特許法 第100条(差止請求権)
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- 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
- 2.特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
この条文の基本情報
差止請求権とは何ですか?
定義差止請求権とは、特許法第100条に定められた規定で、「特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第100条(差止請求権)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第100条の条文原文は「特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」で始まります。
- 特許法第100条は第二節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第100条の前の条は特許法第99条です。
- 特許法第100条の次の条は特許法第101条です。
- 特許法第100条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第100条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第100条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/100
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法100条は、特許権者が侵害者に対し製造・販売の差止を請求できると定める。故意・過失を問わず成立し、2項では侵害品の廃棄・設備の除却まで請求できる。
Q · 特許があるなんて知らなかった。それでも製品を止めなきゃいけないの?
知らなくても差止は成立、在庫廃棄も命じられる
特許法100条により、特許権者は侵害者に対し製造・販売の差止を請求できます。損害賠償と違い相手の故意・過失は不要で、善意でも侵害が成立すれば製造中止を命じられます。2項では侵害品の在庫廃棄や製造設備の除却まで請求可能です。相手は仮処分(民事保全法23条)を使えば本訴判決を待たず出荷を凍結できるため、警告書一通の重みは極めて大きいといえます。
解説
あなたが自社製品を世に出した。半年後、見知らぬ会社から内容証明が届く。「貴社製品は当社の特許権を侵害している。製造・販売を直ちに中止し、在庫を廃棄せよ」。特許の存在すら知らなかった、と反論したくなるだろう。だが特許法100条の差止請求は、相手の故意も過失も問わない。あなたが善意でも、知らなかったとしても、侵害が成立すれば製造ラインは止められ、倉庫の在庫は廃棄の対象になる(2項)。これが損害賠償(102条、103条)との決定的な違いだ。金銭賠償は過去の精算で済むが、差止はあなたのビジネスの未来そのものを停止させる。しかも相手は仮処分(民事保全法)を使えば、本訴の判決を待たずに来月の製品出荷を凍結できる。特許権者にとって差止は核兵器であり、警告書一通の重みがここにある。
法的な位置づけ
特許法100条は差止請求権を定める規定であり、特許権者または専用実施権者が、自己の特許権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止または予防を請求できる旨を規定する。2項は付随して、侵害品の廃棄および侵害行為に供した設備の除却その他侵害予防に必要な行為を請求する権利を認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.警告書を受けたら、まず特許と自社製品の重なりを確認 謝罪や出荷停止を即断せず、相手特許の請求項と自社実装が本当に技術的範囲で重なるかを弁理士・弁護士と精査する。重ならなければ非侵害論で対抗できる
- 2.相手特許の無効事由を全力で調査 出願前の公知文献や先行特許を探索し、特許無効審判または104条の3の無効の抗弁で特許自体を潰せないか検討する。潰せれば差止の前提が消える
- 3.回避設計(設計変更)を並行検討 製品が請求項の技術的範囲から外れるよう設計変更を検討する。均等論による範囲拡張のリスクも同時に評価し、非侵害の確実性を高める
- 4.ライセンス・クロスライセンス交渉と早期和解を検討 差止の脅威が現実なら、事業停止の逸失利益と比較して早期和解が最も安い場合が多い。自社特許があればクロスライセンスの可能性も探る
よくある質問 AI による整理
Q1特許権侵害の差止請求とは何ですか?
特許権者が侵害者に対し、侵害品の製造・販売の停止や予防を請求できる権利です(特許法100条)。相手の故意・過失を問わず、侵害状態があれば成立します。
Q2特許の差止は仮処分でできますか?
できます。本訴の判決を待たず、民事保全法23条の仮処分で出荷や製造を暫定的に停止できます。担保金の提供が条件で、相手の新製品発表直前が最も効果的です。
Q3間接侵害でも差止されますか?
されます。完成品を作らず侵害品の専用部品を供給しているだけでも、特許法101条の間接侵害として100条の差止対象になりえます。部品メーカーも無関係ではありません。
Q4標準必須特許でも差止できますか?
制限されます。FRAND条件でライセンスを宣言した標準必須特許は、権利者が原則ライセンス料で満足すべきとされ、差止という強力な救済が封じられる場合があります。
Q5特許侵害の警告書が届いたらどうすればいいですか?
すぐ謝罪せず、まず相手特許の請求項と自社製品の重なり、無効事由の有無を弁理士・弁護士に確認します。動きを誤ると事業停止か高額ライセンスの二択を迫られます。
Q6差止請求権に時効はありますか?
差止請求権自体に特定の消滅時効はなく、特許権が存続し侵害が続く限り行使できます。ただし特許権は原則出願から20年で消滅し、消滅後は差止できません。
Q7設計変更すれば差止を免れますか?
回避設計により製品が請求項の技術的範囲から外れれば、非侵害となり差止を免れます。ただし均等論で範囲が及ぶ場合もあり、専門家による範囲の精査が不可欠です。
Q8特許無効の抗弁で差止を覆せますか?
覆せます。特許無効審判や特許法104条の3の無効の抗弁で特許自体を無効化できれば、差止の前提そのものが消滅します。警告を受けたら真っ先に探すべき反撃カードです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許があるなんて全然知らなかったのに、なんで製品を止めなきゃいけないんですか?
差止請求(特許法100条)は、損害賠償と違って相手の故意・過失を要件としないからです。あなたが特許を知らなかった善意の事業者でも、客観的に侵害状態にある以上、製造中止も在庫廃棄も命じられます。実務のポイント:知らなかったことは差止を免れる理由にはならないが、損害賠償の場面では意味を持ちます。ただし特許には過失推定(103条)があり、侵害者は過失がなかったことを自分で立証しない限り賠償責任を負う。つまり「知らなかった」は差止でも賠償でも、ほぼ盾にならないと考えて動くべきです
Q2差止と損害賠償って、両方いっぺんに請求されることはあるんですか?
あります。100条の差止(将来の製造・販売の停止)と、102条・民法709条の損害賠償(過去の侵害分の金銭賠償)は別個の救済で、併合して請求されるのが通常です。実務のポイント:実務で本当に交渉を動かすのは賠償額より差止です。賠償は金で清算できますが、差止で主力製品が止まれば事業そのものが傾く。だから被告側は、賠償額の議論より先に「差止だけは避けたい」という一点で和解を急ぐことが多い。交渉ではここが最大のレバーになります
Q3在庫を全部廃棄させられるって本当ですか? 作るのにすごくお金かかったんですけど。
本当です。100条2項は、差止に付随して侵害品の廃棄、侵害行為に使った設備の除却まで請求できると定めています。製造コストをかけた在庫でも、侵害品である以上は廃棄対象になりえます。実務のポイント:ただし2項は「侵害の予防に必要な行為」の範囲に限られ、過剰な廃棄請求は認められないこともあります。さらに、和解の場では「在庫を廃棄する代わりにライセンス料を払って売り切る」という落としどころが交渉されるケースも多い。全廃棄か全許諾かの二択ではなく、その中間を引き出せるかが弁護士の腕の見せ所です
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許の存在を知らなかったのだから差止されない」と思いがちだが、差止請求は損害賠償と違い、相手の故意・過失を一切要件としない。あなたが善意の第三者でも、侵害状態にある以上、製造中止も在庫廃棄も命じられる。善意は差止の盾にならない
- 損害賠償の怖さは多くの人が知っているが、差止の深刻度を過小評価している。賠償は過去の侵害分を金で清算すれば終わる。だが差止は将来に向かって製品の製造・販売を止める。主力製品が差し止められれば、賠償額の何十倍もの逸失利益が毎月発生する。痛いのは賠償ではなく差止の方だ
- あなたから見れば「一製品をめぐる小さなトラブル」だが、特許権者から見れば「競合の事業ライン全体を止められる切り札」だ。この非対称が交渉力の差を生む。同じテーブルでも、差止カードを握る側と握られる側では、見えている盤面がまるで違う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 救済の性質 | 100条:将来の製造・販売の停止(差止)+在庫廃棄・設備除却(2項) | 102条:過去の侵害分の金銭賠償(損害額の推定規定) 101条:専用部品の供給等を侵害とみなす間接侵害の拡張 |
| 故意・過失 | 不要(善意でも成立) | 必要(ただし103条で過失を推定) 一定の主観的要件(のみ用いる物等)を要する類型あり |
| 交渉上の重み | 事業停止の脅威=最大のレバー、和解を急がせる | 金銭で清算可能、賠償額の議論に還元される 部品メーカー・取引先ごと巻き込む波及力 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も特許権者に排除侵害・防止侵害請求権を認め、日本の差止に対応する。侵害品・原料・器具の廃棄請求も規定する点で100条2項と近い
韓国も侵害の停止・予防を請求できる金지청구권を認め、廃棄・除却請求も規定。日本法の系譜を継受した構造で類似性が高い
ドイツは過失を問わないUnterlassungsanspruch(差止)を認め、日本100条の母法的位置にある。廃棄請求は§140aで別途規定
米国は差止を裁判所の衡平裁量とし、eBay判決の四要件テストで永久差止を判断。日本のように侵害成立で当然に差止を認める構造とは異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたのスタートアップが半年かけて開発したアプリを公開した直後、大手から「当社の特許を侵害している、配信を停止せよ」と内容証明が届く。過失がなくても差止は成立する。まず確認すべきは相手特許の請求項とあなたの実装が本当に重なるか、そして無効事由がないか。ここで動きを誤ると、サービス停止か高額ライセンスかの二択を迫られる
- もし、量産品の初回出荷を来週に控えた段階で、競合から差止の仮処分を申し立てられたら? 本訴の判決を待たず、裁判所が出荷停止を命じる可能性がある。担保金が積まれた瞬間、あなたの製品は市場に出る前に凍結される。残された時間は数日、対応の速度が事業の生死を分ける
- あなたが部品メーカーで、完成品は作っていないとする。それでも侵害品の専用部品を供給していれば、間接侵害(101条)として差止の対象になりうる。「うちは部品を売っただけ」は通用しない。取引先の製品が侵害品かどうか、納入前に確認する責任があなたにも及ぶ
- 特許権者の側に立ったとき。模倣品が市場に出回り売上が削られている。あなたが請求できるのは損害賠償だけではない。100条で製造・販売そのものを止め、2項で在庫と製造設備の廃棄・除却まで求められる。金を取るより、相手を市場から消す方が、あなたの特許の価値を守る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 侵害品の証拠を確保:現物購入、Webキャプチャ、販売実績の記録。差止だけでなく後の損害賠償(102条)の基礎にもなる2. 自社特許の有効性と請求項の範囲を専門家(弁理士・弁護士)に確認、相手製品が技術的範囲に入るかを詰める3. 急ぐなら本訴と並行して差止の仮処分(民事保全法23条)を検討、出荷を早期に凍結4. 警告書は送付の事実とタイミングを記録、相手を悪意(過失あり)の状態に置くことで損害賠償も有利に運ぶ
訴えられた側:1. まず製造・販売を直ちに止めるべきかを冷静に判断、止めずに続けると損害賠償が膨らむが、安易な停止は事業を傷つける2. 相手特許の無効事由を全力で調査、無効審判または104条の3の無効の抗弁で前提を崩せないか検討3. 自社製品が請求項の技術的範囲に入らない(非侵害)論を構築、設計変更(回避設計)も並行検討4. ライセンス交渉・クロスライセンスの可能性を探る、差止の脅威が現実なら早期和解が最も安いケースは多い
時効(請求できる期限):差止請求権自体には特定の消滅時効はなく、特許権が存続し侵害状態が続く限り行使できる。ただし特許権は原則として出願から20年で消滅し(特許法67条)、消滅後は差止できない。なお損害賠償請求は別途、民法724条の消滅時効(損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:特許法100条の差止請求権は物権的請求権に類する救済であり、侵害者の故意・過失を要件としない。強力な救済ゆえに、無効の抗弁(104条の3)、権利濫用法理、標準必須特許のFRAND制約により行使が個別に抑制されると解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定により、差止請求権と付随する廃棄・除却請求(2項)が体系的に整備された。
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