特許法 第105条の3(相当な損害額の認定)
クイックジャンプ
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
この条文の基本情報
相当な損害額の認定とは何ですか?
定義相当な損害額の認定とは、特許法第105条の3に定められた規定で、「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第105条の3(相当な損害額の認定)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第105条の3の条文原文は「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困…」で始まります。
- 特許法第105条の3は第二節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第105条の3の前の条は特許法第105条の2の12です。
- 特許法第105条の3の次の条は特許法第105条の4です。
- 特許法第105条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第105条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第105条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/105_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法105条の14は、損害の発生が認められるが金額の立証が性質上きわめて困難なとき、裁判所が証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定できると定める。
Q · 相手の売上が分からず損害額を証明できなくても、特許侵害の賠償は取れますか?
損害の発生さえ立証できれば、裁判所が相当額を認定します
特許法105条の14により、損害が生じたこと自体が認められ、かつ金額の立証が事柄の性質上きわめて困難な場合、裁判所は口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果に基づいて相当な損害額を認定できます。したがって金額を一円単位で証明できなくても賠償ゼロにはなりません。ただし前提となる「損害の発生」自体は権利者が立証する必要があり、見積もりの手がかり(市場シェア、ライセンス料率、推定販売数量)を裁判所に十分与えることが認定額の幅を左右します。
解説
特許を侵害された側が最後に突き当たる壁は、侵害の事実ではなく金額だ。相手が何個売ったのか、自分がどれだけ売り損ねたのか、その因果を一円単位で立証するのは、肝心の帳簿が相手の手の中にある以上、ほぼ不可能に近い。ここで多くの権利者が「正確に証明できないなら賠償ゼロだ」と諦めてしまう。だがこの規定は、その諦めを裁判所の側から否定する。損害が生じたこと自体が認められ、かつ金額の立証が事柄の性質上きわめて困難なとき、裁判所は口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果に基づいて「相当な損害額」を自ら認定できる。つまり、あなたが完璧な金額立証に失敗しても、裁判所が空白を埋める権限を持つ。賠償が「ゼロか満額か」の博打から、「裁判所が合理的に見積もる」世界へ移る。あなたがやるべきは金額の完全証明ではない。損害が現に生じたという土台と、見積もりの手がかりを裁判所に十分与えることだ。
法的な位置づけ
特許法105条の14は、特許権侵害訴訟における相当な損害額の裁量認定を定める規定である。損害の発生が認められるが、損害額の立証に必要な事実の立証が当該事実の性質上きわめて困難な場合に、裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定できる旨を規定し、民事訴訟法248条の特則として機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.まず「損害の発生」自体を固める 相当額認定の入口は損害発生の立証にある。市場シェアの低下、値下げ圧力、失注の記録など、損害が現に生じたことを示す資料を確保する。ここが崩れると金額の見積もりにすら入れない
- 2.見積もりの手がかりを集める 相手の推定販売数量、業界のライセンス料率相場、自社の利益率など、裁判所が相当額を見積もる材料を集中的に用意する。手がかりが厚いほど認定額の幅を有利に引き寄せられる
- 3.書類提出命令・鑑定で相手の帳簿を引き出す 相手の帳簿は書類提出命令(特許法105条)で開示を求め、損害計算のための鑑定(特許法105条の2)も併用する。相手が正当な理由なく開示を拒めば、その事実自体が裁判所の心証を権利者有利に傾ける
- 4.弁論終結前に認定材料を出し切る 証拠調べが終わり弁論終結が近づく前に、市場データ・ライセンス料率・推定販売数を出し切る。裁判所が相当額を認定する心証はこの段階で固まり、後出しは効かない
よくある質問 AI による整理
Q1特許法105条の14とは何ですか?
特許権侵害訴訟で、損害の発生は認められるが金額の立証が性質上きわめて困難なとき、裁判所が相当な損害額を認定できる規定です。民事訴訟法248条の特則です。
Q2相当な損害額の認定はどんな条件で使えますか?
「損害が生じたこと」が認められ、かつ「損害額を立証するために必要な事実の立証」が事柄の性質上きわめて困難であること、この二つが要件です。損害発生の立証は省略できません。
Q3特許侵害で損害額を証明できないと賠償はゼロですか?
いいえ。損害の発生さえ立証できれば、金額を確定証明できなくても裁判所が相当額を認定します。立証困難を盾にした賠償ゼロの主張は封じられます。
Q4特許法102条と105条の14はどう使い分けますか?
実務ではまず102条の推定規定で算定を試み、それでも残る立証の穴を105条の14の相当額認定で埋める二段構えが定石です。最初から14条に頼ると認定額が低く出やすいとされます。
Q5相手が販売数量を開示しない場合はどうしますか?
書類提出命令(特許法105条)で帳簿の開示を求め、正当な理由なく拒めば裁判所が主張を真実と認めることができます。それでも数量が確定しないとき105条の14が受け皿になります。
Q6相当な損害額はいくらでも認めてもらえますか?
いいえ。裁判所は青天井ではなく、証拠調べの結果と口頭弁論の全趣旨という枠内で「相当な」額を決めます。見積もりの手がかりが薄ければ認定額も低く抑えられます。
Q7見積もりの手がかりはいつまでに出せばよいですか?
事実審の口頭弁論終結時までに提出する必要があります。弁論終結後は市場データやライセンス料率などの新たな認定材料を追加できません。
Q8訴えられた側は相当額認定にどう対抗しますか?
まず「損害の発生」自体を争い、発生が認められなければ相当額認定の土俵に乗りません。認定が避けられなければ原告の見積もり前提が過大だと反証し、特許の寄与度を下げます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1結局この条文があれば、損害額を証明しなくても満額もらえるんですか?
満額が保証されるわけではない。前提として「損害が生じたこと」自体は立証が必要で、金額の立証が性質上きわめて困難な場合に限り、裁判所が口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果から相当額を認定する(特許法105条の14)。実務のポイント:実務では、まず特許法102条の推定規定で算定を試み、それでも残る穴をこの条文で埋める、という二段構えが定石だ。最初からこの条文に頼ると、見積もりの幅が低く出やすい
Q2相手が販売数量を絶対に出してこない場合、どうすればいいですか?
書類提出命令(特許法105条)で帳簿の開示を求め、相手が正当な理由なく従わなければ、裁判所はその書類の記載に関する主張を真実と認めることができる。それでも数量が確定しないときに、この105条の14が相当額認定の受け皿になる。実務のポイント:相手が開示を拒むこと自体が、裁判所の心証を権利者有利に傾けることがある。「出せないなら、こちらの見積もりで認定してください」という主張は、開示拒否とセットで効く
間違えやすい点 AI による整理
- 「損害額を一円単位で立証できなければ請求は棄却される」と思い込んでいる人は多い。だが、その問いの立て方そのものが誤っている。立証すべきは「損害が生じたこと」と「見積もりの手がかり」であって、確定額そのものではない。問いを「いくらと証明できるか」から「裁判所が相当と見積もる材料を出せるか」へ組み替えた瞬間、戦い方が一変する
- この規定が立証の負担を軽くしてくれることは知っていても、その射程の限界を知らない人が多い。これは「損害の発生」自体の立証まで肩代わりする規定ではない。損害が生じたこと自体が認められなければ、金額の見積もりにすら入れない。入口の「損害発生」は、依然としてあなたが突破しなければならない関門である
- 「裁判所が相当額を認定してくれるなら、適当に高い額を主張すればいい」と考えると痛い目を見る。裁判所は青天井で認定するのではなく、証拠調べの結果と口頭弁論の全趣旨という枠の中で「相当な」額を決める。手がかりが薄ければ、認定額も低く抑えられる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 機能 | 特許法105条の14:金額立証困難時の相当額認定 | 特許法102条:損害額の推定(算定規定) 特許法105条:書類提出命令(証拠収集) |
| 権利者が担う立証 | 損害の発生+見積もりの手がかり(確定額は不要) | 侵害品の譲渡数量・自己の単位利益等 書類の必要性・侵害立証との関連性 |
| 使う場面 | 推定・証拠収集でも金額が確定できない残余部分 | 算定の出発点、まず最初に試みる規定 相手が保有する帳簿・原価資料の開示段階 |
| 実務上の位置づけ | 最後に立証の谷を埋める受け皿 | 損害論の主軸となる推定装置 見積もり材料を引き出す前段の手段 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も、損害の発生は証明されたが数額の証明が困難な場合に、裁判所が一切の事情を斟酌して額を定める仕組みを持ち、日本と同じ発想を採る
韓国特許法も、損害額の立証がその性質上きわめて困難なとき、弁論全趣旨と証拠調べの結果に基づき相当な損害額を認定できると定め、日本法と構造がほぼ一致する
ドイツは損害額の見積もりを一般規定として広く認め、特許侵害でもライセンスアナロジー等による裁量的算定が確立している。本条の淵源的発想にあたる
米国は損害賠償の下限として reasonable royalty を保障し、逸失利益の完全立証ができなくても合理的実施料相当額を認める点で、立証困難時の救済という機能が共通する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 小さな部品メーカーが大手に特許製品を模倣された。大手は販売数量を一切開示しない。完璧な逸失利益の立証は不可能でも、市場シェア、自社の生産能力、業界のライセンス料率から、裁判所が相当額を認定する。「相手が数字を隠せば逃げ切れる」という侵害者側の計算が、ここで崩れる
- 「相手の売上が分からなければ、賠償も取れないのか?」答えはノーだ。この条文が、立証困難を盾にした賠償ゼロの主張を、裁判所の側から封じる
- あなたの会社が他社特許を侵害したとして訴えられた。原告の損害額計算がずさんでも、「立証できていないから賠償ゼロ」とは主張できない。裁判所が相当額を埋めるので、防御の軸は「損害は発生していない」あるいは「その見積もりは過大だ」へ切り替える必要がある
- 証拠調べが終わり、弁論終結まで残りあと一回の期日。ここで損害額の手がかり、市場データ、ライセンス料率、相手の推定販売数を出し切らないと、裁判所が見積もる材料そのものが痩せ細る。あなたに残された時間で何を積めるかが、認定額の幅を決める
取るべき行動
被害を受けた側:1. まず「損害が生じたこと自体」を固める。市場シェアの低下、値下げ圧力、失注の記録など、発生の事実を示す資料を確保する。2. 金額の手がかりを集める。相手の推定販売数量、業界のライセンス料率相場、自社の利益率。3. 相手の帳簿は書類提出命令(特許法105条)や損害計算のための鑑定(特許法105条の2)で引き出せるので併用する。4. 完全立証に固執せず、「相当額認定の材料を裁判所に十分与える」方針で証拠を組み立てる
訴えられた側:1. まず「損害の発生」自体を争えないか検証する。発生が認められなければ相当額認定の土俵にすら乗らない。2. 認定が避けられないなら、原告の見積もり前提(販売数量、料率、利益率)が過大であることを示す反証を出す。3. 自社製品の売上が特許以外の要因(ブランド、別機能、価格)によることを立証し、特許の寄与度を下げる。4. 裁判所の見積もりは予測しにくく判決リスクが読めないため、早期和解も並行して検討する
時効(請求できる期限):この条文自体に独自の時効はない。前提となる損害賠償請求権は不法行為として、損害および加害者を知った時から3年、侵害行為時から20年で消滅する(民法724条、最新の改正状況をご確認ください)。訴訟内では、損害額の手がかりは事実審の口頭弁論終結時までに提出する必要があり、それを過ぎると新たな見積もり材料を出せない
学説
通説・実務:特許法105条の14は損害の発生を前提としつつ、金額立証の困難という最も厳しい部分のみを裁判所の裁量認定に委ねる規定である。立証責任の原則を完全には崩さず、救済の実効性を確保する妥協点と理解される。102条の推定を先行させ、残余を本条で補う二段構えが定石とされる。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める