要点手形法 19 条は質入裏書を定め、質権設定文言があれば所持人は手形上の一切の権利を行使でき、債務者は裏書人への人的抗弁を所持人に対抗できない。
Q · 取引先から受け取った手形を銀行に担保で入れられたら、商品が不良でも払わないとダメなの?
原則払う必要がある。善意の質権者に人的抗弁は対抗できない
手形法 19 条により、質入裏書を受けた所持人(多くは銀行)は手形から生じる一切の権利を自己の名で行使できます。さらに第 2 項により、債務者は裏書人に対する人的抗弁(商品不良・契約解除など)を所持人に対抗できません。これを人的抗弁の切断といいます。例外は、所持人が債務者を害することを知って手形を取得した場合(19 条 2 項但書)だけです。原因取引にトラブルがあっても、善意の質権者への支払いは原則止められません。
取引先から受け取った約束手形を、あなたが資金繰りのために銀行へ差し入れて短期の融資を受けたとする。これが質入裏書だ。手形に「担保ノ為」「質入ノ為」と書いて裏書すると、その手形を受け取った銀行は、手形から生じる一切の権利を自分の名で行使できる。取立ても、支払呈示も、不渡りなら遡求も、すべて銀行が動かせる。だが本当の急所は第二項にある。手形を振り出した相手、つまり債務者は、あなた(裏書人)に対して持っていた言い分、たとえば「商品が不良だった」「契約は解除した」といった人的抗弁を、担保を取った銀行には主張できない。これを人的抗弁の切断という。あなたとの間でどんなトラブルがあっても、手形が銀行の手に渡った瞬間、その言い分は宙に浮く。ただし銀行が、債務者を害すると知りながら手形を取得した場合だけは別だ。手形が紙の上を動くたびに、誰が何を言える立場かが静かに組み替えられていく。
手形法 19 条は質入裏書を規律する規定であり、手形の裏書に質権設定を示す文言がある場合、その所持人が手形上の一切の権利を自己の名で行使できること、及び債務者が裏書人に対する人的抗弁をもって所持人に対抗できないことを定める。質権者は取立て・支払呈示・遡求を主導するが、再度の裏書は代理裏書の効力にとどまる。
手形に「担保ノ為」「質入ノ為」等の質権設定文言を記して裏書し、手形を担保に入れる方式です。手形法 19 条が根拠で、所持人は手形上の一切の権利を自己の名で行使できます。
裏書欄に「担保ノ為」「質入ノ為」など質権設定を示す文言を明記し、被裏書人(質権者)を記載します。文言を欠くと通常の譲渡裏書として扱われ効果が変わります。
債務者が裏書人に対して持つ言い分(商品不良・契約解除など)を、手形を取得した所持人には主張できなくする仕組みです。手形法 19 条 2 項本文が定めます。
質入裏書は手形を担保にし所持人が自己の名で権利行使します。取立委任裏書(18 条)は取立ての代理権を与えるだけで、人的抗弁の切断は生じません。
できます。電子記録債権法に質権設定記録の制度があり、人的抗弁の切断に相当する発想も引き継がれています。手形を扱わない世代も同じ構造の上で資金を動かしています。
保持できるのは被担保債権の範囲に限られます。手形金が被担保債権を超えるときは、超過分を裏書人に返す必要があります。
適用されます。手形法 77 条 1 項 1 号が為替手形の裏書規定を約束手形に準用しており、19 条の質入裏書も準用されます。
通る余地があります。所持人が債務者を害することを知って手形を取得した場合(19 条 2 項但書)、債務者は人的抗弁を対抗できます。ただし悪意の立証は困難です。
割引は手形を銀行に売る譲渡裏書で、現金化と引き換えに手形そのものを手放します。質入(担保差入)は手形法19条の質入裏書で、所有権は残したまま担保にするだけです。業界裏話ヒント:割引でも質入でも、手形が不渡りになれば銀行はあなたに遡求してきます。差は会計上の扱いと、被担保債権を返せば手形が戻る点。資金需要が一時的なら、質入の方が後で手形を取り戻しやすい
相手がその手形を質入裏書で銀行に担保提供した場合、19条2項の人的抗弁の切断により、あなたが相手に持つ「商品不良」の言い分は、善意の銀行には対抗できません。業界裏話ヒント:例外は「債務者を害することを知って取得した」場合(19条2項但書)だけ。ただし悪意の立証は極めて難しい。だからこそ、原因取引が怪しいと感じた時点で、手形が他人に渡る前に決着をつけるのが鉄則です
売れません。19条1項但書により、質入裏書を受けた所持人がする裏書は「代理ノ為ノ裏書」としての効力しか持ちません。取立てを他人に委任することはできても、所有権を第三者に移す譲渡裏書はできないのです。業界裏話ヒント:これは担保権者が担保物を勝手に処分できないという質権の本質を、手形の世界で実現した仕組み。万一銀行が譲渡のつもりで手形を回しても、法律上は代理裏書としてしか扱われません
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 目的・効果 | 質入裏書(19 条):手形を担保に入れ、所持人が一切の権利を自己の名で行使 | — |
| 人的抗弁の切断 | 生じる(19 条 2 項本文、善意の質権者に対抗不可) | — |
| 再度の裏書の効力 | 代理裏書の効力のみ(19 条 1 項但書、所有権移転は不可) | — |
| 回収して保持できる範囲 | 被担保債権の範囲、超過分は裏書人へ返還 | — |
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