特許法 第83条(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)
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- 特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
- 2.前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
この条文の基本情報
不実施の場合の通常実施権の設定の裁定とは何ですか?
定義不実施の場合の通常実施権の設定の裁定とは、特許法第83条に定められた規定で、「特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾に…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第83条(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第83条の条文原文は「特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾に…」で始まります。
- 特許法第83条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第83条の前の条は特許法第82条です。
- 特許法第83条の次の条は特許法第84条です。
- 特許法第83条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第83条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第83条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/83
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法83条は、特許発明が継続して三年以上日本国内で適当に実施されていないとき、実施希望者が通常実施権の協議を求められると定める。ただし出願日から四年を経過していなければ請求できない。
Q · 三年使われていない特許は、他人が「使わせろ」と請求できるんですか?
協議請求はできるが、裁定認容例は日本にない
特許法83条1項により、特許発明の実施が継続して三年以上日本国内で適当にされていないとき、実施を希望する者は特許権者又は専用実施権者に通常実施権の協議を求められます。ただし出願日から四年を経過していることが必要です。協議が成立せず、又は協議ができないときは、同条2項により特許庁長官への裁定を請求できます。もっとも、日本で本条による裁定が認められた事例はなく、実務上の意義は任意ライセンス交渉の圧力材料にあります。
解説
あなたの会社が、ある製品をどうしても作りたいのに、必要な技術の特許を握る相手が「自分も使わないし、あなたにも使わせない」と門を閉ざしている。出願から何年も塩漬けにされた特許が、市場全体を凍りつかせる。そんなとき、特許法83条はあなたの手元に一本の鍵を差し出す。特許発明が継続して三年以上、日本国内で適切に実施されていなければ、その発明を使いたい者は特許権者に対して「通常実施権(使わせてください、という非独占の利用許諾)の協議」を求められる。協議が決裂、あるいは相手が話し合いにすら応じないとき、次は特許庁長官に裁定(国が強制的にライセンスを設定する行政判断)を請求できる。ただし出願日から四年を経過していなければ、この鍵は使えない。ここで知っておくべき決定的な事実がある。この条文は長らく法律の中にありながら、実際に裁定が下りた例は日本で一件も存在しない。鍵はあるのに、誰も扉を開けたことがない。だがその「開かずの扉」の存在自体が、交渉のテーブルの力学を静かに変える。
法的な位置づけ
特許法83条は、不実施を理由とする通常実施権設定の裁定制度を定める規定である。特許発明が継続して三年以上日本国内において適当に実施されていない場合、実施を希望する者は特許権者又は専用実施権者に協議を求めることができ、協議の不成立又は不能を要件として特許庁長官の裁定を請求できる。ただし特許出願日から四年の経過が前提となる。
手順
- 1.出願日と不実施期間を確定する J-PlatPat で対象特許の出願日を確認し、出願日から四年を経過しているかを判定する。同時に、日本国内での実施が継続して三年以上「適当にされていない」ことを、市場調査・製品不在の記録・カタログ等で裏付ける
- 2.通常実施権の協議を書面で正式に申し入れる 特許権者又は専用実施権者に対し、実施したい範囲・条件・対価案・応答期限を明示した書面で協議を申し入れる。内容証明郵便など到達と内容が記録に残る方法を用いる
- 3.協議の不成立・不能を記録化する 相手の拒否回答、無応答、条件不一致の経緯を時系列で保存する。83条2項の「協議が成立せず、又は協議をすることができないとき」に該当する事実関係を証拠として固める
- 4.特許庁長官への裁定請求を準備する 裁定請求書に、実施を必要とする理由、実施の範囲、対価の額と支払方法を記載して特許庁に提出する。相手方には答弁書提出の機会が与えられる(特許法84条)
- 5.本命の任意ライセンス和解に着地させる 日本で83条の裁定が認められた例がない現実を踏まえ、裁定請求は交渉圧力として位置づける。相手が答弁手続コストと評判リスクを避けたい局面で、任意ライセンスの条件交渉に戻す
よくある質問 AI による整理
Q1不実施裁定とは何ですか?
特許法83条に基づき、三年以上実施されていない特許について、実施希望者が協議を求め、決裂時に特許庁長官の裁定で通常実施権の設定を請求できる制度です。
Q2特許の不実施はどうやって証明しますか?
製品市場調査、カタログ・販売実績の不存在、J-PlatPat の実施報告の不在などを積み上げます。「継続して三年以上」「日本国内」「適当にされていない」の三要素を時系列で示します。
Q3特許法83条の四年要件はいつから数えますか?
特許出願の日から起算します。登録日ではありません。出願日から四年未経過なら、三年以上の不実施があっても協議請求はできません(83条1項但書)。
Q4強制実施権と通常実施権の違いは?
通常実施権は非独占の利用許諾です。83条の裁定は国が強制的にこの通常実施権を設定するもので、特許権自体は消滅せず、権利者に対価が支払われます(特許法86条)。
Q5特許法83条の裁定はこれまで何件認められましたか?
日本で本条による裁定が認容された事例は確認されていません。要件を満たしても裁定で権利設定を勝ち取ることは実務上ほぼ期待できないと理解されています。
Q6協議を求められた特許権者は応じる義務がありますか?
応じる義務はありません。ただし協議に応じないこと自体が83条2項の「協議をすることができないとき」に当たり、裁定請求の前提を相手に与える結果になります。
Q7裁定請求されたら特許権者は何をすべきですか?
特許法84条により、特許庁長官から送達された裁定請求書の副本に対し、指定期間内に答弁書を提出する必要があります。無応答は不利に働きます。
Q8特許法83条と93条はどう違いますか?
83条は不実施を理由とする私益型の裁定、93条は公共の利益のための裁定です。93条は経済産業大臣の協議を経る点でも手続が異なります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1三年使われていない特許なら、申請すれば本当に使わせてもらえるんですか?
理屈の上では特許法83条で協議請求から裁定請求まで進めますが、日本でこの不実施裁定が実際に認められた事例は一件もありません。要件を満たしても裁定で勝てる保証はほぼないのが実情です。実務のポイント:知財実務家はこの条文を『眠れる規定』と呼びます。本当の使い道は裁定を勝ち取ることではなく、要件成立を相手に突きつけて任意ライセンス交渉を有利に動かすこと。札を抜くためではなく、見せるために持つ条文です
Q2相手が協議に全然応じてくれないんですが、それで終わりですか?
終わりではありません。むしろ相手が協議に応じないこと自体が、特許法83条2項の『協議をすることができないとき』に該当し、特許庁長官への裁定請求の前提を整えます。無視は相手にとって安全な対応とは限りません。実務のポイント:交渉では『協議を求めた事実』を内容証明など記録の残る形で残しておくことが効きます。後で裁定請求や別ルートの交渉に進むとき、相手の不誠実な対応が客観証拠として手元に積み上がります
Q3うちの特許、製品化できてなくて何年も止まってます。取り上げられたりしますか?
特許権そのものが剥奪されることはありません。83条はあくまで他人に通常実施権(非独占の利用許諾)を設定しうる制度で、あなたの特許が消えるわけではない。しかも実際に裁定が下りる可能性は極めて低いです。実務のポイント:ただし三年以上の不実施は、相手に協議を求める正当な足場を与えます。実施準備中である記録や、市場が未成熟という合理的理由を文書で残しておくと、いざ協議請求が来たときの防御材料になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「三年使われていない特許なら、申請すればすぐ使わせてもらえる」と思われがちだが、実際には日本で83条の裁定が認められた事例は一件もない。条文の存在は知っていても、その実効性がほぼゼロであることまでは知られていない。これは典型的な、知識の深刻度を取り違える盲点だ
- 「協議を求めれば、相手は応じる義務がある」と考える人がいるが、相手は協議に応じない自由もある。ただし応じないこと自体が83条2項の裁定請求の前提(協議不成立・協議不能)を満たす方向に働く。義務がないことが、かえって次の手を開く
- そもそも「特許を取ったら使わなくても権利は安泰」という前提が誤っている。特許権は独占を保障するが、その独占は『使うこと』を社会から期待されている。三年放置すれば他人に協議を求められる地位に立たされる。権利の上に眠る者は、法が用意した揺さぶりを受ける
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 裁定の趣旨 | 特許法83条:不実施の解消(私益型) | 特許法92条:利用関係の調整(後願者の実施確保) 特許法93条:公共の利益のための実施確保 |
| 主たる要件 | 継続三年以上の国内不実施 + 出願日から四年経過 | 自己の特許発明が他人の先願発明を利用する関係にあること 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であること |
| 協議前置 | 協議の不成立・不能が裁定請求の前提(2項) | 協議の不成立・不能が前提(92条3項) 協議の不成立・不能が前提(93条2項) |
| 裁定機関と実務実績 | 特許庁長官。日本での認容例は確認されていない | 特許庁長官。クロスライセンスで解決されることが多い 特許庁長官(経済産業大臣の協議あり)。認容例は確認されていない |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾は2011年改正で「不実施」を強制授権事由から削除し、国家緊急事態・公益非営利・特許権濫用の是正等に限定した。日本83条が制度として残しつつ発動しないのに対し、台湾は制度自体を絞り込む道を選んだ
韓国は3年以上の不実施を裁定事由に含め、日本法と構造が酷似する。ただし協議前置・猶予期間の設計は日本と細部が異なる
特許権者が正当な理由なく特許を実施せず又は十分に実施しない場合、実施条件を具備する者の請求により国家知識産権局が強制許諾を与えうると規定する
ドイツは「公共の利益(öffentliches Interesse)」を要件とし、単なる不実施のみでは足りない。認容例は Interferon-gamma 事件(BGH 2017)など極めて限定的
フランスは出願日から3年又は特許付与から4年のいずれか遅い時点以降、不実施を理由とする licence obligatoire を裁判所に請求できる。日本と異なり裁判所管轄
米国には不実施一般を理由とする強制実施権がない。代わりに、自ら実施しない特許権者の差止請求を衡平法上の四要素テストで制限することで、機能的に類似の結果を導いている
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたのスタートアップが新製品を出そうとしたら、大手が十年前に取った休眠特許に引っかかった。相手は自社で実施もせず、ライセンスにも応じない。出願日を調べたら十年前、三年以上の不実施も明らか。83条の協議請求という札が、あなたの交渉カバンに入る
- もし相手の特許がまだ出願から三年しか経っていなかったら、どうなる? 答えは「何もできない」。83条但書は出願日から四年の猶予を特許権者に与えている。あと一年、相手が市場を凍らせる権利を持つということだ。この一年の使い方が勝負を分ける
- あなたが特許権者の側で、ライセンス交渉を強気で蹴り続けていたとする。相手が突然「では特許庁長官に裁定を請求します」と書面を送ってきた。実際に裁定が下りる確率は限りなくゼロに近いが、答弁書の提出義務(特許法84条)と手続コストが発生する。相手は本気だ、という合図
- 製薬ベンチャーが、ある基本特許を握る大企業に何度もライセンスを打診したが無視され続けた。協議に応じないこと自体が、83条2項の「協議をすることができないとき」に該当しうる。裁定請求の前提が、相手の無視によって整っていく
取るべき行動
被害を受けた側:1. 実施を望む特許の出願日を特許庁の J-PlatPat で確認、四年経過と三年以上の不実施を裏付ける証拠(市場調査、製品不在の記録)を固める2. 特許権者または専用実施権者に書面で通常実施権の協議を正式申入れ、応答期限を明示3. 相手が拒否・無視したら、協議不成立または協議不能を記録に残す4. 特許庁長官への裁定請求を準備、ただし日本での認容例が皆無である現実を踏まえ、本命は任意ライセンスでの和解と位置づけ、裁定請求は交渉圧力として戦略的に使う5. 弁理士・知財弁護士に早期相談
訴えられた側:1. 自社特許の実施状況を棚卸し、三年以上不実施の特許がないか確認、防衛的に最低限の実施実績または合理的な不実施理由(実施準備中、市場未成熟など)を整える2. 協議請求を受けたら無視せず、条件交渉の窓口は開けておく(無視は裁定請求の前提を相手に与える) 3. 裁定請求が来たら答弁書の提出義務(特許法84条)に確実に対応4. 過去に日本で83条裁定が認められた例はないという事実を踏まえ、過度に恐れず、しかし手続は丁寧に進める
時効(請求できる期限):協議請求は、特許発明の継続三年以上の国内不実施が要件であり、かつ出願日から四年を経過していなければ請求できない(特許法83条1項但書)。この二つの起算点(出願日からの四年、不実施の三年継続)を取り違えると、請求自体が門前払いになる。裁定請求は協議の不成立または不能が前提(同条2項)
学説
通説:83条の裁定は、特許制度の目的である産業の発達(特許法1条)に照らし、独占権が発明の社会的活用を阻害する場合の是正弁と位置づけられる。もっとも協議前置と四年猶予により発動要件が厳格であり、実際の機能は交渉における間接的圧力にとどまるとされる。
実務家の評価:知財実務では本条は「眠れる規定」と呼ばれ、認容例が存在しないことを前提に、要件成立の事実を相手方に示して任意ライセンス交渉を進める材料として運用されている。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)制定時に、パリ条約5条 A の許容する不実施強制実施権の国内実装として本条を設置。協議前置と出願日から四年の猶予を組み込んだ
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