特許法 第91条
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前条第一項の規定による裁定の取消があつたときは、通常実施権は、その後消滅する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第91条は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第91条の条文原文は「前条第一項の規定による裁定の取消があつたときは、通常実施権は、その後消滅する。」で始まります。
- 特許法第91条は第一節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第91条の前の条は特許法第90条です。
- 特許法第91条の次の条は特許法第91条の2です。
- 特許法第91条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第91条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第91条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/91
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法91条は、90条の裁定取消があったとき、裁定通常実施権はその後消滅すると定める。効力は将来のみに及び、取消前の実施は遡って違法にならない。
Q · 国の裁定でもらった特許の使用権が取り消されたら、今まで作って売った分まで違法になるの?
いいえ、消えるのは将来分だけで過去の実施は適法です
特許法91条により、裁定の取消があったとき、裁定通常実施権は「その後」消滅します。つまり効力は将来に向かってのみ及び、取消の効力発生日より前に正当な実施権の下で製造・販売した製品が遡って侵害になることはありません。負う義務は「これから止めること」であり、過去分の損害賠償ではありません。効力発生日以降も実施を続ければ侵害となり、差止(100条)・損害賠償(102条)の対象になります。
解説
あなたの会社が、ある特許を相手が使っていないことを理由に、国の裁定で「使ってよい」という通常実施権を手に入れたとする。設備を入れ、人を雇い、製品を量産し始めた。ところが数年後、経済産業大臣がその裁定を取り消した。ここで多くの経営者が凍りつく。「今まで作って売った何万個も、全部特許侵害になるのか」と。特許法91条が答える。取消があったとき、実施権は「その後」消滅する。つまり将来に向かってのみ消える。取消の日より前に正当な実施権の下で作り、売った製品は、遡って違法にはならない。あなたが負うのは「これから止める」義務だけで、過去分の損害賠償ではない。この一語があるかないかで、取り消された瞬間にあなたが背負う金額は、ゼロか数億円かに分かれる。
法的な位置づけ
特許法91条は、裁定通常実施権の取消の効果を定める規定である。前条(90条)による裁定の取消があった場合、その裁定に基づく通常実施権は取消の効力発生後に消滅し、消滅の効果は将来に向かってのみ及ぶ。取消前に実施権に基づいて行われた行為の適法性は、遡って覆されることがない。
手順
- 1.取消決定書の効力発生日を確定する 裁定取消の通知が届いたら、決定書に記載された「効力発生日」を真っ先に確定する。91条の将来効により、その日より前の実施は適法であり、過去分の賠償義務はない。日付を握った瞬間に、合法に売り切れる数量と廃棄すべき仕掛品の線引きが計算できる
- 2.効力発生日前の在庫・仕掛品を仕分ける 効力発生日までに適法に製造した在庫・仕掛品を、製造日報とロット記録で洗い出す。取消前に製造した製品は効力発生日以降も適法に保有・販売できると解されるため、廃棄せず適法に処分する
- 3.取消に争う余地があれば行政訴訟を検討する 90条の取消事由(不実施・不適切な実施等)に争う余地があれば、行政不服審査または取消訴訟を検討する。執行停止(行政事件訴訟法25条)が認められれば訴訟中は実施権が消えない。攻める場所を「効果」ではなく「処分」に移すのが筋
- 4.効力発生日以降は速やかに製造・販売を停止する 効力発生日以降は実施権が消滅するため、製造ラインを速やかに停止する。法務が取消を把握しても製造現場に伝わらず動き続ける事故が最悪の侵害証拠になるため、取消把握と同時に製造停止フローを発動する
よくある質問 AI による整理
Q1裁定通常実施権とは何ですか?
特許権者が正当な理由なく発明を実施しない等の場合に、経済産業大臣の裁定で他社に設定される特許の通常実施権です。不実施(83条)・自己実施(92条)・公共の利益(93条)が根拠です。
Q2裁定はどんなときに取り消されますか?
特許法90条により、実施権者が適切に実施しない、裁定の理由が消滅した等の場合に、経済産業大臣が裁定を取り消せます。この取消を受けて91条の消滅効果が生じます。
Q3「その後消滅する」とはどういう意味ですか?
取消の効力発生日より将来に向かってのみ実施権が消える、という将来効の意味です。過去に遡って消えるのではないため、取消前の適法な実施は保護されます。
Q4裁定取消の効力発生日はどこで確認しますか?
取消決定書に記載された効力発生日で確認します。91条は「その後」消滅と定めるため、この日の前後で合法に出荷できる在庫と停止すべき製造の線引きが決まります。
Q5裁定取消に納得できないときはどう争いますか?
91条の効果ではなく、取消決定という行政処分の違法性を取消訴訟で争います。執行停止(行政事件訴訟法25条)が認められれば、訴訟中は実施権が消えません。
Q6遡及効と将来効の違いは何ですか?
遡及効なら取消時に過去の全実施が侵害に転落しますが、91条は将来効を採り、消滅は取消後のみ。過去の製造・販売は適法のまま残ります。
Q7公共の利益のための裁定実施権とは何ですか?
特許法93条に基づき、感染症対策など公共の利益に特に必要な場合に設定される裁定通常実施権です。これが後に取り消されれば91条が消滅の効果を規律します。
Q8特許法91条と90条はどう関係しますか?
90条が裁定の取消という行政処分を定め、91条がその取消後に実施権が将来に向かって消滅するという時間軸の効果を定めます。90条が原因、91条が結果です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁定で使用許可をもらった特許が取り消されたら、今までに作った在庫は全部廃棄ですか?
いいえ。特許法91条は実施権が「その後」消滅すると定めており、取消の効力発生日より前に適法に製造した在庫は、その後も適法に保有・販売できると解されます。失うのは将来の製造・販売の権利です。実務のポイント:実務では「いつ製造したか」の記録、製造日報やロット管理が決定的証拠になります。取消の可能性がある裁定実施権で操業するなら、最初から製造日とロットを厳密に管理しておく。これが取消後に在庫を守る生命線になる
Q2そもそも他社の特許って、国にお願いすれば勝手に使えるようになるんですか?
限定的に可能です。特許権者が正当な理由なく継続して3年以上発明を実施しない場合(特許法83条)、公共の利益に特に必要な場合(93条)、自己の特許実施に他社特許が必要な場合(92条)に、経済産業大臣の裁定で通常実施権を設定できます。実務のポイント:日本で裁定が実際に下りた例は極めて少なく、申立てそのものが特許権者への強力な交渉カードになります。裁定を本気で取りに行く姿勢を見せるだけで、相手が任意のライセンス交渉に応じることが多い。91条はこの制度の出口ですが、入口の存在を知っているだけで交渉力が変わる
Q3取り消されたあとも黙って特許を使い続けたらどうなりますか?
効力発生日以降は実施権が消滅しているため、特許権侵害になります。特許権者は差止請求(特許法100条)と損害賠償(102条)を行使でき、悪質なら刑事罰(特許法196条、十年以下の拘禁刑等、最新の改正状況をご確認ください)の対象にもなり得ます。実務のポイント:取消後も惰性で製造を続けてしまう事故は、現場への周知漏れで起きます。法務が取消を把握しても製造ラインに伝わらず数週間動き続ける、これが最悪の侵害証拠になる。取消決定が出た瞬間に製造停止の社内フローを発動できるかが分かれ目
間違えやすい点 AI による整理
- 取消で実施権が消えることは知っていても、それが「将来効」だという深刻な意味を見落としている人が多い。もし遡及効なら、取消の瞬間に過去の全製造が侵害となり、損害賠償も刑事リスクも過去へ遡る。「その後」の二字が、破産と存続を分けている
- 「裁定実施権は一度取れば安泰」という前提で設備投資する人がいるが、問いの立て方が間違っている。正しい問いは「取り消されたとき、どこまでが守られ、どこから止まるか」だ。90条の取消事由(適切に実施しない等)を満たせば、あなたの足場は揺らぐ
- 「取り消されたら全部パアだ」と思い込み、取消通知を見て事業全体を畳もうとする人がいるが、実は過去の正当な実施は完全に保護される。失うのは未来だけだ。この違いを知らずに在庫まで廃棄するのは、損切りの場所を間違えている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 91条:裁定取消後に実施権が将来消滅する効果 | 90条:裁定を取り消す行政処分そのもの 83条:不実施を理由とする裁定通常実施権の設定 |
| 時間軸の効果 | 将来効(取消の効力発生日から先のみ消滅) | 取消処分の発動(取消事由の存在が前提) 実施権の発生(3年以上の不実施等が要件) |
| 当事者への影響 | 過去の実施は適法、未来の実施のみ停止義務 | 実施権者の足場を失わせる引き金 眠った他社特許を新規事業で使う第三の道の入口 |
| 位置づけ | 裁定制度の出口(取消後の後始末) | 裁定制度の途中(設定の是正・取消) 裁定制度の入口(設定申立て) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も経済部智慧財産局による強制授權(compulsory licensing)制度を持ち、廢止の効果は将来に向かうと解される点で日本と類似する
韓国も재정(裁定)による通常実施権制度を持ち、재정の取消の効果は将来効とする点で日本と平行する
ドイツの強制ライセンスは連邦特許裁判所の判決で付与され、取消・変更の効果も裁判所判断による。公共の利益要件が厳格な点が特徴
米国には一般的な強制実施権はなく、政府資金研究に対する march-in rights や28 U.S.C. § 1498の政府使用が機能的に近い。実際の発動例は極めて少ない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 裁定実施権の下で医薬品を製造してきたが、ある日、取消決定の通知が届いた。施行日まであと20日。あなたは在庫の出荷を取消日前に終えるべきか、製造ラインを今すぐ止めるべきか、判断を迫られる。91条の「その後」の起算点をどう読むかで、合法に出荷できる数量が変わる
- もし、あなたが裁定実施権の下で結んだ下請契約や販売契約が、取消後も残っていたらどうなる? 実施権は将来消えるが、すでに製造済みの製品の在庫処分まで止まるのか。契約相手への債務不履行リスクと、特許権者からの差止リスクが同時に押し寄せる
- あなたが特許権者で、相手の裁定実施権をようやく取り消させた。だが過去の実施分の賠償は取れない。取れるのは取消後の差止だけ。喜ぶ前に、この線引きを知る。
- 公共の利益を理由に取得した実施権で量産体制を組んだ会社が、裁定取消で梯子を外される。投資の回収はどうなるのか。91条は将来効しか定めないが、取消の妥当性そのものを行政訴訟で争う道は別に残っている
取るべき行動
被害を受けた側:1. 取消決定書の「効力発生日」を確定する。91条の将来効により、その日より前の実施は適法であり、過去分の賠償義務はない2. 効力発生日までに出荷可能な在庫・仕掛品を洗い出し、適法に処分する3. 取消事由(90条、不実施・不適切な実施等)に争う余地があれば、行政不服審査または取消訴訟+執行停止を検討4. 取消後は速やかに製造・販売を停止し、差止・損害賠償リスクを断つ
訴えられた側:1. 相手の裁定実施権を取り消させても、91条により過去の実施分には遡及できない。取れるのは取消後の差止と将来分のみと心得る2. 90条の取消事由(実施権者が適切に実施しない、裁定理由の消滅)を立証する資料を整え、経済産業大臣へ請求3. 取消後も相手が実施を続ければ、その時点から侵害として差止・損害賠償(特許法100条、102条)を行使4. 効力発生日以降の在庫流通を監視する
時効(請求できる期限):91条の効果(実施権の消滅)は取消の効力発生日から将来に向かって生じ、特定の時効はない。取消決定という行政処分に不服があれば、行政事件訴訟法14条により、処分を知った日から6か月以内(かつ処分日から1年以内)に取消訴訟を提起する必要がある
学説
通説:91条の「その後消滅する」は将来効を意味し、遡及効を否定するのが通説である。取消前に裁定通常実施権の下で適法に行われた実施行為は、取消後も遡って侵害とはならず、実施権者の投資と取引の安全が保護される。取消の妥当性そのものは行政訴訟で別途争う。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 新設:現行特許法(昭和34年法律第121号)の制定に伴い、裁定通常実施権の取消の効果を定める規定として置かれた。消滅の効果を将来効に限定し、裁定制度の実効性と実施権者保護を両立させる。
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