要点相続税法23条の2は、配偶者居住権の評価方法を定める。建物の時価から、存続年数と法定利率による複利現価率で計算した額を控除した残額が権利の価額となり、交渉の余地はない。
Q · 母が住み続ける「配偶者居住権」って、いくらで評価されるんですか?
建物の時価から存続年数分を割り引いて機械的に算出します
相続税法23条の2により、配偶者居住権の価額は、建物の相続開始時の時価から、残存耐用年数から存続年数を控除した年数の割合と、存続年数に応じた法定利率の複利現価率を乗じた額を控除した残額とされます。建物の所有権はその残額、敷地利用権は土地の時価から複利現価率を乗じた額を控除した残額です。当事者が金額を交渉する余地はなく、動かせるのは建物・土地の時価、経過年数、配偶者の平均余命による存続年数といった基礎数値だけです。
父が亡くなり、残された母と実家。母はこの家に住み続けたい、しかし子は将来この家を相続したい。2020年4月から、この綱引きに新しい札が加わった。配偶者居住権である。相続税法23条の2は、その「住む権利」にいくら値がつくかを計算する法定式を定める。建物の時価から、法定耐用年数と母の余命(存続年数)と複利現価率で割り引いた分を差し引く。ここで知っておくべき逆説がある。母が若いほど配偶者居住権の値は高くなり、子が取る所有権の値は低くなる。つまり一次相続の税負担は配偶者側に寄る。そして本当の切り札は二次相続だ。母が亡くなると配偶者居住権は自動的に消滅し、子は税金ゼロで完全な所有権を手にする。一つの家を、相続税の課税対象として一回半しか通さない。この式の裏に、日本有数の節税設計が眠っている。
相続税法23条の2は、民法1028条により創設された配偶者居住権およびその敷地利用権の相続税評価方法を定める規定である。建物の時価から、残存耐用年数・存続年数・法定利率による複利現価率に基づき算出した額を控除して権利の価額を求め、その残額を建物所有権の価額とする。時価主義を定める同法22条の特則として、法定の計算式による画一的評価を採用する。
建物の時価から、残存耐用年数のうち存続年数を超える部分の割合と複利現価率を乗じた額を控除します(相続税法23条の2第1項)。基礎数値が決まれば答えは一つです。
権利が続くと見込まれる年数です。終身の場合は原則として配偶者の満年齢に応じた平均余命(厚生労働省の完全生命表)、年数を定めた場合はその年数によります。
第三者に対抗するには建物への登記が必要です。相続税評価は登記の有無で変わりませんが、登記がないと建物を取得した子が第三者に売却した場合に権利を主張できません。
民法上の制度は令和2年(2020年)4月1日施行で、同日以後に開始した相続に適用されます。相続税法23条の2の評価規定も同じ適用範囲です。
建物の敷地を配偶者居住権に基づき使用する権利です。土地の相続開始時の時価から、その時価に複利現価率を乗じた額を控除した残額として評価されます(同条3項)。
敷地利用権も土地の上に存する権利として、租税特別措置法69条の4の要件を満たせば評価減の対象になり得ます。適用要件は個別判断が必要です。
賃貸の用に供されていない部分に対応する価額として、政令の定めにより計算します。被相続人が配偶者と建物を共有していた場合も、持分割合に応じた部分で計算します。
配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価から、配偶者居住権の価額を控除した残額です(同条2項)。土地も同じ構造で4項が定めます。
多くのケースで二次相続の節税になります。配偶者居住権は配偶者の死亡で自動消滅し(民法1030条・1036条)、その分に相続税がかからないためです。ただし配偶者が高齢だと一次相続で子の所有権評価が上がり逆効果になることもある。業界裏話ヒント:税理士は「配偶者が若く、かつ資産の大半が自宅」の家庭に最も勧めます。金融資産が潤沢で配偶者が高齢なら、あえて使わない判断もある。使う前提で相談すると、この損益分岐を飛ばされることがある
権利自体は残りますが、配偶者居住権は譲渡できず(民法1032条3項)、単独では売却できません。放棄・合意解除して対価を受け取らなければ、所有者の子への「みなし贈与」として贈与税がかかりえます(相続税法9条)。業界裏話ヒント:この出口問題を設定前に説明しない専門家は珍しくない。将来の施設入所が現実的なら、配偶者居住権より『配偶者が家そのものを相続して後で売る』方が身軽なこともある。設定前に必ず出口を設計する
できません。相続税法23条の2は建物・土地の時価、法定耐用年数、存続年数、複利現価率で機械的に算出する法定式です。動かせるのは基礎数値、特に建物の時価と存続年数(平均余命)の取り方だけ。業界裏話ヒント:存続年数は原則、配偶者の満年齢に応じた平均余命(厚労省の完全生命表)で決まる。ここを何歳区分で取るか、端数と基準時点をどう処理するかで評価が動く。そこを税理士に確認するのが実務のツボ
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 評価の性質 | 相続税法23条の2:法定計算式による画一評価 | — |
| 対象財産 | 配偶者居住権・敷地利用権・負担付き建物所有権・負担付き土地所有権 | — |
| 期間の扱い | 存続年数(原則は配偶者の平均余命)+法定利率による複利現価率 | — |
| 当事者の裁量 | なし。動くのは時価・経過年数・存続年数の基礎数値のみ | — |
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