要点相続税法9条の3は、受益者連続型信託の受益権について、利益を受ける期間の制限などの制約を課税上ないものとみなす規定。二次以降の受益者も信託財産を満額評価で課税される。
Q · 家族信託で「次は妻、その次は長男」と決めたら、二番目以降の人の相続税は安くなるの?
安くなりません。制約を無視した満額評価で課税されます
相続税法9条の3により、受益者連続型信託の受益権に付された「利益を受ける期間の制限」その他の制約は、課税上は付されていないものとみなされます。したがって二番目以降の受益者は、実際には期間限定の権利しか持たなくても、制約のない完全な権利と同じ課税価格で相続税または贈与税を課されます。異なる受益者間で価値を付け替える租税回避を封じる趣旨です。ただし権利を有する者が法人である場合は、同条ただし書により適用されません。
「自分の次は妻、妻の次は長男へ」と、資産の承継先を二代先まで指定できる。それが受益者連続型信託であり、認知症対策や事業承継の切り札として家族信託ブームの主役になっている。だが相続税法9条の3は、その設計に冷や水を浴びせる。二番目以降の受益者が受け取る権利には、本来「利益を受ける期間の制限」という重い制約が付いている。にもかかわらず本条は、税金の計算上その制約を「付いていないものとみなす」。つまり、実際には期間限定の細い権利しか持たない人が、制約のない完全な権利を持つ人と同じ課税価格で相続税を課される。あなたが良かれと思って組んだ信託が、想定外の税負担を次の世代に残すことになる。
相続税法9条の3は、受益者連続型信託に関する権利の評価特例を定める規定である。受益者(受益者が存しない場合は特定委託者)が適正な対価を負担せずに当該権利を取得した場合、利益を受ける期間の制限その他その権利の価値に作用する制約は、課税上付されていないものとみなされる。ただし、当該権利を有する者が法人である場合は適用されない。
受益者の死亡により次の者が新たに受益権を取得する定めのある信託(信託法91条)や、受益者指定権等を有する者の定めのある信託(同法89条)、政令でこれらに類するとされる信託をいいます。
新信託法(平成18年法律第108号)の施行に合わせた平成19年(2007年)税制改正で新設されました。信託を用いて課税価格を圧縮する設計を封じる目的で導入された規定です。
同条ただし書により、権利を有する者が法人(代表者または管理者の定めのある人格のない社団・財団を含む)である場合は、制約を無視するみなし規定は適用されません。法人課税の枠組みで処理されます。
評価の原則は相続税法22条の時価ですが、9条の3が期間制限などの制約を「ないもの」とみなすため、割引されず信託財産の価額を基礎に評価されるのが実務の理解です。個別算定は税理士に確認してください。
本条自体に固有の期限はありません。相続でみなされる場合は相続開始を知った日の翌日から10か月(相続税法27条)、贈与でみなされる場合は翌年3月15日が申告期限です。
遺言による後継ぎ遺贈は民法上有効性が否定されてきましたが、信託法91条は受益者連続信託としてこれを認めました。ただし税務では9条の3により制約を無視した課税が待ちます。
信託受益権の形にすると各種特例の適用範囲が論点になり、想定どおり使えない場合があります。組成前に信託税務に詳しい税理士へ適用可否を確認するのが安全です。
信託法89条1項に基づき、誰を受益者とするか(または受益者を変更するか)を指定・変更できる権利です。この定めのある信託も受益者連続型信託として9条の3の対象になります。
受益者連続型信託そのものには節税効果はありません。相続税法9条の3が権利の制約を無視して満額課税すると定めているからです。信託が節税に見えるのは、別の工夫による部分です。業界裏話ヒント:「家族信託=節税」とうたう営業は、承継先を決める機能と税額を減らす機能を意図的に混同させていることがある。設計自体が税を減らすわけではないと知っていれば、過大な期待で契約させられずに済む。
本来は期間制限で価値が下がるはずですが、9条の3がその制約を「付いていないものとみなす」ため、割引されず満額評価になります。異なる受益者間で価値を付け替える租税回避を防ぐ趣旨です。業界裏話ヒント:この満額課税は受益権に収益に関する権利が含まれる場合が対象で、権利の設計しだいで扱いが変わる余地がある。そこが専門家の腕の見せ所になる。
原則として、信託受益権の形にすると事業承継税制(納税猶予)は適用できないというのが現在の実務の理解です。株式そのものを承継する必要があります。業界裏話ヒント:ここを知らずに「信託で後継者固定+税制で猶予」の両取りを狙うと、猶予が使えず9条の3の満額課税だけが残る最悪の結果になりうる。信託と事業承継税制は基本的に二者択一と割り切って設計するのが安全(最新の改正状況をご確認ください)。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 相続税法9条の3:受益者連続型信託の受益権の評価特例(制約を無視) | — |
| 適用場面 | 受益者連続型信託の権利を適正な対価なく取得したとき | — |
| 評価への影響 | 期間制限その他の制約は付されていないものとみなす(割引なし) | — |
| 例外 | 権利を有する者が法人である場合は適用されない(ただし書) | — |
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