせて任意のライセンス交渉に持ち込む段階で決着する。裁定は抜かずに効かせる刀として使うカードです
Q3弁理士に頼まないと裁定請求はできませんか?
本人請求も可能ですが、裁定手続は特許法84条以下を準用する専門的な書面審理で、対価の相当性や利益衡量の主張が勝敗を分けます。実務のポイント:この種の案件は件数が極端に少なく、経験のある実務家も限られる。一般的な出願代理しかやらない事務所では対応が難しく、意匠だけでなく特許の利用関係に強い弁理士・弁護士を選ぶことが要点になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「意匠登録さえ取れば自由に製造・販売できる」と思い込んでいる人が多いが、意匠権は他人が同じ・似た意匠を使うのを排除する権利であって、自分が実施できることまで保証しない。先願の特許や意匠を利用していれば、自分の意匠権があっても26条で実施が止まる。問いの立て方そのものが逆になっている
- 協議が決裂すれば裁定で必ずライセンスがもらえる、と軽く考えがちだが、5項・6項で「相手の利益を不当に害する」場合は特許庁長官が裁定を拒否できる。裁定はあくまで例外的救済であり、簡単には下りない。その難しさを知らずに事業計画を組むと、製造開始の直前で足元をすくわれる
- 裁定で設定されるのは独占的な「専用実施権」だと思われがちだが、得られるのは「通常実施権」にすぎない。相手は他社にも同じライセンスを出せるため、市場を独り占めしたい戦略には向かない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 33条:利用・抵触の壁を協議と裁定で越える救済(非常口) | 26条:先願権利を利用・抵触する意匠の実施を禁じる制限(壁) 27条・28条:専用実施権・通常実施権の内容と設定の一般規定 |
| 発動の前提 | 26条の利用関係 + 許諾協議が不成立・不能であること | 登録意匠が他人の先願権利を利用・抵触していること 権利者との合意(設定契約)または裁定・法定の設定原因があること |
| 得られる権利 | 通常実施権(非独占、相手は他社にも許諾可能) | 実施の禁止(何も得られない) 27条は専用実施権(独占)、28条は通常実施権(非独占) |
| 国家の関与 | 協議決裂時に特許庁長官が裁定で強制設定(5項・6項で制限) | 関与なし(当事者間の権利範囲の問題) 原則として当事者の設定契約による(登録で対抗要件) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も従属権利・利用関係について強制授権(強制ライセンス)を認めるが、専利専責機関の許可を要する手続構造をとる
韓国はデザイン保護法で、特許法の通常実施権許諾の審判規定を準用する類似の制度を有する
ドイツは特許法で従属権利のための強制ライセンスを認めるが、連邦特許裁判所の判断による点で日本の行政裁定と手続が異なる
米国は利用関係の法定裁定を持たず、ブロッキング権利は当事者間のクロスライセンス交渉または反トラスト法上の議論で処理される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 意匠登録を取った折りたたみ椅子を量産しようとしたら、座面の機構が他社の特許だと判明した。相手はライセンスを渋っている。あなたの意匠権は、この特許の壁を越えられるのか。協議を申し入れ、決裂すれば特許庁長官の裁定を請求する道が33条にある
- あなたが先に基本特許を持つメーカーの立場で、後発の意匠権者から「あなたの特許のライセンスを協議したい」と申し入れられた。拒否すれば裁定請求される。だが2項を使えば、逆に相手の意匠の範囲で自社にもライセンスを求める反撃(クロス裁定)ができる
- 下請けの町工場が独自デザインで意匠登録した。だが大手の先願特許に阻まれ製造できない。33条の裁定請求権が、立場の弱い側に残された数少ない交渉カードになる
- 相手の意匠権者があなたへの裁定を請求し、あなたに答弁書の提出期間が通知された。残りは数週間。この期間内に逆の裁定(クロスライセンス)を請求しなければ、4項の権利を永久に失う。今すぐ知財に強い弁理士へ相談する必要がある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 自分の登録意匠が他人の先願権利を利用・抵触していないか、特許・意匠の調査(FTO調査)で確定させる2. 該当するなら、相手にライセンス(通常実施権)の協議を書面で申し入れる。応諾の有無と交渉経過を必ず記録に残す3. 協議が決裂、または相手が応じず協議不能なら、特許庁長官に裁定を請求する(33条3項) 4. 裁定では対価の相当性と「相手の利益を不当に害しないか」が争点。知財実務家と主張を組み立て、5項・6項の不裁定リスクを事前に潰しておく
訴えられた側:1. 後発の意匠権者から協議を申し入れられたら、まず相手の意匠と自社権利の利用関係を冷静に確認2. 自社が相手の意匠を逆に使いたい余地があれば、2項で相手の意匠の範囲内のクロスライセンス協議を申し入れる3. 相手が裁定請求してきた場合、答弁書提出期間内に限り自分も裁定請求できる(4項)ので期限を厳守4. 「通常実施権の設定が自社の利益を不当に害する」事情(独占戦略上の核心技術等)を具体的に主張し、5項の不裁定を狙う
時効(請求できる期限):特定の出訴時効はないが、2項の反対協議が決裂し相手が3項の裁定請求をした場合、先行権利者(26条の他人)が逆に裁定請求できるのは、特許庁長官が指定した答弁書提出期間内に限られる(33条4項、7項で準用する特許法84条)。この期間を逃すと反対の裁定請求権を失う
学説
通説:意匠法33条の裁定は例外的救済であり、まず当事者の自治(協議)を尊重し、協議が決裂した場合に限って特許庁長官が通常実施権を設定する二段構えと解される。5項・6項の不裁定事由は先願権利者の独占の核心を保護し、私的独占と産業発達の均衡を図る趣旨とされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 制定:意匠法全部改正。利用・抵触関係にある登録意匠について、協議と特許庁長官の裁定による通常実施権設定の制度を規定
- 2.令和元年(2019年) 改正:画像・建築物・内装の意匠を保護対象に追加。これにより26条の利用関係および33条の裁定が適用されうる場面が拡大した
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