特許法 第183条(対価の額についての訴え)
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- 第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項又は第九十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
- 2.前項の訴えは、裁定の謄本の送達があつた日から六月を経過した後は、提起することができない。
この条文の基本情報
対価の額についての訴えとは何ですか?
定義対価の額についての訴えとは、特許法第183条に定められた規定で、「第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項又は第九十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第183条(対価の額についての訴え)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第183条の条文原文は「第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項又は第九十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の…」で始まります。
- 特許法第183条は第八章に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第183条の前の条は特許法第182条の2です。
- 特許法第183条の次の条は特許法第184条です。
- 特許法第183条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第183条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第183条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/183
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法183条は、強制実施権の裁定で定めた対価の額に不服がある者が、額の増減を求める訴えを提起できると定める。出訴期間は裁定謄本の送達から6か月に限られる。
Q · 特許庁の裁定で決まった対価の額に納得できません。どこに、誰を相手に訴えればいいですか?
取消訴訟ではなく、相手方を被告に額の増減を求める訴えを起こします
特許法183条1項により、83条2項・92条3項4項・93条2項の裁定を受けた者は、定められた対価の額に不服があるとき、訴えを提起して額の増減を求めることができます。被告は特許庁(国)ではなく取引の相手方であり(同法184条)、提起先は地方裁判所です。行政事件訴訟法上の形式的当事者訴訟に当たります。出訴期間は裁定の謄本の送達があった日から6か月(183条2項)で、これを過ぎると額の増減は一切請求できなくなります。ただし実施権の設定そのものは存続します。
解説
特許の強制実施権(他人の特許を、権利者の許可を待たずに使える権利)を巡り、特許庁長官の裁定が下りた。ところが、そこで定められた対価(ライセンス料に相当する金額)に納得がいかない。このとき多くの人は「裁定そのものを取り消す行政訴訟を起こすしかない」と考える。183条はその常識をひっくり返す。対価の額についての不服だけは、裁定を取り消す訴訟ではなく、取引の相手方を被告とする通常の民事訴訟(形式的当事者訴訟、役所ではなく相手当事者を相手取る特殊な型)で、地方裁判所に「額を上げろ、下げろ」と請求する。国を相手にするのではない。ライセンス料を払う側ともらう側が、法廷で直接対価を争う。しかも期限は裁定謄本の送達から6か月。これを1日でも過ぎれば、実施権の設定自体は生き続けるのに、金額だけは永久に固定される。額に不満があっても、二度と動かせなくなる。
法的な位置づけ
特許法183条は、強制実施権の裁定で定められた対価の額に不服がある当事者に、その額の増減を求める訴えの提起を認める規定である。裁定処分の当否を争う取消訴訟とは区別され、被告は行政庁ではなく取引の相手方となる形式的当事者訴訟であり、出訴期間は裁定謄本の送達日から6か月に限定される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.裁定謄本の送達日を確定し6か月を逆算する 封筒・送達記録・受領印から謄本の送達日を特定し、183条2項の6か月の満了日をカレンダーに落とす。起算点は裁定日でも認識日でもなく送達日である
- 2.争点を切り分ける(額か、処分そのものか) 対価の額だけに不服なら183条の当事者訴訟、実施権を設定した処分の当否を覆したいなら行政事件訴訟法の取消訴訟。両者は土俵が異なるため、混同したまま一本で提起しない
- 3.適正対価の立証材料を提訴前に固める 同種特許のライセンス料率相場、対象製品の売上・市場規模、当該発明の寄与度、代替技術の有無を収集する。増減を求める側に立証の負担があるため、提訴後の収集では遅い
- 4.相手方を被告として地方裁判所に提訴する 184条に従い、対価を支払う側が原告なら受け取る側を、受け取る側が原告なら支払う側を被告に指定する。国・特許庁を被告にしない。提起先は地方裁判所
- 5.係争中も実施・操業を継続する 実施権の設定自体は訴訟中も有効である。訴訟リスクを理由に実施や操業を止めれば、勝訴しても事業損失だけが残る。並行して和解可能な額のレンジを内部で決めておく
よくある質問 AI による整理
Q1形式的当事者訴訟とは?
行政庁の処分で形成された法律関係について、処分庁ではなく法律関係の相手方当事者を被告として争う訴訟です。特許法183条の対価の額の訴えは、その代表例とされます。
Q2特許の強制実施権はどんなときに認められる?
特許が継続して3年以上実施されていない場合(83条)、他人の特許を利用する改良発明を実施する必要がある場合(92条)、公共の利益のため特に必要な場合(93条)に、裁定により通常実施権が設定され得ます。
Q3対価の額の訴えはどこの裁判所に提起する?
通常の民事訴訟として地方裁判所に提起します。特許庁の審決取消訴訟のように知的財産高等裁判所の専属管轄になるわけではない点が、実務上見落とされやすいところです。
Q4出訴期間6か月の起算日はいつ?
特許法183条2項により、裁定の謄本の送達があった日が起算日です。裁定がされた日でも、当事者が内容を知った日でもありません。送達の記録は必ず保管してください。
Q5裁定そのものの取消しを求めるにはどうする?
対価の額ではなく実施権を設定した処分の当否を争う場合は、183条の訴えではなく、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟によります。入口を取り違えると中身を争う前に却下され得ます。
Q6対価の額の訴えで立証すべきことは?
裁定額が適正対価から乖離していることです。同種特許の実施料率相場、対象製品の市場規模、当該発明の寄与度などが典型的な立証材料になります。増減を求める側に負担があります。
Q7特許法83条・92条・93条の裁定はどう違う?
83条は不実施を理由とする裁定、92条は利用関係にある改良発明のための裁定、93条は公共の利益のための裁定です。いずれも対価の額に不服があれば183条の訴えの対象となります。
Q8訴訟中も強制実施権は使える?
使えます。183条の訴えは対価の額のみを争うもので、裁定による実施権の設定自体の効力は係争中も存続します。訴訟を理由に実施を止める必要はありません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁定の対価に納得できないんですが、特許庁を相手に取り消しを求めればいいんですか?
対価の額だけが不満なら違います。183条1項に基づき、相手方(ライセンス料を払う側または受け取る側)を被告として、地方裁判所に額の増減を求める訴えを起こします(被告の指定は184条)。特許庁を相手にする取消訴訟ではありません。実務のポイント:これは行政法で「形式的当事者訴訟」と呼ばれる特殊な型で、実務家でも入口を間違える。実施権の設定自体に不服なら取消訴訟、金額だけなら183条、と最初に切り分けられるかどうかで、訴えが却下されるか中身を争えるかが分かれる
Q26か月の期限を過ぎたら、もう諦めるしかないんですか?
対価の額については、そのとおりです。183条2項の6か月を過ぎれば額の増減は請求できません。ただし実施権の設定そのものはそのまま生きています。実務のポイント:弁護士が真っ先に確認するのは「裁定謄本がいつ送達されたか」。送達の事実や日付に争いがあれば、起算点がずれて期間内だと主張できる余地が残る。封筒や送達の記録を捨てずに保管しているかどうかが、半年を過ぎてからの最後の一手になることがある
間違えやすい点 AI による整理
- 「裁定に不満なら、特許庁を相手に取り消しを求めるしかない」と思いがちだが、対価の額については違う。被告は国ではなく取引の相手方(184条)。あなたが争う相手は、役所ではなくテーブルの向こうの企業だ
- 「裁定全体を一つの訴訟でまとめて争えばいい」という問いの立て方そのものが誤り。実施権を認めた処分の当否は取消訴訟、対価の額は183条の当事者訴訟。性質の違う二つを一本にまとめようとすると、どちらの土俵にも乗れずに弾かれる
- 6か月の出訴期間は知っていても、その重さを見落としている人が多い。期間を過ぎてもライセンスの設定は有効なまま残り続ける。つまり、不当に安い(または高い)対価を、相手に半永久的に払い、または受け取り続けることになる。たった半年の不作為が、契約何十年分の金額差を固定する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 争える対象 | 特許法183条:裁定で定めた対価の額(増減のみ) | 特許法93条:公共の利益のための裁定処分そのもの 特許法92条:利用関係における裁定処分そのもの |
| 被告 | 取引の相手方(184条)。国・特許庁ではない | 処分庁側(取消訴訟の被告は国) 処分庁側(取消訴訟の被告は国) |
| 訴訟の性質 | 形式的当事者訴訟(実質は民事訴訟) | 抗告訴訟(処分取消訴訟) 抗告訴訟(処分取消訴訟) |
| 期間経過の効果 | 6か月経過で額は確定。ただし実施権の設定は存続(183条2項) | 出訴期間経過で処分が確定し実施権設定を争えない 出訴期間経過で処分が確定し実施権設定を争えない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も強制授権制度を持ち、補償金は専利専責機関が核定する。核定に不服がある場合の争訟ルートが用意される点で日本と同旨だが、被告適格の設計は異なる
韓国も特許庁長官の裁定により通常実施権を設定する制度を持ち、裁定で定めた対価に不服がある場合の不服の訴えが用意されている。日本法の影響が強い領域
ドイツは行政庁の裁定によらず、連邦特許裁判所(Bundespatentgericht)が訴訟手続で強制実施権と対価の双方を判断する。行政裁定を前置しない点が日本と根本的に異なる
米国には一般的な強制実施権制度がない。政府またはその請負人による特許使用について、特許権者は Court of Federal Claims に reasonable and entire compensation を請求できるにとどまる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし競合が、公共の利益を理由にあなたの特許を強制実施権の裁定で使い始め、定められた対価が想定の半分だったら? 取消訴訟の準備を進めていても、それは間違った戦場かもしれない。額を争う土俵は183条の地方裁判所であって、裁定を取り消す行政訴訟ではない
- あなたが他社の基本特許を利用する改良発明を持っていて、§92の裁定で実施権を得た。だが特許庁が定めた対価が高すぎる。あなたは「払う側」として、減額を求めて特許権者を被告に訴えられる。法廷に立つのは国ではなく、相手企業だ
- 感染症の流行で、ある治療薬の特許に§93の公共利益裁定が下りた。製薬会社は対価に不服。だが裁定の妥当性そのものは別の取消訴訟、対価の額だけがこの183条。二つの訴えを混同すると、どちらも入口で却下されかねない
- 裁定の謄本が届いた。封筒の日付を確認する。その一日が、6か月のカウントダウンの起点になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 裁定謄本の送達日を確定し、そこから6か月の出訴期間を逆算する(2項) 2. 争点を切り分ける。実施権の設定自体を覆したいなら別途取消訴訟、対価の額だけなら183条の訴え3. 被告は国ではなく取引の相手方(184条)、提訴先は地方裁判所であって知財高裁ではない4. 適正対価の立証材料(同種特許のライセンス料相場、市場規模、発明の寄与度)を提訴前に固める。額の増減を求める以上、立証の負担は提訴側にある
訴えられた側:1. 訴状が届いたら、まず対価の額の訴えか裁定取消訴訟かを見極める。土俵が違えば反論の組み立ても変わる2. 特許庁の裁定が依拠した算定根拠(実施料率、寄与率)を入手し、その合理性を主張の軸にする3. 相手の出訴期間が既に経過していれば、額は確定済みとして却下を主張できる(2項) 4. 対価は当事者間の利害調整、徹底抗戦より、係争コストと額の差を比べて和解点を探る方が合理的な場合が多い
時効(請求できる期限):裁定の謄本の送達があった日から6か月(183条2項)。起算点は送達日であり、裁定がされた日でも、自分が内容を知った日でもない。この期間を過ぎれば額の争いは一切できなくなる(実施権の設定自体は存続する)
学説
通説:特許法183条の訴えは、行政事件訴訟法4条前段にいう形式的当事者訴訟に当たると解されている。裁定という行政処分により形成された法律関係を前提としつつ、対価の額という当事者間の利害調整に純化した部分のみを、相手方当事者を被告とする民事訴訟の手続で争わせる構造である。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定に伴い、裁定で定める対価の額に対する不服申立ての手段として、額の増減を求める訴えと6か月の出訴期間が定められた
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