商標法 第85条
クイックジャンプ
証拠調べ又は証拠保全に関し、この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から書類その他の物件又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の提出又は提示を命じられた者が正当な理由がないのにその命令に従わなかつたときは、十万円以下の過料に処する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 商標法第85条は、日本の商標法に含まれる条文です。
- 商標法第85条の条文原文は「証拠調べ又は証拠保全に関し、この法律の規定により特許庁又はその嘱託を受けた裁判所から書類その他の物件又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつて…」で始まります。
- 商標法第85条は第九章に置かれています。
- 商標法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 商標法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 商標法第85条の前の条は商標法第84条です。
- 商標法第85条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第85条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127 - 本サイト収録
商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第85条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000127/85
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点商標法85条は、証拠調べ・証拠保全に関する特許庁の提出命令または提示命令に正当な理由なく従わなかった者を、十万円以下の過料に処すると定める。刑罰ではなく秩序罰であり、前科はつかない。
Q · 特許庁の審判で「書類を出せ」と命じられたのに無視したら、どうなりますか?
十万円以下の過料。刑罰ではないので前科はつきません。
商標法85条により、証拠調べ・証拠保全に関して特許庁またはその嘱託を受けた裁判所から書類その他の物件・電磁的記録の提出または提示を命じられた者が、正当な理由なく命令に従わなかった場合、十万円以下の過料に処せられます。過料は刑罰ではなく秩序罰であり、前科にはならず、非訟事件手続法に基づき裁判所が決定します。ただし金銭的な負担よりも、命令に従わなかったという事実が審判官の心証形成に不利に働く点の方が実務上は重大です。提出できない事情がある場合は、期限内に理由を書面で説明することが求められます。
解説
特許庁の審判廷から一通の書類提出命令が届く。差出人は裁判所ではなく行政庁だが、無視した瞬間、あなたには十万円以下の過料が待っている。商標法85条が押さえているのは、この「行政庁の命令に、なぜ制裁が付くのか」という一点だ。商標の無効審判や取消審判では、特許庁の審判官が民事訴訟法を準用して証拠調べを行う。相手方が持っている売上台帳、社内メール、そして2026年施行の改正で明記された電磁的記録(サーバー上のログ、クラウド上の使用証拠、社内チャットの履歴)。これらを審判官が「出せ」と命じたとき、正当な理由なく従わなければ制裁が科される。ここであなたが知るべき本当の急所は、この過料が「刑罰ではない」ということだ。前科はつかない。だが、命令に従わなかったという事実は、審判の心証形成で確実にあなたに跳ね返る。過料十万円より、その心証の方がはるかに高くつく。
法的な位置づけ
商標法85条は、審判その他の手続における証拠調べ・証拠保全の実効性を担保する秩序罰規定である。特許庁または嘱託を受けた裁判所による書類その他の物件・電磁的記録の提出命令または提示命令に対し、名宛人が正当な理由なく従わない場合に十万円以下の過料を科す。刑罰ではないため前科は生じず、過料の裁判は非訟事件手続法により裁判所が行う。
よくある質問 AI による整理
Q1商標法85条の過料はいくらですか?
十万円以下です。定額ではなく上限額であり、実際の金額は裁判所が事案の内容に応じて決定します。刑罰ではないため、罰金と異なり前科にはなりません。
Q2過料と罰金の違いは何ですか?
罰金は刑罰で前科がつき刑事手続で科されますが、過料は秩序罰で前科がつかず、非訟事件手続法に基づき裁判所が決定で科します。商標法85条は過料です。
Q3特許庁の提出命令を無視するとどうなりますか?
十万円以下の過料の対象になるうえ、命令に従わなかった事実が審判官の心証形成において不利に評価される可能性があります。金銭より心証の影響が実務上は重大です。
Q4電磁的記録も提出命令の対象ですか?
対象です。商標法85条は電子的方式・磁気的方式その他人の知覚では認識できない方式で作られ、電子計算機による情報処理に供される記録を明文で含めています。
Q5過料は誰が科すのですか?
特許庁ではなく裁判所です。非訟事件手続法に基づく過料事件として、裁判所が決定の形式で科します。特許庁は命令を発する主体にとどまります。
Q6資料が存在せず提出できない場合はどうすればいいですか?
沈黙せず、指定された期限内に「提出できない事情」を書面で説明します。廃棄済み・復元不能などの事情は、説明すれば正当な理由の有無として審理されます。
Q7当事者以外の第三者にも提出命令は出ますか?
条文は「命じられた者」と規定し、当事者に限定していません。元従業員など第三者が対象物件を保持している場合も命令の名宛人になりえます。
Q8過料の決定に不服があるときはどうしますか?
非訟事件手続法に基づく過料の裁判に対しては即時抗告が可能です。抗告期間は告知を受けた時から起算される短期間のため、最新の規定を必ず確認してください。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許庁の命令って、裁判所の命令と同じくらい重いんですか?
証拠調べの局面では、ほぼ同じ骨格を持つ。商標法56条が特許法151条を準用し、そこから民事訴訟法の証拠調べ規定が働くためだ。85条の過料は、その実効性を担保する装置である。実務のポイント:実務で過料が実際に科された例は多くない。だが件数の少なさは「軽い」という意味ではなく、代理人が付いた案件ではそもそも無視という選択肢を取らないからだ。命令を無視する当事者はほぼ本人手続の人である
Q2会社の営業秘密が入った資料でも、出さなきゃダメですか?
営業秘密であること自体は「正当な理由」の主張材料になりうるが、それだけで自動的に免除されるわけではない。実務では民事訴訟法220条4号ハの職業秘密文書に準じた議論をしつつ、営業秘密部分をマスキングした形での一部提出を提案するのが定石である。実務のポイント:全面拒否より「マスキング済みの写しを出す」という提案の方が、審判官の心証は劇的に良くなる。出す姿勢を見せた側が争点を有利に組み立てられる
間違えやすい点 AI による整理
- 「過料は罰金みたいなものだから、払えば終わり」と考えるのは危険な単純化である。金額の十万円は確かに軽い。だが命令に従わなかったという訴訟上の事実は残り、審判官はそこから「不利な証拠だから隠したのだろう」という推認を働かせる余地を持つ。商標権という数億円規模の資産の帰趨が、十万円をケチった態度で傾く
- 「特許庁は行政機関だから、命令に強制力はない」という前提そのものが間違っている。商標法56条は特許法を通じて民事訴訟法の証拠調べ規定を準用しており、審判における証拠調べは裁判所の手続と同じ骨格を持つ。行政手続だから緩い、という発想が最初の躓きになる
- 「過料は刑事罰だから前科がつく」と怖がる人がいるが、逆方向の誤解である。過料は秩序罰であって刑罰ではない。前科にはならず、非訟事件手続法に基づく裁判所の決定で科される。刑事事件の弁護人ではなく、審判代理人(弁理士または弁護士)に相談すべき局面だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 商標法85条:提出命令への不服従に対する制裁(過料) | 商標法56条:審判における証拠調べ規定の準用(命令の根拠側) 特許法198条:特許審判における同趣旨の過料規定 |
| 制裁の性質 | 十万円以下の過料(秩序罰、前科なし) | 制裁規定ではなく手続の枠組みを定める 過料(秩序罰、前科なし)/商標との対比で法域が異なる |
| 適用の前提 | 正当な理由なく提出・提示命令に従わないこと | 審判係属中に証拠調べ・証拠保全が実施されること 特許・実用新案の審判等における同種の命令違反 |
| 対象物件 | 書類その他の物件および電磁的記録(明文で包含) | 準用により民事訴訟法の証拠方法一般 特許審判における書類その他の物件等 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台灣は商標爭議手続に同旨の過料規定を置かず、文書提出命令に従わない場合は「他造主張を真實と認めることができる」という擬制で制裁する。金銭罰ではなく証拠評価による不利益という設計上の違いがある
韓国も特許・商標の審判における証拠調べ命令への不服従に過料(과태료)を科す構造を採り、日本法と近い制度設計になっている。具体的な条番号と金額は最新の法令で要確認
ドイツは民事訴訟法上の秩序金・秩序拘留の枠組みを DPMA/BPatG の手続にも及ぼす。秩序拘留という身体的強制手段まで用意している点で、日本の過料一本の設計より制裁が重い
米国 TTAB 手続はディスカバリ不服従に対して主張の排除、不利益推認、さらには審判請求の却下といった手続的制裁を用いる。金銭的過料より証拠法上の帰結を主軸に据えている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 自社ブランドが他社に無効審判をかけられた。相手方が「3年以内の使用実績を示せ」と主張し、審判官があなたの会社に出荷伝票と受注データの提出を命じてきた。社内では「営業秘密だから出したくない」という声が上がる。だが「営業秘密」は正当な理由になるのか、それとも文書提出義務の例外規定(民事訴訟法220条4号)を経由して主張すべきなのか。判断を誤ると過料と心証の両方を失う
- 不使用取消審判を仕掛けた側に立ったとする。相手が使用証拠を出し渋っている。ここであなたが打てる手は、審判官に証拠調べの申立てをすること。命令が出れば相手は従うか、従わずに過料と不利な心証を受け入れるかの二択に追い込まれる。攻める側にとって、この条文は相手の沈黙を破る道具になる
- 退職した元従業員が、前職のブランドをめぐる審判で証人として呼ばれた。手元に当時の販売データの入った外付け HDD がある。「もう会社と関係ないから」と提出を拒めるか? 命令の名宛人は当事者に限られない。第三者でも命令の対象になりうる
- 提出命令の期限まで残り5日。求められたデータは3年前に廃棄したサーバーの中にあり、物理的に復元不能だ。この場合の対応は「無視」ではなく、期限内に「提出できない理由」を書面で審判官に説明すること。正当な理由の有無は、あなたが説明した内容で判断される。黙って期限を過ぎるのが最悪手である
取るべき行動
被害を受けた側:相手方が証拠を隠していると感じたら、1. 特定できる範囲で対象物件を具体的に列挙して証拠調べを申し立てる(抽象的な「全資料」では命令は出ない) 2. 命令が出た後も相手が従わなければ、審判官に対して不提出の事実を主張し、心証形成での考慮を求める3. 並行して、相手方の公開情報(有価証券報告書、プレスリリース、ウェブアーカイブ)で補強証拠を固めておく。命令だけに依存しない証拠設計が実務の基本である
訴えられた側:提出命令を受けたら、1. 期限を最優先で確認、この一点だけは絶対に落とさない2. 対象物件のうち営業秘密・第三者の個人情報を含む部分を切り分ける3. 期限内に「提出可能部分の提出」+「非提出部分について正当な理由を述べた書面」を出す4. 沈黙は最悪の選択肢。存在しない、紛失した、復元不能である場合も、その事実を書面で説明すれば正当な理由の主張として審理される
時効(請求できる期限):過料自体に特定の時効規定はないが、実務上重要なのは審判官が指定した提出期限である。この期限を徒過した時点で不服従の事実が確定する。過料の裁判は非訟事件手続法により裁判所が行い、その決定に対しては即時抗告(非訟事件手続法122条)ができる。決定の告知を受けてから1週間以内が抗告期間である(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:商標法85条の過料は刑罰ではなく秩序罰であり、審判における証拠調べ・証拠保全の実効性を間接的に担保する制度と解される。制裁額が低廉に抑えられているのは、行政庁の手続における強制と当事者の秘密保護との均衡を図る趣旨と説明される
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:商標法(昭和34年法律第127号)の制定に伴い、罰則章に証拠調べ・証拠保全に関する提出命令への不服従に対する過料規定が置かれた
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める