受講中の講座ブックマーク無料で登録

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)e-Gov法令検索出典公布 収録時点 令和8年7月4日読了 7 分7 分7 分

特許法 第103条(過失の推定)

クイックジャンプ

他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。

この条文の基本情報

過失の推定とは何ですか?

定義過失の推定とは、特許法第103条に定められた規定で、「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。」と規定しています。

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

  1. 特許法第103条(過失の推定)は、日本の特許法に含まれる条文です。
  2. 特許法第103条の条文原文は「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。」で始まります。
  3. 特許法第103条は第二節に置かれています。
  4. 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
  5. 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
  6. 特許法第103条の前の条は特許法第102条です。
  7. 特許法第103条の次の条は特許法第104条です。
  8. 特許法第103条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。

この条文を引用する

下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。

  • 正式書式特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第103条
  • 官報・e-Gove-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121
  • 本サイト収録特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第103条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/103

わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です

要点特許法103条は、特許権または専用実施権を侵害した者に過失があったものと推定する規定。立証責任が転換され、侵害者が過失のないことを証明しない限り過失ありとされる。

Q · 特許を侵害してしまったら、「知らなかった」で許してもらえるの?

許されません。侵害側が過失なしを証明しない限り過失ありとされます

特許法103条により、他人の特許権または専用実施権を侵害した者には過失があったものと推定されます。民法709条の一般原則では被害者が加害者の過失を立証しますが、本条は特許公報で公示されていることを根拠に立証責任を転換します。したがって「特許を知らなかった」だけでは免責されず、侵害者側が過失のなかったことを積極的に証明しない限り過失ありとして扱われます。実務ではこの推定を覆すのは極めて困難で、過失を争うより非侵害論や無効論(104条の3)で防御するのが現実的です。

解説

新製品をリリースした数か月後、見知らぬ会社から一通の警告書が届く。「貴社製品は弊社の特許権を侵害している」。あなたは反論したくなる。「そんな特許、存在すら知らなかった」。だが特許法103条は、その言い分を入口で封じている。他人の特許権または専用実施権を侵害した者は、その行為について過失があったものと推定される。普通の不法行為(民法709条)なら、訴える側があなたの過失を立証しなければならない。ところが特許の世界では、この立証責任が逆転する。あなたの側が「過失はなかった」と証明しない限り、過失ありとして扱われるのだ。理由は、特許が特許公報で公示されているため、世の中の誰もが調べれば知り得た、という建前にある。そして実務では、この推定を覆すのは極めて困難。知らなかった、調べたが見つからなかった、その程度では推定は破れない。知的財産の戦場では、知らなかったことは免罪符にならず、むしろ調べなかった過失の裏返しになる。

法的な位置づけ

特許法103条は特許権侵害における過失の推定を定める規定である。他人の特許権または専用実施権を侵害した者は、その侵害行為につき過失があったものと推定される。民法709条の一般原則に対する特則として、特許公報による公示を根拠に、過失の立証責任を被害者側から侵害者側へ転換する機能をもつ。

手順・フロー

AI による整理。効力は条文原文が基準です

手順

  1. 1.警告書受領後、自己判断せず専門家へ持ち込む 警告書を受け取ったら、まず弁理士・弁護士に相談する。過失推定を覆すのは困難なため、争点を『過失の有無』から『非侵害(クレーム解釈で構成要件を満たさない)』と『無効(先行技術で特許自体が無効、104条の3)』の二本柱に組み替える
  2. 2.非侵害論のためのクレームチャートを作成 対象特許の特許請求の範囲を要素に分解し、自社製品の構成と一つずつ対比するクレームチャートを作る。一つでも構成要件を満たさない要素があれば非侵害を主張できる
  3. 3.無効論のための先行技術を調査 対象特許の出願日より前の公知文献・先行特許を J-PlatPat 等で調査し、新規性・進歩性を否定できる資料を収集する。無効理由があれば104条の3で権利行使を封じられる
  4. 4.損害拡大を防ぐため生産・販売の対応を並行 警告書受領後の継続行為は過失の継続として損害が日々積み上がるため、設計変更の可否を並行して検討する。動いた記録を残すことが後の損害論で有利に働く

よくある質問 AI による整理

Q1特許権侵害の過失は誰が立証しますか?

特許法103条により過失が推定されるため、原則として侵害者側が「過失がなかった」ことを立証します。被害者が加害者の過失を立証する民法709条とは立証責任が逆転しています。

Q2特許法103条と民法709条の違いは何ですか?

民法709条では被害者が加害者の過失を立証します。特許法103条はこの立証責任を転換し、特許公報の公示を根拠に侵害者の過失を推定する特則です。

Q3実用新案権にも過失推定はありますか?

ありません。実用新案は無審査登録のため、権利者はまず実用新案技術評価書を提示する義務を負います(実用新案法29条の2)。特許とは立証構造が正反対です。

Q4特許を知らなかった場合でも損害賠償を払いますか?

原則として払います。特許は特許公報で公示され、調べれば知り得たとして過失が推定されるため、「知らなかった」は免責事由になりません。

Q5特許侵害の警告書が届いたらまず何をすべきですか?

自己判断で回答せず、弁理士・弁護士に非侵害論と無効論(104条の3)の検討を依頼します。安易な謝罪や『前から知っていた』という発言は故意の証拠になるため厳禁です。

Q6過失の推定を覆すにはどうすればよいですか?

権利の存在を知り得ない特別な事情の証明が必要ですが、実務で認められた例は極めて稀です。過失を正面から争うより非侵害・無効で攻める方が現実的です。

Q7特許法103条の過失推定に時効はありますか?

推定自体に時効はありません。損害賠償請求権は損害と加害者を知った時から3年、不法行為時から20年で消滅します(民法724条)。

Q8意匠権や商標権にも過失推定はありますか?

意匠権には過失推定があります(意匠法40条)。商標権も登録により公示されており、知財では侵害者側に立証負担が課される構造が共通します。

この条文についての質問 AI による整理

Q1特許なんて山ほどあって全部調べるのは無理ですよね。それでも過失になるんですか?

なります。特許は特許公報で公示されており、調べれば知り得たという建前で過失が推定されます(特許法103条)。全件調査が現実的でなくても、推定は働きます。実務のポイント:先行特許調査(FTO調査)の記録を残しても過失推定を覆すのはほぼ無理ですが、それでも記録は無駄ではない。故意ではないことの裏づけや、102条の損害算定で賠償額を抑える交渉材料になる。調べた事実より、調べた記録が後で効く

Q2警告書が来たけど、無視したらどうなりますか?

無視して生産・販売を続けると、過失の継続として損害が拡大し、差止請求や仮処分にも発展します。沈黙は「知らなかった」の言い訳にもなりません。実務のポイント:回答は慎重に。安易に「侵害していない」と断定する書面は後で覆しにくくなり、逆に放置も継続の口実を相手に与える。受領直後に弁理士・弁護士へ持ち込み、回答するか否か自体を専門家と決めるのが定石

Q3うちは下請けで、発注元に言われた通り作っただけです。それでも責任を負いますか?

負います。実際に製造・販売を行った者も侵害主体であり、過失推定が及びます。ただし発注元との契約に補償条項があれば求償できる可能性があります。実務のポイント:取引基本契約や下請の発注書に「知的財産権の非侵害保証」条項があるか必ず確認する。これがあれば、表に立たされても発注元に責任を転嫁できる。契約書の一条が、あなたの会社の生死を分ける

Q4過失の推定を覆せた事例って、実際にあるんですか?

極めて稀です。覆ったのは、権利の存在を知り得ない特別な事情があったごく限られたケースだけです。原則として推定は維持されます。実務のポイント:実務では過失で勝つことはほぼ最初から諦め、非侵害論とクレームに対応する先行技術での無効論(104条の3)に資源を集中する。過失を正面から争うのは、弁護士が最後に出す細い一枚のカードに過ぎない

間違えやすい点 AI による整理

  • 警告書が来ると「侵害したかどうか」が争点だと思って身構えるが、実務の本当の戦場は「過失がなかったことをどう証明するか」に移っている。あなたが立てた問いの向きが逆だ。攻めるべきは、推定を覆す材料があるか、なければ非侵害や無効でどう崩すか、という別の戦線である
  • 過失が推定されること自体は知っていても、その推定がほぼ覆らないという深刻さを知らない人が多い。裁判で「過失なし」が認められた例は極めて稀で、推定は実質的に過失の確定に近い。だからベテランは過失を争わず、最初から別の土俵を選ぶ
  • 「知らなかったのだから責任は軽くなる」と思いがちだが、特許公報で公示されている以上、調べなかったこと自体が過失とされる。知らなかったは情状にすらならず、むしろ注意義務を怠った証明になる
比較の観点この条文ほかの条文
過失の要否特許法103条:損害賠償には過失が必要だが過失は推定される特許法100条:差止請求は過失不要(故意・過失を問わない)
特許法102条:損害額そのものを推定(過失とは別次元)
立証責任の所在侵害者が『過失なし』を立証する侵害の事実さえあれば差止可能
権利者は侵害品の販売数量等を立証すれば損害額が推定される
権利者にとっての機能相手の過失立証の手間を省き交渉の初手で優位に立つ侵害の停止・予防を迅速に確保
損害額の立証困難を緩和し賠償額を確保

他国ではどう定めているか 4 か国

台湾
中華民国専利法第96条・第97条

台湾は損害賠償に故意・過失を要件とするが、日本のような一律の過失推定規定は置かず、権利者側が相手方の主観的態様を主張・立証する構造を採る

韓国
대한민국 특허법 제130조

韓国は日本の本条とほぼ同旨の過失推定規定を置き、侵害者側に過失なしの立証を課す。東アジア特許法の共通構造

ドイツ
PatG § 139 Abs. 2

ドイツは損害賠償に故意・過失を要するが、公示を根拠とする法定の過失推定は置かず、過失の有無は個別事情で判断される

アメリカ
35 U.S.C. § 284・§ 287

米国は過失推定でなく、marking(特許表示)や実際の通知を前提に損害賠償を規律し、willful 侵害に対しては懲罰的な増額賠償を認める

AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です

想定される場面と対応 AI による整理

こんなときに使う

  • スタートアップが新機能を急いでリリースし、半年後に大手から警告書が届く。「特許を調べる人手も予算もなかった」は通用しない。過失はすでに推定済みで、争点は侵害の有無ではなく、過失がなかったことをどう証明するかに移っている。土台のないところから防御を始めることになる
  • もし、開発チームの誰かが社内メールに「競合のあの特許、前に読んだ」と一行でも書いていたら? その瞬間、過失の推定どころか「故意」の証拠になり、損害賠償の交渉相場が一段跳ね上がる。日常の技術検討の記録が、訴訟では刃に変わる
  • 警告書に「14日以内に回答せよ」とある。この短い窓の間に、弁理士へ非侵害の鑑定を依頼し、特許を無効にする先行技術資料を探し、設計変更の可否を詰める。動き出しが遅れるほど、推定を覆す材料を集める時間そのものが削られていく
  • あなたが特許権者側に立つとき、相手の過失をいちいち立証する手間が丸ごと省ける。提訴や交渉の初手で相手の足首に立証責任という重りが付いている。これが和解のテーブルに相手を早く着かせる
  • 工場が何年も使ってきた製造ラインが、他社の後発特許に抵触していた。「昔から同じやり方でやっている」は抗弁にならない。先に出願した者が勝つのが特許の原則だ

取るべき行動

被害を受けた側:1. 侵害の事実を証拠化:相手製品を購入し、構成を分析、特許請求項と対比したクレームチャートを作る2. 警告書で特許法103条を明示し、過失が推定されること、差止と損害賠償の意思を通知3. 損害額は102条の推定規定(相手の利益額や実施料相当額)を活用して主張4. 相手が無視や継続をするなら、差止請求(100条)と損害賠償(民法709条+特許法103条)で提訴。過失の立証が不要な点が、特許侵害訴訟における最大の武器になる

訴えられた側:1. 警告書が来たら、まず弁理士・弁護士に非侵害論(クレーム解釈で構成要件を満たさない)と無効論(先行技術で特許自体が無効、特許法104条の3)の二本柱を検討させる2. 過失推定を覆すのは困難なので、過失で争うより非侵害・無効で攻める方が現実的3. 生産・販売の継続は損害を拡大させるため、設計変更の検討を並行4. 安易な謝罪や「特許は前から知っていた」という発言は故意の証拠になるので厳禁、対応窓口を一本化する

時効(請求できる期限):過失の推定そのものに時効はない。損害賠償請求権は損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年で消滅する(民法724条)。差止請求権は特許権が存続する限り時効にかからない。警告書を受け取った後の継続行為は過失の継続として損害が日々積み上がる(最新の改正状況をご確認ください)

学説

通説:特許法103条の過失推定は、特許公報による公示を根拠に立証責任を転換した規定と解される。反証には権利の存在を知り得ない特別の事情の立証を要するが、単に『知らなかった』『調査したが発見できなかった』程度では足りず、実務上推定を覆すのは極めて困難とされる。

改正沿革 AI による整理

改正の年表

  1. 1.昭和34年(1959年) 制定:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定に伴い、特許権侵害についての過失推定規定が置かれた。特許公報による公示を前提とする立証責任転換の構造が採用された。

ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。

特許法の全文を見る所属する編章節を開く:第二節

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)。AI による解説は理解の補助であり、法的効力は条文原文が基準です。

次に調べる

判例を探す:条文単位の判例の紐づけは準備中です。上のカードから法令名で検索できます。裁判所「裁判例検索」で探す ›