要点健康保険法 197 条は、保険者が厚生労働省令の定めにより、事業主に 48 条以外の報告や文書提示をさせ、被保険者や保険給付を受けるべき者に届出・文書提出をさせる権限を定める。
Q · 会社から健康保険の書類を出せと言われたら、断れますか?
原則応じる義務があり、断ると扶養取消や給付停止のリスクがある
健康保険法 197 条により、保険者は厚生労働省令で定めるところにより、事業主に 48 条以外の報告・文書提示をさせ、被保険者や保険給付を受けるべき者に申出・届出・文書提出をさせることができます。会社経由で届く提出依頼の多くは、この条文に基づき保険者から降ろされた法定事務です。応じない場合の不利益は会社ではなく本人に生じ、被扶養者認定の取消や保険給付の保留という形で現れます。ただし要求は省令の枠内に限られるため、根拠となる省令の条項を確認する余地はあります。
健康保険の手続で、会社から「これも出して」「あれも書いて」と言われた経験があるだろう。その要求の根拠が、この 197 条だ。保険者(協会けんぽ、健康保険組合、業務によっては厚生労働大臣)は、厚生労働省令の定めに従って、事業主に対して 48 条に規定された事項以外の報告や文書提示を求め、さらに法律施行に必要な事務そのものを行わせることができる。第 2 項では矛先があなた個人にも向く。被保険者本人、日雇特例被保険者だった者、保険給付を受けるべき者に対して、保険者または事業主への申出・届出・文書提出をさせられる。ここで押さえるべきは二点。第一に、この権限は「厚生労働省令で定めるところにより」という枠がかかっており、省令に根拠のない無制限の資料要求はできない。第二に、事業主があなたに求めてくる書類の多くは、事業主自身の親切心ではなく、保険者から事業主に降ろされた法定事務の転嫁である。断れば誰が困るのか、その構造を知っているかどうかで、あなたの対応は変わる。
健康保険法 197 条は、保険者の報告等徴収権限を定める規定である。第 1 項は事業主に対し、48 条所定の届出事項以外の報告・文書提示および法の施行に必要な事務の遂行を求める権限を、第 2 項は被保険者および保険給付を受けるべき者に対し、保険者または事業主への申出・届出・文書提出を求める権限を定める。いずれも厚生労働省令の定める範囲に限られる。
保険者が事業主および被保険者から情報を集めるための報告等徴収の規定です。厚生労働省令の定めにより、48 条以外の報告・文書提示や、本人の申出・届出・文書提出を求めることができます。
報告拒否や虚偽報告は過料等の対象となりうるとされています。適用範囲は条文ごとに異なるため、実際に要求を受けた際は現行の罰則規定と保険者の通知内容を確認してください。
多くの保険者が年に一度、時期を決めて一斉に実施します。通知が届く前に収入証明(年金額改定通知、確定申告書控え、非課税証明書)を揃えておくと期限切れによる取消を避けられます。
保険者が加害者側へ求償するため(健康保険法 57 条)に必要です。届出要求の根拠は 197 条 2 項で、提出がないと保険給付の処理が保留されることがあります。
求められます。197 条 2 項は「日雇特例被保険者であった者を含む」と明記し、保険給付を受けるべき者も対象としています。会社との関係が切れていても照会は本人に届きます。
日々雇い入れられる者などを対象とする日雇特例被保険者の資格を過去に有していた人を指します。資格喪失後も、当時の給付に関する届出や照会の名宛人になりえます。
保険者の法定要求に基づく部分は応じる必要があります。社内運用として上乗せされた部分は交渉の余地があるため、まず要求主体が保険者か会社かを切り分けてください。
会社の総務経由で届いた場合も、根拠は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)にあります。総務に対し、要求元と根拠となる厚生労働省令の条項を書面で示すよう求めるのが確実です。
実務上は拒否すると扶養認定が取り消される方向で処理される。本条 2 項が保険者に届出・文書提出を求める権限を与えており、被扶養者要件(3 条 7 項)の該当性を確認するための正当な要求だからだ。業界裏話ヒント:取消は認定時点まで遡ることがあり、その間に使った保険給付の返還と、遡及して国民健康保険料を払い直す二重負担が発生する。年に一度の書類一枚の方が、比べものにならないほど安い
本条には従業員に開示させる仕組みはないが、自分に関する情報であれば個人情報保護法に基づく開示請求という別ルートがある。標準報酬月額の決定内容については、健康保険法 49 条の通知や、被保険者記録の照会でも確認できる。業界裏話ヒント:標準報酬月額の算定誤りは実務上一定の頻度で発生し、傷病手当金や出産手当金の金額に直結する。給付を受ける段階で気付くと訂正手続が長引くので、決定通知が来た時点で額を検算しておく人が得をする
第三者行為による傷病届は本条 2 項に基づく届出要求であり、無視すると保険給付の支給が保留されることがある。保険者は健康保険法 57 条により加害者へ求償する権利をもち、その行使に届出情報が必要だからだ。業界裏話ヒント:加害者側の保険会社と示談を先に成立させてしまうと、保険者の求償権と衝突し、既に受けた給付分をあなたが返還する事態になりうる。示談書にサインする前に、健康保険を使った事実を保険者へ届け出ておくのが順序として正しい
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 情報を出す名宛人 | 197 条:事業主(1 項)+被保険者・給付を受けるべき者(2 項) | — |
| 対象事項 | 48 条所定の事項以外の報告・文書提示、施行に必要な事務 | — |
| 権限の性質 | 書面等による報告・提出の要求(非強制の行政調査) | — |
| 実務での典型場面 | 被扶養者調査、第三者行為の届出、個別照会 | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。