要点労働安全衛生法 28 条は、厚生労働大臣が技術上の指針と化学物質の健康障害防止指針を公表することを定める。罰則はないが、労災裁判では安全配慮義務違反を測る基準として機能する。
Q · 厚労省の安全指針は罰則がないなら、守らなくても問題ないの?
罰則はないが労災裁判では過失を測る物差しになる
労働安全衛生法 28 条により、厚生労働大臣は技術上の指針と、がん等の重度の健康障害を生じるおそれのある化学物質の健康障害防止指針を公表します。これらの指針自体に罰則はありません。しかし労災や損害賠償の裁判では、会社が公表された指針に従っていたかどうかが、安全配慮義務違反(労働契約法 5 条)や過失(民法 709 条)を判断する決定的な基準になります。罰則がないことと、民事上の賠償責任がないことは、まったく別の問題です。
工場で長年ある溶剤を扱い、数年後にがんを発症したとする。会社は「特別則も省令も守っていた、法律違反はない」と言うだろう。だがその裏に、もう一本の物差しがある。労働安全衛生法 28 条は、厚生労働大臣に対し、機械や作業ごとの技術上の指針、そして発がん性など重度の健康障害をもたらす化学物質の健康障害防止指針を公表する権限と義務を与えている。これらの指針は罰則のない努力目標に見える。しかし労災や損害賠償の裁判では、会社がこの公表された指針に従っていたかどうかが、安全配慮義務違反や過失を判断する決定的な物差しになる。あなたが知っておくべきは、会社が「指針は努力義務だから」と軽視した瞬間、裁判ではそれが過失の証拠へ転じるという逆転構造だ。指針は守らなくても罰されない。だが守らなければ賠償責任を負う。
労働安全衛生法 28 条は指針等の公表を定める規定であり、厚生労働大臣が事業者の講ずべき措置の実施を図るための技術上の指針(1 項)と、がんその他重度の健康障害を生じるおそれのある化学物質の健康障害防止指針(3 項)を公表すべき旨を規定する。罰則を伴わない努力目標型の行政指針として位置づけられ、民事責任の判断基準として実質的な効力を持つ。
技術上の指針(1 項)と、がん等の重度の健康障害を生じるおそれのある化学物質の健康障害防止指針(3 項)を、厚生労働大臣が公表すると定めています。
罰則はありませんが、労災や損害賠償の裁判で安全配慮義務違反や過失を判断する基準になります。指針を守らない事業者は民事責任を問われやすくなります。
公表された指針に従っていなかった事実が、安全配慮義務違反(労働契約法 5 条)や過失(民法 709 条)の証拠として用いられ、賠償責任を基礎づける材料になります。
指針は安全配慮義務の具体的な水準を画定します。指針に示された対策を怠れば、予見可能な危険を放置したとして安全配慮義務違反が認定されやすくなります。
28 条 2 項は、技術上の指針を定める際に中高年齢者に特に配慮すべきと定めます。加齢による身体機能の変化を踏まえた安全方策を求める趣旨です。
別です。労災保険は定型的な給付ですが、会社の過失による損害賠償(民法 709 条・415 条、労働契約法 5 条)は別枠で請求でき、指針違反がその立証軸になります。
28 条 4 項により、大臣は公表した指針に関し、事業者やその団体に必要な指導等を行えます。罰則ではなく行政指導による実効性確保の仕組みです。
技術上の指針(1 項)は機械・作業の安全方策を、健康障害防止指針(3 項)はがん等を生じうる化学物質の取扱い・健康管理を対象とします。根拠項と対象が異なります。
罰則はありません(28 条の指針は実施を促すもの)。ですが意味は絶大です。労災や損害賠償の裁判では、会社が公表された指針に従っていたかが安全配慮義務違反(労働契約法 5 条)や過失(民法 709 条)の判断材料になります。業界裏話ヒント:弁護士は労災事件で必ず該当する厚労省指針を探します。「省令は守っていた」会社でも、指針違反があれば過失を立証できる。罰則の有無と賠償責任の有無は全く別、これを知る労働者は交渉で圧倒的に強い
厚生労働省のサイトや「職場のあんぜんサイト」で、化学物質による健康障害を防止するための指針(がん原性指針)や該当物質を検索できます。28 条 3 項の対象は、がんその他重度の健康障害のおそれがある物質です。業界裏話ヒント:SDS(安全データシート)に物質名が載っているので、それを厚労省の指針リストと照合する。会社が SDS を見せたがらないこと自体が安全配慮を軽視している兆候。SDS の提供や掲示は法令上の義務なので、堂々と請求できる
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|---|---|---|
| 法的性質 | 28 条:罰則のない技術上・健康障害防止指針の公表(努力目標型) | — |
| 違反の効果 | 28 条:刑事罰なし。民事の安全配慮義務違反・過失認定の証拠 | — |
| 規律の対象 | 28 条:大臣による指針の公表と指導等 | — |
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