民事執行法 第131条(差押禁止動産)
クイックジャンプ
- 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
- 一債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
- 二債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
- 三標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
- 四主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
- 五主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
- 六技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
- 七実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
- 八仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
- 九債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
- 十債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
- 十一債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
- 十二発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
- 十三債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
- 十四建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
この条文の基本情報
差押禁止動産とは何ですか?
定義差押禁止動産とは、民事執行法第131条に定められた規定で、「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第131条(差押禁止動産)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第131条の条文原文は「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」で始まります。
- 民事執行法第131条は第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第131条の前の条は民事執行法第130条です。
- 民事執行法第131条の次の条は民事執行法第132条です。
- 民事執行法第131条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第131条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第131条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/131
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法131条は差押禁止動産を14号にわたり列挙する。生活必需の衣服・寝具・台所用具、一月分の食料と燃料、政令で定める額の金銭、業務に欠くことができない器具などが対象で、これらは差し押さえてはならない。
Q · 執行官が家に来たら、家財は全部持っていかれるんですか?
いいえ。布団・鍋・仕事道具・現金66万円は法律で守られます
民事執行法131条は、差し押さえてはならない動産を14号にわたり列挙しています。生活に欠くことができない衣服・寝具・家具・台所用具(1号)、一月間の食料及び燃料(2号)、政令で定める額の金銭(3号、民事執行法施行令1条により66万円)、自己の労力により職業に従事する者の業務に欠くことができない器具(6号、商品を除く)、位牌等(8号)、勲章(10号)、義手義足(13号)などです。誤って差し押さえられた場合は執行異議(11条)で取消しを求められます。
解説
借金の取り立てで執行官が家に来る。その場面を思い浮かべると、多くの人は「家中のものを全部持っていかれる」と想像する。だが民事執行法131条は、執行官が触れてはならない物のリストを14項目にわたって並べている。あなたの布団、台所の鍋、冬の灯油、二か月分の生活費に相当する現金(政令で66万円)、職人が仕事に使う道具、位牌、勲章、子どもの教科書、義足、まだ発表していない発明のノート。これらは差し押さえてはならない。ここで押さえるべきは、この禁止が「執行官が親切心で見逃す」ものではなく、法律上の義務だという点だ。執行官が誤って禁止動産を差し押さえたら、あなたは執行異議(11条)で取り消しを求められる。さらに132条を使えば、リストに載っていない物でも、事情次第で差押えを取り消してもらう道がある。取り立てられる側にも、条文に裏打ちされた防衛線がある。
法的な位置づけ
民事執行法131条は差押禁止動産を定める規定であり、債務者等の生活・稼働・人格的価値の保全に不可欠な動産を14号に類型化して、動産執行の対象から法律上除外する。執行官の裁量的配慮ではなく法定の禁止であり、違反した差押えは執行異議の対象となる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.執行官の来訪時に債務名義を確認する 執行官が自宅に来たら身分証を確認し、差押えの根拠となる債務名義(確定判決、仮執行宣言付支払督促、公正証書など)を提示してもらう。誰のどの債権に基づく執行かを把握しなければ、その後の主張が組み立てられない
- 2.禁止動産をその場で指し示し、根拠号数を述べる 執行官は債務者の職業や家族構成を知らずに来る。「この工具は6号の業務に欠くことができない器具です」「この現金は3号の政令で定める額の範囲内です」と、物を指しながら号数を挙げて申し出る。現場判断で差押目録の中身が変わる
- 3.執行調書の写しを受け取り目録を検証する 差押えが行われたら執行調書の写しを必ず受け取り、差押目録に131条各号に当たる物が混入していないか一点ずつ照合する。冷蔵庫・寝具・仏具・義手義足・教科書などが含まれていれば違法な差押えの可能性がある
- 4.執行異議を売却期日前に申し立てる 禁止動産が含まれていた場合、民事執行法11条の執行異議を執行裁判所に申し立てる。同時に、リスト外の物についても132条1項の差押禁止範囲の変更を申し立てることを検討する。売却されて第三者に引き渡されると回復は事実上不可能
よくある質問 AI による整理
Q1差押禁止動産とは何ですか?
民事執行法131条が列挙する、動産執行の対象にできない物です。生活必需品、一月分の食料・燃料、政令で定める額の金銭、業務用器具、位牌、勲章、義手義足など14号が定められています。
Q2差し押さえされないものはいくらまでの現金ですか?
131条3号により、標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額です。民事執行法施行令1条で66万円とされ、手元現金のうちこの額までは差し押さえられません。
Q3執行官が禁止動産を差し押さえたらどうすればいいですか?
民事執行法11条の執行異議を執行裁判所に申し立てます。法定の申立期間はありませんが、売却されると事実上回復できないため、売却期日前に動く必要があります。
Q4仕事道具は差し押さえされない?
131条6号が、主として自己の知的又は肉体的な労働により職業・営業に従事する者の業務に欠くことができない器具を守ります。ただし「商品を除く」ため、販売用在庫は対象外です。
Q5テレビや冷蔵庫は差し押さえの対象になりますか?
冷蔵庫は1号の台所用具・家具として禁止動産に当たる主張が可能です。テレビは原則として生活に欠くことができない物とは言い難いものの、中古品は換価価値が低く実務上見送られることが多いです。
Q6リストにない物でも差押えを取り消せますか?
できる場合があります。民事執行法132条1項は、債務者の申立てにより、債務者と債権者の生活状況その他の事情を考慮して、裁判所が差押えの全部または一部を取り消せると定めています。
Q7仏壇や位牌は差し押さえされますか?
131条8号が、仏像・位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物を差押禁止としています。ただし骨董的価値の高い仏具は「欠くことができない」範囲を超えると判断され得ます。
Q8銀行預金も131条で守られますか?
守られません。131条は動産についての規定で、預金は債権です。給与等の債権は民事執行法152条の差押禁止債権の規律に服し、範囲変更は153条によります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1執行官って、勝手に家に入ってこられるんですか?
債務名義に基づく執行であれば、執行官は債務者の住居に立ち入り、必要に応じて閉鎖した戸を開くため技術者を使うこともできます(民事執行法123条2項)。抵抗すれば警察の援助も求められます。実務のポイント:ただし実務では、初回は不在で終わり再度の日程調整になることが多く、その間に132条の申立てや任意の分割弁済交渉に持ち込む余地が生まれます。執行官と敵対せず、事情を説明して協議する方が結果は良くなる
Q2テレビやパソコンは持っていかれますか?
1号の「生活に欠くことができない家具」に当たるかが争点です。実務では、生活必需性と換価価値の両面から判断され、一般的な中古テレビやパソコンは換価価値が低く差押えが見送られることが多いのが実情です。実務のポイント:執行官は差押えの費用対効果を現場で判断します。売っても保管費と競売費用で赤字になる物は、条文の議論をするまでもなく対象から外れる。だから動産執行は債権者にとって「圧力」の意味合いが強く、実際の回収は債権執行が主戦場になる
Q3現金66万円って、家に置いてある分だけですか?銀行預金はどうなりますか?
131条3号が守るのは動産としての現金、つまり手元にある現金だけです。銀行預金は債権であり、152条の差押禁止債権の規律に服します。給与振込口座に入った瞬間、給与としての保護は原則失われ預金債権になります。実務のポイント:給与が振り込まれた直後の口座を差し押さえられた事案で、実質的に給与であることを理由に153条の範囲変更が認められた裁判例があります。諦める前に申立てを検討する価値がある
間違えやすい点 AI による整理
- 「借金を返せなければ家財を全部持っていかれる」と怯えている人が多いが、実は131条が守る範囲は広い。布団も鍋も冬の灯油も仕事道具も守られる。さらに実務上、中古家電の換価価値は低く、執行官が差し押さえても費用倒れになるため、そもそも動産執行が実施されないケースは非常に多い
- 「差押禁止動産だと知っている」という人でも、その知識の使い方を知らないことが多い。執行官はあなたの職業や家族構成を知らないまま来る。目の前の工具が仕事道具か趣味の道具かは、あなたが説明しなければ分からない。黙っていれば守られる、ではなく、主張しなければ守られない
- 「リストにない物は必ず差し押さえられる」と思うと、そこで諦めが生まれる。だが問いの立て方が間違っている。132条1項は、債務者の申立てにより、債務者と債権者の生活状況その他の事情を考慮して、裁判所が差押えの全部または一部を取り消せると定める。131条のリストは出発点であって、終着点ではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 保護の対象 | 131条:動産(衣服・寝具・食料・金銭・業務用器具など14号) | 152条:債権(給与、退職金、社会保障給付など) 132条:131条のリスト外も含む個別事情による範囲変更 |
| 発動の仕方 | 法律上当然に禁止(申立て不要、執行官が遵守すべき義務) | 法律上当然に禁止(原則4分の3相当額) 債務者または債権者の申立てが必要 |
| 違反時の救済 | 執行異議(11条)で差押えの取消しを求める | 執行異議、または153条の範囲変更申立て 裁判所の裁量的判断による取消決定 |
| 実務上の限界 | 主張しなければ執行官は職業・用途を知り得ない | 口座に振り込まれた瞬間に預金債権となり保護が原則外れる 生活状況の疎明資料がないと認められにくい |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は債務者及び共同生活の親族の二か月分の生活必需品・食糧を留保し、職業上不可欠な器具、位牌・遺像等の祭祀物も禁止査封とする。類型的列挙という構成は日本131条と極めて近い
韓国は日本法の構成を継受し、生活必需の衣服・寝具・家具、一か月分の食料と燃料、政令で定める額の金銭、職業上不可欠な器具、位牌・祭祀用具、勲章、義肢等をほぼ同一の号立てで列挙する
ドイツは差押禁止物の列挙に加え、§ 811a で「代替物との交換による差押え(Austauschpfändung)」を認める。高額品を差し押さえ、代わりに廉価な代替品を債務者に与える調整弁を持つ点が日本にない特徴
米国は連邦倒産法と州法の二本立てで、金額上限方式(例:家財に一定ドル額まで)を採るのが一般的。物の類型で切る日本と異なり、価額で線を引く設計思想の違いがある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- クレジットカードの支払いが滞り、判決を取られて執行官が自宅に来た。執行官がテレビと冷蔵庫を見ている。冷蔵庫は「台所用具」として1号の禁止動産に当たるという主張が可能だが、テレビは原則として禁止対象外。どの家財が守られてどれが持っていかれるか、その線引きを知っているかどうかで、その場の対応が変わる
- あなたは大工で、電動工具一式が仕事の生命線。6号は「主として自己の労力により職業に従事する者のその業務に欠くことができない器具」を守る。ただし「商品を除く」とあるので、販売用の在庫は守られない。自分の道具と売り物を物理的に分けて保管しているかどうかが、その場で効いてくる
- 執行官が来て、財布の中の現金80万円を見つけた。3号は政令で定める額(民事執行法施行令1条により66万円)の金銭を差押禁止とする。つまり66万円は手元に残り、超過分の14万円が差し押さえられる。全額持っていかれるわけではない
- もし、亡くなった親の位牌と仏壇を差し押さえると言われたら? 8号が明確に禁じている。礼拝・祭祀に直接供する物は差押禁止。ただし高価な骨董的価値のある仏具は、実務上「直接供するため欠くことができない」範囲を超えると判断されることがある
- 差押えを受けてから執行異議の申立てまで、実務上は動産の売却期日までが勝負。売却されてしまえば第三者に所有権が移り、取り戻しは事実上不可能。執行調書を受け取ったその日から数えて、動ける時間はごく短い
取るべき行動
被害を受けた側:債務者として執行を受ける立場なら、1. 執行官が来たら身分証を確認し、差押えの根拠となる債務名義を見せてもらう2. その場で禁止動産に当たる物を指し示し、根拠(1号の生活必需品、6号の業務用器具など)を口頭で述べる3. 執行調書の写しを必ず受け取り、目録に禁止動産が含まれていないか確認4. 含まれていれば執行異議(11条)を執行裁判所に申し立てる。同時に132条の範囲変更申立ても検討5. 売却期日前に動くこと
訴えられた側:債権者として回収する立場なら、1. 動産執行は換価価値が低く費用倒れになりやすいことを先に試算する2. 131条の禁止動産を除いた実効的な対象(貴金属、高額家電、事業用在庫、有価証券)があるか事前に見当をつける3. 動産より債権執行(給与、預貯金、売掛金)の方が回収率は高い4. 禁止動産を無理に差し押さえると執行異議で取り消され、費用と時間を失う
時効(請求できる期限):執行異議(民事執行法11条)に法定の申立期間はないが、差押物が売却され第三者に引き渡されると事実上回復不能になるため、実務上は売却期日前が限界。執行債権自体の消滅時効は、確定判決による債権は10年(民法169条)
学説
通説:131条は債務者の生存権的保護(1号〜3号)、稼働能力の維持(4号〜6号)、人格的・精神的価値の保護(8号、10号、12号)という三層の保護法益を類型化したものと理解されている。列挙は限定列挙であり、リスト外の物の保護は132条の個別的救済に委ねられる
実務的理解:各号の「欠くことができない」の判断は、債務者の職業・世帯構成・地域の生活水準を踏まえた社会通念により決せられる。執行官の現場判断が第一次的に働くため、債務者による用途の説明と疎明が該当性判断を実質的に左右するとされる
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定により、旧民事訴訟法の強制執行編から強制執行手続が独立法典化され、差押禁止動産の規定が131条として整理された
- 民事執行法 第132条申立てによる差押禁止範囲の変更
- 民事執行法 第123条債務者の住居における動産執行の方法
- 民事執行法 第152条給与など差押禁止債権の規律
- 民事執行法 第11条違法な差押えに対する執行異議
- 民事執行法 第128条超過差押えの禁止
- 国税徴収法 第75条滞納処分における差押禁止財産の特則
- 破産法 第34条破産財団から除かれる自由財産の範囲
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)。AI による解説は理解の補助であり、法的効力は条文原文が基準です。