前条第一項の規定による裁定の取消があつたときは、通常実施権は、その後消滅する。
要点特許法 91 条は、90 条の裁定取消があったとき、裁定通常実施権はその後消滅すると定める。効力は将来のみに及び、取消前の実施は遡って違法にならない。
Q · 国の裁定でもらった特許の使用権が取り消されたら、今まで作って売った分まで違法になるの?
いいえ、消えるのは将来分だけで過去の実施は適法です
特許法 91 条により、裁定の取消があったとき、裁定通常実施権は「その後」消滅します。つまり効力は将来に向かってのみ及び、取消の効力発生日より前に正当な実施権の下で製造・販売した製品が遡って侵害になることはありません。負う義務は「これから止めること」であり、過去分の損害賠償ではありません。効力発生日以降も実施を続ければ侵害となり、差止(100 条)・損害賠償(102 条)の対象になります。
あなたの会社が、ある特許を相手が使っていないことを理由に、国の裁定で「使ってよい」という通常実施権を手に入れたとする。設備を入れ、人を雇い、製品を量産し始めた。ところが数年後、経済産業大臣がその裁定を取り消した。ここで多くの経営者が凍りつく。「今まで作って売った何万個も、全部特許侵害になるのか」と。特許法91条が答える。取消があったとき、実施権は「その後」消滅する。つまり将来に向かってのみ消える。取消の日より前に正当な実施権の下で作り、売った製品は、遡って違法にはならない。あなたが負うのは「これから止める」義務だけで、過去分の損害賠償ではない。この一語があるかないかで、取り消された瞬間にあなたが背負う金額は、ゼロか数億円かに分かれる。
特許法 91 条は、裁定通常実施権の取消の効果を定める規定である。前条(90 条)による裁定の取消があった場合、その裁定に基づく通常実施権は取消の効力発生後に消滅し、消滅の効果は将来に向かってのみ及ぶ。取消前に実施権に基づいて行われた行為の適法性は、遡って覆されることがない。
特許権者が正当な理由なく発明を実施しない等の場合に、経済産業大臣の裁定で他社に設定される特許の通常実施権です。不実施(83 条)・自己実施(92 条)・公共の利益(93 条)が根拠です。
特許法 90 条により、実施権者が適切に実施しない、裁定の理由が消滅した等の場合に、経済産業大臣が裁定を取り消せます。この取消を受けて 91 条の消滅効果が生じます。
取消の効力発生日より将来に向かってのみ実施権が消える、という将来効の意味です。過去に遡って消えるのではないため、取消前の適法な実施は保護されます。
取消決定書に記載された効力発生日で確認します。91 条は「その後」消滅と定めるため、この日の前後で合法に出荷できる在庫と停止すべき製造の線引きが決まります。
91 条の効果ではなく、取消決定という行政処分の違法性を取消訴訟で争います。執行停止(行政事件訴訟法 25 条)が認められれば、訴訟中は実施権が消えません。
遡及効なら取消時に過去の全実施が侵害に転落しますが、91 条は将来効を採り、消滅は取消後のみ。過去の製造・販売は適法のまま残ります。
特許法 93 条に基づき、感染症対策など公共の利益に特に必要な場合に設定される裁定通常実施権です。これが後に取り消されれば 91 条が消滅の効果を規律します。
90 条が裁定の取消という行政処分を定め、91 条がその取消後に実施権が将来に向かって消滅するという時間軸の効果を定めます。90 条が原因、91 条が結果です。
いいえ。特許法91条は実施権が「その後」消滅すると定めており、取消の効力発生日より前に適法に製造した在庫は、その後も適法に保有・販売できると解されます。失うのは将来の製造・販売の権利です。業界裏話ヒント:実務では「いつ製造したか」の記録、製造日報やロット管理が決定的証拠になります。取消の可能性がある裁定実施権で操業するなら、最初から製造日とロットを厳密に管理しておく。これが取消後に在庫を守る生命線になる
限定的に可能です。特許権者が正当な理由なく継続して3年以上発明を実施しない場合(特許法83条)、公共の利益に特に必要な場合(93条)、自己の特許実施に他社特許が必要な場合(92条)に、経済産業大臣の裁定で通常実施権を設定できます。業界裏話ヒント:日本で裁定が実際に下りた例は極めて少なく、申立てそのものが特許権者への強力な交渉カードになります。裁定を本気で取りに行く姿勢を見せるだけで、相手が任意のライセンス交渉に応じることが多い。91条はこの制度の出口ですが、入口の存在を知っているだけで交渉力が変わる
効力発生日以降は実施権が消滅しているため、特許権侵害になります。特許権者は差止請求(特許法100条)と損害賠償(102条)を行使でき、悪質なら刑事罰(特許法196条、十年以下の拘禁刑等、最新の改正状況をご確認ください)の対象にもなり得ます。業界裏話ヒント:取消後も惰性で製造を続けてしまう事故は、現場への周知漏れで起きます。法務が取消を把握しても製造ラインに伝わらず数週間動き続ける、これが最悪の侵害証拠になる。取消決定が出た瞬間に製造停止の社内フローを発動できるかが分かれ目
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 91 条:裁定取消後に実施権が将来消滅する効果 | — |
| 時間軸の効果 | 将来効(取消の効力発生日から先のみ消滅) | — |
| 当事者への影響 | 過去の実施は適法、未来の実施のみ停止義務 | — |
| 位置づけ | 裁定制度の出口(取消後の後始末) | — |
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