商標法 第60条
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- 取り消し、若しくは無効にした商標登録に係る商標権が再審により回復した場合、又は拒絶をすべき旨の審決があつた商標登録出願について再審により商標権の設定の登録があつた場合において、当該取消決定又は審決が確定した後再審の請求の登録前に善意に日本国内において当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について当該登録商標又はこれに類似する商標の使用をした結果、再審の請求の登録の際現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。
- 2.第三十二条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 商標法第60条は、日本の商標法に含まれる条文です。
- 商標法第60条の条文原文は「取り消し、若しくは無効にした商標登録に係る商標権が再審により回復した場合、又は拒絶をすべき旨の審決があつた商標登録出願について再審により商標権の設定の登録があつ…」で始まります。
- 商標法第60条は第六章に置かれています。
- 商標法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 商標法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 商標法第60条の前の条は商標法第59条です。
- 商標法第60条の次の条は商標法第60条の2です。
- 商標法第60条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第60条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127 - 本サイト収録
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第60条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000127/60
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点商標法60条は、再審で回復した商標権について、確定後・再審請求の登録前に善意使用し周知に達した者へ、同一の商品・役務での継続使用権(中用権)を認める規定である。
Q · 取り消し済みだった商標を善意で使い続けてきたのに、元の権利者が再審で復活させてきたら、もう使えなくなるの?
再審請求の登録時に周知なら中用権で使い続けられます
商標法60条により、取り消し・無効後に再審で回復した商標権などについて、確定後・再審請求の登録前に善意で同一・類似の商標を使用し、その登録時点で自己の業務に係る商品・役務として需要者に広く認識(周知)されていた者は、その商品・役務について継続して使用する権利(中用権)を有します。ただし守られるのは周知に達した同一の商品・役務の範囲に限られ、復活した権利者は混同防止表示を請求できます(60条2項が準用する32条2項)。単に使っていただけでは足りず、周知性を客観証拠で立証できるかが分水嶺です。
解説
あなたが新しいブランド名を商標登録しようと特許庁の登録簿を調べたら、似た商標が「取り消し済み」になっていた。空き地だと判断して、あなたはその名前で商品を売り出し、数年かけて顧客に浸透させた。ところがある日、元の権利者が「再審」という非常手段でその商標権を蘇らせる。登録簿の上では、あなたが一夜にして侵害者になる。ここで効いてくるのが商標法60条だ。取り消しや無効が確定してから再審請求が登録されるまでの「空白期間」に、あなたが善意で(つまり再審のことを知らずに)その商標を使い、その結果あなたの商品を表すものとして需要者に広く知られる(周知)に至っていたなら、あなたは継続してその商標を使う権利を持つ。中用権と呼ばれる救済だ。ただし条件は厳しい。守られるのは周知になった同じ指定商品・役務の範囲に限られ、しかも「周知」という高いハードルを越えていなければならない。使っていただけでは足りない。
法的な位置づけ
商標法60条は中用権を定める規定であり、取り消し・無効後に再審で回復した商標権、または拒絶審決確定後に再審で設定登録された商標権について、確定後から再審請求の登録前に善意で同一・類似の商標を使用し、その登録時点で自己の業務に係る商品・役務として需要者に広く認識されていた者に対し、当該商品・役務についての継続使用権を認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.相手の商標権が再審で回復したものか確認 警告書が届いたら、まず相手の商標権が再審で回復・設定登録されたものか、再審請求の登録日はいつかを、登録原簿の経過情報で確認する。この登録日が中用権の判定基準になる
- 2.再審請求登録日時点の周知性を証拠化 再審請求の登録日より前の時点で、自社商標が需要者に広く認識されていたことを示す証拠(売上推移、広告出稿記録、報道、SNS言及、市場調査)を日付順に整理する。後から作った証拠は通らないため日付の特定が重要
- 3.中用権を主張して差止・損害賠償を退ける 周知性を立証できれば商標法60条の中用権を主張し、同一の商品・役務の範囲での継続使用を確保する。差止請求・損害賠償請求に対する抗弁として用いる
- 4.将来の安全のため自社で改めて商標出願 中用権は範囲が狭く移転にも制約があるため、将来の事業拡張・売却に備えて自社で改めて商標出願を検討する。混同防止表示の付加にも応じる準備をしておく
よくある質問 AI による整理
Q1中用権とは何ですか?
再審で復活した商標権について、空白期間に善意で使い周知に達した者へ認められる継続使用権です。商標法60条が根拠で、先使用権(32条)と並ぶ商標の使用権の一つです。
Q2中用権の発生要件は?
①再審で回復・設定登録された商標権であること、②確定後・再審請求登録前の善意使用、③再審請求登録時に同一商品・役務で周知に達していること、の3つを満たす必要があります。
Q3中用権はいつ判定されますか?
「再審の請求の登録の際」を基準に周知性を判定します。その時点で周知でなければ成立せず、後から育てた周知性は考慮されません。
Q4商標が取り消されても復活することはありますか?
あります。確定した取消決定・審決には再審の道が残されており(商標法57条)、認められれば商標権が回復します。登録簿の「取り消し済み」は永久の空き地ではありません。
Q5中用権はどの範囲まで使えますか?
周知に達した同一の商品・役務の範囲に限られます。新たな商品・役務へは拡張できず、復活した権利者は混同防止の表示を請求できます。
Q6中用権は他人に譲渡できますか?
原則として業務とともにしか移転できず、登録商標権のように自由に売買・ライセンスできません。事業承継者には認められます。
Q7善意で使っていれば必ず中用権が認められますか?
認められません。善意使用に加えて「周知」という高いハードルを越える必要があり、単なる販売実績だけでは足りません。客観証拠による立証が必要です。
Q8中用権と先使用権の違いは何ですか?
先使用権(32条)は出願前からの善意使用が前提、中用権(60条)は再審で復活した権利の空白期間における善意使用が前提です。周知性要件は共通します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1一度取り消された商標権が、後からまた復活することなんてあるんですか?
あります。確定した取消決定や審決に対しては再審を請求でき(商標法57条)、認められれば商標権が回復します。登録簿で「取り消し済み」と見えても、過去がひっくり返る余地が残っている。実務のポイント:実務で再審復活は極めて稀ですが、ゼロではない。だからM&Aや新ブランド立ち上げの調査では、対象商標に取消・無効・再審の係争履歴がないかを、登録簿の現状表示だけでなく経過情報まで遡って確認する。表面だけ見ると足元をすくわれる
Q2空白期間にずっと使っていたんだから、中用権で守られますよね?
使っていただけでは足りません。商標法60条は「再審の請求の登録の際、現にその商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」こと、つまり周知性を要求します。実務のポイント:この「周知」のハードルは想像以上に高く、先使用権(32条)でも同じ要件で多くの主張が認定されず敗れている。単なる販売実績ではなく、需要者アンケート、広告費、報道、市場シェアといった客観証拠の束で「広く認識」を立証できるかが分水嶺になる
Q3中用権が認められたら、自分で商標登録したのと同じように自由に使えますか?
いいえ、かなり狭い権利です。継続使用が認められるのは周知になった同じ商品・役務の範囲に限られ、新たな商品へは広げられません。さらに復活した権利者は混同防止の表示を付けるよう請求できます(60条2項が準用する32条2項)。実務のポイント:中用権は登録商標権と違い原則として業務とともにしか移転できず、ライセンスにも制約がある。「使い続けられる」とはいえ、ブランドを売却・拡張する場面では登録権者に比べ著しく不利。可能なら自前で改めて商標出願しておく方が安全だ
間違えやすい点 AI による整理
- 「一度取り消された商標権が後から復活するわけがない」と思い込んでいる人が多いが、確定した取消決定・審決には再審の道が残っており(商標法57条)、それが認められれば商標権は蘇る。登録簿の「取り消し済み」表示は、永久の空き地を意味しない
- 「空白期間にずっと使っていたんだから中用権で守られる」と安心している人は、その「周知」要件の高さを知らない。条文が求めるのは単なる使用実績ではなく、需要者の間に広く認識されている状態。先使用権(32条)でも同じ要件で多くの主張が認定されず敗れており、販売していただけの者は救われない
- あなたから見れば「空き登録を善意で使って育てただけ」だが、法律から見れば、周知性を客観証拠で立証できなければただの無権利者でしかない。この「自分の感覚」と「立証できる事実」の落差が、中用権を主張する者を最後に潰す
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 発生の前提 | 商標法60条(中用権):再審で回復・設定登録された商標権の空白期間における善意使用 | 商標法32条(先使用権):他人の出願前からの善意使用 商標法57条(再審):確定した取消決定・審決に対する手続上の救済 |
| 周知性要件 | 再審請求の登録時に周知であることが必要 | 他人の出願時に周知であることが必要 (要件なし、手続規定) |
| 判定の基準時 | 再審の請求の登録の際 | 他人の商標登録出願の際 再審事由の有無で判断 |
| 効果 | 同一の商品・役務での継続使用権+混同防止表示請求の対象(60条2項) | 同一の商品・役務での継続使用権+混同防止表示請求の対象(32条2項) 確定審決等の取消・再審理 |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は善意先使用による継続使用の抗弁を定める。再審回復に特化した中用権の明文はなく、善意先使用の枠で類似の利害を処理する点が日本と異なる。
韓国も先使用に基づく継続使用権を認める。周知性類似の要件を課す点は共通するが、再審回復後の中用権という独立条文の構成は日本に特有。
中国は一定の影響力を有する先使用商標の継続使用を認める。再審で復活した権利との調整という枠組みは前面に出ておらず、先使用法理で吸収される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが地方の菓子メーカーで、ある銘菓の名前を商標登録しようとしたら、その名は既に「取り消し済み」だった。空いていると判断して数年売り続け、今では県内で知らぬ者はいないブランドに育った。そこへ元の権利者が再審で商標権を復活させてくる。あなたを救うのは、再審請求の登録時点で「周知」だったという一点だ。その一点を証拠で固められるかで、ブランドの生死が決まる
- もし、あなたが使い続けてきた商標について、ある日「これは再審で復活した私の商標権を侵害している」という警告書が届いたら? まず確認すべきは、相手の再審請求がいつ登録されたか、そしてその時点であなたの商標が需要者に広く知られていたかだ。順番を間違えると、勝てる主張を自分で捨てることになる
- ようやく再審で商標権を取り戻した。ところが空白期間に、別の会社が同じ名前を全国区のブランドに育てていた。あなたの差止請求は、相手の中用権という壁にぶつかる
- 再審請求の登録まで、残された時間はわずか。その登録より前に、自社商標の周知性を裏づける売上データ、広告出稿記録、市場調査を日付入りで固めておかなければ、後から「あの時点で周知だった」とは立証できない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 警告書が来たら、まず相手の商標権が「再審で回復したもの」か、再審請求の登録日はいつかを登録原簿の経過情報で確認2. その登録日より前の時点で、自社商標が需要者に周知だったことを示す証拠(売上推移、広告出稿、報道、SNS言及、市場調査)を日付順に整理3. 周知性を立証できれば商標法60条の中用権を主張し、差止・損害賠償を退ける4. 同時に、将来の安全のため自社で改めて商標出願も検討する
訴えられた側:1. 自分の商標権が再審で回復したら、空白期間に同一・類似商標を使う第三者がいないか市場を調査2. 中用権を否定するには、相手が善意でなかった(再審を知り得た)か、再審請求登録時に周知へ達していなかったか、のいずれかを突く3. 中用権が成立しそうなら、無理な差止訴訟を避け、60条2項が準用する32条2項の混同防止表示請求やライセンス交渉へ切り替える4. 損害賠償請求は時効に注意
時効(請求できる期限):中用権の発生自体に固有の時効はないが、成否は「再審の請求の登録」の時点で周知だったかで一発で決まる。成立すれば期間の制限なく継続使用できる。逆に復活した権利者の損害賠償請求は、民法724条(損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年)による(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:商標法60条の中用権は、再審請求の登録時における周知性を要件とする厳格な救済であり、先使用権(32条)と同質の高い周知性ハードルを課す。単なる使用実績では足りず、需要者アンケート・広告費・報道・市場シェア等の客観証拠による立証が必要とされる。保護範囲は周知に達した同一の商品・役務に限定される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行商標法の制定(昭和35年施行)に伴い、再審で回復・設定登録された商標権と空白期間の善意使用者との利害を調整する中用権規定として整備された。特許法176条の中用権と同趣旨の構造を採る。
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