保険業法 第180条の11(清算人の清算相互会社に対する損害賠償責任)
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- 清算人は、その任務を怠ったときは、清算相互会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 2.清算人が第百八十条の八第四項において準用する会社法第三百五十六条第一項の規定に違反して同項第一号の取引をしたときは、当該取引により清算人又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
- 3.第百八十条の八第四項において準用する会社法第三百五十六条第一項第二号又は第三号の取引によって清算相互会社に損害が生じたときは、次に掲げる清算人は、その任務を怠ったものと推定する。
- 一第百八十条の八第四項において準用する会社法第三百五十六条第一項の清算人
- 二清算相互会社が当該取引をすることを決定した清算人
- 三当該取引に関する清算人会の承認の決議に賛成した清算人
- 4.第五十三条の三十四及び会社法第四百二十八条第一項(取締役が自己のためにした取引に関する特則)の規定は、清算相互会社の清算人の第一項の責任について準用する。この場合において、同条第一項中「第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)」とあるのは「保険業法第百八十条の八第四項において準用する第三百五十六条第一項第二号」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
この条文の基本情報
清算人の清算相互会社に対する損害賠償責任とは何ですか?
定義清算人の清算相互会社に対する損害賠償責任とは、保険業法第180条の11に定められた規定で、「清算人は、その任務を怠ったときは、清算相互会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第180条の11(清算人の清算相互会社に対する損害賠償責任)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第180条の11の条文原文は「清算人は、その任務を怠ったときは、清算相互会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」で始まります。
- 保険業法第180条の11は第四節に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第180条の11の前の条は保険業法第180条の10です。
- 保険業法第180条の11の次の条は保険業法第180条の12です。
- 保険業法第180条の11には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第180条の11 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第180条の11(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/180_11
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法180条の11は、清算相互会社の清算人が任務を怠った場合の損害賠償責任を定める。競業取引では得た利益額が損害額と、利益相反取引では任務懈怠そのものが推定される。
Q · 清算人会で賛成の手を挙げただけでも、賠償責任を負わされることがあるんですか?
はい。賛成した清算人も任務懈怠を推定されます
保険業法180条の11第3項は、利益相反取引によって清算相互会社に損害が生じたとき、取引をした清算人だけでなく、その取引を決定した清算人、清算人会の承認決議に賛成した清算人についても、任務を怠ったものと推定すると定めます。推定される以上、責任を免れるには清算人の側が反証しなければなりません。さらに2項では、競業取引について清算人または第三者が得た利益の額がそのまま損害の額と推定され、請求する側は損害額の立証を省略できます。
解説
日本生命も明治安田生命も住友生命も、株式会社ではなく相互会社である。そこでは保険契約者は顧客であると同時に「社員」、つまり会社の持ち主だ。その相互会社が解散して清算に入ると、財産を換価し、債務を払い、残りを社員に配る役目を清算人が負う。本条は、その清算人が任務を怠って会社に損害を出したとき、清算人個人の財布から賠償させる規定である。効き目が出るのは2項と3項だ。清算人が競業取引をすれば、その取引で得た利益額がそのまま損害額と推定される。利益相反取引で会社が損をすれば、取引の当事者だけでなく、それを決定した清算人も、清算人会で承認決議に賛成した清算人も、全員が任務を怠ったと推定される。普通の損害賠償なら請求する側が損害額も落ち度も立証するが、ここでは立証の重荷が清算人の側にひっくり返っている。
法的な位置づけ
保険業法180条の11は、清算相互会社の清算人の対会社責任を定める規定である。1項は任務懈怠による損害賠償責任の原則を置き、2項は競業取引における損害額の推定、3項は利益相反取引における任務懈怠の推定を定める。4項は同法53条の34および会社法428条1項を準用し、自己のためにした直接取引について無過失免責を封じる。
手順
- 1.就任前に準用条文と保険の射程を確認する 清算人就任を承諾する前に、保険業法180条の8第4項、53条の34、会社法356条・428条1項、施行令の技術的読替えを e-Gov で並べて確認する。あわせて会社役員賠償責任保険(D&O 保険)が清算期間中も有効か、清算人が被保険者に含まれるかを保険証券で確認する
- 2.自分の取引が推定類型に当たるかを切り分ける 検討中の取引が競業取引(2項)か、利益相反取引(3項)か、自己のためにした直接取引(4項・会社法428条1項)かを最初に判定する。直接取引に当たるなら無過失の抗弁が封じられるため、そもそも実行しない選択を含めて判断する
- 3.条件の相当性を独立した証拠で固める 取引を実行するなら、第三者鑑定書、複数見積り、入札記録、価格交渉の履歴を時系列で残す。清算人会に付議する際は資料一式を議案に添付し、審議の経過を議事録に反映させる
- 4.反対・棄権の記録を議事録確定前に独立させる 決議に賛成しない場合は、その場で議事録への記載を求める。加えて議事録が確定する前に、日付入りのメールで異議の内容を事務局へ送付し、議事録とは別系統の証拠を残す
- 5.提訴予告や請求を受けたら反証の設計から入る 推定類型に当たるかを確認したうえで、賛成者ではないことの立証、取引条件の相当性、損害の有無と因果関係の三点に争点を整理する。自己のためにした直接取引では無過失主張が通らないため、損害・因果関係へ争点を移す
よくある質問 AI による整理
Q1清算相互会社とは何ですか?
解散して清算手続に入った相互会社のことです。相互会社は保険契約者が「社員」として会社の構成員になる形態で、清算中は残余財産を社員に分配する範囲で存続します。
Q2清算人の任務懈怠とは何を指しますか?
会社財産の換価、債務の弁済、残余財産の分配という清算人の職務について、善良な管理者の注意を尽くさなかったことを指します。廉価売却や身内取引が典型です。
Q3相互会社の社員は清算人に損害賠償を請求できますか?
保険業法180条の11第1項の責任は会社に対するものです。社員が直接追及するには代表訴訟の準用関係を確認する必要があり、後任清算人や会社側からの請求が基本ルートになります。
Q4清算人の責任は免除できますか?
本条4項が準用するのは同法53条の34と会社法428条1項であり、責任免除に関する規定は列挙されていません。免除の可否は準用関係と読替規定を個別に確認する必要があります。
Q5清算人の責任に時効はありますか?
本条に固有の時効規定はなく、民法166条1項の一般の消滅時効(知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されます。起算点は損害発生時ではありません。
Q6保険業法180条の11と会社法486条は何が違いますか?
構造はほぼ同型で、会社法486条は株式会社の清算人、本条は清算相互会社の清算人を対象とします。相互会社では保護される残余財産の帰属先が保険契約者である社員になります。
Q7清算人会とは何をする機関ですか?
清算人全員で構成され、清算業務の重要な意思決定と職務執行の監督を行う会議体です。利益相反取引の承認決議もここで行われ、賛成者は本条3項3号の推定対象になります。
Q8清算人の競業取引は違法ですか?
直ちに無効になるわけではなく、所定の承認を欠くと本条2項により、その取引で清算人または第三者が得た利益の額が会社の損害額と推定される効果が生じます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1清算人って、そんなに責任重いんですか。ただの後片付け係じゃないんですか
後片付け係ではなく、会社財産の管理処分権を握る立場です。だから1項で任務懈怠による賠償責任を負い、しかも4項が会社法428条1項を準用するため、自己のためにした直接取引では無過失の弁解も通りません。実務のポイント:就任を承諾する前に、会社役員賠償責任保険(D&O 保険)が清算期間中も有効か、清算人が被保険者に含まれるかを確認すること。退任や清算開始で切れる設計の契約は珍しくなく、就任してから空白に気付く人が多い
Q2清算人会では反対したのに、議事録には何も書かれていませんでした。まずいですか
3項3号が推定対象にするのは承認決議に賛成した清算人ですが、会議体の実務では議事録に異議をとどめない出席者を賛成と扱う仕組みが使われます(取締役会につき会社法369条5項)。実務のポイント:議事録が確定する前に、日付とともに異議の内容をメールで事務局へ送っておく。これは議事録とは独立した証拠になり、後から作れないタイプの記録として効く
Q3損害の金額って、結局は誰がどうやって計算するんですか
原則は請求する側が立証します。ところが2項があると、競業取引で清算人または第三者が得た利益の額がそのまま損害の額と推定され、その立証負担が消えます。実務のポイント:追及する側は損害の鑑定より先に、競業先の売上、役員報酬、配当の資料を押さえる。損害額の立証という最も落ちやすい関門をまるごと飛ばせるので、着手順を変えるだけで勝率が変わる
Q44項の最後にある「政令で定める技術的読替え」って、読まないとダメですか
実務では必要になります。保険業法が会社法の条文を借りてくる構造のため、条文中の「取締役」「株式会社」などを相互会社用に置き換える対応表が政令(保険業法施行令)側に置かれています。実務のポイント:準用の連鎖は、読替規定を横に開いて読む人とそうでない人で調査時間が桁違いになる。e-Gov で保険業法、会社法、施行令の三枚を同時に開いて突き合わせるのが実務家の標準手順で、記憶で追うと必ずどこかで読み違える
間違えやすい点 AI による整理
- 任務懈怠責任があること自体は誰でも知っている。見落とされているのはその深刻度だ。通常の損害賠償なら請求する側が損害額を立証しなければならず、そこで多くの請求が力尽きる。だが2項は競業取引で得た利益額を損害額と推定し、3項は任務懈怠そのものを推定する。請求側にとって最も高い壁が二枚とも消える設計になっている
- 「取引の当事者になっていなければ関係ない」という前提で清算人会に臨む人がいるが、その問いの立て方が誤っている。3項が推定の対象に並べるのは、取引をした清算人、取引を決定した清算人、そして承認決議に賛成した清算人の三種類だ。手を挙げたという事実だけで、あなたは被告席の射程に入る
- あなたから見れば、清算とは「もう終わった会社の後片付け」に過ぎない。法律から見れば、清算相互会社は社員(保険契約者)の残余財産をまだ抱えたままの器であり、その器を減らす行為は個人責任に直結する。この温度差が、名誉職のつもりで就任した人を最も強く潰す
- 自己取引でも「自分に過失がなければ免責される」と思い込んでいると外す。4項が会社法428条1項を準用する結果、清算人が自己のためにした直接取引については、責めに帰すべき事由がなかったという主張で責任を免れることができない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 保険業法180条の11:清算人の対会社責任と推定規定 | 保険業法180条の8:清算人の職務と会社法356条の準用(行為規制の入口) 保険業法53条の34:役員等の責任に関する規定(本条4項が準用) |
| 立証責任の所在 | 2項・3項の推定により、損害額および任務懈怠の立証負担が清算人側へ転換 | 承認の有無という客観的事実の問題(規制違反の判定) 責任の主体・範囲の枠組みを定め、推定自体は置かない |
| 免責の余地 | 自己のためにした直接取引は4項の準用により無過失免責が封じられる | 所定の承認を得れば行為規制違反にはならない 準用される範囲で責任の枠組みが決まる(読替規定の確認が必要) |
| 追及側の実務着手点 | 競業先の売上・報酬資料を先に押さえ、利益額から請求額を組む | 清算人会議事録で承認決議の有無と賛否を確認 準用先の条文と施行令の技術的読替えを突き合わせる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は清算人に善良管理人の注意義務を課し、怠って会社に損害を与えたときは連帯賠償責任を負わせる。推定規定という立証責任転換の技術までは条文上明示していない点が日本と異なる
韓国商法は清算人について理事(取締役)の責任規定を準用する構造をとる。責任の骨格は日本と同型だが、相互会社という形態の位置づけは保険業法制側の規律に委ねられる
ドイツは清算人(Abwickler)に取締役と同一の権利義務を与え、§ 93の責任規定を適用する。相互保険会社(VVaG)については保険監督法(VAG)側に固有の規律が置かれる
米国の保険会社清算は州保険庁の receivership 制度が中心で、receiver は裁判所監督下の fiduciary として責任を負う。会社法的な清算人責任というより監督法上の枠組みに寄る
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 清算人会に出された不動産の一括売却案に、資料をよく確かめないまま賛成したとしたらどうなるか。買主が別の清算人の関係会社で、価格は相場より二割安かった。会社に損害が出た瞬間、あなたは3項3号の「承認の決議に賛成した清算人」として任務懈怠を推定される側に回る。推定を破るために証拠を集めるのは、追及する側ではなくあなたである
- 清算中の会社と同じ畑の代理業を、あなたが個人で始めた。清算人の競業取引だ。社員側は会社にいくらの損害が出たかを計算する必要すらない。あなたがその商売で得た利益の額が、そのまま損害の額と推定される(2項)。決算書と報酬明細が、そのまま請求額の根拠書類に変わる
- 自分のために会社の遊休不動産を買い取った。価格は鑑定書どおりだった。それでも損害が生じれば、4項が準用する会社法428条1項により、自分に落ち度はなかったという弁解の道が閉じている
- 社員代表からの提訴予告書が届き、回答期限まであと10日。手元にあるのは清算人会の議事録一冊だけで、あなたが反対した記録はどこにも残っていない。この10日で掘り起こすべきは当時の稟議メール、鑑定書、価格交渉のやりとりであって、記憶の整理ではない
- 加入していた相互会社の保険。会社が清算に入り、社員への分配額が当初の説明より大きく下回った。社員であるあなたには、会社の損失そのものを清算人個人に賠償させるルートが残っている。それが本条1項である
取るべき行動
被害を受けた側:1. 社員または後任清算人として損害を疑ったら、まず清算人会の議事録、稟議書、鑑定書、価格交渉の履歴を確保する2. 問題の取引が競業取引か利益相反取引かを切り分ける。前者なら2項で利益額を損害額と推定でき、後者なら3項で任務懈怠を推定できる3. 推定が使える類型なら、損害額の鑑定に費用をかける前に相手方の利益額の資料収集を優先する4. 決議に賛成した清算人全員を対象に含めるか絞るかを、資力と証拠の両面から先に決めておく
訴えられた側:1. 推定を受ける類型(競業・利益相反・決議賛成)に当たるかをまず確認し、当たるなら反証の設計から入る2. 決議に反対または棄権していたなら、議事録の記載、当日のメール、事前照会の履歴を集めて賛成者ではないことを示す3. 取引条件の相当性(第三者鑑定、複数見積り、競合入札の記録)を時系列で並べ、任務を尽くしたことを裏付ける4. ただし自己のためにした直接取引は4項の準用により無過失の主張が封じられるため、争点を条件の相当性ではなく損害の有無・因果関係へ移す
時効(請求できる期限):本条に固有の時効規定はなく、一般の消滅時効(民法166条1項、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年)が適用される。起算点は損害の発生時ではなく請求権を行使できる時である点に注意。清算が結了し登記が済んだ後でも、この責任自体が自動的に消滅するわけではない(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条の責任は会社法423条・486条と同型の任務懈怠責任であり、推定規定は構造的に利益相反が疑われる類型に限って立証責任を転換したものと理解されている。通常の清算処分の判断については、従来どおり請求側が任務懈怠と損害を立証する必要がある。
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)会社法制定に伴う整備 条文が会社法356条・428条を準用する構造をとることから、現行の文言は会社法制定に伴う関係法律の整備で形成されたものとみられる。新設か既存条文の改正かを含め、改正沿革は人的検証が必要
- 保険業法 第180条の8清算人への競業・利益相反規制の準用元
- 保険業法 第53条の34役員等の責任規定を清算人へ準用
- 会社法 第356条競業及び利益相反取引の制限の本体規定
- 会社法 第428条自己のためにした直接取引の無過失責任化
- 会社法 第486条株式会社の清算人責任、本条の対応規定
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