要点特許法90条は、83条2項の裁定で得た強制実施権について、裁定理由の消滅や実施権者の不実施を理由に、利害関係人の請求または特許庁長官の職権で取り消せると定める。
Q · 強制実施権を裁定で勝ち取ったら、もう取り消されないの?
いいえ、自ら実施しなければ取り消されます
特許法90条により、83条2項の裁定で得た強制実施権も、裁定の理由が消滅したときや、実施権者が適当に特許発明を実施しないときは、利害関係人の請求または特許庁長官の職権で取り消されます。「使う」ことを前提に与えられた権利だからです。ただし取消しの効力は将来に向かってのみ生じ(91条)、取消し前に適法に行った実施や製造済み在庫は影響を受けません。反論は84条を準用する答弁手続で行います。
3年以上使われていない特許がある。あなたの会社はその発明をどうしても事業に使いたいのに、交渉しても特許権者が首を縦に振らない。そんなとき特許法83条は最後の手段を与える。特許庁長官に申し立てて、強制的に通常実施権の裁定を受ける道だ。だが90条が告げるのは、その先にある落とし穴である。勝ち取った実施権は永久ではない。今度はあなたが「適当にその特許発明の実施をしない」と判断されれば、利害関係人の請求または職権で、その裁定は取り消される。さらに裁定の理由が消滅したとき、たとえば特許権者が自ら実施を再開したときも、取消しの対象になる。つまりこの制度は「使わない者から使う者へ」権利を動かす仕組みであり、勝者もまた「使い続ける」義務を負う。持っているだけでは守れない、それがこの一条の本質だ。
特許法90条は裁定の取消しを定める規定であり、特許庁長官が83条2項の裁定により設定した通常実施権について、裁定理由の消滅その他維持が適当でない事由が生じたとき、または実施権者が適当に特許発明を実施しないときに、利害関係人の請求または職権で当該裁定を取り消せる旨を規定する。取消しの効力は将来に向かってのみ生じる。
AI 輔助整理,以條文原文為準
特許法90条に基づき、83条2項の裁定で設定された強制実施権(通常実施権)を、利害関係人の請求または特許庁長官の職権で取り消す制度です。裁定は「使う」ことを前提に与えられるため、その前提が崩れると取り消されます。
実施権者が適当に特許発明を実施しないとき、または裁定の理由が消滅するなど裁定の維持が適当でなくなったときです。特許権者が自ら実施を再開した場合も理由の消滅にあたります。
利害関係人が請求できるほか、特許庁長官が職権で取り消すこともできます。特許権者は、不実施を主張する実施権者に対し、実施再開を理由に利害関係人として請求できます。
特許法91条により、取消しの効力は将来に向かってのみ生じ遡及しません。取消し前に適法に行った実施や製造済み在庫は守られ、止まるのは取消し後の継続実施です。
設定された通常実施権を得ながら、正当な理由なく事業として発明を実施していない状態を指します。原材料調達難や規制対応など正当事由のある一時停止は、直ちに取消しとはなりません。
実用新案法は特許法の裁定関連規定を準用しており、通常実施権の裁定と同様の取消しの仕組みが及びます。適用範囲は現行条文で確認が必要です。
できます。特許法90条2項は84条以下を準用し、答弁書の提出など反論の機会を定めています。ただし提出期限を過ぎると、言い分を聞かれないまま取り消されるおそれがあります。
行政不服審査や取消訴訟(行政事件訴訟法)による争い方が考えられます。まずは84条準用の答弁手続で十分に主張を尽くすことが重要です。
いいえ。90条により、あなたが発明を適当に実施しない場合や、裁定の理由(特許権者の不実施など)が消滅した場合は、利害関係人の請求または特許庁長官の職権で取り消されます。83条で勝ち取った権利も、使い続けることが前提です。業界裏話ヒント: 実務では取消しそのものより、取消しを材料にした再交渉が先に動く。特許権者が実施を再開したと知った相手は、取消請求をちらつかせて有利な条件変更を迫ってくる。先に動いた方が交渉を握る
不実施(83条)を理由とする裁定は、制度創設以来ほぼ実例がないと言われます。90条の取消しが現実に争われる場面も極めて稀です。ただし制度が存在すること自体が、ライセンス交渉で特許権者に圧力をかける材料になります。業界裏話ヒント: 弁理士や弁護士は「使われない制度」として軽く扱いがちだが、交渉カードとしての価値を知る実務家は、あえて裁定請求の準備をちらつかせて相手の譲歩を引き出す。抜かない刀ほど効く
なりません。91条により取消しの効力は将来に向かってのみ生じ、遡及しません。取消し前に適法に実施した行為や製造済みの在庫は守られます。問題は取消し後の継続実施で、これは止まります。業界裏話ヒント: 取消し通知が見えてきた段階で、仕掛かり中の生産をどこで区切るかが勝負になる。将来効だからこそ、取消し確定前の実施をどこまで正当化できるかが、現場の腕の見せどころになる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 制度の役割 | 90条:裁定の取消し(付与後の是正弁) | — |
| 発動する事由 | 実施権者の不実施、または裁定理由の消滅 | — |
| 動かす主体 | 利害関係人の請求、または特許庁長官の職権 | — |
| 効力の方向 | 取消しは将来に向かってのみ生じる(91条) | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。