土地収用法 第104条(担保物権と補償金等又は替地)
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先取特権、質権若しくは抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合においては、これらの権利は、その目的物の収用又は使用に因つて債務者が受けるべき補償金等又は替地に対しても行うことができる。但し、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。
この条文の基本情報
担保物権と補償金等又は替地とは何ですか?
定義担保物権と補償金等又は替地とは、土地収用法第104条に定められた規定で、「先取特権、質権若しくは抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合においては、これらの権利は、その目的物の収用又は使用に因つて債務者が受けるべき補償金等又は替地…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 土地収用法第104条(担保物権と補償金等又は替地)は、日本の土地収用法に含まれる条文です。
- 土地収用法第104条の条文原文は「先取特権、質権若しくは抵当権の目的物が収用され、又は使用された場合においては、これらの権利は、その目的物の収用又は使用に因つて債務者が受けるべき補償金等又は替地…」で始まります。
- 土地収用法第104条は第七章 収用又は使用の効果に置かれています。
- 土地収用法の公布日は昭和26年6月9日です。
- 土地収用法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 土地収用法第104条の前の条は土地収用法第103条です。
- 土地収用法第104条の次の条は土地収用法第104条の2です。
- 土地収用法第104条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第104条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0100000219 - 本サイト収録
土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第104条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/326AC0100000219/104
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点土地収用法104条により、抵当権などの担保権は収用された土地の補償金や替地に及ぶ。ただし補償金の払渡し・替地の引渡し前に担保権者が差押えをする必要がある。
Q · 自宅の土地が収用されたら、住宅ローンの銀行は補償金を持っていけるの?
払渡し前に差し押さえれば、銀行は補償金から回収できる
土地収用法104条により、抵当権などの担保権は、収用・使用によって債務者が受けるべき補償金等や替地に対しても行使できます。収用で抵当権そのものは消滅しますが(同法101条)、効力は補償金に乗り移ります。ただし担保権者は、補償金の払渡しまたは替地の引渡しの前に差押えをしなければなりません。払渡し後は物上代位ができず、担保権者は一般債権者として回収を続けることになります。
解説
道路の拡幅やダム建設で土地が収用されると、その土地に付いていた抵当権は消える(土地収用法101条)。では、住宅ローンを貸した銀行は泣き寝入りするしかないのか。そうではない。本条によれば、担保の目的物が収用または使用されたとき、担保権は所有者が受け取る補償金や替地に「乗り移る」。これを物上代位(担保に取った物が別の形に変わっても、変わった先まで担保権を追いかけて及ぼす仕組み)という。ただし条件が一つある。補償金が払い渡される前、替地が引き渡される前に、担保権者が自分で差押えをしなければならない。お金が所有者の手に渡った時点で、そのお金に担保権を及ぼすことはできなくなり、担保権者は担保を持たない一債権者として回収を続けるしかない。貸した側にとっては時間との勝負である。借りた側にとっては、「補償金は全部自分のもの」という思い込みが崩れる条文である。
法的な位置づけ
土地収用法104条は、収用または使用によって担保の目的物が失われた場合に、先取特権・質権・抵当権の効力が債務者の受けるべき補償金等または替地に及ぶことを定める物上代位の規定である。民法304条と同様に、払渡しまたは引渡し前の差押えを権利行使の要件とし、起業者の二重払いの危険を防ぐ。
手順
- 1.事業認定の告示と裁決申請の情報を把握する 担保物件の所在地で事業認定の告示(26条)や収用委員会への裁決申請がないかを確認する。融資先の不動産が起業地に含まれる場合は、この段階で回収計画の検討を始める
- 2.裁決書で権利取得時期を確認し日程を逆算する 収用委員会の裁決書で補償金額と権利取得時期を確認する。起業者はこの時期までに補償金を払い渡す(95条)ため、差押命令の発令と送達が間に合うように日程を組む
- 3.債権差押命令を執行裁判所に申し立てる 担保権の存在を証明する文書を添えて、民事執行法193条に基づき、補償金債権の差押命令を申し立てる。第三債務者は起業者とし、払渡し前に送達されるようにする
- 4.供託や替地の場合の対応を確認する 補償金が供託された場合は供託金還付請求権への差押えの可否を、替地による補償の場合は引渡し前の差押え方法を、それぞれ専門家と確認する
よくある質問 AI による整理
Q1土地収用の補償金に抵当権は及ぶ?
及びます。土地収用法104条により、抵当権者は債務者が受けるべき補償金に対して権利を行使できます。ただし払渡し前の差押えが条件です。
Q2収用補償金の差押えはいつまでにする?
補償金が払い渡される前までです。起業者は裁決で定めた権利取得時期までに払い渡すため(95条)、実質的な期限は裁決書の日付から逆算します。
Q3収用で抵当権は消滅する?
権利取得裁決により起業者が土地を取得すると、土地上の抵当権は消滅します(101条)。その代わりに104条で補償金への物上代位が認められます。
Q4替地にも抵当権は及ぶ?
及びます。104条は補償金等だけでなく替地も対象としています。ただし替地の引渡し前に担保権者が差押えをしなければなりません。
Q5収用補償金の差押えに債務名義は必要?
担保権に基づく物上代位では判決などの債務名義は不要で、担保権の存在を証明する文書を提出して民事執行法193条により申し立てます。
Q6質権や先取特権も補償金に及ぶ?
及びます。104条は先取特権・質権・抵当権の三つを明記しています。いずれも払渡しまたは引渡し前の差押えが要件です。
Q7土地の使用でも補償金に担保権が及ぶ?
及びます。104条は「収用され、又は使用された場合」と定めており、所有権を取得されない一時的な使用の補償金も対象になります。
Q8補償金が供託されたら差押えはどうなる?
起業者が補償金を供託した場合、供託金の還付請求権を差押えの対象にできるかが実務上の論点になります。個別事案で弁護士に確認してください。
この条文についての質問 AI による整理
Q1土地が収用されたら、住宅ローンの抵当権ってどうなるの?
権利取得裁決によって起業者が所有権を取得すると、抵当権は消滅する(土地収用法101条)。その代わりに、抵当権者は払渡し前に差し押さえれば補償金から回収できる(104条)。実務のポイント:起業者の用地担当者は登記簿で抵当権を把握している。そのため実務では、裁決に至る前の任意交渉の段階で、抵当権の抹消と返済の段取りを所有者側に求めることが多い
Q2補償金がもう振り込まれちゃったら、銀行はもう何もできないってこと?
本条による物上代位はできなくなる。ただし貸金債権は残るので、銀行は一般の債権者として回収を続ける。実務のポイント:補償金の振込先がその銀行の口座だと、期限の利益を失った後であれば、預金と貸金の相殺(民法505条)で回収されうる。差押えの手間すらかからない。振込口座をどこにするかは、実はかなり重い選択である
Q3収用じゃなくて市に土地を売る話なんだけど、この条文は関係ある?
任意買収は売買契約なので、本条は直接には適用されない。ただし起業者は、抵当権が付いたままの土地を買わないのが通常である。実務のポイント:抵当権の抹消を売買の条件にされるため、所有者は銀行に抹消への同意を求めることになる。その場で繰上返済の額が決まるので、売買契約に印を押す前に銀行と話を詰めておいた方が、手元に残る額を守りやすい
間違えやすい点 AI による整理
- 「道路用地で土地を手放すから、本条で銀行に補償金を取られる」と身構える前に、手続の名前を確かめたい。公共事業の用地取得の多くは、収用ではなく起業者との任意の売買契約(任意買収)で進む。その場合、本条は直接には適用されない。抵当権を抹消して代金で返済する段取りを、銀行との交渉で決めることになる
- 差押えが必要なことは知っていても、残された時間の短さまでは知らない担保権者が多い。起業者は裁決で決まった権利取得時期までに補償金を払い渡す義務を負う(95条)。そして払渡しが済めば物上代位の道は閉じる。登記簿上で第一順位にいることは、この時間制限を一日も延ばしてくれない
- 所有者から見れば、補償金は土地を失った代償であり、生活を立て直すための資金である。法律から見れば、それは担保の目的物が形を変えたものにすぎない。この見方の違いを知らないと、補償金を当てにした住み替え計画が根元から崩れる
- 払渡し前に所有者が補償金債権を他人に譲渡したり、一般債権者が先に差し押さえたりした場合に、担保権者が勝てるのか。民法の判例は、抵当権なら債権譲渡後も物上代位できる(最判平成10.1.30)とする一方、動産売買先取特権ではできない(最判平成17.2.22)とし、担保権の種類によって結論を分けている。この判断を本条の補償金にそのまま当てはめてよいかは、実務上、解釈が分かれている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 土地収用法104条:担保権が補償金等・替地に及ぶ(物上代位) | 土地収用法101条:権利取得により土地上の担保権が消滅する 民法304条:目的物の売却・滅失等による金銭等への物上代位の一般原則 |
| 適用場面 | 公共事業のための収用・使用 | 権利取得裁決・明渡裁決の効果 売却・賃貸・滅失・損傷など民事上の場面全般 |
| 担保権者の行動要件 | 補償金の払渡し・替地の引渡し前の差押え | 要件なし(法律上当然に消滅) 金銭等の払渡し・引渡し前の差押え |
| 担保権者への意味 | 消えた担保を補償金で取り戻す道 | 目的物そのものへの担保を失う 収用以外の場面で代替物を追いかける根拠 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾民法は抵当物の滅失で抵当人が受ける賠償等に抵当権者の権利が及ぶと定め、土地徴収条例は徴収により消滅する他項権利の清算手続を設けている。日本のような払渡し前の差押え要件とは構造が異なる
韓国民法も質権の物上代位を抵当権に準用し、払渡し・引渡し前の差押えを要件とする点で日本と近い
ドイツでは収用の補償金について、土地上の権利者が補償金に対して権利を有する旨を民法施行法で定める
米国では収用補償金(condemnation award)に対するモーゲージ権者の権利を判例・Restatement で整理し、契約条項で扱いを定めることが多い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 地方の信用金庫で融資を担当していて、取引先の工場用地に県道バイパスの事業認定が告示された。融資残高は8,000万円である。収用委員会の裁決が出ると、起業者は裁決で決まる権利取得時期までに補償金を払い渡す(95条)。差押命令の申立てが一週間遅れれば、担保付きの債権が無担保になりかねない
- 自宅の土地が収用され、補償金3,000万円が振り込まれる予定だが、住宅ローンがまだ2,000万円残っていたら、どうなるか。銀行が払渡し前に差し押さえれば、補償金からまず銀行が回収する。手元に残る額を勘違いしたまま引越し先の契約を進めると、資金計画が崩れる
- 所有者の側で、補償金を受け取ったらすぐ別の口座に移し、銀行への返済を後回しにしようと考えている。払渡し後に物上代位はできなくなるが、ローン債権そのものは消えない。多くのローン契約は担保の滅失を期限の利益喪失事由(分割払いの権利を失い、一括返済を求められる事由)にしている。銀行は別ルートで回収に来る
- 替地で補償を受けることになった。抵当権者が引渡し前に差し押さえれば、新しい土地にも担保権者の手が届く
- 亡くなった親の実家を相続したら、親が事業資金のために設定した根抵当権が残っていた。都市計画道路の収用が進んでいて、裁決はもう三か月後に迫っている。相続人が動く前に根抵当権者が差し押さえれば、相続人の手元に残る額は想定を大きく下回る
取るべき行動
被害を受けた側:担保権者の場合の手順:1. 事業認定の告示や裁決申請の情報を早めにつかむ。2. 裁決書で権利取得時期を確認し、そこから逆算して日程を組む。3. 登記事項証明書など担保権の存在を証明する文書を添えて、民事執行法193条に基づく債権差押命令を執行裁判所に申し立て、起業者を第三債務者として送達を受けさせる。4. 補償金が供託された場合は、供託金の還付請求権を差押えの対象にできるか、事前に確認しておく
訴えられた側:債務者・所有者の場合の手順:1. 補償金の内訳と、担保で守られている債権の残高を突き合わせる。2. 裁決の前に担保権者と協議し、補償金から返済する額と自分が受け取る額を書面で合意する。3. 払渡し後も借金は消えないので、資金を隠したり移したりせず、正面から交渉する。4. 補償額そのものに不服があれば、損失補償に関する訴え(133条、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月以内)を検討する(最新の改正状況をご確認ください)
時効(請求できる期限):本条固有の時効はない。ただし差押えは補償金の払渡し、または替地の引渡しの前でなければならず、起業者は裁決で定める権利取得時期までに補償金を払い渡す(土地収用法95条)。担保で守られている債権自体には、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される
学説
民法準用的理解:本条は民法304条の物上代位を収用補償に及ぼす特則であり、差押え要件の趣旨や効果は民法の議論に沿って理解されるとする見方。ただし民法判例を本条の補償金にそのまま当てはめてよいかは解釈が分かれる
改正沿革 AI による整理
- 昭和26年(1951年)制定 現行の土地収用法の制定時からある条文とみられる。旧仮名遣い(因つて)が残っていることから大きな文言改正はないと推測されるが、改正の有無は人による検証が必要
改正の年表
- 1.昭和26年(1951年) 新設:現行土地収用法の制定とともに設けられた。旧仮名遣いの文言が残っており、大きな文言改正は確認されていない(要検証)
- 土地収用法 第8条抵当権者等を関係人と定義
- 土地収用法 第69条損失補償の個別払いの原則
- 土地収用法 第82条替地による補償の要件
- 土地収用法 第95条補償金の払渡し・供託の時期(現行効力を要確認)
- 土地収用法 第101条権利取得による担保権の消滅
- 民法 第304条物上代位の一般原則と差押要件
- 民法 第372条抵当権への物上代位規定の準用
- 民事執行法 第193条物上代位による債権差押えの手続
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