要点特許法 82 条は、抵触する意匠権の存続期間が満了した際に現に実施権者だった者に、原権利の範囲内で特許権の通常実施権を認める。ただし特許権者は相当の対価を請求できる。
Q · ライセンスを受けていた意匠権が切れたら、重なっている他社の特許で工場を止められるの?
満了時に実施権者なら通常実施権が立ち、止められません
特許法 82 条により、意匠権が特許権と抵触する場合でも、意匠権の存続期間が満了した際に現にその意匠権の専用実施権者または通常実施権者だった者は、原権利の範囲内で当該特許権について通常実施権を持ちます。したがって特許権者から差止めを受けることはありません。ただし無償ではなく、2 項により特許権者は相当の対価を請求できます。争点は差止めの可否ではなく対価の額へ移ります。この保護資格は『満了の際に現に』実施権者だったかで確定し、満了後に契約しても得られません。
あるメーカーが、他社の意匠(製品デザイン)のライセンスを受けて 20 年以上、看板商品を作り続けてきた。ところがその意匠権の存続期間が満了した瞬間、同じ製品の形をカバーする特許が別に存在していたと判明する。普通に考えれば「意匠が切れた今、その特許であなたは差止めを食らう」と身構えるだろう。だが特許法 82 条はそうさせない。意匠権の満了時に専用実施権または通常実施権を持っていた者は、原権利の範囲内で、その重なっている特許権について通常実施権を持つ。つまりあなたの工場のラインは止まらない。代わりに特許権者へ「相当の対価」を払う義務が生じる(2 項)。ゼロか百かではなく、使い続ける権利を残したうえで対価で調整する、それがこの条文の設計だ。あなたが投じた設備と販路という実施の実態を、権利の隙間で潰させないための安全装置である。
特許法 82 条は、特許出願前又は同日の意匠登録出願に係る意匠権が特許権と抵触する場合において、意匠権の存続期間満了の際に現にその専用実施権又は通常実施権を有した者に、原権利の範囲内で当該特許権について法定の通常実施権を認める規定である。特許権者は相当の対価を受ける権利を有する。
AI 輔助整理,以條文原文為準
抵触する意匠権が満了したとき、満了時の実施権者に特許権の通常実施権を認める規定です。原権利の範囲内で工場を止めずに実施を続けられますが、相当の対価を払う義務が生じます。
満了の際に実施権者だった者は 82 条の通常実施権を持つため差し止められません。争点は差止めの可否ではなく対価の額に移ります。実施権者でなかった第三者は差し止められる余地があります。
当事者の許諾契約ではなく、法律の定める要件を満たすことで当然に発生する通常実施権です。82 条・81 条・79 条などが典型で、登録なしに効力を持ちます。
法定の計算式はなく、当事者の交渉で決めます。まとまらなければ最終的に裁判所が判断します。原権利(意匠ライセンス)で払っていた水準が事実上の出発点になることが多いです。
意匠権者自身については 81 条が別に満了後の通常実施権を定めます。82 条は意匠権者から実施権を受けていた者を対象とする点で 81 条と対をなします。
満了の際に意匠権又は専用実施権について通常実施権を有していれば対象になり得ます。発注元の権利の満了が下請けの製造可否まで連鎖するため、契約と登録の確認が重要です。
82 条の通常実施権は法律上当然に発生し、登録は成立要件ではありません。通常実施権は当然対抗(特許法 99 条)により登録なしに第三者へ対抗できます。
同じ物品の形態・技術について意匠権の実施が特許権の技術的範囲にも入り、双方の権利が同時に及ぶ重なりの状態を指します。この重なりが 82 条適用の前提です。
いいえ、別物です。意匠権が満了しても、それと抵触する『特許権』は独立して存続しています。82 条が守るのは満了の際にその意匠の実施権を持っていた特定の人だけで、その人が通常実施権を得ます。無関係の第三者が自由に使えるわけではありません。業界裏話ヒント:実務では『意匠の満了で全部フリーになった』と誤解して製造を始め、抵触特許で差し止められる新規参入者が後を絶ちません。82 条の保護は満了時の実施権者という狭い扉だけで、その扉の外の人には冷たい条文です
残念ながら払う必要があります。82 条 2 項で、特許権者または専用実施権者は通常実施権者から『相当の対価』を受け取る権利を持ちます。無償の先使用権(特許法 79 条)とはここが決定的に違う点です。業界裏話ヒント:対価額に法定の計算式はなく、原権利(意匠ライセンス)で払っていた水準が交渉の出発点になることが多い。先に自分から合理的な額を提示してアンカーを打つと、相手の言い値を抑えられます。黙って相手の請求を待つのは下策です
ここは混同しやすい点です。82 条が見るのは『意匠権の存続期間の満了の際』にあなたが実施権者だったかどうか。意匠権満了の瞬間に専用実施権・通常実施権を持っていれば、その時点で 82 条の通常実施権が確定します。業界裏話ヒント:契約上のライセンス期間と意匠権の存続期間は別物です。両者の満了タイミングがずれていると、82 条に乗れるか乗れないかが分かれる。デューデリでは必ずこの二つの日付を分けて確認します
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 実施権を得る者 | 82 条:意匠権の(専用/通常)実施権者 | — |
| 対価の有無 | 有償(2 項の相当の対価) | — |
| 発生原因 | 抵触意匠権の満了 + 満了時の実施権者 | — |
| 権利の範囲 | 原権利(意匠実施)の範囲内に限定 | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。