意匠法 第32条
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- 意匠登録出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願に係る意匠権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その満了の際現にその存続期間が満了した意匠権についての専用実施権又はその意匠権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、原権利の範囲内において、当該意匠権又はその意匠権の存続期間の満了の際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
- 2.前項の規定は、意匠登録出願の日前又はこれと同日の出願に係る特許権又は実用新案権がその意匠登録出願に係る意匠権と抵触する場合において、その特許権又は実用新案権の存続期間が満了したときに準用する。
- 3.当該意匠権者又は専用実施権者は、前二項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 意匠法第32条は、日本の意匠法に含まれる条文です。
- 意匠法第32条の条文原文は「意匠登録出願の日前又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願に係る意匠権と抵触する場合において、その意匠権…」で始まります。
- 意匠法第32条は第一節に置かれています。
- 意匠法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 意匠法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 意匠法第32条の前の条は意匠法第31条です。
- 意匠法第32条の次の条は意匠法第33条です。
- 意匠法第32条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第32条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000125 - 本サイト収録
意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第32条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000125/32
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点意匠法32条は、抵触する先願の意匠権などが満了した際に実施権を有していた者へ、原権利の範囲内で後願意匠権について法定の通常実施権を認める規定である。
Q · ライセンスを受けていた意匠権が満了したら、製品を作れなくなるの?
満了しても法定の実施権で使い続けられます
意匠法32条により、抵触する先願の意匠権(または特許権・実用新案権)の存続期間が満了した際、その満了の時点で当該権利の専用実施権または通常実施権を有していた者は、後願の意匠権について原権利の範囲内で法定の通常実施権を取得します。出願し直す必要はなく、権利は満了の瞬間に当然発生します。ただし後願権利者へ相当の対価を支払う義務が残ります(3項)。
解説
自社製品の外観を、何年も前に他社から実施許諾を受けた意匠をベースに作り続けてきたとする。ある日、その元になった意匠権の存続期間が満了する。普通なら「やっと縛りから解放される」と喜ぶところだ。ところが落とし穴がある。その満了した意匠権の類似範囲が別の後願意匠権と重なっていた場合、満了した瞬間、あなたは後願意匠権の侵害者へ転落しかねない。満了で消えるのは満了した権利だけで、隣の生きた権利は何も消えないからだ。意匠法32条は、この理不尽を断ち切る。満了の時点で専用実施権または通常実施権を現に持っていたあなたには、原権利の範囲内で、その後願意匠権について法定の通常実施権が自動的に発生する。出願を出し直す必要も、相手と一から交渉する必要もない。条文が静かに通行手形を握らせてくれる。代わりに、相当の対価を後願権利者へ払う義務だけは残る(3項)。
法的な位置づけ
意匠法32条は、抵触関係にある先願の意匠権が存続期間満了により消滅した場合に、満了時点で当該権利の専用実施権または通常実施権を有していた者が、後願の意匠権について原権利の範囲内で通常実施権を取得する旨を定める規定である。抵触する特許権・実用新案権が満了した場合にも準用される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.満了の「際現に」実施権を有していたか確認 抵触する先願権利が満了する前後で、自分が満了の瞬間まで専用実施権または通常実施権を有していたかを契約書と登録で確認する。満了日前に実施権が失効していれば32条の救済はゼロになるため、一日の差が命運を分ける
- 2.原権利の範囲を文書化 満了した権利で許諾されていた実施態様(対象物品・意匠の範囲・実施方法)を文書化する。この範囲を一歩でも超えた使い方は後願権利の侵害になるため、守られる範囲と侵害になる範囲の境界を明確に線引きする
- 3.後願権利者へ法定実施権を書面で主張 後願権利者から使用停止の警告が来たら、32条による法定通常実施権が発生している旨を書面で主張する。差止めの要求を対価交渉へ転換させ、争点を「止めるか否か」から「対価がいくらか」へスライドさせる
- 4.相当の対価の算定根拠を準備し交渉 3項の相当の対価は争いになりやすいため、ライセンス相場・売上規模・実施態様を根拠資料として早めに準備する。先に算定根拠を用意した側が金額の基準線を引けるため、待ちの姿勢は避ける
よくある質問 AI による整理
Q1中用権とは何ですか?
先願の権利が満了したとき、その実施権者に後願権利について法定で認められる通常実施権の通称です。意匠法32条・特許法81条などが根拠で、原権利の範囲内で使い続けられます。
Q2意匠法32条の相当の対価はどう決まりますか?
法定の計算式はなく、ライセンス相場や実施規模を基礎に当事者が交渉します。合意できなければ最終的に裁判所の判断を仰ぎます。算定根拠を先に用意した側が基準線を引けます。
Q3存続期間が満了した意匠は誰でも自由に使えますか?
原則自由ですが、満了権利の類似範囲が後願意匠権と重なる部分は後願権利が生きている限り自由ではありません。使い続けられるのは32条の法定実施権があるためです。
Q4法定通常実施権はいつ発生しますか?
抵触する先願権利が満了した瞬間に法律上当然に発生します。申請も登録も不要ですが、満了の際に現に実施権を有していたことが発生要件です。
Q5意匠権の存続期間は何年ですか?
現行法では出願日から25年です(令和元年改正で登録日起算20年から出願日起算25年へ変更)。満了日は32条の発生要件を判断する起点になります。
Q6後願意匠権者から警告書が来たらどうすればいいですか?
満了の際に実施権を有していたか、原権利の範囲内かを確認し、32条の法定通常実施権の存在を書面で主張します。争点は差止めではなく対価額に移ります。
Q7特許のライセンスでも意匠法32条は使えますか?
使えます。32条2項が、抵触する特許権・実用新案権が満了した場合にも1項を準用します。製造の根幹技術が他社特許のライセンスで動く企業ほど重要です。
Q8原権利の範囲内とはどこまでを指しますか?
満了した権利で許諾されていた実施態様の枠内を指します。そこを一歩でも超えた新しい使い方は後願権利の侵害になるため、境界線の文書化が重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ライセンスを受けてた特許が満了したら、もう製品を作れなくなるんですか?
いいえ。32条2項が、抵触する特許権や実用新案権が満了した場合にも1項を準用します。満了の時点であなたが実施権を持っていれば、抵触先の意匠権について法定の通常実施権が自動で発生し、製造を続けられます。実務のポイント:この救済はライセンス契約書にはまず書かれていません。契約が満了で終わると思い込んで自ら生産を止める企業が現実に存在します。条文が契約の外で効いていることを知る人だけが事業を守れる
Q2法律で実施権がもらえるなら、お金は払わなくていいんですよね?
違います。32条3項で、後願権利者はあなたから相当の対価を受け取る権利を持ちます。ただし対価の支払いは実施権発生の条件ではなく、別個に請求される債権です。払わなくても実施権は有効ですが、対価請求訴訟を起こされます。実務のポイント:相当の対価に法定の計算式はなく、結局はライセンス相場と実施規模の交渉。先に算定根拠を用意した側が金額の基準線を引けるので、待ちの姿勢は不利になる
Q3もらえる実施権って、満了した権利でやってたことなら何でもできるんですか?
できません。32条は「原権利の範囲内」と明記しています。満了した権利で許諾されていた実施態様の枠内だけが守られ、そこを超えた新しい使い方は後願権利の侵害になります。実務のポイント:満了を機にデザインや仕様を少し変えて「ついでに改良」すると、その改良部分が原権利の範囲を外れて丸ごと侵害になる。満了直後こそ実施態様を変えない方が安全という逆説がある
間違えやすい点 AI による整理
- 存続期間が満了した権利はパブリックドメインになり誰でも自由に使える、と思い込んでいる。だが満了した権利の類似範囲が後願権利と重なっていれば、その重複部分は後願権利が生きている限り自由ではない。あなたが使い続けられるのは32条の法定通常実施権があるからであって、無条件の自由を手にしたわけではない
- 32条で通常実施権がもらえることは知っていても、その範囲が「原権利の範囲内」に厳格に縛られる重さを見落としている。満了した権利で許諾されていた実施態様を一歩でも超えた使い方をすれば、その超過分はまるごと後願権利の侵害になる。救われる範囲と侵害になる範囲の境界線は、想像よりずっと近い
- あなたから見れば「権利が切れて自由になったものを使っているだけ」。だが後願権利者から見れば「自分の生きた権利の上で他人が居座っている」。この認識の落差こそが、突然の対価請求訴訟や差止め交渉の引き金になる。同じ事実を見ていても、立っている側で意味が反転する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 救済される主体 | 32条:満了権利の専用/通常実施権を有していた者(実施権者) | 31条:満了した原権利の意匠権者自身 特許法82条:抵触する特許権の実施権者 |
| 発生要件 | 満了の際現に実施権を有していたこと | 満了の際現に原意匠権者であったこと 満了の際現に特許の実施権を有していたこと |
| 実施権の範囲 | 原権利の範囲内 | 原意匠権の範囲内 原特許権の範囲内 |
| 対価 | 後願権利者へ相当の対価を支払う(3項) | 相当の対価の支払義務あり 相当の対価の支払義務あり |
他国ではどう定めているか 3 か国
韓国も特許法・디자인보호법で先願権利満了後の実施権者救済に類する制度を設ける。日本法を継受した体系のため構造が近い。
ドイツには先願権利満了を要件とする同一の法定実施権規定は必ずしも存在せず、権利抵触の調整は先使用権や消尽論など別の法理で処理される。
米国の意匠特許制度には満了後の法定実施権に相当する明文はなく、権利満了後は原則パブリックドメイン化される点で日本と異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 10年前にライセンスを受けた意匠をもとに看板商品を量産してきた。元の意匠権が満了した翌週、見たこともない競合から「当社の後願意匠権を侵害している、製造を止めろ」という警告書が届く。ここで事業を畳むか、32条の法定通常実施権を盾に「こちらには使い続ける権利がある」と返すかで、生産ラインの生死が分かれる
- もし、あなたがライセンスを受けているのが意匠ではなく特許だったとしたら? 32条2項は、抵触する特許権や実用新案権が満了した場合にも同じ救済を準用する。製造現場の根幹技術が他社特許のライセンスで動いている企業ほど、満了日の前後で立場が激変する
- あなたが後願意匠権を持つ側だったとする。長く眠らせていた登録意匠の周辺で、競合が突然「満了した先願権のライセンシーだから無償で使える」と主張してくる。あなたは差止めも損害賠償もできない。手元に残るのは3項の相当の対価を請求する権利だけだ
- M&Aで買収候補のIPポートフォリオを精査している。満了間近の権利に紐づくライセンスは「どうせ消える」と評価額から外しかけた。だが32条で存続する可能性に気付けば、その事業価値は数億円単位で変わる
- 後願権利者との対価交渉に入った。相手は「即刻使用停止」を要求してくるが、あなたの手札は32条の法定実施権。残された争点は止めるか否かではなく、対価がいくらかだけ。和解書に「相当の対価」の算定根拠をどう書き込むかで、毎年の支払額が固定される
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず満了の「際現に」自分が専用実施権または通常実施権を有していたかを契約書と登録で確認、これが発生要件の核心。2. 満了した権利で許諾されていた実施態様の範囲(原権利の範囲)を文書化、ここを一歩でも超えると侵害になるため線引きを明確に。3. 後願権利者から警告が来たら、32条による法定通常実施権の存在を書面で主張し、差止め要求を対価交渉へ転換。4. 3項の相当の対価は争いになりやすいので、ライセンス相場や売上規模を根拠資料として早めに準備
訴えられた側:1. 自分が後願意匠権者で相手が法定実施権を主張してきたら、まず相手が本当に満了時点で実施権を有していたか、原権利の範囲内に収まっているかを精査、要件を外れていれば法定実施権は発生せず差止めできる。2. 要件を満たす場合、差止めや損害賠償はできないと割り切り、32条3項の相当の対価請求へ軸足を移す。3. 対価の算定はライセンス相場や相手の実施規模を基礎に交渉、合意できなければ裁判所の判断を仰ぐ。4. 将来の同種事案に備え、自社権利と抵触する先願権の満了スケジュールを台帳化
時効(請求できる期限):32条の通常実施権は、原権利が満了したその瞬間に法律上当然に発生する。申請や登録は不要。ただし発生要件は「満了の際現に」実施権を有していたことであり、満了日の前に実施権が消滅していれば一切発生しない。3項の相当の対価請求権は債権として民法166条の消滅時効(権利行使できると知った時から5年、または権利行使できる時から10年)にかかる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:意匠法32条の中用権は、上位の先願権利が満了した際に既存実施者が後願権利の侵害者へ転落する不合理を防ぐための投資保護制度と解される。実施権の範囲は原権利の範囲内に限定され、相当の対価の支払義務により後願権利者の利益との均衡が図られる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行意匠法(昭和34年法律第125号)の制定に伴い、存続期間満了後の実施権者救済規定として整備された。
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