特許法 第73条(共有に係る特許権)
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- 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
- 2.特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
- 3.特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
この条文の基本情報
共有に係る特許権とは何ですか?
定義共有に係る特許権とは、特許法第73条に定められた規定で、「特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第73条(共有に係る特許権)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第73条の条文原文は「特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。」で始まります。
- 特許法第73条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第73条の前の条は特許法第72条です。
- 特許法第73条の次の条は特許法第74条です。
- 特許法第73条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第73条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第73条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/73
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法73条は、共有特許について各共有者が同意なく自己実施できる一方、持分の譲渡やライセンス設定には他の共有者全員の同意を要すると定める。
Q · 共同で取った特許、相手の許可なしにどこまで自由に使えるの?
自社での実施は自由、他社への許諾と持分売却は全員の同意が必要です
特許法73条によれば、共有特許の各共有者は契約で別段の定めをした場合を除き、他の共有者の同意なく特許発明を自己実施できます(2項)。しかし、自分の持分を第三者に譲渡したり質権を設定するには他の共有者の同意が必要で(1項)、他社へ専用実施権を設定したり通常実施権を許諾する場合も共有者全員の同意が必須です(3項)。つまり自前の製造能力を持つ側は自由に稼げる一方、製造能力を持たない側は相手の同意という鍵がなければ収益化できない構造になっています。
解説
大学の研究室と組んで開発した技術を、二人の名義で出願し、無事に特許登録された。喜んだのも束の間、事業化の段になって妙な壁にぶつかる。あなたが自社の製品にその発明を使う分には、相手の同意は一切要らない(2項)。ところが、その特許を他社にライセンスして稼ごうとした瞬間、共有者全員の同意が壁として立ちはだかる(3項)。さらに自分の持分だけ売って手を引こうにも、これも相手の同意なしにはできない(1項)。つまり、自前の製造能力を持つ側は特許をフルに使い倒せるのに、製造能力を持たない側、たとえば大学やファブレスのあなたは、相手が首を縦に振らなければ一円も生み出せない。共有という言葉が振りまく「対等」の幻想の裏に、決定的な非対称が隠れている。これを知らずに名義だけ折半すると、数年後に泣くのはたいてい設備を持たない側だ。
法的な位置づけ
特許法73条は、特許権の共有関係における各共有者の権限を規律する規定である。自己実施は契約で別段の定めがない限り単独で行えるが、持分の譲渡・質権設定および第三者への専用実施権の設定・通常実施権の許諾には共有者全員の同意を要する。民法の共有規定(264条・準共有)に対する特則として機能する。
手順
- 1.共同開発の契約段階で73条の非対称を前提に条項を設計 契約締結時に、3項のライセンス同意を「事前の包括同意」として書き込み、1項の持分譲渡についても将来の同意条件を明記する。紛争後に同意を取り付けようとすると足元を見られるため、力関係がフラットなうちに設計する
- 2.自己実施が可能な側は2項を使い早期に自社実施を開始 製造能力を持つ側は、契約に別段の定めがない限り2項で自由に自己実施できる。ライセンス交渉より先に自社実施を大規模に立ち上げ、既成事実を作ることで交渉の主導権を握る
- 3.ライセンス収入を得たい側は分配条項を書面で明記 73条は収入分配について何も定めていない。ライセンスで稼ぎたい側は、共同開発契約に分配率・同意手続を明記し、持分割合とは切り離して分配を設計する
- 4.膠着したら共有物分割請求を交渉カードにする 相手がライセンスに同意せず膠着した場合、民法256条(準共有に準用)による共有物分割請求を検討する。実際に競売にかけるより、ちらつかせて相手を交渉のテーブルに戻す圧力として使う
- 5.退職・倒産に備え持分の優先買取条項を入れる 共同発明者の退職や相手企業の倒産で、持分が競合他社や債権者に渡るリスクに備え、優先買取(先買権)条項を契約に入れる。1項の同意権だけでは素性の知れない第三者の割込みを防げない場面がある
よくある質問 AI による整理
Q1特許の共有とは何ですか?
複数人が一つの特許権を共同で持つ状態です。共同開発や共同出願で生じ、特許法73条が持分譲渡・自己実施・ライセンスそれぞれの同意要否を定めています。
Q2共同出願のデメリットは何ですか?
登録後に持分譲渡(1項)とライセンス(3項)が相手の同意なしにできなくなる点です。特に製造能力のない側は自己実施で稼げず、同意権だけが手元に残ります。
Q3共有特許は持分割合で権利が決まりますか?
決まりません。73条は持分割合と自己実施の自由・同意権をほぼ結び付けていません。50:50でも90:10でも、同意の要否は割合と無関係です。
Q4大学と共同で取った特許は誰のものになりますか?
契約で定めなければ共有になります。大学は自己実施が難しく、単独ではライセンスできない(3項)ため、共同研究契約での帰属・分配設計が重要です。
Q5共有特許を放棄するにはどうすればいいですか?
持分の放棄自体は可能ですが、実務では他の共有者への影響を避けるため契約で手続を定めるのが一般的です。放棄した持分は他の共有者に帰属します。
Q6職務発明が共有になることはありますか?
あります。他社や大学との共同発明では、各社の従業者の職務発明が集約されて共有特許になり、73条の同意ルールがそのまま適用されます。
Q7共有特許に質権を設定できますか?
自分の持分への質権設定には、他の共有者の同意が必要です(73条1項)。資金調達で特許を担保にする際の見落としがちな制約です。
Q8特許を受ける権利の共有と特許権の共有は違いますか?
違います。出願前の権利の共有は33条・38条、登録後の特許権の共有は73条が規律します。段階により根拠条文が変わる点に注意が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1共有特許って、相手に断りなく自分の会社の製品に使っていいんですか?
使えます。特許法73条2項が、契約で別段の定めをした場合を除き、共有者は他の共有者の同意なく特許発明を実施できると定めているからです。ライセンス(3項)や持分譲渡(1項)と違い、自己実施だけは自由です。実務のポイント:この2項の自由度こそが共有の最大の罠。設備を持つ側は自由に作って稼げるのに、設備のない側は実施で稼げず同意権だけが手元に残る。契約の『別段の定め』で自己実施にも条件を付けられることを、力のない側ほど知らない
Q2相手がライセンスにどうしても同意してくれません。打つ手はありますか?
3項により第三者へのライセンスは共有者全員の同意が必須で、一方的には許諾できません。膠着したら最終手段は共有物分割請求(民法256条が準共有に準用)で、特許権を競売にかけて持分相当額を回収する道があります。実務のポイント:分割請求は『核オプション』。実際に使うより、ちらつかせて相手を交渉のテーブルに戻す圧力として使うのが実務。相手も競売で第三者に持分が渡るのは避けたいので、提示すると同意条件の交渉が一気に進む
Q3自分の持分だけを、興味を持った第三者に売却できますか?
できません。73条1項により、持分の譲渡や持分への質権設定には他の共有者の同意が必要で、共有者を勝手に入れ替えられない構造です。実務のポイント:これは投資の出口設計で致命傷になりうる。スタートアップが大学と特許を共有していると、買い手は『持分譲渡に大学の同意が要る』というだけで買収価格を下げるか撤退する。組む時点で、将来の持分譲渡について事前の包括同意を契約に入れておくのが鉄則
Q4持分の割合に応じてライセンス収入を分配する、という理解でいいですか?
そう単純ではありません。そもそもライセンスには全員の同意が必要(3項)で、収入の分配は同意の際の契約で自由に決められます。持分割合は登録上の数字に過ぎず、分配率を当然には縛りません。実務のポイント:多くの人が『50:50だから収入も折半』と思い込むが、73条は分配について何も定めていない。だからこそ共同開発契約で分配条項を明記しないと、後で『誰がいくら取るか』で泥沼化する。割合より分配条項の交渉に時間をかけるべき
間違えやすい点 AI による整理
- 「共有なら何でも平等にできる」と思い込んでいるが、実際に自由なのは自己実施だけ(2項)。他社へのライセンス(3項)も持分の譲渡(1項)も、相手の同意がなければ一歩も動けない。平等なのは名義であって、活用できる範囲ではない
- 「持分の割合(50:50か30:70か)の交渉が一番大事」と信じて契約に臨む人が多いが、これは問いの立て方が間違っている。73条の下では持分割合は自己実施の自由ともライセンス同意権ともほぼ無関係。割合より「誰がどの行為に同意権を持つか」の設計こそが本当の争点だ
- あなたから見れば共有者は対等なパートナーに映る。しかし市場から見れば、製造ラインを持つ側が圧倒的に有利で、持たない側は同意権という拒否権しか持たない。この視点の落差を放置したまま組むと、強い側に価値を吸い上げられ続ける
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる段階 | 73条:特許権登録後の共有 | 33条:特許を受ける権利(出願前)の共有 38条:共有に係る出願の共同出願義務 |
| 自己実施の自由 | 契約に別段の定めなき限り自由(2項) | 実施概念の前段階(登録前) 該当なし(手続規定) |
| 持分の譲渡 | 他の共有者の同意が必要(1項) | 他の共有者の同意が必要(33条3項) 共同でなければ出願不可 |
| 第三者へのライセンス | 全員の同意が必要(3項) | 仮通常実施権等に別途規律 該当なし |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は共有者の自己実施を認めつつ、讓與・信託・授權・質権設定・拋棄に全体の同意を要求し、日本73条と構造がほぼ一致する
韓国も持分譲渡と第三者への実施許諾に他の共有者の同意を要求し、自己実施は原則自由とする。日本の継受系譜に沿う
ドイツ特許法は共有の詳細規定を持たず、民法の分割共有(Bruchteilsgemeinschaft)に委ねる。各共有者の自己実施は認められるが、対価清算の要否は判例・学説で議論がある
米国は各共有者が他の共有者の同意なく、また対価を清算せずに製造・使用・販売・ライセンスまで単独で行える。ライセンスに全員同意を要する日本と正反対で、共有の意味が大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたのスタートアップが大学と共同で画期的な特許を取り、いざ VC から資金を集める段になったら? VC は真っ先に「大学の同意なしに独占ライセンスを出せるか」をデューデリで掘ってくる。出せないと答えた瞬間、企業評価額は静かに下がる
- あなたが大企業側で、町工場と共同開発した特許を持っている。あなたは自社工場で自由に量産できる(2項)が、設備のない町工場は実施で一円も稼げない。町工場が「ライセンス収入を寄こせ」と迫っても、3項の同意権はあなたも握っている。互いに首根っこを押さえ合う膠着が始まる
- 退職した共同発明者が、競合他社へ転職した。彼はあなたの会社と特許を共有したまま、自分で自由にその発明を実施できる。気付けば競合製品にあなたの特許技術が堂々と使われている
- 共同開発の相手企業が倒産しかけ、その持分が債権者に差し押さえられそうだ。あと数週間で見知らぬ第三者が共有者として割り込んでくるかもしれない。持分の優先買取条項を契約に入れていなければ、素性の知れない相手と特許を共有する羽目になる
- 製薬ベンチャーと大学が共有する物質特許。ベンチャーは自社で製品化を進める一方、大学は別の製薬大手にライセンスして研究費を稼ぎたい。だが大学単独ではライセンスできず(3項)、共有相手のベンチャーが同意を渋る。研究費が入らず、大学の次の研究が止まる
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず登録原簿で持分と共有関係を正確に確認、口頭合意ではなく登録と契約書の文言を押さえる2. 自分が実施できる立場なら2項を使い、自社実施を直ちに開始して既成事実を作る3. ライセンスで稼ぎたいが相手が同意しないなら、共同開発契約に分配・同意条項があるか精査し、なければ追加合意を交渉4. 完全に膠着したら共有物分割請求(民法256条が準共有に準用)を検討、競売の可能性を交渉カードにする
訴えられた側:1. 相手から持分譲渡やライセンスへの同意を求められても即答せず、対価と条件を書面で詰める、同意は一度出すと撤回しにくい2. 相手が第三者に持分を売ろうとしても1項によりあなたの同意なしには成立しない、慌てない3. 共有物分割請求をされたら、現物分割は特許の性質上困難で競売になりやすい、買受けの資金準備を検討4. 将来の紛争防止に、事前同意の範囲を限定する追加契約を結ぶ
時効(請求できる期限):本条の権利行使自体に特定の消滅時効はない。共有関係の膠着を打開する共有物分割請求(民法256条準用)はいつでも可能で、最終手段になる。持分の無断譲渡や同意を巡る損害賠償等の債権は、一般消滅時効(民法166条、債権は権利行使可能を知った時から5年または権利行使可能時から10年)が適用される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:73条2項の自己実施は、共有関係に新たなプレイヤーを招き入れず既存の信頼関係を変えないため原則自由とされる。他方、持分譲渡(1項)とライセンス(3項)は新たな共有者・実施者を市場に呼び込み他の共有者の取り分に影響するため、全員同意を要すると解される
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定に伴い、旧特許法の共有規定を整理して73条を新設。自己実施の自由(2項)と、持分譲渡・ライセンスへの全員同意要件(1項・3項)を明文化した
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