特許法 第77条(専用実施権)
クイックジャンプ
- 特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
- 2.専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
- 3.専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
- 4.専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
- 5.第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。
この条文の基本情報
専用実施権とは何ですか?
定義専用実施権とは、特許法第77条に定められた規定で、「特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第77条(専用実施権)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第77条の条文原文は「特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。」で始まります。
- 特許法第77条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第77条の前の条は特許法第76条です。
- 特許法第77条の次の条は特許法第78条です。
- 特許法第77条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第77条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第77条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/77
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法77条は、特許権者が設定する専用実施権を定める。専用実施権者は設定範囲内で業として発明の実施を専有し、その範囲では特許権者も実施できない。効力発生には特許庁への登録が必要である。
Q · 専用実施権を設定したら、特許権者は自分の発明をもう使えないの?
設定範囲内では使えません。専用実施権者が独占します
特許法77条2項により、専用実施権者は設定行為で定めた範囲内において業として特許発明の実施をする権利を専有します。「専有」とは他者を排除する独占を意味するため、その範囲では特許権者本人も実施できなくなります。特許権自体は特許権者に残りますが、実施面では名義だけの状態です。ただし専用実施権は特許庁への登録が効力発生要件であり(特許法98条1項2号)、登録前は物権的な専用実施権は発生しません。
解説
あなたが画期的な技術を特許化し、ある企業に「うちの技術を独占的に使っていい」と契約したとする。そこで設定したのが専用実施権なら、衝撃的なことが起きる。設定した範囲内では、特許権者であるあなた自身ですら、もうその発明を使えなくなる。専用実施権者だけが、業としてその発明を独占的に実施する権利を握る。単なる「許可」ではなく、特許権の一部を切り出して相手に手渡すに等しい強力な物権的権利だ。だがもう一つ、誰も教えてくれない落とし穴がある。専用実施権は契約書にサインしただけでは発生しない。特許庁への登録が効力発生の要件である(特許法98条)。登録を忘れたまま「独占ライセンスを持っている」と思い込んでいると、法的には専用実施権が存在せず、侵害者を自分の名前で差し止めることすらできない。たった一行の登録漏れが、独占の価値を丸ごと蒸発させる。
法的な位置づけ
特許法77条は専用実施権を定める規定であり、特許権者が自己の特許権について設定する物権的な独占的実施権をいう。専用実施権者は設定行為で定めた範囲内において業として特許発明の実施をする権利を専有し、その範囲では特許権者も実施できない。設定・移転・質権設定は登録が効力発生要件とされ(特許法98条)、移転、質権設定および通常実施権の許諾には原則として特許権者の承諾を要する。
手順
- 1.設定契約で範囲と登録協力義務を明記する 地域・期間・実施態様(製造/使用/譲渡/輸出入)を特定し、「特許権者は専用実施権設定登録の申請に協力する」義務を条項化する。あわせて将来の移転・質権設定・再許諾についての包括承諾条項(3項・4項対応)も同時に入れる
- 2.特許庁へ専用実施権設定登録を申請する 特許原簿への設定登録を申請する。登録は効力発生要件であり(特許法98条1項2号)、登録免許税が必要となる。申請には特許権者と専用実施権者の共同申請または承諾書が要る
- 3.登録原簿謄本を取り寄せて記載を自分の目で確認する 特許庁から特許登録原簿の謄本を取得し、専用実施権の設定が記載されているか、範囲が契約どおりか確認する。契約書の文言と原簿の記載が食い違うことは実務上ありうる
- 4.侵害を発見したら登録の有無を先に確認して提訴する 登録済みなら自己名義で差止請求(特許法100条)と損害賠償請求(同102条)を提起できる。未登録なら提訴前に大至急で登録を完了させる。登録前は専用実施権が存在せず、自己名義の差止請求はできない
よくある質問 AI による整理
Q1専用実施権とは何ですか?
特許権者が設定する物権的な独占的実施権です。特許法77条2項により、設定範囲内では専用実施権者だけが業として発明を実施でき、特許権者本人も実施できなくなります。
Q2専用実施権と通常実施権の違いは?
専用実施権は物権で独占的、登録が効力発生要件です(77条・98条)。通常実施権は債権で非独占的、契約のみで成立し、複数人に重ねて許諾できます(78条)。
Q3専用実施権の登録はいつまでに必要ですか?
期限はありませんが、登録しない限り効力そのものが発生しません(特許法98条1項2号)。差止請求を自己名義で行う前に登録を完了させる必要があります。
Q4専用実施権は譲渡できますか?
実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合、相続その他の一般承継の場合に限り移転できます(77条3項)。それ以外の移転は認められません。
Q5専用実施権に質権を設定できますか?
特許権者の承諾を得た場合に限り可能です(77条4項)。さらに質権設定は登録が効力発生要件です(98条1項3号)。承諾書の取得が資金調達の前提になります。
Q6専用実施権者は侵害者を訴えられますか?
登録された専用実施権者は自己名義で差止請求(100条)と損害賠償請求(102条の推定規定を活用)ができます。これが専用実施権の最大の実務的価値です。
Q7専用実施権の範囲はどう決めますか?
設定行為で地域・期間・実施態様を自由に区切れます。「関東地方のみ」「製造のみ、販売は除く」といった限定により、残余の範囲は特許権者が保持できます。
Q8専用実施権は特許権が譲渡されても残りますか?
登録済みであれば残ります。物権的権利であるため、特許権の新しい所有者に対してもそのまま対抗でき、専用実施権の内容は影響を受けません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1契約書に「独占的に使わせる」と書けば、それで専用実施権になるんですか?
なりません。専用実施権は特許庁への登録が効力発生の要件です(特許法98条1項2号)。契約だけで独占を約束した場合は『独占的通常実施権』にとどまり、法的性質は物権ではなく債権です。実務のポイント:実務で「独占ライセンス」と呼ばれるものの大半は、登録されていない独占的通常実施権です。専用実施権だと特許権者本人も使えなくなり登録免許税もかかるため、権利者が登録を避けたがる。相手が「専用実施権だ」と言っても、登録原簿を取り寄せて記載を確認するまで真に受けてはいけない
Q2専用実施権を持っていれば、侵害者を自分で訴えられますか?
登録された専用実施権者なら、自分の名前で差止請求(特許法100条)も損害賠償請求(同102条の推定規定の活用)もできます。これが専用実施権の最大の威力です。実務のポイント:同じ『独占』でも、登録のない独占的通常実施権者は、原則として自分の名前では差止請求ができません。侵害者を止めたければ特許権者に動いてもらうしかなく、特許権者が非協力的だと手詰まりになる。独占ライセンスを受けるなら、差止権を自分の手に握れる専用実施権+登録まで取り切るのが鉄則です
Q3専用実施権を設定したら、特許権者は本当に自分でも使えなくなるんですか?
そのとおりです。専用実施権者が設定行為で定めた範囲内で実施を専有するため(2項)、特許権者は同じ範囲では実施できなくなります。特許権自体は残りますが、いわば名義だけの状態です。実務のポイント:この『全部失う』を避けたい特許権者は、地域・期間・実施態様を細かく区切って専用実施権を設定します。例えば「関東地方に限る」「製造のみ、販売は除く」といった範囲設定で、残りの領域は自分や他社に開放できる。範囲の切り方こそが、ライセンス交渉の本当の主戦場です
Q4専用実施権を担保に入れたり、他社に又貸ししたりできますか?
どちらも特許権者の承諾が必須です。専用実施権について質権を設定したり、他人に通常実施権を許諾(再ライセンス)したりするには、特許権者の承諾を得なければなりません(4項)。移転にも原則として承諾が要ります(3項)。実務のポイント:この承諾は事後に取ろうとすると足元を見られます。専用実施権の設定契約を結ぶ段階で「将来の質権設定・再許諾・移転を包括的に承諾する」条項を入れておくと、後の資金調達や事業再編が一気に楽になる。先に承諾の枠を取っておくのが交渉巧者のやり方です
間違えやすい点 AI による整理
- 「独占ライセンス=専用実施権」と思われているが、実務で交わされる独占ライセンスの多くは、契約だけで成立する『独占的通常実施権』である。専用実施権は登録が必要で特許権者本人も使えなくなるため、特許権者が嫌がって設定を避けることが多い。あなたが「専用実施権」という言葉を聞いても、登録原簿を見るまで実態は分からない
- 専用実施権が物権だと知っていても、その『強さ』の意味を見落としている人が多い。物権だからこそ、特許権者が後から第三者に通常実施権を出しても、登録済みの専用実施権者はそれを排除できる。さらに特許権そのものが第三者に譲渡されても、専用実施権は新しい所有者にそのまま対抗できる。債権的なライセンスとは耐久性が根本から違う
- 「専用実施権者になれば何でも自由にできる」という前提が誤っている。独占的に『使う』権利と、その権利を『処分する』自由は別物だ。専用実施権を移転するには原則として特許権者の承諾が要り(3項)、質権設定や再ライセンス(他人への通常実施権の許諾)にも特許権者の承諾が必須である(4項)。手にしているのは、足枷つきの独占だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 特許法77条:物権的権利(設定範囲内で実施を専有) | 特許法78条:債権的権利(実施できる地位のみ) 特許法98条:登録を効力発生要件とする手続規定 |
| 成立要件 | 設定契約 + 特許庁への設定登録(登録がなければ効力なし) | 許諾契約のみで成立、登録不要 専用実施権の設定・移転・質権設定は登録なくして効力を生じない |
| 特許権者の実施可否 | 設定範囲内では特許権者も実施不可 | 特許権者は引き続き実施可能、重複許諾も可能 登録前は専用実施権が発生せず、特許権者の実施は制限されない |
| 自己名義の差止請求 | 可能(特許法100条) | 原則不可、特許権者の行使に依存 登録の有無が原告適格の分水嶺となる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は専属授権(専属ライセンス)を認め、登記は第三者対抗要件であって効力発生要件ではない点が日本と決定的に異なる。専属被授権人は自己名義で権利行使が可能
韓国も専用実施権を物権的に構成し、日本法の影響が濃い。登録の位置づけについても日本と近い構造を採る
ドイツも排他的ライセンスに物権的効力を認めるが、登録は効力発生要件ではない。当事者の合意で成立し、ライセンシーは自ら侵害訴訟を提起しうる
米国は登録主義を採らず、exclusive licensee が原告適格を有するかは移転された権利の実質(all substantial rights)を判例法で個別判断する。契約書の起案が原告適格を左右する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが大学の研究成果を独占ライセンスで受けて製品化に何億円も投じた後、その大学が別の企業にも同じ特許を使わせていたと判明したら? 専用実施権を登録していれば後発の通常実施権を排除できるが、登録を怠っていれば、あなたの「独占」は紙の上の約束にすぎなくなる
- あなたが特許権者で、A社に専用実施権を設定した。後からB社が二倍のライセンス料を提示してきても、もう自分の判断では許諾できない。専用実施権者A社の承諾なしにB社へ通常実施権を出せば、それはA社に対する債務不履行になる。自分の特許なのに、自分の手は縛られている
- メーカーから「専用実施権を譲り受けた」と聞いた。だが専用実施権は、実施の事業ごと移転する場合、特許権者の承諾を得た場合、相続等の一般承継の場合に限り移転できる(3項)。承諾の有無を確かめずに取引すれば、その譲受けそのものが無効になりかねない
- 侵害品が市場に出回り始めた。あなたは独占ライセンシーだが、登録がまだ済んでいない。提訴までに残された時間で登録を完了できなければ、自分の名前では差止請求ができず、特許権者を説得して動いてもらうしかなくなる。あと数日が分水嶺だ
- あなたが専用実施権を担保に融資を受けようとしたら、銀行から「特許権者の承諾書を出してください」と言われた。専用実施権への質権設定には特許権者の承諾が必須(4項)。承諾が取れなければ、その独占権を担保として現金化する道は閉ざされる
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず自分の権利が専用実施権か独占的通常実施権かを確認、特許庁の登録原簿を取り寄せる2. 専用実施権が登録済みなら、侵害者や後発ライセンシーに対し自分の名前で差止請求(特許法100条)と損害賠償(同102条)を準備3. 登録が未了なら大至急で登録手続を進め、設定契約上の特許権者の協力義務を確認4. 特許権者が無断で第三者に許諾していたら、設定契約の債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償を検討する
訴えられた側:1. あなたが特許権者で専用実施権を設定済みなら、その範囲では自分も実施できないと認識する、二重許諾は専用実施権者への債務不履行になる2. あなたが第三者で侵害を問われたら、相手の権利が登録された専用実施権か、登録のない独占的通常実施権かを確認、後者なら相手は自分の名前で差止請求できない3. 先使用権(特許法79条)など正当な実施権原がないか検討4. 専用実施権の範囲(地域・期間・実施態様)を精査し、範囲外の実施なら侵害には当たらない
時効(請求できる期限):専用実施権の設定・移転(一般承継を除く)・質権設定は、登録しなければ効力を生じない(特許法98条)、時効ではないが登録前は権利そのものが発生しない点に注意。侵害に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年(民法724条)。特許権・専用実施権そのものは特許出願から20年で存続期間が満了する(特許法67条、最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:専用実施権は特許権の上に設定される物権的権利であり、設定範囲内では特許権者の実施権能も排除される。登録が効力発生要件であるため、未登録の独占ライセンスは債権的な独占的通常実施権と評価される。
実務通説(独占的通常実施権の差止請求):独占的通常実施権者に固有の差止請求権を認めるかは争いがあるが、特許法100条の文理を重視して原則否定するのが通説的理解であり、債権者代位や特許権者との共同提訴で対応するのが実務の運用とされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定により、専用実施権を第77条に規定。設定・専有・移転制限・質権設定と再許諾の承諾要件・共有規定の準用という現在の5項構成の骨格が置かれた
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める