保険業法 第55条(基金利息の支払等の制限)
クイックジャンプ
- 基金利息の支払は、貸借対照表上の純資産額から次に掲げる金額の合計額を控除した額(第五十五条の三第三項第一号において「利息支払限度額」という。)を限度として行うことができる。
- 一基金の総額
- 二損失てん補準備金及び第五十六条の基金償却積立金の額(第五十九条第二項の規定により取り崩した基金償却積立金の額があるときは、その合計額を含む。次項において同じ。)
- 三その他内閣府令で定める額
- 2.基金の償却又は剰余金の分配は、貸借対照表上の純資産額から次に掲げる金額の合計額を控除した額(第五十五条の三第三項第二号において「償却等限度額」という。)を限度として行うことができる。ただし、第百十三条前段(第二百七十二条の十八において準用する場合を含む。)の規定により貸借対照表の資産の部に計上した額の全額を償却した後でなければ、これを行うことができない。
- 一基金の総額
- 二損失てん補準備金及び第五十六条の基金償却積立金の額
- 三前項の基金利息の支払額
- 四その決算期に積み立てることを要する損失てん補準備金の額
- 五その他内閣府令で定める額
- 3.前二項の規定に違反して、基金利息の支払又は基金の償却若しくは剰余金の分配を行ったときは、当該相互会社の債権者は、これを返還させることができる。
この条文の基本情報
基金利息の支払等の制限とは何ですか?
定義基金利息の支払等の制限とは、保険業法第55条に定められた規定で、「基金利息の支払は、貸借対照表上の純資産額から次に掲げる金額の合計額を控除した額(第五十五条の三第三項第一号において「利息支払限度額」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 保険業法第55条(基金利息の支払等の制限)は、日本の保険業法に含まれる条文です。
- 保険業法第55条の条文原文は「基金利息の支払は、貸借対照表上の純資産額から次に掲げる金額の合計額を控除した額(第五十五条の三第三項第一号において「利息支払限度額」という。」で始まります。
- 保険業法第55条は第三目 基金利息の支払、基金の償却及び剰余金の分配に置かれています。
- 保険業法の公布日は平成7年6月7日です。
- 保険業法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 保険業法第55条の前の条は保険業法第54条の10です。
- 保険業法第55条の次の条は保険業法第55条の2です。
- 保険業法第55条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
保険業法(平成七年法律第百五号)第55条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105 - 本サイト収録
保険業法(平成七年法律第百五号)第55条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/407AC0000000105/55
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点保険業法55条は、相互会社の基金利息の支払、基金の償却及び剰余金の分配を、純資産額から基金総額等を控除した限度額内に制限する。違反した支払は債権者が返還させることができる。
Q · 生命保険の相互会社って、基金の利息を好きなだけ払っていいんですか?
純資産額から算定した限度額までしか払えず、超過分は債権者が返還させられます
払えません。保険業法55条1項は、基金利息の支払を、貸借対照表上の純資産額から基金の総額、損失てん補準備金及び基金償却積立金の額その他内閣府令で定める額を控除した「利息支払限度額」までに制限します。基金の償却と剰余金の分配も同様に「償却等限度額」の枠内に限られ、113条前段により資産計上した額の全額を償却するまでは実行できません。限度に違反した支払等は、3項により当該相互会社の債権者が返還させることができます。
解説
相互会社という形態を知っているだろうか。日本生命、明治安田生命、住友生命、富国生命。契約者が同時に「社員」となる保険会社であり、株式会社と違って株主がいない。ではその会社を立ち上げる元手はどこから来るか。それが「基金」であり、拠出した人には利息が支払われる。保険業法55条は、その利息と償却と剰余金分配に、外側から硬い天井を打ち込む条文である。純資産額から基金総額・損失てん補準備金・基金償却積立金などを差し引いた残額。その額を超えて配ることは許されない。しかも3項が本命だ。限度を超えて支払われた金は、会社の債権者、つまりあなたが保険契約者や保険金請求権者であれば、その立場から返還を請求できる。会社が「もう払ってしまった」と言っても関係ない。受け取った側から取り戻す仕組みが、条文の中に最初から組み込まれている。
法的な位置づけ
保険業法55条は、相互会社における基金利息の支払、基金の償却及び剰余金の分配について、貸借対照表上の純資産額から基金の総額、損失てん補準備金及び基金償却積立金の額その他内閣府令で定める額を控除した残額を上限とする規制を定める規定である。3項は、これに違反した支払等について、当該相互会社の債権者に返還請求権を認める。
手順
- 1.決算数値から限度額の材料を four 点そろえる 決算公告・ディスクロージャー誌・計算書類から、貸借対照表上の純資産額、基金の総額、損失てん補準備金の額、56条の基金償却積立金の額を拾い出す。59条2項により取り崩した基金償却積立金があれば、その合計額も併せて控除対象に含める
- 2.113条前段の繰延資産の残高をゼロか否かで確定させる 貸借対照表の資産の部に、113条前段(272条の18において準用する場合を含む)により計上した額が残っていないかを確認する。残高が1円でもあれば、償却等限度額の計算結果に関わらず基金の償却と剰余金の分配は行えない
- 3.利息支払限度額と償却等限度額を別々に算定する 1項で利息支払限度額(純資産額-基金総額-損失てん補準備金及び基金償却積立金の額-府令額)を算定し、次に2項で償却等限度額を算定する。2項は控除項目に1項の基金利息の支払額と当該決算期に積み立てることを要する損失てん補準備金の額が加わるため、必ず別計算とする
- 4.決算取締役会の決議前に支払額を限度内へ収める 算定した二つの限度額と、決議予定の基金利息支払額・償却額・分配額を突き合わせる。超過があれば決議前に金額を修正する。支払後に3項で取り戻す場合は受領者の特定と資力の問題が加わり、難易度が跳ね上がる
- 5.超過支払が判明したら債権者の地位から返還請求を組む 既に限度超過の支払がなされている場合、保険金請求権者としての債権者の地位を明示して会社に計算根拠の説明を求める。解消しなければ、支払対象となった基金拠出者リストの開示要求を早期に組み、3項に基づく返還請求の可否を保険法務に強い弁護士に検討させる
よくある質問 AI による整理
Q1相互会社とは何ですか?
保険業法上の社団形式の保険会社で、保険契約者が同時に社員となります。株主がいないため事業の元手を基金の拠出に頼り、拠出者には利息が支払われます。日本生命や明治安田生命などが該当します。
Q2利息支払限度額はどう計算しますか?
貸借対照表上の純資産額から、基金の総額、損失てん補準備金及び基金償却積立金の額、その他内閣府令で定める額の合計額を控除した残額です(55条1項)。この残額を超える基金利息の支払はできません。
Q3剰余金の分配ができないのはどんな場合ですか?
償却等限度額を超える場合に加え、113条前段により貸借対照表の資産の部に計上した額の全額を償却していない場合は、基金の償却も剰余金の分配も一切できません(55条2項但書)。順序ではなく絶対的な前提条件です。
Q4保険業法55条に違反すると罰則はありますか?
55条自体は罰則規定ではありません。直接の是正手段は3項の債権者による返還請求です。別に取締役の責任が問題となり、55条の3が利息支払限度額・償却等限度額を援用した責任規定を置いています。
Q5基金償却積立金を取り崩したときの限度額計算はどうなりますか?
59条2項の規定により取り崩した基金償却積立金の額があるときは、その合計額を含めて控除額を計算します(55条1項2号の括弧書き)。計上を漏らすと限度額を過大に算定し、超過支払につながります。
Q6相互会社が株式会社に組織変更すると基金はどうなりますか?
組織変更では基金の処理が転換条件の中核になります。55条の限度額規制の下でどこまで償却が進んでいたかが、株式の割当や補償の設計に直結します。大同生命・太陽生命・第一生命が実際に組織変更を経ています。
Q7基金利息はいつ支払われますか?
55条は支払時期そのものを定めていません。定款の定めと決算に基づく決議によって支払われますが、その支払時点で1項の利息支払限度額を満たしていることが必要です。決算取締役会前の限度額検証が実務の要点になります。
Q8相互会社の決算公告で何を見ればいいですか?
純資産額、基金の総額、損失てん補準備金、基金償却積立金の四つの数値です。この四つが揃えば1項各号を差し引いて利息支払限度額を試算でき、実際の支払額と突き合わせて超過の有無を検証できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1相互会社の基金って、株を買うのと何が違うんですか?
基金は返還が予定された拠出で、償却によって減っていく点が株式と決定的に違う。議決権も株式のような形では持たない。だからこそ55条2項が償却の限度額を独立に定め、会社の財産的基礎が空洞化しないよう押さえている。実務のポイント:基金拠出者の顔ぶれは、相互会社の資本政策と提携関係を映す鏡になる。ディスクロージャー誌の基金拠出者一覧は、その会社がどの金融グループと近いかを最も正直に語る一枚である
Q2限度額を超えて払ってしまった場合、受け取った人は本当に返さないといけないんですか?
3項は債権者が返還させることができると定めており、受領者が返還義務を負う構造になっている。会社が請求しなくても、債権者が直接動かせる点が要点である。ただし善意の受領者に対する扱いは実務上、解釈が分かれている。実務のポイント:会社法462条以下の剰余金分配規制と構造が似ているため、実務ではそちらの議論を参照しながら組み立てることが多い。保険業法だけを読んで結論を出す弁護士と、会社法の分配規制と往復できる弁護士では、返還請求の設計力が違う
Q32項の但書にある「113条前段」って、そんなに重要なんですか?
決定的に重要である。113条前段により貸借対照表の資産の部に計上した額、いわゆる事業費繰延の全額を償却するまで、基金の償却も剰余金の分配も一切できない。順序の問題ではなく、絶対的な前提条件である。実務のポイント:開業から日の浅い保険会社ほどこの繰延を使っており、その残高が消えるまで分配の自由度がない。新規参入会社の決算を読むとき、113条の残高欄は「あと何年、配れないか」を示すカウンターとして機能する
間違えやすい点 AI による整理
- 「基金は株式会社の資本金と同じようなもの」と理解されがちだが、性質が根本的に違う。基金は返還が予定された拠出であり、償却によって減っていく。だからこそ、償却してもなお会社の財産的基礎が保たれるよう、55条2項が償却限度額を独立に定めている。資本金の減少手続と同列に考えると、必要な計算を丸ごと落とす
- 限度額超過の支払があっても「会社が返還請求すればいい話」と思われている。しかし3項が返還請求権を与えている主体は会社ではなく債権者である。この違いが決定的だ。会社の経営陣が超過支払を承認した張本人である場合、会社自身に是正を期待するのは構造的に無理がある。そこを見越して、外部の債権者に直接の梃子を持たせている
- 保険契約者は「会社の社員(構成員)だから債権者ではない」と考えると、3項の射程を見誤る。相互会社の社員としての地位と、保険契約に基づく保険金・給付金請求権者としての債権者の地位は併存する。あなたから見れば「自分は加入者」だが、法律から見れば「保険金請求権を持つ債権者」でもある。この二重性を理解していないと、行使できる権利を一本落とす
- 「113条の但書は形式的な確認規定」と読み飛ばされやすいが、実質は厳格な順序制御である。2項但書は、113条前段により資産の部に計上した繰延資産(事業費繰延)を全額償却するまで、償却も剰余金分配も一切できないと定める。会計上の繰延処理を使った会社ほど、この一行に長く縛られる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規制される行為 | 55条1項:基金利息の支払 | 55条2項:基金の償却・剰余金の分配 56条:基金償却積立金の積立 |
| 控除項目 | 基金総額+損失てん補準備金及び基金償却積立金の額(59条2項の取崩額を含む)+府令額 | 左記に加え、当期の基金利息支払額+当該決算期に積立を要する損失てん補準備金の額 控除計算ではなく、償却額に対応する積立を義務づける規定 |
| 前提条件 | 限度額の範囲内であること | 113条前段で資産計上した額の全額償却が済んでいること(2項但書) 基金の償却を行うこと自体が積立の契機 |
| 違反時の是正手段 | 3項:債権者が返還させることができる | 3項:債権者が返還させることができる 積立不足は限度額計算を通じて55条の違反に連鎖する |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾は保険業の組織を株式会社又は合作社に限定しており、相互会社という組織形態自体を置かない。したがって基金利息の限度額規制に相当する規定は存在せず、財産的基礎の維持は資本金・責任準備金規制で担われる。
韓国も相互会社制度と基金の枠組みを持ち、基金の償却に対応する積立金の規律を置く。日本と同系の構造だが、具体的な限度額計算の条文設計と債権者の返還請求権の有無は個別に確認を要する。
中国は保険会社の組織形態を株式会社等に限る原則を採る一方、2015年の監督規則により相互保険組織を試行的に認め、運営資金の拠出と返還を規制する。法律レベルではなく規則レベルの規律である点が日本と大きく異なる。
ドイツの相互保険社団では Gründungsstock(設立基金)の償却と利息支払が監督法上の規律に服する。相互会社の元手を基金で調達し償却していく発想の源流であり、日本の55条はこの系譜上にある。
フランスの sociétés d'assurance mutuelle は fonds d'établissement(設立基金)を基礎とし、その償却と分配が保険法典上の規制を受ける。大陸法系の相互保険組織として日独と並ぶ系統に属する。
米国の相互保険会社は surplus notes で資本を調達し、その元利の支払は剰余金の範囲内かつ監督当局の承認を要するという枠組みで規制される。限度額を法律の計算式で固定する日本型と異なり、当局の事前承認に重心がある。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 契約している相互会社の生命保険会社で、決算内容に不透明な点があると報道された。基金利息の支払額が純資産の状況に照らして過大ではないか。あなたは保険金請求権者として会社の債権者にあたり、55条3項に基づく返還請求の当事者になりうる立場にいる
- あなたが相互会社の経営企画部門にいて、基金拠出者から「今期の利息はいつも通り出るのか」と問い合わせを受けた。だが直近の決算で損失てん補準備金の積立不足がある。3項違反の支払をした場合、責任を負うのは受け取った拠出者だけではない。取締役の任務懈怠責任(会社法423条の準用構造)まで連鎖する
- もし、あなたの会社が相互会社に基金を拠出する機関投資家だったとしたら? 利息を受け取った数年後に、当時の支払が限度額超過だったと判明する。受領した金は返還対象になる。「善意で受け取った」という抗弁が通るかは、実務上、解釈が分かれている論点である
- 決算取締役会まであと10日。基金償却積立金の取崩し額をどう扱うかで、利息支払限度額が数億円単位で動く。1項2号の括弧書きが、59条2項による取崩額を「含む」と定めている意味を読み違えると、限度額の計算そのものが崩れる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 対象会社の決算公告・ディスクロージャー誌から、純資産額、基金の総額、損失てん補準備金、基金償却積立金の各数値を拾う2. 1項各号を差し引いて利息支払限度額を試算し、実際の支払額と突き合わせる3. 差額が疑われる場合、保険金請求権者としての債権者の地位を明示して会社に計算根拠の説明を求める4. 会社の説明で解消しなければ、金融庁への情報提供と並行して、3項に基づく返還請求の可否を保険法務に強い弁護士に検討させる。受領者の特定が争点になるので、支払対象の基金拠出者リストの開示要求を早期に組む
訴えられた側:1. まず限度額計算の再検証。1項2号の括弧書き(59条2項による基金償却積立金取崩額を合計額に含む)を計上漏れしていないか、2項4号の当期積立要額を織り込んでいるかを個別に確認2. 2項但書の113条前段の繰延資産が残っていないかを決算書上で確定させる。残っていれば償却・分配は違法となるため、支払前なら決議自体を撤回する3. 既に支払済であれば、返還請求への対応と並行して、取締役の任務懈怠責任の切り分けを進める4. 内閣府令で定める額の解釈に依拠した判断であれば、その根拠となる保険業法施行規則の条項と当局照会の記録を保全する
時効(請求できる期限):本条自体に特定の権利行使期間の定めはない。3項の返還請求権は、一般の消滅時効(民法166条、権利を行使できることを知った時から5年または権利を行使できる時から10年)が適用されると解される。起算点は違法な支払がなされた時点、または債権者がそれを知った時点だが、実務上、解釈が分かれている。取締役の責任追及は会社法上の枠組みに従う
学説
実務上の通説的整理:55条の限度額規制は、相互会社の財産的基礎の維持を数量基準で担保する規定と理解される。3項の返還請求権については、会社法461条・462条の剰余金分配規制と並行する構造を持つため、実務では会社法側の議論を参照しつつ構成される一方、請求主体が債権者である点に固有の意義が認められる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成7年(1995年) 改正:保険業法の全部改正(平成7年法律第105号)。旧保険業法を全面的に改め、相互会社に関する規律を体系化。基金利息の支払及び基金の償却・剰余金の分配について、純資産額を基準とする限度額計算を条文本文に明記した。
- 2.平成17年(2005年) 改正:少額短期保険業者に関する規定(272条以下)の新設に伴い、2項但書の113条前段について272条の18における準用が括弧書きで組み込まれる構造となった。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める