生活保護法 第86条
クイックジャンプ
正当な理由がなくて第四十四条第一項、第五十四条第一項(第五十四条の二第五項及び第六項並びに第五十五条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)、第五十五条の六、第七十四条第二項第一号若しくは第八十条の三第一項の規定による報告を怠り、若しくは虚偽の報告をし、正当な理由がなくて第五十四条第一項の規定による物件の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の物件の提出若しくは提示をし、同項若しくは第八十条の三第一項の規定による当該職員の質問に対して、正当な理由がなくて答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は正当な理由がなくて第二十八条第一項(要保護者が違反した場合を除く。)、第四十四条第一項、第五十四条第一項若しくは第八十条の三第一項の規定による当該職員の調査若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 生活保護法第86条は、日本の生活保護法に含まれる条文です。
- 生活保護法第86条の条文原文は「正当な理由がなくて第四十四条第一項、第五十四条第一項(第五十四条の二第五項及び第六項並びに第五十五条第二項において準用する場合を含む。」で始まります。
- 生活保護法第86条は第十三章に置かれています。
- 生活保護法の公布日は昭和25年5月4日です。
- 生活保護法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 生活保護法第86条の前の条は生活保護法第85条の3です。
- 生活保護法第86条の次の条は生活保護法第87条です。
- 生活保護法第86条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第86条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144 - 本サイト収録
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第86条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/325AC0000000144/86
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点生活保護法86条は、指定医療機関等が正当な理由なく報告・物件提出・答弁・立入検査を拒んだり虚偽で応じたりした場合、行為者を30万円以下の罰金に処すると定める。
Q · 生活保護の調査や監査を断ったら、罰金になるの?
本人は対象外。事業者や家族が妨げれば罰金もありうる
生活保護法86条により、指定医療機関・保護施設などが正当な理由なく報告や物件提出を怠ったり、虚偽で応じたり、立入検査を拒んだり妨げたりした場合は、30万円以下の罰金に処されえます。一方、28条1項の調査を要保護者本人が拒んだ場合は処罰の対象外で、申請の却下や保護の停止・廃止という形で対応されます(28条5項)。本人以外の家族が調査を妨げた場合は、処罰対象から除外されていません。
解説
生活保護の不正と聞けば、多くの人は受給者の嘘を思い浮かべる。だが86条が主に想定しているのは、別の顔ぶれである。生活保護の医療扶助を担う指定医療機関、介護扶助を担う介護機関、保護施設の運営者などだ。役所(厚生労働大臣、都道府県知事、福祉事務所など)から報告を求められたのに出さない、嘘の報告をする、カルテなどの提出を拒む、職員の質問に答えない、立入検査(職員が現場に入って書類や設備を確かめる調査)を拒んだり妨げたりする。こうした行為は、それだけで30万円以下の罰金になりうる。不正請求そのものを証明される必要はない。「調査に協力しなかった」という一点で刑事罰の対象になる。見落とされやすい点がもう一つある。28条1項の調査については、括弧書きで「要保護者が違反した場合を除く」とされている。保護を求める本人が調査を拒んでも、この条文の罰金は科されない。その代わりに、申請の却下や保護の停止・廃止という形で跳ね返ってくる(28条5項)。本人以外の家族や同居人など、周囲の人が調査を妨げた場合は処罰の対象になりうる。クリニックの事務長であっても、受給者の家族であっても、この線引きを知っているかどうかで、調査の通知を受け取ったときの動き方が変わる
法的な位置づけ
生活保護法86条は、同法に基づく報告徴収、物件の提出・提示、職員の質問、調査・検査の実効性を担保するための罰則規定である。正当な理由のない報告懈怠・虚偽報告、提出拒否・虚偽物件の提出、答弁拒否・虚偽答弁、調査・検査の拒否・妨害・忌避を行った者を30万円以下の罰金に処する。28条1項の調査について要保護者本人の違反は除外される。
よくある質問 AI による整理
Q1生活保護法86条とは何ですか?
生活保護法に基づく報告要求や立入検査などへの非協力を処罰する規定です。正当な理由なく拒否・妨害・虚偽対応をすると30万円以下の罰金になりえます。
Q2指定医療機関の監査を拒否したらどうなる?
正当な理由がなければ86条の罰金の対象になりえます。加えて、指定医療機関の指定取消の理由にもなりうる点(51条2項)が経営上より重大です。
Q3生活保護 立入検査 拒否 罰金はいくら?
30万円以下の罰金です。懲役・拘禁刑の定めはなく罰金刑のみですが、刑事罰であるため有罪になれば前科となります。
Q4介護事業所も生活保護の監査対象になる?
なります。介護扶助を担う指定介護機関にも、指定医療機関の規定が準用される形で報告・検査の権限が及び、非協力は86条の対象になりえます。
Q5虚偽の報告をするとどんな罪になる?
86条により30万円以下の罰金になりえます。水増し請求など財産的な不正が伴えば、刑法の詐欺罪など別のより重い罪が問題になりえます。
Q6生活保護の調査を家族が拒否したら違法?
28条1項の調査で処罰対象から除かれているのは要保護者本人だけです。本人以外の家族が正当な理由なく調査を妨げれば、86条の対象になりえます。
Q7「正当な理由」とはどんな場合?
条文に定義はなく個別判断です。書類が実在しない、期限に物理的に間に合わない等の事情を、事前に書面で説明・協議していたかが実務上重要になります。
Q8生活保護法の罰則86条の時効は?
罰金刑のみの罪なので公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。起算点は違反行為が終わった時点です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ケースワーカーの家庭訪問を断ったら、罰金を取られるんですか?
保護を求める本人が28条1項の調査を拒んでも、86条は「要保護者が違反した場合を除く」としているため罰金の対象にはなりません。ただし、申請の却下や保護の変更・停止・廃止の理由になりえます(28条5項)。実務のポイント:本人以外の同居家族が正当な理由なく調査を妨げた場合は、罰則の対象から外れていません。親をかばうつもりの行動が、自分のリスクになることがあります
Q2うちのクリニック、報告要求を一回無視しちゃったんですが、もう手遅れですか?
気付いた今すぐ担当課に連絡し、遅れた理由を伝えて提出することが最善です。86条の成立には「正当な理由がない」ことが要件で、実務では悪質性や改善の姿勢も考慮されます。実務のポイント:怖いのは罰金よりも、指定取消(51条2項)の理由として非協力の経過が積み上がることです。遅れても誠実に対応した記録があるかどうかで、その後の処分の重さが変わりえます
Q3監査で聞かれたこと、黙秘ってできないんですか? 憲法で黙秘権ってありますよね?
憲法38条1項の自己負罪拒否特権は、行政調査に一律に適用されるわけではありません。最高裁(最大判昭和47.11.22川崎民商事件)は、刑事責任の追及を目的としない行政調査について、答弁拒否への罰則を合憲としています。実務のポイント:実質的に刑事責任の追及に直結する質問かどうかは争点になりえます。答えに迷う場面では、その場で黙り込むより「確認して書面で回答する」と伝えるのが無難です
間違えやすい点 AI による整理
- 「生活保護の罰則は受給者を取り締まるもの」と思われがちだが、86条が並べる根拠条文の多くは、指定医療機関(54条)、保護施設(44条、74条)など事業者側への調査権限である。罰金を科される可能性が現実に高いのは、窓口の受給者よりも、請求書を出す側の事業者である
- 罰金30万円なら払えば終わる、と軽く見る事業者がいる。深刻度を見誤っている。報告や検査への非協力は、指定医療機関の指定取消の理由にもなりうる(51条2項)。罰金は財布の問題だが、指定取消は生活保護の患者を診られなくなるという経営の問題である
- 「調査に協力したら不利になるから拒否しよう」という発想そのものが、問いの立て方として間違っている。拒否しても調査の目的は消えず、拒否という新しい違反事実が一つ増えるだけである。争うべきは調査の範囲と正当な理由の有無であって、調査に応じるかどうかではない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる行為 | 86条:報告・物件提出・答弁・調査検査への非協力や虚偽対応 | 85条:不実の申請その他不正な手段による保護の受給等 51条2項:指定医療機関の指定取消事由 |
| 効果の性質 | 刑事罰(30万円以下の罰金) | 刑事罰(86条より重い法定刑) 行政処分(指定の取消・効力停止) |
| 立証の焦点 | 調査への非協力そのもの(不正の中身の立証は不要) | 不正な手段による保護受給の事実 報告拒否・不正請求など法定の取消事由の該当 |
| 要保護者本人の扱い | 28条1項の調査拒否は処罰対象外 | 不正受給した本人が主な対象 本人は無関係(事業者側の処分) |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾でも公的扶助や公的医療保険の資料提供拒否・検査妨害に対して罰則を設ける構造がある。刑事罰ではなく行政罰である過料(罰鍰)が中心となる点が日本と異なる
ドイツは求職者基礎保障の情報提供義務違反などを秩序違反(Ordnungswidrigkeit)として過料で対処しており、刑事罰とする日本とは制裁の性質が異なる
米国では Medicaid 等の事業者が検査へのアクセスを拒否した場合、罰金よりも制度からの除外(exclusion)が主な制裁となり、日本の指定取消に近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 生活保護の患者が多い内科クリニックに、県から「診療報酬請求に関する報告と診療録の提出」を求める通知が届いた。院長は「忙しいから後回し」と放置している。期限を過ぎても出さず正当な理由もなければ、86条の罰金に加えて、指定医療機関の指定取消(51条2項)の理由にもなりうる
- もし、訪問介護事業所のサービス提供記録を、監査の前に「見栄えよく」書き直して提出したらどうなる? 虚偽の物件の提出として86条の対象になりうる。さらに水増し請求が伴っていれば、刑法の詐欺罪という別の、はるかに重い戦線が開く
- 兄が生活保護を申請し、福祉事務所の職員が同居先であるあなたの家に調査に来た。あなたは腹が立って玄関先で追い返し、職員が室内に入れないよう立ちはだかった。申請者本人の拒否は罰金の対象外だが、正当な理由なく調査を妨げたのが本人以外であれば、この条文の射程に入りうる
- 保護施設の施設長。都道府県からの報告要求の回答期限まであと3日だが、前任者の帳簿がめちゃくちゃで数字が合わない。数字を丸めて出すか、正直に「精査中」と伝えるか。前者を選べば虚偽報告になりうる
- 調剤薬局の薬剤師が、立入検査中の職員から処方内容を質問された。黙っていれば済むと思ったか。正当な理由のない答弁拒否も処罰の対象として条文に明記されている
取るべき行動
被害を受けた側:調査を受ける側ではなく、不正を疑って通報する側(受給者の家族、同業者、職員など)の場合:1. 疑わしい請求や記録の具体的な日時と内容をメモに残す2. 福祉事務所または都道府県の生活保護担当課に情報提供する。匿名でも受け付けられることが多い3. 自分で相手の書類を持ち出すなどの行為はしない。調査権限を持つのは役所だけであり、持ち出しは別の法的リスクを生む
訴えられた側:1. 通知の根拠条文(44条、54条など)、期限、求められている書類の範囲を確認する2. 期限に間に合わない、あるいは書類が存在しない場合は、事前に理由を書面で伝え、協議した記録を残す3. 誤った内容を出すくらいなら「精査中」と正直に伝える。虚偽報告は非協力より重く見られる4. 立入検査や質問には協力しつつ、自分に不利な事情が絡む場合は早めに弁護士に相談する5. 指定取消の手続(聴聞)に進んだ場合に備え、協力の経過を時系列で記録しておく
時効(請求できる期限):86条の罪は罰金刑のみの罪であり、公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項6号)。起算点は報告期限の徒過や検査の拒否など、違反行為が終わった時点。実務上の本当の期限は、通知に書かれた報告・提出の期限である(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:罰則による間接強制型の行政調査は、相手方の物理的抵抗を排除する権限を含まず、拒否に対しては刑罰で心理的に強制するにとどまる。本条もこの型に属し、調査の範囲や正当な理由の有無が実務上の争点となる
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める