金融商品取引法 第175条の2(未公表の重要事実の伝達等の禁止に違反した者に対する課徴金納付命令)
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- 第百六十七条の二第一項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の売買等をすることを勧める行為(以下この項において「違反行為」という。)をした者(以下この項において「違反者」という。)があるときは、当該違反行為により当該伝達を受けた者又は当該売買等をすることを勧められた者(以下この項及び第三項において「情報受領者等」という。)が当該違反行為に係る第百六十六条第一項に規定する業務等に関する重要事実について同項の公表がされたこととなる前に当該違反行為に係る特定有価証券等に係る売買等をした場合(同条第六項各号に掲げる場合に該当するときを除く。)に限り、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該違反者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
- 一特定有価証券等に係る第二条第八項第二号又は第三号に掲げる行為、同項第四号に掲げる行為(店頭デリバティブ取引を除く。)、同項第十号に掲げる行為(有価証券の売買を除く。)その他これらに類するものとして政令で定める行為に係る業務(これらに付随する業務として内閣府令で定めるものを含む。以下この項及び次項において「仲介関連業務」という。)に関し違反行為をした場合(次号に掲げる場合を除く。)当該情報受領者等から当該違反者に対し支払われる当該違反行為をした日の属する月(当該月が二以上ある場合には、これらの月のうち最後の月)における仲介関連業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に三を乗じて得た額
- 二当該特定有価証券等に係る第二条第八項第九号に掲げる行為に係る業務(以下この号、次項第二号並びに第百八十五条の七第十二項及び第十三項において「募集等業務」という。)に関し違反行為をした場合次のイ及びロに掲げる額の合計額
- 一当該情報受領者等から当該違反者に対し支払われる当該違反行為をした日の属する月(当該月が二以上ある場合には、これらの月のうち最後の月)における仲介関連業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に三を乗じて得た額
- 二当該募集等業務及び当該募集等業務に併せて行われる第二条第八項第六号に掲げる行為に係る業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に二分の一を乗じて得た額
- 三前二号に掲げる場合以外の場合当該違反行為により当該情報受領者等が行つた当該売買等によつて得た利得相当額に二分の一を乗じて得た額
- 2.第百六十七条の二第二項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の買付け等若しくは売付け等をすることを勧める行為(以下この項において「違反行為」という。)をした者(以下この項において「違反者」という。)があるときは、当該違反行為により当該伝達を受けた者又は当該買付け等若しくは売付け等をすることを勧められた者(以下この項及び第四項において「情報受領者等」という。)が当該違反行為に係る公開買付け等事実について第百六十七条第一項の公表がされたこととなる前に当該違反行為に係る株券等に係る買付け等又は売付け等をした場合(同条第五項各号に掲げる場合に該当するときを除く。)に限り、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該違反者に対し、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
- 一株券等に係る仲介関連業務に関し違反行為をした場合(次号に掲げる場合を除く。)当該情報受領者等から当該違反者に対し支払われる当該違反行為をした日の属する月(当該月が二以上ある場合には、これらの月のうち最後の月)における仲介関連業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に三を乗じて得た額
- 二当該株券等に係る募集等業務に関し違反行為をした場合次のイ及びロに掲げる額の合計額
- 一当該情報受領者等から当該違反者に対し支払われる当該違反行為をした日の属する月(当該月が二以上ある場合には、これらの月のうち最後の月)における仲介関連業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に三を乗じて得た額
- 二当該募集等業務及び当該募集等業務に併せて行われる第二条第八項第六号に掲げる行為に係る業務の対価の額に相当する額として内閣府令で定める額に二分の一を乗じて得た額
- 三前二号に掲げる場合以外の場合当該違反行為により当該情報受領者等が行つた当該買付け等又は売付け等によつて得た利得相当額に二分の一を乗じて得た額
- 3.第一項第三号の「利得相当額」とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額(次の各号のいずれにも該当する場合は、当該各号に定める額の合計額)をいう。
- 一情報受領者等が特定有価証券等の売付け等をした場合次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額
- 一当該特定有価証券等の売付け等について当該特定有価証券等の売付け等をした価格にその数量を乗じて得た額
- 二当該特定有価証券等の売付け等について第一項の公表がされた後二週間における最も低い価格に当該特定有価証券等の売付け等の数量を乗じて得た額
- 二情報受領者等が特定有価証券等の買付け等をした場合次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額
- 一当該特定有価証券等の買付け等について第一項の公表がされた後二週間における最も高い価格に当該特定有価証券等の買付け等の数量を乗じて得た額
- 二当該特定有価証券等の買付け等について当該特定有価証券等の買付け等をした価格にその数量を乗じて得た額
- 4.第二項第三号の「利得相当額」とは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額(次の各号のいずれにも該当する場合は、当該各号に定める額の合計額)をいう。
- 一情報受領者等が株券等の売付け等をした場合次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額
- 一当該株券等の売付け等について当該株券等の売付け等をした価格にその数量を乗じて得た額
- 二当該株券等の売付け等について第二項の公表がされた後二週間における最も低い価格に当該株券等の売付け等の数量を乗じて得た額
- 二情報受領者等が株券等の買付け等をした場合次のイに掲げる額から次のロに掲げる額を控除した額
- 一当該株券等の買付け等について第二項の公表がされた後二週間における最も高い価格に当該株券等の買付け等の数量を乗じて得た額
- 二当該株券等の買付け等について当該株券等の買付け等をした価格にその数量を乗じて得た額
- 5.第三項第一号の「特定有価証券等の売付け等」とは、特定有価証券等の売付け、第二条第二十一項第二号に掲げる取引(現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を支払う立場の当事者となるものに限る。)、同項第三号に掲げる取引(オプションを付与する立場の当事者となるものに限る。)その他の政令で定める取引をいう。
- 6.第三項第一号ロの「第一項の公表がされた後二週間における最も低い価格」とは、第一項の公表がされた時から二週間を経過するまでの間の各日における第六十七条の十九又は第百三十条に規定する最低の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該公表がされた日にあつては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も低い価格をいう。
- 7.第三項第二号の「特定有価証券等の買付け等」とは、特定有価証券等の買付け、第二条第二十一項第二号に掲げる取引(現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を受領する立場の当事者となるものに限る。)、同項第三号に掲げる取引(オプションを取得する立場の当事者となるものに限る。)その他の政令で定める取引をいう。
- 8.第三項第二号イの「第一項の公表がされた後二週間における最も高い価格」とは、第一項の公表がされた時から二週間を経過するまでの間の各日における第六十七条の十九又は第百三十条に規定する最高の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該公表がされた日にあつては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も高い価格をいう。
- 9.第四項第一号の「株券等の売付け等」とは、株券等の売付け、第二条第二十一項第二号に掲げる取引(現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を支払う立場の当事者となるものに限る。)、同項第三号に掲げる取引(オプションを付与する立場の当事者となるものに限る。)その他の政令で定める取引をいう。
- 10.第四項第一号ロの「第二項の公表がされた後二週間における最も低い価格」とは、第二項の公表がされた時から二週間を経過するまでの間の各日における第六十七条の十九又は第百三十条に規定する最低の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該公表がされた日にあつては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も低い価格をいう。
- 11.第四項第二号の「株券等の買付け等」とは、株券等の買付け、第二条第二十一項第二号に掲げる取引(現実数値が約定数値を上回つた場合に金銭を受領する立場の当事者となるものに限る。)、同項第三号に掲げる取引(オプションを取得する立場の当事者となるものに限る。)その他の政令で定める取引をいう。
- 12.第四項第二号イの「第二項の公表がされた後二週間における最も高い価格」とは、第二項の公表がされた時から二週間を経過するまでの間の各日における第六十七条の十九又は第百三十条に規定する最高の価格(当該価格がない場合は、これに相当するものとして内閣府令で定めるものをいい、当該公表がされた日にあつては、内閣府令で定める額とする。)のうち最も高い価格をいう。
- 13.第一項の規定は、上場会社等の業務として特定伝達等行為(第百六十七条の二第一項に規定する目的をもつて同項の伝達をし、又は同項の売買等をすることを勧める行為をいう。)をした当該上場会社等の第百六十六条第一項第一号に規定する役員等がある場合について準用する。この場合において、第一項中「当該違反者」とあるのは、「当該上場会社等」と読み替えるものとする。
- 14.第二項の規定は、公開買付者等(第百六十七条第一項に規定する公開買付者等をいい、同項第一号に規定する親会社を含む。)の業務として特定伝達等行為(第百六十七条の二第二項に規定する目的をもつて同項の伝達をし、又は同項の買付け等若しくは売付け等をすることを勧める行為をいう。)をした当該公開買付者等の第百六十六条第一項第一号に規定する役員等がある場合について準用する。この場合において、第二項中「当該違反者」とあるのは、「当該公開買付者等」と読み替えるものとする。
- 15.第三項から第十二項までに規定するもののほか、第三項に規定する特定有価証券等の売付け等又は特定有価証券等の買付け等及び第四項に規定する株券等の売付け等又は株券等の買付け等が第二条第二十一項第二号に掲げる取引である場合の価格及び数量その他第一項(第十三項において準用する場合を含む。)及び第二項(前項において準用する場合を含む。)の課徴金の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
この条文の基本情報
未公表の重要事実の伝達等の禁止に違反した者に対する課徴金納付命令とは何ですか?
定義未公表の重要事実の伝達等の禁止に違反した者に対する課徴金納付命令とは、金融商品取引法第175条の2に定められた規定で、「第百六十七条の二第一項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の売買等をすることを勧める行為(以下この項において「違反行為」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 金融商品取引法第175条の2(未公表の重要事実の伝達等の禁止に違反した者に対する課徴金納付命令)は、日本の金融商品取引法に含まれる条文です。
- 金融商品取引法第175条の2の条文原文は「第百六十七条の二第一項の規定に違反して、同項の伝達をし、又は同項の売買等をすることを勧める行為(以下この項において「違反行為」という。」で始まります。
- 金融商品取引法第175条の2は第一節 納付命令に置かれています。
- 金融商品取引法の公布日は昭和23年4月13日です。
- 金融商品取引法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 金融商品取引法第175条の2の前の条は金融商品取引法第175条です。
- 金融商品取引法第175条の2の次の条は金融商品取引法第176条です。
- 金融商品取引法第175条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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- 正式書式
金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第175条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025 - 本サイト収録
金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第175条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000025/175_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点金融商品取引法175条の2は、重要事実の伝達・取引推奨をした者への課徴金を定める。情報受領者等が公表前に売買した場合に限り発動する。
Q · 自分は株を買っていないのに、情報を教えただけで課徴金を取られるんですか?
はい。相手が公表前に売買すれば納付命令の対象です
金融商品取引法175条の2は、167条の2に違反して重要事実を伝達し、または売買等を推奨した者に課徴金を課します。自ら売買していなくても対象です。ただし発動条件があり、情報受領者等が公表前に実際に売買等をした場合に限られます。金額は業務区分で三分され、仲介関連業務は違反行為の日が属する月の対価相当額の3倍、募集等業務は別建て、それ以外は情報受領者等の利得相当額の2分の1です。13項・14項の読替えにより、役員等が業務として行った場合は上場会社等・公開買付者等が名宛人になります。
解説
証券会社の営業担当が顧客に「あの会社、来週すごい発表がありますよ」と囁く。この一言が、今や会社そのものに数千万円の課徴金を招く。金融商品取引法175条の2は、2013年(平成25年)改正で新設された「情報伝達・取引推奨規制」の制裁部分だ。核心は三点。第一に、罰せられるのは情報を漏らした側であり、自分は一株も売買していなくてよい。第二に、課徴金の計算式が相手によって変わる。証券仲介業務なら「その月の手数料の3倍」、引受など募集等業務なら別建て、それ以外なら「聞いた側が儲けた額の2分の1」。つまり自分の利益ではなく他人の利益で金額が決まる。第三に、13項・14項の読替えにより、役員等が会社の業務として伝達した場合、納付を命じられるのは上場会社等・公開買付者等そのものになる。個人の口が滑った瞬間、法人の口座から金が出る構造である。ただし発動には条件がある。聞いた側が実際に公表前に売買したこと。誰も動かなければ、課徴金は発生しない
法的な位置づけ
金融商品取引法175条の2は、情報伝達・取引推奨規制(167条の2)違反に対する課徴金を定める規定である。情報受領者等が公表前に売買等をしたことを発動条件とし、仲介関連業務の対価の3倍、募集等業務の別建て額、または利得相当額の2分の1のいずれかを算定基準とする。
よくある質問 AI による整理
Q1情報伝達・取引推奨規制とは何ですか?
金融商品取引法167条の2が定める規制で、取引をさせて利益を得させる目的で未公表の重要事実を伝達し、または売買等を勧める行為を禁止します。その課徴金が175条の2です。
Q2金商法175条の2の課徴金はいくらですか?
三方式あります。仲介関連業務なら違反行為の日が属する月の対価相当額の3倍、募集等業務は別建ての合計額、それ以外は情報受領者等の利得相当額の2分の1です。
Q3情報を伝えた相手が買わなかった場合はどうなりますか?
175条の2の課徴金は発動しません。条文が情報受領者等が公表前に売買等をした場合に限ると明記しているためです。ただし167条の2違反自体は成立します。
Q4175条と175条の2の違いは何ですか?
175条は自ら売買したインサイダー本人への課徴金、175条の2は売買せず伝達・推奨した者への課徴金です。制裁の名宛人が異なります。
Q5会社が課徴金を払うのはどんな場合ですか?
13項・14項の読替えにより、上場会社等や公開買付者等の役員等が業務として伝達等をした場合、納付命令の名宛人は当該会社になります。
Q6利得相当額はどう計算しますか?
3項・4項が定義し、売付け等なら売付価額から公表後2週間の最低価格に基づく額を控除、買付け等なら公表後2週間の最高価格に基づく額から買付価額を控除します。
Q7課徴金納付命令は誰が出しますか?
内閣総理大臣が、185条以下の審判手続に従って出します。実務上は証券取引等監視委員会の調査・勧告を経て金融庁が手続を進めます。
Q8課徴金と刑事罰は両方科されますか?
課徴金は行政上の措置、刑事罰は197条の2が定める別制度です。両者は要件が異なり、課徴金が空振りでも刑事責任が残る二層構造です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先に「そろそろ大きい話が出ますよ」って言っただけでもアウトですか?
167条の2は、他人に取引させて利益を得させる目的での伝達・推奨を禁じています。抽象的な言い方でも、相手が特定できる情報と結びつけば伝達と評価されうる。ただし目的要件があるため、純粋な業務上の説明は射程外です。実務のポイント:実務では「何を言ったか」より「相手がその直後に買ったか」で疑われ方が変わる。相手の売買履歴は監視委員会が先に持っている状態で聴取が始まります
Q2課徴金って結局いくらくらい取られるんですか?
175条の2は三方式を用意しています。仲介関連業務に関する違反なら月間の対価相当額の3倍、募集等業務なら別建て、それ以外は相手の利得相当額の2分の1。金融機関の現場では3倍方式が桁を跳ね上げます。実務のポイント:自分で売買した場合(175条)より、伝えただけの方が高額になる逆転現象が起こりうる。自分で買わずに教えた方が安全、という直感は制度上成り立ちません
Q3社長が言ったことでも、会社が払うんですか?
13項・14項の読替え規定により、上場会社等や公開買付者等の役員等が業務として伝達等をした場合、納付命令の名宛人は当該上場会社等・公開買付者等になります。個人の発言が法人の負担に直結する構造です。実務のポイント:この読替えがあるため、企業側は役員の IR 発言・アナリスト面談を録音またはログ化する運用を敷いているところが増えています。記録がないと会社が代わりに払う側になります
Q4伝えた相手が結局買わなかったら、何も起きませんか?
175条の2の課徴金は、情報受領者等が公表前に売買等をした場合に限り発動します。相手が動かなければこの条文による納付命令は出ません。実務のポイント:ただし167条の2違反そのものは成立しており、刑事罰(197条の2)の側は取引の有無を要件にしていない。行政制裁が空振りでも捜査の対象になりうる二層構造です
間違えやすい点 AI による整理
- 「自分が売買していなければセーフ」という理解は、2013年改正で完全に崩れた。167条の2は伝達行為・推奨行為そのものを禁止し、175条の2がその制裁を用意している。売買はあくまで課徴金発動の条件であって、責任主体は伝えた側のままだ
- 「課徴金は相手が儲けた分だけ」と思われがちだが、条文を読むと計算方式が三本に分かれている。仲介関連業務なら月間手数料の3倍、募集等業務なら別建て、それ以外の場合に初めて「利得相当額の2分の1」が出てくる。金融機関の現場では、手数料3倍方式の方が圧倒的に高額になるケースが多い。どの業務区分に該当するかで、桁が変わる
- この規制を「証券会社と上場企業だけの話」と切り離して考えると危ない。167条の2の規制対象は会社関係者・公開買付者等関係者であり、契約締結者や交渉中の取引先も含まれる。M&A の相手方、監査法人、法律事務所、印刷会社、システムベンダー。重要事実に触れる立場の人は全員、この条文の射程の内側にいる
- 「課徴金なら刑事罰より軽い」という感覚も危険だ。課徴金は行政上の措置なので前科はつかないが、納付命令は公表される。金融機関にとっては業務改善命令や登録取消のトリガーにもなり、レピュテーション上のダメージは罰金より重いことがある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制裁の対象行為 | 175条の2:伝達行為・取引推奨行為(自ら売買しない) | 175条:自ら特定有価証券等を売買等した行為 197条の2:同一行為に対する刑事罰 |
| 発動条件 | 情報受領者等が公表前に売買等をした場合に限る | 違反者本人が公表前に売買等をしたこと 取引の有無を要件としない |
| 金額の基準 | 仲介関連業務の対価の3倍/募集等業務の別建て/利得相当額の2分の1 | 違反者本人の利得相当額 法定刑(懲役・罰金) |
| 法人への転嫁 | 13項・14項の読替えで上場会社等・公開買付者等が名宛人 | 違反者本人が名宛人 両罰規定による法人処罰(207条) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は内部者取引を刑事罰中心で規律し、日本のような伝達者専用の行政課徴金制度は持たない。消息受領者の責任は内部者からの伝達経路で構成される
韓国も未公開重要情報の利用を禁止し、過徴金制度を持つ。情報提供者の責任構成は日本に近いが、算定方式の業務区分による三分割は日本独自色が強い
EU の市場濫用規則は「インサイダー情報の不当開示」を取引と独立した禁止行為とし、取引の有無を発動要件としない点で日本175条の2と対照的
米国は tipper/tippee 理論により、情報提供者が個人的利益を得たかを要件とする判例法で構成。日本は「取引をさせる目的」を条文上の要件とする点が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- IR 担当のあなたが、決算発表の3日前にアナリストとの面談で「今回は市場予想を大きく上回ります」と口を滑らせた。あなた自身は何も売買していない。だがアナリストがその足で自己資金で買えば、課徴金納付命令の名宛人は会社になる(14項・13項の読替え)。あなたの一言の代金を、会社の経理が払う
- 証券会社の営業担当が、TOB 情報を握った状態で得意客に「この銘柄、今週中に買っておいた方がいい」と推奨。顧客が買い、公表後に利益が出た。課徴金は顧客の利益ではなく、その月にその顧客から受け取った仲介手数料の3倍で計算される。手数料200万円なら600万円。顧客が大して儲からなくても、金額は動かない
- もし、あなたが伝えた相手が結局何も買わなかったら? この場合175条の2の課徴金は発動しない。条文が「売買等をした場合に限り」と明記しているからだ。ただし刑事罰(197条の2)の側は取引の有無を問わない構造であり、行政制裁が空振りでも刑事リスクは消えない。実務上、この二層構造の理解が分かれ目になる
- 社内の飲み会。同僚が「うちの部署、来月ビッグな発表あるらしいよ」と言った。その場にいたあなたが翌日株を買った。伝えた同僚が制裁対象になる。あなたも166条の情報受領者としてインサイダー取引の対象。一つの雑談が二人分の責任を生む
- M&A の準備中、公開買付者側のあなたに証券取引等監視委員会から質問が来た。回答期限まであと10日。誰に何を伝えたか、そのときの相手の売買履歴、社内の情報管理記録。この三点セットが揃わないと、記憶で答えることになり、後で覆せなくなる
取るべき行動
被害を受けた側:情報を伝えられた側になった場合の守り方がある。1. 未公表の重要事実らしき情報を受け取ったと気付いた瞬間、その銘柄の売買を停止し、受領日時と経路を記録2. 社内のコンプライアンス部門または顧問弁護士に即報告、自己判断で「これは重要事実ではない」と決めない3. 既に売買していた場合、公表時期との前後関係を特定4. 166条の情報受領者としての責任は伝達者とは別に成立するため、自分の側の防御も並行して組む
訴えられた側:1. 証券取引等監視委員会の調査開始通知を受けたら、金商法の行政事件に慣れた弁護士を即選任。刑事事件の弁護士とは専門性が違う2. 争点は「伝達の目的」(167条の2が求める、取引をさせる目的があったか)と「重要事実性」の二つ。単なる一般的な業況説明であれば目的要件を争う余地がある3. 相手方が実際に公表前に売買したかを確認、していなければ課徴金は発動しない4. 審判手続(185条の5以下)で意見を述べる機会があり、ここでの主張構成が結論を分ける
時効(請求できる期限):課徴金納付命令の審判手続開始決定は、違反行為があった時から5年を経過したときはできない(金融商品取引法185条の7第15項ほか除斥期間の定めがあるため、個別事案では最新の改正状況をご確認ください)。刑事罰の側は197条の2の法定刑に応じた公訴時効が別途進行する
改正沿革 AI による整理
- 平成25年(2013年)金融商品取引法改正 情報伝達・取引推奨規制(167条の2)の新設に伴い、その課徴金規定として本条が新設された。増資インサイダー事案を契機に、自ら売買しない伝達者を制裁対象に取り込んだ。その後の改正回数と個別の改正内容は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成25年(2013年) 新設:情報伝達・取引推奨規制(167条の2)の新設に伴い、その課徴金規定として本条が新設された。自ら売買しない伝達者・推奨者を行政制裁の対象に取り込んだ。個別の施行日および以後の改正内容は人的検証が必要
- 金融商品取引法 第167条の2本条が制裁を用意する禁止規範そのもの
- 金融商品取引法 第166条会社関係者のインサイダー取引規制、重要事実と公表の定義元
- 金融商品取引法 第167条公開買付け等事実に関する規制、第2項の前提
- 金融商品取引法 第175条自ら売買した者に対する課徴金、本条と表裏の関係
- 金融商品取引法 第197条の2同一行為に対する刑事罰、行政制裁との二層構造
- 金融商品取引法 第185条の7課徴金納付命令の決定手続と除斥期間
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 第7条行政制裁としての課徴金制度の先行モデル(通称 独占禁止法、条番号の現行効力を要確認)
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