保険業法 第54条の9(計算書類等の提出命令)
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裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができる。
この条文の基本情報
計算書類等の提出命令とは何ですか?
定義計算書類等の提出命令とは、保険業法第54条の9に定められた規定で、「裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第54条の9(計算書類等の提出命令)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第54条の9の条文原文は「裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができる。」で始まります。
- 保険業法第54条の9は第二目 計算書類等に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第54条の9の前の条は保険業法第54条の8です。
- 保険業法第54条の9の次の条は保険業法第54条の10です。
- 保険業法第54条の9には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第54条の9 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第54条の9(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/54_9
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法54条の9は、裁判所が申立て又は職権で、訴訟の当事者に計算書類及びその附属明細書の提出を命じられると定める。命令の相手方は訴訟の当事者に限られる。
Q · 相互会社の保険会社と裁判になったら、相手の決算資料は出させられるの?
はい、裁判所は職権でも提出を命じられます
保険業法54条の9により、裁判所は申立てによるほか職権でも、訴訟の当事者に対して計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができます。民事訴訟法220条以下の一般ルールと違い、申立てが前提ではなく、同条4号のような除外事由も条文に書かれていません。ただし命令の相手方は「訴訟の当事者」に限られ、対象も計算書類と附属明細書に限られます。会計帳簿や内部の意思決定資料を取りに行くなら、根拠条文は別になります。
解説
日本生命保険相互会社、明治安田生命保険相互会社。社名の末尾まで読み込んだ契約者は少ない。相互会社には株主がおらず、保険契約者そのものが「社員」になる。そして相互会社を相手に訴訟が始まったとき、この条文が動き出す。裁判所は、当事者の申立てがあってもなくても、職権で計算書類(貸借対照表・損益計算書など)とその附属明細書の全部または一部の提出を命じられる。ここが民事訴訟法の一般ルールと決定的に違う。通常の文書提出命令(民事訴訟法220条以下)は申立てが前提で、しかも相手は「これは自己利用文書だ」と抵抗する余地がある。本条にはその除外事由が一文字も書かれていない。つまり、あなたが剰余金の分配や役員の責任をめぐって相互会社と争うとき、相手の数字を法廷に引き出す経路は、あなたの証拠収集力だけに依存しない。裁判官がその気になれば、裁判官の手で引き出せる。
法的な位置づけ
保険業法54条の9は、相互会社に関する訴訟における計算書類等の提出命令を定める規定である。裁判所は、当事者の申立てによるほか職権でも、訴訟の当事者に対し、計算書類及びその附属明細書の全部又は一部の提出を命ずることができる。民事訴訟法220条以下の文書提出義務に対する特則であり、株式会社について定める会社法443条に対応する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.相手が相互会社か株式会社かを確認する 保険証券や約款で保険者の商号末尾を確認する。「相互会社」なら保険業法54条の9、「株式会社」なら会社法443条が根拠条文になる。ここを間違えると書面の引用条文ごと外れる
- 2.公表数値で説明のつかない箇所を特定する 保険業法111条に基づく業務及び財産の状況に関する説明書類(各社サイトの PDF)を取得し、相手の主張と整合しない数値を洗い出す。「全部出させてほしい」ではなく「この公表数値とこの主張の差が説明できない」と特定するのが要点
- 3.訴状・準備書面で「計算処理の適否が争点」と明示する 職権発動は、裁判官がこの事件を数字の争いだと理解した瞬間に現実味を帯びる。争点整理の段階で計算の争点を明示し、金額の多寡ではなく計算過程の適否を争っていることを書面に残す
- 4.提出命令を申し立て、却下されても上申書で職権発動を維持する 申立てが却下されても本条の職権の芽は消えない。対象を計算書類及び附属明細書のうち必要な範囲に特定した上申書を提出し、期日ごとに職権発動の必要性を更新する
- 5.拒否回答を保存し、不提出なら真実擬制を求める 「内部資料なので開示できない」という回答書面は必ず保存する。命令後も提出がない場合、民事訴訟法224条により当該文書の記載に関する主張を真実と認めるよう裁判所に求める土台になる
よくある質問 AI による整理
Q1計算書類等の提出命令とは?
裁判所が訴訟の当事者に、計算書類と附属明細書の全部又は一部を出させる命令です。保険業法54条の9が根拠で、申立てがなくても職権で発することができます。
Q2附属明細書とは何ですか?
貸借対照表や損益計算書の内訳を示す書類です。公表される説明書類には無い粒度の数字が含まれるため、計算処理の適否を争うときに実質的な争点資料になります。
Q3保険業法54条の9が使えるのはどんな訴訟ですか?
相互会社が訴訟の当事者になっている事件です。剰余金の分配や役員の責任追及など、計算処理の適否が争点になる訴訟で機能します。代理店だけを被告にした訴訟では届きません。
Q4提出命令に従わないとどうなりますか?
当事者が従わない場合、裁判所はその文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法224条)。出させること自体より、不提出の不利益評価が制裁の本体です。
Q5会計帳簿も提出命令の対象になりますか?
本条の対象は計算書類及びその附属明細書に限られます。会計帳簿や稟議書などの内部資料は別の規定の問題で、民事訴訟法220条以下の一般ルールで争うことになります。
Q6提出命令はいつまでに申し立てるべきですか?
本条自体に期限はありませんが、事実審の口頭弁論終結までに命令が出る必要があります。争点整理を終えた後の申立ては時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条)として却下されうります。
Q7相互会社の社員とは誰ですか?
相互会社では保険契約者そのものが社員になります。株主はおらず、株主総会にあたる総代会があるため、剰余金の分配をめぐる争いは組織内部の権利紛争として構成できます。
Q8株式会社の保険会社にはどの条文が使えますか?
会社法443条が同内容の提出命令を定めています。保険証券で相手が相互会社か株式会社かを確認すると、引用すべき根拠条文が決まります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁判にしないと、保険会社の決算の中身って見られないんですか?
訴訟前でも見られる。保険業法111条により、保険会社は業務及び財産の状況に関する説明書類を営業所に備え置く義務を負い、各社サイトにも PDF がある。ただし附属明細書の粒度はない。実務のポイント:提出命令を求める書面は「全部出させてほしい」ではなく「この公表数値とこの主張の間に説明のつかない差がある」と特定する方が、裁判所は職権を動かしやすい
Q2「営業秘密だから出せない」と言われたら、それで終わりですか?
終わらない。本条には民事訴訟法220条4号のような除外事由が書かれておらず、営業秘密を理由に当然に拒めるかは実務上、解釈が分かれている。従わなければ、裁判所は当該文書に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民事訴訟法224条)。実務のポイント:全面拒否で争わせるより、民事訴訟法92条の閲覧等制限の申立てとセットで提案する方が、命令自体は出やすい
間違えやすい点 AI による整理
- 「裁判所に頼めば保険会社の帳簿が全部出てくる」という期待そのものが、問いの立て方を誤っている。本条が出させられるのは計算書類とその附属明細書であって、会計帳簿や個別の稟議書ではない。会計帳簿には別個の規定があり、内部の意思決定資料は民事訴訟法220条以下の一般ルールで争うことになる。何を取りに行くかで、根拠条文も勝ち筋も変わる
- あなたから見れば「保険会社に情報を出させる制度」だが、条文が向いている先はあくまで「訴訟の当事者」である。相互会社が当事者になっていない訴訟、たとえば代理店だけを被告にした訴訟では、この命令は保険会社本体に届かない。誰を被告に選ぶかという最初の一手が、後で使える武器の種類まで決めてしまう
- 命令が出れば相手は必ず出す、と考えるのは楽観的すぎる。従わないという選択肢は現実に存在する。ただし当事者が従わない場合、裁判所はその文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる(民事訴訟法224条)。制裁の本体は「出させる」ことではなく「出さなかった事実を不利益に評価する」ことにある。この差を理解していないと、命令が出た時点で勝ったと錯覚する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 情報を取りに行く経路 | 保険業法54条の9:訴訟内で裁判所が提出を命ずる | 保険業法111条:営業所備置き・公表による縦覧(訴訟外) 保険業法128条:監督官庁による報告徴求(行政ルート) |
| 動かす主体 | 裁判所(申立て又は職権) | 誰でも閲覧可能(会社側の備置義務) 内閣総理大臣・金融庁(当事者は動かせない) |
| 得られる粒度 | 計算書類+附属明細書(内訳レベル) | 説明書類の公表数値(要約レベル) 当事者には原則開示されない |
| 拒否されたときの手当て | 民事訴訟法224条の真実擬制を求められる | 備置義務違反として是正を求める 行政処分の問題で私人の請求権ではない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は当事者の文書提出義務として商業帳簿を含めて規律し、裁判所は申立てに基づき提出を命じる。相互会社という会社形態自体が台湾保険法に置かれていないため、条文単位の完全な対応はない
韓国も当事者の文書提出義務と提出命令を一般規定で処理する。相互会社の計算書類に特化した明文の職権命令規定は置かれていない
ドイツ商法は訴訟中の商業帳簿提出を申立て又は職権で命じうると定め、民訴法142条も職権による文書提出命令を認める。日本の本条に最も構造が近い
米国は広範なディスカバリで文書を取得するが、当事者の要求が前提で、裁判所が職権で提出を命ずる枠組みではない。取得範囲は広い一方、費用は当事者負担となる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 契約者配当が去年より大きく減った理由を会社に問い合わせても、返ってくるのは「総合的な判断」の一言だけ。社員として、あるいは総代として、この計算の中身を争うなら何ができる? 訴訟になれば、裁判所は職権で計算書類と附属明細書の提出を命じられる。あなたが数字を一枚も持っていなくても、争点にはできる
- あなたが相互会社の経理や法務にいるなら、この条文は逆向きに刺さる。社員による責任追及の訴えが立った瞬間から、附属明細書まで法廷に出る前提で日々の計算処理を組み立てる必要がある。「内部資料だから外には出ない」という前提で書面戦略を組むと、命令が出た日に足元が崩れる
- 相手方から「該当書類は保存期間を過ぎている」という回答が届いた。計算書類は長期保存が原則だが、争点が古い期にまたがると、まず附属明細書のレベルから失われていく。次回期日まで残り3週間。争点整理が固まる前に職権発動を促す上申書を出せるかどうかで、この訴訟で見られる数字の範囲が確定する
取るべき行動
被害を受けた側:1. 保険証券で相手が相互会社か株式会社かを確認する、根拠条文が変わる2. 保険業法111条の説明書類で公表数値を押さえ、説明のつかない箇所を特定する3. 訴状や準備書面の段階で「計算処理の適否が争点だ」と明示する4. 提出命令を申し立てる。却下されても職権発動の余地は残るので上申書で維持する5. 相手の拒否回答は書面で保存し、民事訴訟法224条の主張材料にする
訴えられた側:1. 社員による責任追及や配当をめぐる訴訟が立った時点で、計算書類と附属明細書は法廷に出る前提で保全する2. 「内部資料だから出ない」という前提で書面戦略を組まない、本条に除外事由はない3. 営業秘密が含まれるなら全面拒否ではなく、民事訴訟法92条の閲覧等制限を申し立てて範囲を限定して提出する4. 提出範囲の交渉は命令が出る前に済ませる、命令後は全部か一部かを裁判所が決める
時効(請求できる期限):本条自体に時効や期限はない。ただし提出命令は事実審の口頭弁論終結までに出す必要があり、争点整理を終えた後の申立ては時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条)として却下されうる。前提となる実体上の権利は別途進行し、保険給付を請求する権利や保険料返還請求権は3年(保険法95条)、その他の債権は原則として権利行使できると知った時から5年または権利行使できる時から10年(民法166条)
学説
通説:本条は民事訴訟法220条以下の文書提出義務に対する特則であり、対象を計算書類及び附属明細書、相手方を訴訟の当事者に限定することで、職権介入の範囲を制御している。全面的な職権探知でも純粋な弁論主義でもない、限定された突破口として理解される
実務上の論点:本条には民事訴訟法220条4号ニに相当する除外事由がないため、営業秘密を理由に提出を拒めるかは解釈が分かれる。実務では全面拒否ではなく、民事訴訟法92条の閲覧等制限の申立てと組み合わせて提出範囲を限定する対応が取られる
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成17年(2005年) 新設:会社法制定に伴う関係法律の整備により、相互会社の計算に関する規定群が会社法の体系に合わせて整理され、株式会社に関する会社法443条と同内容の提出命令規定が置かれた
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