民事執行法 第172条(間接強制)
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- 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
- 2.事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。
- 3.執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。
- 4.第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。
- 5.第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
- 6.前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。
この条文の基本情報
間接強制とは何ですか?
定義間接強制とは、民事執行法第172条に定められた規定で、「作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第172条(間接強制)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第172条の条文原文は「作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間…」で始まります。
- 民事執行法第172条は第二章 強制執行に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第172条の前の条は民事執行法第171条です。
- 民事執行法第172条の次の条は民事執行法第173条です。
- 民事執行法第172条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第172条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第172条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/172
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法172条は、代替執行ができない作為・不作為債務について、履行しない債務者に一定額の金銭を債権者へ支払わせる間接強制を定める。その金銭は債権者に帰属する。
Q · 裁判に勝ったのに相手が面会交流や競業避止の約束を守りません。どう従わせればいいの?
民事執行法172条の間接強制で「従うまで1日いくら」と課金できます
民事執行法172条は、本人がやるかやらないかを選ぶしかない作為・不作為債務について、履行しない債務者に「遅れた期間に応じて」または「期限内にやらなければ直ちに」一定額の金銭を債権者へ支払うよう命じる間接強制を定めます。この金銭は国庫ではなくあなた(債権者)に入り、相手が居直るほど積み上がります。決定前には相手方の審尋(3項)があり、決定には執行抗告(5項、告知から1週間)が可能で、金銭を払っても本来の義務は消えません(4項)。
解説
裁判で勝った。相手は「子どもに月2回会わせよ」「競業するな」と命じられた。それでも相手は平然と無視する。ここで多くの人が「判決なんて紙切れだったのか」と絶望する。だが民事執行法172条は、その紙切れに牙を持たせる条文だ。金銭で払える債務でも、物を渡せば済む債務でもなく、「本人がやる/やらないしかない」種類の義務(作為・不作為債務)。これを相手にやらせる最後の手段が間接強制である。裁判所は「履行しないなら遅れた期間に応じて、あるいは期限内にやらなければ直ちに、一定額の金銭を債権者に支払え」と命じる。ここで見落としてはならないのは、その金銭が国庫ではなく、あなた(債権者)の懐に入るという点だ。過料や罰金とは違う。相手が居直るほど、あなたに積み上がっていく。義務を強制する圧力が、そのままあなたへの補償になる仕組みなのだ。
法的な位置づけ
間接強制とは、作為又は不作為を目的とする債務で代替執行ができないものについて、執行裁判所が債務者に対し、履行の遅延期間に応じ又は一定期間内に履行しないときは直ちに、一定額の金銭を債権者に支払うよう命じることで履行を確保する強制執行の方法をいう。民事執行法172条が規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.債務名義で義務の特定を確認する 手元の判決・和解調書・調停調書で、義務の内容が日時・頻度・方法まで特定されているかを確認する。面会交流なら日時・各回の時間・引渡し場所と方法まで書かれているかが決め手。曖昧なら間接強制は却下されやすい
- 2.執行裁判所へ間接強制を申し立てる 第一審裁判所(執行裁判所、172条6項が準用する171条2項)へ間接強制の申立書を提出する。金額は相手の月収・資力を踏まえ『払うより従う方が安い』と感じる水準を自ら提案する
- 3.審尋で主張し、決定を得る 相手方の審尋(3項)を経て決定が出る。債務者側の反論(履行不能・特定不十分・範囲過大)に備え、義務内容と不履行の事実を具体的に立証する
- 4.不払いなら金銭債権として差し押さえる 相手が間接強制金を払わなければ、その金銭債権を通常の債権として相手の預金・給与などに差押えを申し立てる。実損が支払額を超えれば超過分を別途損害賠償請求できる(4項)
- 5.決定に不服があれば期限内に執行抗告 決定に不服がある場合、告知を受けた日から1週間の不変期間内に執行抗告を申し立てる(5項)。事情変更があれば増減額を求める変更申立ても可能(2項)
よくある質問 AI による整理
Q1間接強制とは何ですか?
履行しない債務者に、遅延期間に応じ又は期限内に履行しなければ直ちに一定額の金銭を債権者へ支払うよう命じ、心理的圧力で履行を促す強制執行の方法です(民事執行法172条)。
Q2間接強制金の相場はいくらですか?
法律上の定額はなく、執行裁判所が債務者の資力と心理的圧力を考慮して裁量で決めます。面会交流では1回あたり数万円が一つの目安ですが、申立て内容次第で増減します。
Q3間接強制の申立て費用はいくらですか?
申立手数料(収入印紙)と予納郵券が必要です。金額は申立ての区分により異なるため、申立て先の執行裁判所の窓口や裁判所ウェブサイトで最新額を確認してください。
Q4間接強制と直接強制・代替執行の違いは?
直接強制は国家が直接実現、代替執行は第三者に代わりにやらせ費用を債務者へ請求します(民執171)。間接強制は本人にしかできない作為・不作為債務に金銭圧力をかける方法です(172)。
Q5間接強制の執行抗告はいつまでにできますか?
裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内です(民執172条5項、10条2項)。この期間を過ぎると決定を争えなくなるため、決定書が届いたら直ちに検討が必要です。
Q6間接強制はどこの裁判所に申し立てますか?
原則として第一審裁判所が執行裁判所となります(民執172条6項が準用する171条2項)。手元の債務名義を作成した裁判所を基準に確認してください。
Q7間接強制金を払わないとどうなりますか?
確定した間接強制決定に基づく金銭債権として、債権者は債務者の預金・給与などを差し押さえられます。放置すれば履行遅延が続く限り金額は日々積み上がります。
Q8間接強制の金額は後から変更できますか?
事情の変更があれば、申立てにより執行裁判所が決定を変更できます(民執172条2項)。債権者は増額を、債務者は失職・病気等を理由に減額を求められます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁判に勝ったのに相手が従いません。警察は動いてくれないんですか?
民事の義務不履行に警察は動きません。従わせるには、あなた自身が裁判所に間接強制などの執行を申し立てる必要があります(172条)。しかも命じられた金銭は国ではなく債権者であるあなたに入ります。実務のポイント:多くの人が『判決=強制力』と誤解していますが、執行を申し立てない限り相手の行動は1円分も変わりません。別途の申立費用と手間がかかる。弁護士が『勝訴後こそ本番』と言うのは、この執行段階を知っているからです
Q2面会交流を守らない元配偶者に、間接強制ってできるんですか?
できます。ただし最高裁は、面会の日時・頻度・引渡し方法などが条項で特定されていることを条件にしています(最決平成25.3.28、172条)。「月2回程度」といった曖昧な取り決めだと却下されえます。実務のポイント:勝負は執行の段階ではなく、調停条項を作る瞬間にあります。具体化を渋る相手にそこで妥協すると、後で間接強制が使えなくなる。1回あたり数万円が一つの目安ですが、これも申立て次第で動きます
Q3間接強制金を払えば、もう義務を果たさなくていいんですよね?
いいえ。172条4項の通り、金銭は履行を確保するための圧力であって、払っても本来の義務は残ります。しかも実損が支払額を超えれば、その超過分を別途損害賠償として請求されます。実務のポイント:債務者が『金で解決した』と居直ることがありますが、債権者側は事情変更を理由に金額の増額を求める変更申立て(2項)で圧力を上げられます。資力のある相手ほど、高額設定が効いてくる
間違えやすい点 AI による整理
- 「判決が確定すれば相手は従う」と思っている人が多いが、義務を果たさない相手を身柄拘束したり自動的に従わせたりする仕組みは日本にない。従わせるには別途、執行裁判所への申立てという一手が要る。申し立てなければ、勝訴判決があっても相手の行動は1ミリも変わらない
- 間接強制は名前を知っていても、その金額が「相手の資力と心理的圧力」を見た裁判所の裁量で決まること、そして額が低すぎると相手に『払った方が得』と居直られて制度が空回りする深刻さまでは、多くの人が理解していない。武器の威力は、あなたが申立てでいくらを提案するかにかかっている
- 「どんな義務でも間接強制できる」という前提で申し立てても、義務の中身が特定されていなければ裁判所は認めない。面会交流なら日時・頻度・引渡し方法まで書かれていることが要る。問題は『間接強制できるか』ではなく、そもそも『債務名義の書き方』の段階で勝負が半分ついていた、という点だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる債務 | 172条:代替執行できない作為・不作為債務(本人しかできない義務) | 171条:第三者でも代われる代替的作為債務 173条:物の引渡し等(直接強制になじむ債務) |
| 強制の方法 | 金銭を債権者へ支払わせる心理的圧力(間接強制) | 第三者に履行させ費用を債務者に請求(代替執行) 債権者の選択で間接強制も利用可(補充性の緩和) |
| 金銭の帰属 | 債権者に帰属し、居直るほど積み上がる | 実施費用として債務者が負担 間接強制を選べば債権者に帰属 |
| 手続の共通枠 | 相手方の審尋必須(3項)+執行抗告(5項) | 授権決定+執行抗告 172条の規律を準用 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も不可代替的作為債務・不作為債務について怠金(過怠金)による間接強制を採用。金額は裁判所の裁量で定まる点が日本と共通する。
韓国も間接強制金の制度を持ち、履行しない期間に応じた金銭賠償を命じる。日本の172条と構造が近い。
ドイツは間接強制金(Zwangsgeld)に加え、代替性のない義務については拘留(Zwangshaft)も予定する点で日本より強い手段を持つ。日本法の母法の一つ。
米国は差止命令等の違反に対し民事法廷侮辱として罰金・拘禁で履行を強制する。金銭が国庫か当事者かは裁判所の設計により異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 調停で「月1回、第2土曜に子どもと面会」と決まったのに、元配偶者が毎回「体調が悪い」とキャンセルする。この取り決めに日時・頻度・引渡し方法まで具体的に書き込まれていれば、あなたは1回不履行あたりの金銭を課す間接強制を申し立てられる。最高裁も、条項が特定されていれば面会交流に間接強制が使えると認めている(最決平成25.3.28)
- あなたが退職して同業で起業した。前の会社が競業避止の仮処分を取り、「営業を続けるなら1日◯万円払え」という間接強制決定が届いた。放置すれば日ごとに債務が膨らむ。だが審尋(3項)であなたには反論の機会があり、義務の範囲が広すぎる、あるいは営業の自由を過度に制限すると主張できる。決定には執行抗告(5項)も打てる
- ネット中傷記事の削除を命じる判決を取った。それでも相手は削除しない。検索結果に残り続けるほど、あなたの信用は削れていく。間接強制なら「削除するまで1日いくら」と課金でき、放置するほど相手の負担が雪だるま式に膨らむ
- 間接強制決定の書面が届いた。「◯日以内に履行しなければ1日5万円」とある。放置すれば1か月で150万円。しかもこれは損害賠償とは別枠で、実損がそれを超えれば追加請求もされうる(4項)。執行抗告(5項)は告知から1週間の不変期間、迷っている時間はない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 手元の債務名義(判決・和解調書・調停調書)で、義務の内容が日時・方法まで特定されているか確認。曖昧なら間接強制は通りにくい2. 第一審裁判所(執行裁判所、6項が準用する171条2項)へ間接強制を申立て、相手の資力に見合った金額を提案3. 審尋(3項)を経て決定を得る4. 相手が払わなければ、その金銭債権を通常の債権として差押え5. 相手の事情が変われば増額の変更申立て(2項)、実損が支払額を超えれば別途損害賠償(4項)も請求できる
訴えられた側:1. 決定前の審尋(3項)が最初の防御線、義務が履行不能・特定不十分・範囲過大だと具体的に主張する2. 決定が出たら執行抗告(5項)、期限は告知から1週間3. 病気・失職など事情変更があれば減額を求める変更申立て(2項) 4. 間接強制金を払っても義務は消えない(4項)、しかも積み上がるだけ、早期に履行して止めるのが金銭的にも最も安い選択であることが多い
時効(請求できる期限):執行抗告(5項)は裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間(民事執行法10条2項)、これを過ぎると決定は覆せない。間接強制金は履行遅延が続く限り日々積み上がる。金銭債権化した後の消滅時効は一般の消滅時効(民法166条、5年または10年)が問題となりうる(最新の実務動向をご確認ください)
学説
通説:間接強制は、身体を直接拘束せず財産(金銭)への圧力によって作為・不作為債務の履行を確保する手段と理解される。審尋(3項)、事情変更による変更(2項)、執行抗告(5項)は、この圧力が過剰に振れないための調整弁と位置づけられる。
改正沿革 AI による整理
- 平成15年(2003年)担保物権・民事執行法改正 間接強制の補充性を緩和し、173条を新設。直接強制・代替執行が可能な物の引渡し等の債務についても、債権者の選択で間接強制を利用できるようにした。172条の手続規律も整備された
- 令和元年(2019年)改正(令和2年施行) 子の引渡しの強制執行に関する174条以下を新設し、間接強制との前置関係を整理。金銭による履行確保の位置づけを子の福祉の観点から調整した
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法制定により、作為・不作為債務の履行確保手段として間接強制(172条)を規定。旧来の強制執行規律を体系化した。
- 2.平成15年(2003年) 改正:担保物権・民事執行法改正で間接強制の補充性を緩和し、173条を新設。直接強制・代替執行が可能な物の引渡し等の債務についても債権者の選択で間接強制を利用できるようにした。
- 3.令和元年(2019年) 改正:子の引渡しの強制執行に関する174条以下を新設し、間接強制との前置関係を整理。金銭による履行確保の位置づけを子の福祉の観点から調整した(令和2年施行)。
- 民事執行法 第171条代替執行、間接強制の対象外となる代替可能債務の執行方法
- 民事執行法 第173条物の引渡し等でも債権者の選択で間接強制を利用できる特則
- 民事執行法 第174条子の引渡しの強制執行と間接強制前置の関係
- 民事執行法 第22条強制執行の前提となる債務名義の定義
- 民法 第414条履行の強制の実体法上の根拠、間接強制の法令上の授権
- 家事事件手続法 第289条面会交流等における履行勧告という別ルートの履行確保
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