前条第一項の規定により匿名診療等関連情報の提供を受け、これを利用する者(以下「匿名診療等関連情報利用者」という。)は、匿名診療等関連情報を取り扱うに当たっては、当該匿名診療等関連情報の作成に用いられた診療等関連情報に係る本人を識別するために、当該診療等関連情報から削除された記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。)で作られる記録をいう。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項をいう。)若しくは匿名診療等関連情報の作成に用いられた加工の方法に関する情報を取得し、又は当該匿名診療等関連情報を他の情報と照合してはならない。
要点健康保険法 150 条の 3 は、匿名診療等関連情報の利用者が、本人を識別する目的で削除された記述等や加工方法を取得し、または他の情報と照合することを禁止する。再識別の成否は問わない。
Q · 匿名化された医療データを、手元の別のデータと突き合わせて分析してもいいの?
本人を特定する目的での照合は禁止されます
健康保険法 150 条の 3 により、匿名診療等関連情報利用者は、本人を識別するために、匿名加工の際に削除された記述等を取得すること、加工方法に関する情報を取得すること、そして当該情報を他の情報と照合することを禁止されています。禁止されるのは「識別を目的とする行為」であり、結果として誰も特定できなかったとしても違反は成立しうるとされます。純粋な統計的検証は射程外と解されますが、境界は実務上争いがあるため、解析設計を利用申出書に事前記載しておくことが安全側の運用です。
厚生労働省が握る診療報酬明細書(レセプト)と特定健診のデータは、日本最大級の医療ビッグデータである。研究者や民間事業者は申出をすれば、氏名を削った匿名診療等関連情報として提供を受けられる。ただし受け取った瞬間、あなたには普通の研究者にはない縛りがかかる。削除された記述等を取りに行くこと、どう加工したかの情報を手に入れること、そして手元の別データと突き合わせること。この三つが名指しで禁止される。狙われているのは再識別の成功だけではない。文書も図画も音声も動作も「記述等」に含まれるため、本人を識別するために取りに行く行為そのものが、結果が出る前に線の向こう側だ。精度を上げたい、外れ値の正体を確かめたい、その善意の一手が禁止行為になる。
健康保険法 150 条の 3 は、匿名診療等関連情報利用者に課される照合等の禁止を定める規定である。対象となるのは、匿名加工の際に削除された記述等の取得、加工の方法に関する情報の取得、および当該情報と他の情報との照合であり、いずれも本人を識別する目的で行われる場合に禁止される。個人情報保護法 45 条の識別行為禁止に対応する、公的医療データ提供制度における特則である。
国が保有する診療報酬明細書(レセプト)や特定健診等の情報から、本人を識別できる記述等を削除して作成されたデータです。健康保険法 150 条の 2 に基づき、申出により研究者や事業者へ提供されます。
文書、図画、電磁的記録に記載・記録された事項に加え、音声、動作その他の方法で表された一切の事項が含まれます。氏名だけでなく、識別につながる表現全般が広く対象になります。
健康保険法は報告徴収・立入検査や是正命令、提供の停止といった行政的手段を用意し、罰則規定も置いています。実務上は申出をした法人名の公表が最も重い影響となります。
結合そのものが直ちに違法になるわけではありませんが、本人を識別する目的での照合であれば公開データが相手でも本条違反です。目的と設計で判断されるため、事前に解析計画へ明記しておくべきです。
提供を受けた利用者が管理責任を負います。委託先が照合を行っても、申出人の管理体制が問われます。契約書に照合禁止と再委託制限を明記しておくことが防御になります。
提供時に定められる利用期間とデータ消去の条件に従い、期限内に消去または返却します。期限を過ぎて保有し続けること自体が、照合等の禁止とは別個の違反となります。
原資となる制度が異なります。健康保険法は被用者保険等の診療等関連情報を、高齢者の医療の確保に関する法律は同法に基づく情報を扱いますが、識別行為を封じる規律の構造は共通しています。
厚生労働大臣に対して申出を行い、有識者会議の審査を経て提供の可否と条件が決まります。解析目的、体制、外部データの取扱いが審査の主要な着眼点になります。
本条が禁じるのは本人を識別するために行う取得・照合である。純粋な統計的検証で、特定の個人にたどり着く意図も構造もないなら射程外だ。ただし境界は実務上、解釈が分かれている。業界裏話ヒント:安全側の実務は、検証手法を利用申出書と解析計画に事前に書き込んでおくこと。事後に「特定目的ではなかった」と説明するより、事前記載一枚のほうが決定的に強い
提供は申出をした利用者に対して行われ、利用範囲は提供時の条件と第 150 条の 2 以下の規律に拘束される。範囲外の第三者へ渡せば、照合以前に提供条件違反となる。業界裏話ヒント:共同研究者を後から追加するより、申出の時点で全員を利用者として書き込んでおくほうが手続は速い。途中追加は変更申出が必要になり、研究のスケジュール全体が数か月遅れる原因になる
利用実績報告や立入検査、成果物の公表内容から発覚する経路がある。発覚したときに問われるのは違反の事実だけでなく、管理体制と隠蔽の有無だ。業界裏話ヒント:行政の是正措置は、自主報告があったかどうかで実務上の重さが変わる。組織として最も損なのは、担当者個人が上司に黙って処理を消すこと。ログを消した痕跡は、違反本体より致命的に評価される
個人情報の保護に関する法律 45 条も識別行為を禁じるが、あちらは民間事業者一般に対する一般法である。本条は国が保有する診療等関連情報を原資とする特別の仕組みで、提供の可否も条件も厚生労働大臣の審査を経る。業界裏話ヒント:二つの規律は重畳的に効く。個人情報保護法をクリアしたから健康保険法もクリア、という説明は行政に通じない。社内規程は両方を並べて点検する
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律する場面 | 健康保険法 150 条の 3:提供を受けた後の識別行為の禁止 | — |
| 名宛人 | 匿名診療等関連情報利用者(申出をして提供を受けた者) | — |
| 禁止・規律の内容 | 削除された記述等の取得、加工方法の取得、他の情報との照合 | — |
| 違反時の帰結 | 是正命令、提供停止、法人名の公表、罰則規定の適用 | — |
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