特許法 第68条(特許権の効力)
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特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
この条文の基本情報
特許権の効力とは何ですか?
定義特許権の効力とは、特許法第68条に定められた規定で、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有す…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第68条(特許権の効力)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第68条の条文原文は「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有す…」で始まります。
- 特許法第68条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第68条の前の条は特許法第67条の8です。
- 特許法第68条の次の条は特許法第68条の2です。
- 特許法第68条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第68条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第68条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/68
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法68条は、特許権者が業として特許発明を実施する権利を専有すると定める。ただし専用実施権を設定した範囲では、専用実施権者のみが実施を独占する。
Q · 特許を取ったら、その技術を完全に独り占めできるの?
独占できるのは「業としての実施」だけ。専用実施権を設定するとその範囲は自分も使えない
特許法68条により、特許権者は「業として」特許発明を実施する権利を専有します。逆に言えば、家庭内で個人的に作って自分で使う分には特許権は及びません。さらに重要なのがただし書で、特許権者がその特許に「専用実施権」を設定すると、その範囲では専用実施権者だけが実施を独占し、特許権者自身が実施すると差止め・損害賠償を受けうる立場になります。ライセンス契約の「専用」か「通常」かの一語が、自社が市場から締め出されるかどうかを決めます。
解説
特許を取れば、その技術を独り占めできる。多くの人はそう信じている。だが特許法68条をよく読むと、独占できるのは「業として」の実施だけだと分かる。家庭内で個人的に作って使う分には、特許権はそもそも及ばない。さらに衝撃的なのはただし書だ。あなたが特許権者であっても、その特許に「専用実施権」を設定した瞬間、その範囲ではあなた自身が自分の発明を実施できなくなる。専用実施権者だけが独占する。つまり特許権は、持っているだけの「金庫」であり、中身である実施権は契約で他人に丸ごと渡せてしまう。あなたがスタートアップとして特許を大企業にライセンスするとき、契約書の「専用」か「通常」かの一語で、自分が市場から締め出されるかどうかが決まる。68条は、その分かれ道のちょうど入口に立っている。
法的な位置づけ
特許法68条は特許権の効力を定める規定であり、特許権者が業として特許発明の実施を独占する権利を有することを規定する。ただし専用実施権を設定した範囲においては、専用実施権者がその実施権を専有し、特許権者自身の実施はその範囲で制限される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.警告書の「業としての実施」該当性を先に判断 侵害警告を受けたら、まず対象行為が特許法68条の「業として」に当たるか、69条の試験・研究の例外に入らないかを確認する。個人的・家庭的実施なら68条の効力は及ばない
- 2.出願日と自社実施開始時期を照合し先使用権を確認 相手の特許の出願日と、自社が実施または実施の準備をしていた時期を照合する。自社が先に実施していれば先使用権(79条)が立ち、無償で実施を続けられる
- 3.消尽・無効の抗弁を並行検討 並行輸入・中古転売なら消尽論で反論する。同時に特許無効の抗弁(104条の3)と無効審判(123条)で特許自体を攻め返せるか、クレームを一語ずつ対比して検討する
- 4.ライセンスは「専用」か「通常」かを必ず確認 自社特許をライセンスする側なら、相手が求めるのが専用実施権か通常実施権かを確認する。専用にすると自社が実施できなくなるため、独占の実利だけ与える「通常実施権の独占的許諾」を代替案として提示する
よくある質問 AI による整理
Q1特許権の効力とは何ですか?
特許権者が業として特許発明の実施を独占する効力です(特許法68条)。実施とは物の生産・使用・譲渡・輸入等を指します。家庭内の個人的実施には及びません。
Q2「業として」の意味は何ですか?
事業として反復継続的に行う実施を指します。営利目的に限られず広く解されますが、純粋に家庭内・個人的な実施は含まれません。この線引きが侵害の境目になります。
Q3個人が特許品を作ったら侵害になりますか?
3D プリンタ等で作っても、家庭内で自分だけが使う個人的実施であれば「業として」に当たらず、特許法68条の効力は及びません。販売や事業利用に転じると侵害になります。
Q4専用実施権とは何ですか?
設定した範囲で実施を独占できる強力な物権的権利です(特許法77条)。登録が効力発生要件で、専用実施権者は自ら差止めや損害賠償を請求できます。
Q5特許権と専用実施権の違いは何ですか?
特許権は権利の器そのもの、専用実施権はその中の実施権を独占的に切り出したものです。専用実施権を設定すると特許権者自身がその範囲で実施できなくなります。
Q6特許の消尽とは何ですか?
特許権者が適法に販売した製品は権利が尽き、その後の転売や使用に特許権は及びません。中古転売や真正品の並行輸入が原則自由なのはこの消尽論によります。
Q7特許権はいつまで有効ですか?
原則として特許出願の日から20年で存続期間が満了します。満了後は誰でも自由に実施でき、68条の独占効も消滅します。医薬品等では延長登録の例外があります。
Q8先使用権とは何ですか?
他人の特許出願前から実施または準備していた者が、無償で実施を続けられる権利です(特許法79条)。証拠があれば侵害警告を受けても実施を継続できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許権者から侵害だと訴えられたら、もう負けですか?
そうとは限らない。登録された特許でも、後から無効と判断されるものは少なくない。侵害訴訟では特許無効の抗弁(104条の3)を出し、並行して無効審判(123条)を申し立てて特許自体を攻め返せる。実務のポイント:相手の特許のクレームを一語ずつ自社製品と対比し、一つでも構成要件を満たさなければ侵害は成立しない。守るだけでなく『この特許はそもそも有効か』を疑うのが、攻められた側の最初の一手だ
Q2専用実施権と通常実施権、結局どっちで契約すればいいんですか?
独占したい側は専用実施権だが、専用は登録が効力発生要件(98条)である点が落とし穴だ。契約書に「専用実施権を設定する」と書いても、登録しなければ通常実施権扱いにとどまる。実務のポイント:大企業がライセンスを受ける側のとき、専用実施権の登録を渋ることが多い。登録すると自分が義務や制約に縛られるからだ。『専用』を約束しながら登録に応じない相手には、その意図を疑った方がいい
Q3特許で守られた商品を輸入して転売したら、侵害になりますか?
原則ならない。特許権者が適法に市場へ出した製品は権利が『消尽』し、その後の転売や使用に特許権は及ばない。海外で適法に売られた真正品の並行輸入も原則適法とされる(BBS 事件、最判平成9.7.1)。実務のポイント:例外は、特許権者が販売時に販売先や用途を明示的に限定し、その旨を製品にも表示していた場合だ。並行輸入で攻められても、まず『販売時に明示的な制限があったか』を確認すれば、多くは消尽論で跳ね返せる
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許を取れば誰も真似できない」と思われているが、68条が禁じるのは『業としての実施』だけだ。個人が家庭内で同じものを作って自分で使っても侵害にならない。特許は『市場での独占』であって『技術そのものの封印』ではない
- 「専用実施権を設定してもライセンス料が入るから損はない」と考える人は多いが、その深刻さを見落としている。専用実施権を設定した範囲で特許権者本人が実施すると、逆に専用実施権者から差止め・損害賠償を受けうる。自分の特許で自分が訴えられる立場に転落する
- 「相手にライセンスを与えるかどうか」を悩んでいる時点で、問いの立て方がずれている。本当の分岐は『専用実施権か通常実施権か』であり、前者は登録で第三者にも対抗でき独占を生むが、後者は単なる『訴えない約束』にすぎない。この区別を抜きにライセンスの可否だけ議論しても答えは出ない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 定める内容 | 特許法68条:業としての実施を独占する効力(本体) | 特許法69条:効力が及ばない範囲(試験・研究等の例外) 特許法77条:専用実施権の設定と内容 |
| 誰が独占するか | 原則は特許権者、専用実施権設定時はその範囲で専用実施権者 | 誰も独占しない(効力の対象外) 登録された専用実施権者が排他的に独占 |
| 実務上の効果 | 侵害判断の出発点、家庭内実施は対象外 | 試験研究・単なる通過船舶等は侵害不成立 設定後は特許権者自身も実施できなくなる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も発明特許権の効力として業としての実施の独占を定め、侵害となる実施行為(製造・販売・使用・輸入等)を列挙する点で日本68条と近い
韓国は「특허권자는 업으로서 특허발명을 실시할 권리를 독점한다」と規定し、日本68条本文とほぼ同一の構成をとる
ドイツ特許法は特許権者に禁止権として第三者の実施を排除する権利を与える構成をとり、日本の専有権構成とは表現が異なるが実質的効果は同種
米国は特許権を「排除する権利(right to exclude)」として構成し、§271が侵害行為を定める。専有ではなく排他の枠組みだが機能は対応する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたの製品が他社特許に触れているとの警告書が届いた。あと14日で回答期限。だが、その製品が「業としての実施」に当たるか、69条の試験・研究の例外に逃げ込めるか、まずそこを確認する。それ次第で謝罪に動くか反論に転じるかが真逆になる
- もし自社の特許を大企業に「専用実施権」として渡したら、自分はもうその技術で商売できなくなるのか? 答えはイエスである。設定した範囲では特許権者自身が締め出される。だからこそ多くのスタートアップは、独占の実利だけ与えて自分の実施権は残す「通常実施権の独占的許諾」に留める
- 町工場が長年作ってきた部品が、他社の新規特許に抵触すると指摘された。先に作っていた証拠があれば、先使用権(79条)で実施を続けられる。証拠の有無が工場の存続を分ける。
- 知人が「個人で3D プリンタで作って自分だけで使う」ものについて特許侵害を心配している。業としての実施でなければ68条は及ばない。あなたは三分でその線引きを説明できる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 侵害が疑われる製品を入手し、自社特許のクレーム(請求項)の構成要件を一つずつ対比、すべて充足するか確認2. 充足するなら差止請求(100条)と損害賠償(102条)を検討、損害額は102条の推定規定で立証負担が軽くなる3. 警告書は内容証明で、相手の実施態様・期間を特定4. 専用実施権を設定済みなら、差止めできるのは原則として専用実施権者である。自分が当事者適格を欠く場合があるので、権利関係を先に整理する
訴えられた側:1. まず『業としての実施』に当たるか、69条の例外(試験・研究、単に通過する船舶等)に入らないか確認2. 自社が特許出願前から実施していれば先使用権(79条)を主張3. 並行輸入・中古転売なら消尽論で反論4. 同時に特許無効の抗弁(104条の3)と無効審判(123条)を検討、特許そのものを潰せれば侵害は成立しない5. 構成要件を外す回避設計も並行で検討する
時効(請求できる期限):差止請求権に消滅時効はなく、侵害が続く限り行使できる。損害賠償請求権は不法行為として、損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年(民法724条)。継続的侵害は日々新たな損害が発生するため、起算点は侵害行為ごとに判断される(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:68条の「業として」は事業性を要件とし営利目的に限らず広く解するが、純粋に家庭的・個人的な実施は独占の対象外とする。専用実施権を設定した範囲では特許権者の実施権が排他的に制限される点も通説上争いがない。
消尽論(判例・通説):特許権者が適法に譲渡した製品には特許権が尽き、その後の転売・使用・輸入に効力が及ばない。国内消尽は判例上確立、国際消尽は BBS 事件が明示的制限のない限り権利行使を否定した。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.明治18年(1885年) 新設:専売特許条例により近代的特許制度を導入。ドイツ特許法を範として業としての実施の独占という枠組みが形成された
- 2.昭和34年(1959年) 改正:現行特許法を全部制定。68条として特許権の効力と専用実施権設定時の例外(ただし書)を明文化
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