特許法 第162条
クイックジャンプ
特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があつた場合において、その請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があつたときは、審査官にその請求を審査させなければならない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第162条は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第162条の条文原文は「特許庁長官は、拒絶査定不服審判の請求があつた場合において、その請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正があつ…」で始まります。
- 特許法第162条は第六章に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第162条の前の条は特許法第161条です。
- 特許法第162条の次の条は特許法第163条です。
- 特許法第162条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第162条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第162条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/162
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法162条は、拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があったとき、特許庁長官が審査官に再審査させる前置審査を定める。補正で拒絶理由が解消されれば、合議体審理を経ずに早期に特許査定が出る。
Q · 拒絶査定で審判を請求したら、次は審判官が判断するの?
補正を伴う場合、まず元の審査官が再審査します(前置審査)。
特許法162条により、拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書・特許請求の範囲・図面の補正があったときは、特許庁長官は審査官にその出願を再審査させなければなりません。これが前置審査です。最初に書類を読むのは審判官ではなく、たいていあなたを拒絶した同じ審査官です。補正で拒絶理由が解消されていれば、合議体審理を経ずにそのまま特許査定が出ることもあり(163条・164条)、権利化が数か月早まります。
解説
特許出願が拒絶査定を受けた。あなたは納得できず、拒絶査定不服審判を請求する。そのとき同時に、明細書や特許請求の範囲を補正した。ここで多くの人が誤解する。「審判を請求したのだから、次は審判官の合議体が判断する」と。違う。特許法162条は、補正を伴って審判を請求した場合、特許庁長官は必ず審査官に再審査させると定める。しかもこの審査官は、たいていあなたを最初に拒絶した同じ審査官だ。なぜこんな仕組みがあるのか。あなたが補正で拒絶理由を解消していれば、案件を一番よく知る審査官が、重い合議体審理を経ずに一気に特許査定を出せるからだ(163条、164条)。つまり審判請求と同時の補正は、合議体に進む前のショートカットを起動するスイッチでもある。補正の出来が、ここで運命を分ける。
法的な位置づけ
特許法162条は前置審査を定める規定であり、拒絶査定不服審判の請求と同時に明細書・特許請求の範囲・図面の補正がされた場合に、特許庁長官が審査官へ当該出願を再審査させる義務を規定する。審判官の合議体による審理に先立つ、審査官による再審査の起点として機能する手続規定である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.拒絶査定の謄本送達から3か月以内に審判を請求 拒絶査定不服審判の請求は、査定の謄本送達日から3か月以内に行う(特許法121条)。期限を過ぎると拒絶査定が確定し、出願は失われる。在外者等は延長がある
- 2.補正書を審判請求と同時に提出して前置審査を起動 補正で拒絶理由を解消できるなら、審判請求と同時に補正書を提出する(17条の2)。同時でなければ前置審査の対象にならない。これにより特許庁長官が審査官に再審査させる前置審査が自動起動する(162条)
- 3.補正書は「元の審査官」を宛先に論理を組む 前置審査で最初に読むのは多くの場合あなたを拒絶した同じ審査官である前提で、拒絶理由通知の論点を一つずつ潰す構成にする。補正は当初明細書等の範囲内に厳格に収め、根拠箇所を意見書で明示する(17条の2第3項)
- 4.前置審査で拒絶されたら前置報告書を反証して合議体へ 前置審査で特許査定が出なければ前置報告書が付されて合議体審理に移行する(164条)。報告書はそのまま審判官に引き継がれ心証に影響するため、その論理を逐一分析し合議体向けに反論を組み直す
よくある質問 AI による整理
Q1前置審査とは何ですか?
拒絶査定不服審判の請求と同時に補正があったとき、審判官の審理の前に元の審査官が再審査する手続です。特許法162条が根拠で、補正による早期権利化の関門となります。
Q2前置審査はどのくらいの期間がかかりますか?
案件により異なりますが、合議体審理より大幅に短く、補正が的確なら数か月で特許査定が出ることもあります。前置審査で決着しなければ通常の審判審理に移行します。
Q3前置報告書とは何ですか?
前置審査で審査官が特許査定をしないと判断した場合に作成され、特許庁長官を経て審判官へ引き継がれる報告書です(164条)。審判官の心証形成に影響します。
Q4拒絶査定不服審判で補正はいつ出しますか?
前置審査を起動させるには、審判請求と同時に補正書を提出する必要があります(特許法162条・17条の2)。同時でなければ前置審査の対象になりません。
Q5前置審査で特許査定が出る割合は高いですか?
補正が的確に拒絶理由を解消していれば、前置審査で特許査定が出る案件は相当数あります。だからこそ審判請求時の補正の精度が権利化スピードを左右します。
Q6前置審査で拒絶されたらどうなりますか?
審査官が特許査定をしない場合は前置報告書を付して特許庁長官に報告し、案件は審判官の合議体審理へ移行します(164条)。前置審査は最後の関門ではありません。
Q7前置審査で補正が却下されることはありますか?
補正が新規事項の追加(17条の2第3項)や目的要件違反にあたると、前置審査で補正が却下されます(53条)。その判断は後の審判で争えます。
Q8前置審査を受けるのは元の審査官ですか?
多くの場合、最初に拒絶査定をした審査官が再審査します。だから補正書は「審判官向け」ではなく「元の審査官を説得する文書」として書くことが重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1審判を請求したのに、なんで元の審査官がまた審査するんですか?
前置審査制度(特許法162条)の狙いは効率化です。補正で拒絶理由が解消されていれば、案件を熟知した元の審査官がそのまま特許査定を出せる(163条、164条)。重い合議体審理を省けるので、権利化が数か月早まります。実務のポイント:前置審査でそのまま特許査定が出る割合は実は高く、補正がうまければここで決着します。だから審判請求時の補正は『審判官向け』ではなく『元の審査官にもう一度YESと言わせる』ことを意識して書く。これを分かっている代理人とそうでない代理人で、権利化スピードが変わる
Q2前置審査で特許にならなかったら、もうダメなんですか?
いいえ、まだ続きます。前置審査で審査官が特許査定をしないと判断した場合、特許庁長官に報告し(164条)、案件は本来の合議体(審判官による審理)に移ります。前置審査は『早期決着の関門』であって『最後の関門』ではありません。実務のポイント:前置審査の審査官が出す前置報告書は審判官に引き継がれ、心証形成に影響します。だから前置審査で拒絶されても、その報告書の論理を読み込んで合議体向けに反論を組み直すのが勝負どころ。報告書を軽視して同じ主張を繰り返すと、合議体でも負ける
間違えやすい点 AI による整理
- 「審判を請求したら、もう審査官の手は離れて審判官が判断する」と思われているが、補正を伴う場合は逆。案件はまず元の審査官に差し戻される(162条)。審判官が登場するのは、前置審査で決着がつかなかった後だ
- 前置審査があることは知っていても、その「速さ」の威力を知らない人が多い。補正が的確なら、1年以上かかることもある合議体審理をまるごと飛ばして数か月で権利化できる。この時間差が、競合に対する市場参入の先後を決める
- 「審判請求のとき補正すべきか」と悩む人がいるが、問いの立て方が逆。補正で拒絶理由を解消できるなら出すべきで、その瞬間に前置審査という早期ルートが自動で起動する。本当の論点は『補正するか』ではなく『その補正で元の審査官を説得しきれるか』だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の位置づけ | 162条:審判請求と同時の補正による前置審査の起動 | 121条:拒絶査定不服審判の請求(前置審査の起点) 164条:前置審査の結果報告と合議体審理への移行 |
| 判断主体 | 162条:審査官(多くは元の拒絶査定をした審査官) | 121条:審判請求は出願人が行う 164条:合議体(審判官) |
| 前提要件 | 162条:審判請求と同時の補正があること | 17-2条:補正は当初明細書等の範囲内(新規事項追加の禁止) 53条:要件違反の補正は却下される |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は拒絶後に審査官による再審査(再審査)を申請する制度を持つ。審査段階での再審理という点で前置審査と機能的に近い
韓国はかつての審査前置(심사전치)を廃止し、補正を伴う再審査(재심사)制度に整理した。審査官が補正後に再審理する点で類似する
ドイツは不服申立(Beschwerde)に対し、原処分を行った審査部が自ら是正(Abhilfe)できる仕組みを持ち、審判前の審査官による再考という点で前置審査に対応する
米国はRCEや審判前の審査官再考の運用により、Appeal前に審査官が補正を踏まえ再審査する機会を設ける点で機能的に近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし審判請求と同時に出した補正が、拒絶理由を解消しきれていなかったら? 前置審査の審査官はあなたを再び拒絶し、前置報告書を付けて合議体に回す。その報告書は、後に登場する審判官の心証を先に染める。最初の補正が甘いと、二段階目の勝負も不利から始まる
- 拒絶査定の謄本が届いた。審判請求の期限は3か月。あなたが補正を付けずに審判だけ請求すれば、前置審査は起動せず、いきなり合議体審理へ進む。補正を同時に出すかどうかで、最初に書類を読む人間が審判官になるか、あなたを落とした審査官になるかが分かれる
- あなたは弁理士として顧客の特許を担当。前置審査でそのまま査定が出れば、合議体審理の長い列を飛ばして数か月早く権利化できる。補正の精度が、顧客の市場参入スピードを直接動かす
取るべき行動
被害を受けた側:1. 拒絶査定の謄本送達から3か月以内に、拒絶査定不服審判を請求する(121条)。期限を過ぎれば査定が確定する2. 補正で拒絶理由を解消できるなら、審判請求と同時に補正書を提出する(17条の2)。これで前置審査が自動起動する(162条) 3. 補正書は、最初に読むのが元の審査官である前提で、拒絶理由通知の論点を一つずつ潰す構成にする4. 前置審査で査定が出れば数か月で権利化、出なければ合議体審理へ移行する
訴えられた側:1. 補正が新規事項の追加(17条の2第3項)にあたると、前置審査で補正が却下され(53条)、補正前の状態で審査される2. だから補正は当初明細書等の範囲内に厳格に収め、根拠箇所を意見書で明示する3. 限定的減縮など補正の目的要件(17条の2第5項)も満たすこと4. 補正が却下されても、その判断は審判で争える。前置報告書の論理を分析し、合議体向けに反論を組み直す
時効(請求できる期限):拒絶査定不服審判の請求は、査定の謄本送達日から3か月以内(特許法121条1項、在外者等は延長あり)。補正は審判請求と同時でなければ前置審査の対象にならない。期限を過ぎると拒絶査定が確定し、出願は失われる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:前置審査は、補正により拒絶理由が解消された案件を、合議体の重い審理を経ずに案件を熟知した審査官が早期に特許査定できるようにする審判負担軽減の制度と理解される。最終的な拒絶確定権限は合議体に留保され、審査官には早期救済の権限のみが与えられる
改正沿革 AI による整理
- 平成20年(2008年)改正(要確認) 審判請求後に一定期間設けられていた補正の機会を廃止し、補正は審判請求と同時に行う方式へ整理されたとされる。これにより本条の『その請求と同時に補正があつたとき』という要件が現行の形になったが、改正年・回数の正確な確認が必要
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める