特許法 第79条(先使用による通常実施権)
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特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
この条文の基本情報
先使用による通常実施権とは何ですか?
定義先使用による通常実施権とは、特許法第79条に定められた規定で、「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第79条(先使用による通常実施権)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第79条の条文原文は「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその…」で始まります。
- 特許法第79条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第79条の前の条は特許法第78条です。
- 特許法第79条の次の条は特許法第79条の2です。
- 特許法第79条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第79条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第79条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/79
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法79条は、出願前から発明の内容を知らずに実施・準備していた先行事業者に、無償の通常実施権(先使用権)を認める規定である。先願主義の例外として、後発の特許権者はその実施を差し止められない。
Q · 他人が先に特許を取ってしまったら、前から使っていた自分の技術はもう使えなくなるの?
いいえ。出願日前の実施を証拠で示せれば使い続けられます
いいえ、使い続けられる可能性があります。特許法79条は、出願された発明の内容を知らずに自ら発明し(または知らずに発明した人から知得し)、出願の際に日本国内でその発明を実施する事業をしていた、または事業の準備をしていた者に、無償の通常実施権(先使用権)を認めます。そのため後から特許を取得した権利者は、あなたの実施を差し止められません。ただし守られるのは出願時に実施・準備していた発明と事業目的の範囲内に限られ、権利を主張するには出願日より前の実施を客観的証拠で立証する必要があります。
解説
日本の特許制度は「先に出願した者が勝つ」(先願主義)。あなたが何年も前に独自に同じ技術を開発し、ひっそり製品に使っていても、他人が先に特許を出願すれば特許権はその他人のものになる。ここで多くの町工場や中小企業が「じゃあ自分はもう使えないのか」と青ざめる。だが特許法79条がある。出願された発明の内容を知らずに自分で発明し(または知らずに発明した人から教わり)、出願の時点で既に日本国内でその発明を実施した事業をしている、またはその事業の準備をしていた者は、その特許権について「通常実施権」(無償で使い続けられる権利)を持つ。つまり、あなたが正々堂々と独自開発し、先に事業化していれば、後から来た特許権者はあなたを止められない。ただし守られる範囲は「実施・準備していた発明と事業目的の範囲内」に絞られる。まったく新しい用途や別製品への拡大はできない。
法的な位置づけ
特許法79条が定める先使用権とは、特許出願に係る発明の内容を知らずに自ら発明し、又はその発明を知得した者が、出願の際に日本国内で当該発明の実施である事業をし、又はその準備をしていた場合に、その実施又は準備をしていた発明及び事業の目的の範囲内で無償の通常実施権を取得する権利をいう。先願主義の下で善意の先行事業者を保護する制度である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.警告書に即答せず出願日を特定 特許侵害の警告書が届いても、謝罪や交渉を急がない。まず相手の特許の出願日(または優先日)を特許情報プラットフォーム J-PlatPat 等で確認し、自社の実施時期と比較する基準日を固める
- 2.出願日前の実施・準備を示す証拠を収集 出願日より前から発明を実施または準備していたことを示す客観的証拠を、日付が確認できる形で集める。日付入りの設計図、試作記録、発注書、納品書、社内会議議事録、研究ノートが中心になる
- 3.善意(発明を知らなかった)の経緯を整理 その発明を「内容を知らずに自ら発明した」か「知らずに発明した者から知得した」経緯を時系列で整理する。他人の出願内容から盗用した経緯だと先使用権は認められないため、開発の独自性を示す資料を確認する
- 4.弁理士・知財弁護士と先使用権の範囲を確定 専門家に相談し、守られる範囲(実施・準備していた発明と事業目的の範囲内)を確定する。生産量の増加は原則許容されるが、別製品や新用途への拡大は範囲外となるため、実施態様を詳細に記録する
- 5.先使用権の確認を軸に対応・平時の保全へ 証拠が固まったら、ライセンス交渉ではなく先使用権の確認を軸に相手に回答する。今後の紛争に備え、設計図や試作記録を公証役場の確定日付・電子タイムスタンプで平時から保全する運用を整える
よくある質問 AI による整理
Q1先使用権とは何ですか?
他人の特許出願前から、その発明を知らずに自ら実施・準備していた者が、無償で使い続けられる通常実施権です。特許法79条が根拠で、先願主義の例外にあたります。
Q2先使用権の立証方法は?
出願日より前の実施・準備を示す日付入りの客観的証拠が必要です。設計図、試作記録、発注書、納品書、社内議事録などを揃え、立証責任は主張する側が負います。
Q3先使用権があれば特許侵害にならない?
差止も損害賠償も受けません。先使用権は無償の通常実施権なので、範囲内の実施は適法です。ただし守られるのは出願時の実施・事業目的の範囲内に限られます。
Q4先使用権は登録しないと使えない?
登録は不要です。先使用による通常実施権は法律上当然に発生し、特許法99条により登録なしで特許権者や譲受人に対抗できます(当然対抗制度)。
Q5先使用権は他人に売れる(移転できる)?
事業とともにする場合や特許権者の承諾がある場合に移転できます。通常実施権の一般ルール(特許法94条)に従い、事業から切り離した自由な譲渡はできません。
Q6実用新案・意匠・商標にも先使用権はある?
あります。実用新案法26条は特許法79条を準用し、意匠法29条・商標法32条にも同種の先使用権が規定されています。産業財産権全般に共通する制度です。
Q7先使用権はいつまで主張できる?
主張自体に期間制限はありません。ただし差止請求や損害賠償請求を受けた訴訟の中で防御として主張する必要があり、証拠は時間とともに散逸するため平時の保全が実質的な期限です。
Q8確定日付やタイムスタンプはなぜ必要?
出願日より前の実施を客観的に証明するためです。公証役場の確定日付や電子的タイムスタンプで日付を固定しておくと、後から作成された疑いを排除でき、立証力が大きく高まります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1「先に使っていた」と口で言うだけじゃダメなんですか?
ダメです。79条は客観的証拠で出願日前の実施・準備を立証する必要があり、立証責任は先使用権を主張する側にあります。記憶や関係者の証言だけでは認められにくい。実務のポイント:特許庁は「先使用権制度の事例集」で、設計図・納品書・カタログに公証役場の確定日付やタイムスタンプを付けて保存することを推奨しています。平時にこれをやっている企業はほぼいない。だからこそ、やっておくだけで紛争時の立証力が段違いになる
Q2特許を取らずにノウハウで隠すのと、特許を取るの、どっちが得ですか?
製法など他社が分解しても分からない技術はノウハウ秘匿+先使用権の保険、製品の形で外から見える技術は特許化が定石です。79条があるので秘匿戦略でも自社の実施は守られます(ただし他社の同一発明・特許化は止められない)。実務のポイント:大手はあえて出願せず先使用権の立証資料を整備する手法を組み合わせています。中小企業ほど「特許か秘匿か」の二択で考えがちだが、実務は両方の保険をかける
Q3事業の「準備」って、どこまでやってれば認められますか?
単なる構想では足りず、即時に実施する意図が客観的に認識できる程度の準備が必要です(最高裁ウォーキングビーム事件、最判昭和61.10.3)。設備の発注、試作の完成、事業計画の具体化などが目安。実務のポイント:このウォーキングビーム判決の基準は実務の生命線。単なる見積取得では足りず、発注・契約レベルまで進んでいるかが分水嶺。準備段階の企業は、この一線を意識して証拠を残すべき
Q4先使用権があれば、生産量を10倍に増やしても大丈夫ですか?
数量の増加は原則として「事業目的の範囲内」として許容される傾向ですが、まったく別の製品や新用途への拡大は範囲外です(範囲の解釈は実務上、見解が分かれている)。実務のポイント:実施形式が変わった場合(製法の変更など)に先使用権が及ぶかは争いが多い論点。実務では、出願日時点の実施態様を詳細に記録しておくほど、後の範囲争いで有利になる
間違えやすい点 AI による整理
- あなたから見れば「先に作っていたんだから当然続けられる」だが、法律から見れば「いつから実施していたかを立証できる証拠があるか」がすべて。記憶や口頭の証言では足りない。日付の入った客観的証拠がなければ、事実として先に使っていても先使用権は認められない。この落差が中小企業を潰す
- 先使用権の存在は知っていても、その「範囲」が極めて狭いことを知らない人が多い。守られるのは「出願時に実施・準備していた発明と事業目的の範囲内」だけ。出願後に生産量を増やすことは許容される傾向だが、まったく新しい製品や用途へ拡大すると79条の傘から外れる
- 「独自開発さえしていれば特許を取らなくても安心」と思われがちだが、79条が守るのはあくまで「あなた自身が実施を続ける権利」だけ。他社が同じ技術で特許を取れば、第三者へのライセンスや差止はその特許権者が握る。市場を取られるリスクは消えない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権利の発生原因 | 特許法79条:出願前からの善意の実施・準備(先使用権) | 特許法80条:無効審判請求登録前の実施(中用権) 特許法78条:特許権者の許諾(許諾通常実施権) |
| 対価 | 無償 | 原則有償(相当の対価を支払う) 当事者の合意による(通常は有償) |
| 第三者対抗 | 特許法99条により登録なしで当然対抗 | 特許法99条により登録なしで当然対抗 特許法99条により登録なしで当然対抗 |
| 権利範囲 | 出願時に実施・準備していた発明と事業目的の範囲内 | 無効理由を知らずに実施していた発明と事業目的の範囲内 許諾契約で定めた範囲内 |
他国ではどう定めているか 4 か国
出願前に国内で既に実施し、又は必要な準備を完了していた者に権利行使が及ばないとする点で日本79条と同趣旨。ただし他人から知得した技術で出願人が権利を保留した場合は除外される。
出願時に善意で国内で実施又は準備していた者に通常実施権(선사용에 의한 통상실시권)を認める。要件・範囲とも日本79条とほぼ同型で、韓国は日本法を強く継受している。
先使用権制度の源流。出願(優先日)時点で発明を業として実施し又は必要な準備をしていた善意者に継続使用を認める。日本の79条はこの独法の系譜に連なる。
米国は2011年 AIA で先発明主義から先願(先発明者先願)主義へ移行した際、有効出願日の1年以上前からの商業的先使用を侵害の抗弁として整備。大陸法系の先使用権に近い機能を果たす。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 町工場が20年使ってきた金型製法に、大手が突然特許を取得。内容証明で「使用差止」と来た。だが出願日より前から製造していた記録(図面・納品書・取引履歴)があれば、79条で無償で使い続けられる。慌てて生産ラインを止める必要はない。立証準備が整っているかどうかで、廃業か継続かが分かれる
- もし、ある朝あなたの会社に特許権者の弁護士から「特許権侵害」の警告書が届き、回答期限が2週間と書かれていたら? まずやるべきは謝罪でも交渉でもない。自社がその技術をいつから事業に使っていたかの証拠を、出願日より前まで遡って固めることだ
- 製品発売の3か月前、試作と設備発注は済んでいた。そのタイミングで他社が特許出願。「まだ売っていないから先使用権はない」と思い込むのは早計。「事業の準備」も79条の対象だ
- あなたがスタートアップで、独自開発したアルゴリズムを実装したサービスを既に公開済み。後発の大手が同じ仕組みで特許を取り、ライセンス料を要求してきた。あなたは「内容を知らずに自ら発明し、出願前から実施していた」と立証できれば、支払いを拒否できる立場にある
- ノウハウとしてあえて特許を取らず社内秘にしてきた製法。他社が同じ製法を独自に発明して特許化した。秘密にしたことが裏目に出るかと思いきや、79条があるので自社内での実施は守られる。ただし他社が同じことをするのを止める力はない
取るべき行動
被害を受けた側:あなたが特許権者で、相手から先使用権を主張された場合。1. 相手が主張する「先使用」の時期を精査し、出願日より前に「事業の実施」または「準備」が本当にあったか、証拠の信用性を検証2. 提出された図面・帳簿・納品書の日付が後から作成された疑いがあれば、その点を突く3. 相手の発明が「内容を知らずに独自発明」したものか、出願人から不正に知得したものでないかを確認4. 先使用権が認められても範囲は限定的。相手の事業拡大部分や別用途には権利が及ばないことを主張する
訴えられた側:あなたが侵害警告を受けた先使用者の場合。1. 警告書に即答せず、まず相手の特許の出願日(または優先日)を特定2. その日より前から発明を実施または準備していた客観的証拠を収集:日付入りの設計図、試作記録、発注書、納品書、社内会議議事録、研究ノート3. その発明を「内容を知らずに自ら発明した」または「知らずに発明した者から知得した」経緯を整理4. 弁理士・知財に強い弁護士に相談し、先使用権の範囲(発明と事業目的の範囲内)を確定5. 証拠が固まったら、ライセンス交渉ではなく先使用権の確認を軸に対応する
時効(請求できる期限):先使用権の主張自体に特定の期間制限はない。ただし特許権者から差止請求(特許法100条)や損害賠償請求(民法709条)を受けた場合、その訴訟手続の中で防御として主張する必要がある。損害賠償請求権の消滅時効は損害および加害者を知った時から3年(民法724条)。証拠は時間が経つほど散逸するため、平時の確定日付・タイムスタンプによる保全が実質的な「期限」になる
学説
通説:79条の先使用権は、①出願に係る発明の内容を知らないで自ら発明したこと(または知らずに発明した者から知得したこと)、②出願の際に日本国内で実施である事業をし、又はその準備をしていたこと、を要件とする。立証責任は先使用権を主張する側にあり、範囲は実施・準備していた発明と事業目的の範囲内に限定される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:特許法全部改正(法律第121号)。現行79条として、出願前から善意で実施・準備していた先行事業者に無償の通常実施権(先使用権)を認める規定を整備。先願主義の例外として位置づけられた。
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